ビタミンについて

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ビタミンについて

分類:総論
更新日:2020/11/05

ビタミン (Vitamin) とは

 ビタミンとは、ヒトが必要とする栄養素のうち、たんぱく質、脂質、炭水化物、無機質および水以外に必要とされる微量の有機物の総称です。生体の代謝に必須の微量栄養素ですが、体内では作ることができない、あるいは作ることができても量的に不十分であるため、食品などから摂取しなくてはならないもので、表1に示した脂溶性・水溶性を合わせて13種類が確認されています。体内のさまざまな代謝に関わるため、不足した状態が続くと欠乏症が生じます。現在の一般的な日本人の食事では、通常の食生活を送っていればビタミン欠乏症は少ないとされていますが、極端に偏った食生活では十分な量を摂れていない可能性もあります。また、サプリメントの利用による過剰摂取も懸念されます。

表1 ビタミンの種類

  名称 別名
脂溶性ビタミン ビタミンA レチノール、レチナール、レチノイン酸
ビタミンD エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール
ビタミンE トコフェロール、トコトリエノール
ビタミンK フィロキノン、メナキノン、メナジオン
水溶性ビタミン ビタミンB1 チアミン
ビタミンB2 リボフラビン
ナイアシン ニコチン酸、ニコチンアミド
葉酸 プテロイルグルタミン酸
パントテン酸
ビタミンB6 ピリドキシン、ピリドキサル、ピリドキサミン
ビタミンB12 シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン
ビオチン
ビタミンC アスコルビン酸

 

ビタミンの調理による影響

 食品中のビタミンは、保存や調理、加工によって複雑に変化し、その量も変化します。食品中のビタミンを減らす要因としては、①水や調理油への流出、②熱・酸化・紫外線・酵素による分解、③微生物発酵による消費があげられます。ここでは、調理操作による食品中のビタミンの減少についてお話します。

 

調理後の食品に、どのくらいビタミンは残っているの?

 調理操作には大きく加熱調理と非加熱調理があります (表2) 。様々な方法で調理した食品中のビタミンの残存率を調べた文献調査研究 (1)(2) によると、調理前の食品に含まれるビタミン量を100%とした場合、ほとんどのビタミンは非加熱調理の後で70-100%、加熱調理の後でも70-90%が食品中に残っています。

表2 さまざまな調理法について

加熱調理 湿式調理※1 ゆでる、煮る、蒸すなど
乾式調理※2 炒める、焼く(フライパン、ホットプレート、オーブン、グリル、直火焼き)、揚げる、煎る、燻すなど
電子レンジ※3  
非加熱調理 洗う・研ぐ、切る、混ぜる・和える、漬ける・浸す、ミキサー、絞る、すりおろす、冷凍・冷蔵・解凍など

※1 加熱媒体として水を使う調理。
※2 水以外の加熱媒体、油、空気を用いるか、直接・輻射加熱による調理。湿式調理に比べて高い温度で加熱することが多い。
※3 水の使用の有無によって湿式加熱と乾式加熱の両方に該当する。

 水溶性ビタミン (水に溶けて、水と一緒に移動する性質がある) のうち、ビタミンB1、B2、B6とナイアシンは、「ゆでる」操作を行うと、ゆで汁や煮汁へ流出することによって食品中の残存率は70~80%程度になりますが、ゆで汁や煮汁も一緒に摂取することで、もとの食品の85~100%を摂取することができます。また、非加熱調理の「水に漬ける・浸す」操作は、「ゆでる」よりもビタミンの減少は少ないようです。
 その他のビタミンとして、ビタミンCは、非加熱調理により、もとの70%程度、加熱調理により50%程度に減少することから、調理によって最も減少しやすいビタミンといえます。一方でビタミンCは日本人にとって比較的摂取しやすいビタミンでもあります。生野菜や果物の摂取や、その他の非加熱調理、蒸し調理・電子レンジ調理 (残存率80%前後) を組み合わせることで十分に摂取が可能です。
 葉酸もビタミンCに次いで調理による減少が大きいとされていますが、現時点では十分なデータが揃っていません。また、ビタミンB12、パントテン酸、ビオチンも十分な調査が行われていません。
 脂溶性ビタミン (油に溶けやすい性質がある) についても十分な調査とは言えませんが、加熱調理の後でも残存率は70-96%と比較的よく保持されるようです。ただし、湿式調理と比べて乾式調理では残存率が若干落ちます。例えば体内でビタミンAに変換されるβ-カロテンは、「ゆでる」操作の残存率が87%に対して「炒める」操作の残存率は55%と低くなります。
 こうした、調理後の食品のビタミン残存率は、食材ごとに一定ではなく、食品の状態、加熱温度や調理時間などによって異なります。

 

ビタミンを減らさない調理法とは?

