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サプリメントと子どもの食事

更新日:2012/06/12

はじめに

 近年、「健康食品」やサプリメントと呼ばれる食品が広く出回り、日本における利用経験者は約8割を越えるといわれています(1)。日本では、サプリメントという言葉に定義はありませんが、ここでは、こうした食品のうち、カプセルや錠剤、粉末、顆粒、抽出エキスなど、通常の食品とは異なる形態をしたものをサプリメントと呼ぶことにします。サプリメントに関する情報は、テレビやインターネットの他に、家族や親類、友人・知人からの口コミや地域のPTA講演会などからも入手され、子どもを持つ親の間でも関心が高まっています。実際、子どものサプリメントの利用が、かなり身近なものとなってきているようです (1) (2) 。

 大人によるサプリメントの常用が日本より早くから一般化しているアメリカでは、約30~50%の子どもがサプリメントを利用しているとの報告があります (3)~(10) 。日本でも、今後、アメリカと同様に子どもによる安易なサプリメントの利用が拡大することが懸念されています。国立健康・栄養研究所が幼稚園・保育所に通う幼児の保護者を対象に実施した調査 (回答者数1,533名) によると、幼児の15%がサプリメントを利用しているという結果が得られています (11) 。

 

アメリカの調査では、子どものサプリメント利用について、以下のような問題点が指摘されています。

  • 食事からの栄養摂取量とは関わりなく、サプリメントを利用している (12) 。
  • サプリメントの利用が栄養の補足ばかりでなく、過剰摂取につながってしまっている (8) 。
  • 早期のサプリメント利用がアレルギー発症と関連するかもしれない (6) 。
  • ハーブに関して、「自然だから安全」という誤解があり、副作用や相互作用については、あまり知られていない (13) 。
  • 安全性が問題視されているハーブや、有効性が承認されていない用途での使用がみられる (14) 。

 

 日本でも、子どもを持つ多くの親は、食事や栄養のバランスに非常に感心を持っており、子どもの食事に「問題がある」「改善したい」と考えていることが報告されています。また、親自身の食習慣は強く子どもに影響します (15) (16) (17) 。日本でも前述のようなアメリカと同様の問題が発生しないように、サプリメントと子どもの食事についての基本的な事柄をまとめました。

 

目次

Ⅰ.子どものサプリメント利用
  子ども用サプリメントって? 必要なの? 効果はあるの? 安全なの?問題はないの?
  偏食があるけど、使用した方がいい?
II.子どもの食事の特徴
 1.成長に必要な栄養
  どんな栄養素がどれくらい必要? 不足しがちな栄養素は? 摂りすぎに注意するものは?
 2.バランスのよい食事
  何をどれだけ食べればいいの? 少食なのですが・・・。
 3.偏食への対応
  好き嫌いがあるのですが・・・。 どう対応すべき? 克服方法は?
 4.おやつについて
  何で必要? 適量は? どんなものがいい? 与え方は?
III.情報とのつきあい方
 1.不安を煽る情報への接し方
 2.参考になる情報源

 

Ⅰ.子どものサプリメント利用

 サプリメントの普及に伴って、子どもにもその利用の拡大が懸念されています。子どもにサプリメントを与える際には、大人よりもさらに、その安全性や有効性を充分に考慮し、慎重に対応する必要があります。

 

子ども用サプリメントって?

 最近「子ども用」というサプリメントが販売されています。また、「子どもでも利用できる」とうたったものもあります。特にインターネット販売サイトでは数多くの子ども用製品が販売され、その数は数百種に及びます。
 しかし、これらの製品が子どもにとって安全で、必要なものなのか、きちんと科学的な根拠があるのか、確認できません。そのほとんどの製品が、国が安全性・有効性を科学的に評価した保健機能食品ではないからです。
 保健機能食品制度については、「『健康食品』に関する制度の概要」をご覧下さい。

必要なの?

 「今の子どもはストレスにさらされているから」とか、「今の野菜は栄養が少ないから」などと言ってサプリメントの必要性が強調されています。しかし、その根拠はほとんどなく、単なるイメージに過ぎないことがかなり多いというのが実情です。毎年、国が行っている栄養調査からも、今の子ども達に、早急な対策が必要な栄養素不足はみられないと言えます。
 毎日、3食の食事 (+適切な間食) をきちんと食べていれば、ほとんどの子どもには特別なサプリメントは必要ないと考えられます。むしろ安易にサプリメントに頼ることは、子どもが食に対する興味・関心を持つことを妨げ、将来、健全な食生活を送る上での障害になるおそれがあります。

効果はあるの?

 科学的根拠がある程度蓄積しているビタミンやミネラルについても、その有効性の根拠は欠乏症に対する予防効果がほとんどで、現在のような欠乏症の予防目的を超えた量の摂取に関する根拠は、大人でもはっきりしていません。ビタミンやミネラル以外の成分の安全性・有効性については、まだ検討段階 (研究段階) と言っても過言ではありません。特にサプリメントの有効性は、成人や中高年で得られた情報が大部分で、子どもで得られたものは極めて少ないのが現状です。

安全なの?問題はないの?

 サプリメントは、一般に特定成分を大量に摂取できることがその利用の最大のメリットとなっています。しかし、どんなに体に必要な成分でも、過剰に摂れば有害な作用が出る可能性があり、注意が必要です。特に、小さな子どもは大人の様に体が出来上がっていませんから、有害な影響を受けやすいと考えられています。また、子どもで安全性を評価したサプリメントはほとんどありません。
 子どもにとって、サプリメントの利用は、良い効果よりも悪い影響 (デメリット) の方が大きいと判断するのが妥当であり、大人と同じように考えて利用するのは正しいとは言えません。
また、サプリメントの利用では「食育」は期待できません。親子一緒に食への理解を深め、子どもの頃から正しい食習慣を身に付けましょう。

偏食があるけど、使用した方がいい?

 ひとつの食材が食べられないからといって、それだけですぐに栄養不足になることはありません。たとえば牛乳がだめならヨーグルトやチーズ、シイタケがだめならエノキタケやシメジやエリンギなど、多くの食材をバラエティ豊かに食べることで、健全な食生活を維持することは可能です。どうしても食事だけでは足りなくて困っている場合は、まず保健所等の栄養士に相談し、さらに問題があるのなら、かかりつけのお医者さんと相談して対処するようにしましょう。自分自身で判断せず、保健医療の専門家に相談することが重要です。

 

II.子どもの食事の特徴(18)~(25)

 子ども (幼児) にとって食事は、単に健康の維持・増進、発育のために栄養を摂るだけの行為ではなく、生活の中の大きな楽しみであり、情緒や社会性を養う場でもあります。また、この時期に得る食習慣は、その後の生涯の食習慣の基礎となるため、望ましい食習慣を身につけることが大切です。

 

1.成長に必要な栄養

どんな栄養素がどれくらい必要?

 どの栄養素がどのくらい必要であるか、1ヶ月程度の習慣的な摂取量の目安を示すものとして、「食事摂取基準」があります。食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的として作成されています。エネルギーと主な栄養素に関する、3歳~5歳の幼児の食事摂取基準は以下の通りです (22) 。
 それぞれの栄養素の特徴やはたらきについては、「ビタミンの解説」「ミネラルの解