 一般に、加熱により食品が崩れやすくなるため、栄養成分が失われる原因となります。また、熱に弱いビタミンがありますが、調理時の温度を高くして加熱時間を短くすることにより、ビタミンの減少を少なくすることができます (1)(2) 。その他に、材料を大きく切る、皮付きのまま調理することによりビタミンの減少は抑えられます。また、水溶性ビタミンは「ゆでる・煮る」よりも「炒める・揚げる」方が比較的よく保たれます。一方、脂溶性ビタミンは「炒める・揚げる」方が減りやすいといえます。例外として、揚げ調理に植物油を用いた場合、植物油中のビタミンEが食品中に移行し、食品単独よりも多くのビタミンEが摂取できるようです (3) 。

 

ビタミンの摂取について

 ビタミンは、あらゆる食品に含まれていますが、その種類により野菜類に多いもの、肉類に多いもの、また特定の食材に多いものなど、食品ごとに含有量が異なります。また、食品中のビタミンは調理により減少しますが、その減少率は各ビタミンの性質や、食品の状態、調理条件により異なります。ビタミンを効率よく摂取できる調理法を選ぶことも時には有効ですが、食品によっては、十分に浸漬したり、加熱したり、ゆでこぼしたりすることが、有害な物質やおいしさを損なう成分を取り除くのに重要な場合もあります。そのため、「からだに良い」などといって特定の食品ばかり積極的に摂取したり、特定の調理法に偏るのではなく、より多くの食品をさまざまな調理法でまんべんなく食べることがビタミンの過不足ない摂取につながります。
 しかし、個々の体質や生活、食習慣などによっては、ビタミンを強化した食品やサプリメントの利用が好ましい場合があります。一般に、食品中のビタミンは化学形態が複雑なため、吸収可能なかたちにする前に消化が必要です。さらに、同時に摂取するいろいろな食物成分により、消化過程やその後の体内動態が影響を受けることから、例えば、消化機能が低下した方では、吸収しやすいかたちのビタミンを添加した強化食品やサプリメントの利用が有用です (4) 。また、厳格な菜食では、動物性食品に局在するビタミンの摂取が困難であったり、妊娠可能な女性ではプテロイルモノグルタミン酸 (吸収しやすいかたちの葉酸) の摂取が推奨されていたりと、個々の生活や食習慣に応じて食品を選択していく判断が必要です。もし、ご自身の摂取状況に不安を感じる場合は、自己判断せず、専門職の方に相談してください。

 

ビタミン強化食品、ビタミンサプリメントの利用について

 現在では、牛乳やヨーグルト、シリアル、ジュース、菓子類と、さまざまな食品にビタミン強化した製品がスーパーやコンビニで広く販売されています。「せっかく食べる/飲むなら栄養価の高いものを」と気軽に選択できる環境が整っています。そこで注意したい点が3つあります。1つ目は、「栄養機能食品 (ビタミン〇〇) 」などと表示された製品であっても、表示されているビタミン○○以外のビタミンやミネラルも添加された製品が存在することです。知らないうちに同じビタミンなどを重ねて摂取している可能性があります。2つ目は、「マルチビタミン」とパッケージに書かれていても、13種類のビタミンすべてが総合的に配合されているわけではない (マルチは「複数」を示す言葉のため、2種類以上が含まれていれば虚偽でない) ことです。そして最後に、ビタミン強化された食品やサプリメントには、その製品だけで1日に必要な量を含んでいるものもあるため、強化食品を重ねて摂取したり、ビタミン強化食品とサプリメントなどを併用したりすると過剰摂取になり得ることです。
 そのため、ビタミン強化食品やサプリメントを日常的に利用する際には、いつも利用する食品の栄養成分表示から、各ビタミンを1日当たりどれくらい摂取しているか計算してみることをお勧めします。また、製品を選ぶ際には、「たくさん入っていれば良い」「天然の原材料の方が良い」といった基準ではなく、品質が確保されているかどうか、その製品の利用者で健康被害が起こっていないかといったことを重視し、慎重に選んでください。もし、判断に迷ったり不安なときには、専門職の方に尋ねるようにしてください。また、一部のビタミンではお薬と相互作用を起こす場合もあるので、お薬を服用している方は、ビタミン強化食品やサプリメントを利用する前に、必ず医療機関に相談して下さい。

 

ビタミン様物質とは

 書籍や雑誌、インターネット上では、ビタミンの定義に当てはまらないにも関わらず、ビタミンと呼ばれている物質がありますが、これらをビタミンと呼ぶのは適切ではく、一般的に「ビタミン様物質」と呼びます。これらの中には、ヒトの体内で生合成できる物質もあり、食品からの摂取が不足した時に欠乏症状が現れるかはわかっていません。どちらかというと、サプリメントなどの利用による有害事象が懸念されています。ビタミン様物質とその働きをまとめました (表3) 。

 

表3 ビタミン様物質

物質名 作用等
多価不飽和脂肪酸
(ビタミンF)
必須脂肪酸をビタミンFと呼んでいたが、現在では多価
不飽和脂肪酸 (PUFA) と呼ばれるようになった。
ユビキノン
(コエンザイムQ)
高等動物に存在するのはQ10で体内でも合成される。
細胞内ミトコンドリアの電子伝達系に関係。
リポ酸 チオクト酸ともいう。ピルビン酸やα-ケトグルタール
酸の酸化的脱炭酸反応でアセチルCoAやサクシニル
CoAが生じる時に関係。
オロット酸
(ビタミンB13)
オロト酸ともいう。ピリミジン生合成の中間代謝物。
乳酸菌の発育因子として知られている。
パンガミン酸
(ビタミンB15)
杏の仁や米ぬかから得られるD-gluconodimethyl
aminoacetic acidを含む物質に付けられた名称であり、
パンガミン酸としての標準の化学的特定名はない。
カルニチン
(ビタミンBt)
哺乳類は生合成することができる。脂肪酸と結合し
その細胞内輸送に関係。
コリン 抗脂肪肝因子として単離された成分。
リン脂質 (ホスファチジルコリン) の構成成分の他、
アセチルコリンとして神経伝達にも関係。
イノシトール 抗脂肪肝因子として単離された成分。
リン脂質 (ホスファチジルイノシトール) の構成成分。
p-アミノ安息香酸
(PABP, ビタミンBX)
アミノ酸の一種で、葉酸の構成成分のひとつ。
バイオフラボノイド
(メチルヘスペリジン, ルチン)
ビタミンPと記載されていることもある。毛細血管の
透過性を抑える作用があるとして単離されたフラボノイド
の混合物。
ビタミンU 新鮮なキャベツの中の抗消化性潰瘍因子として発見さ
れた。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療や予防に用いられ
ている。ビタミンUのUは潰瘍ulcerを意味。

*カッコ内のビタミン○○という名称は過去に呼ばれていた俗称であり、ビタミンとしては定義されていない。

 

有効性と安全性に関する研究情報をまとめている「ビタミンについての解説」もあわせてご覧ください。

  • ビタミンA:解説
  • ビタミンD:解説
  • ビタミンE:解説
  • ビタミンK:解説
  • ビタミンB1:解説
  • ビタミンB2:解説
  • ナイアシン:解説
  • ビタミンB6:解説
  • ビタミンB12:解説
  • 葉酸:解説
  • パントテン酸:解説
  • ビオチン:解説
  • ビタミンC:解説
  • コエンザイムQ10:
  • αーリポ酸:
  • カルニチン:
  • コリン:
  • イノシトール:
  • ルチン:

 

ミネラルの解説はこちら

 

参考文献
  1. ビタミン. 2017; 91(1): 1-27.
  2. ビタミン. 2017; 91(2): 87-112.
  3. Int J Food Sci Nutr 49, 157-168 (1998)
  4. ビタミン. 2017; 91(10): 603-608.
  • ビタミンの事典 (朝倉書店、日本ビタミン学会編集)
  • 生化学辞典 第4版(東京化学同人)
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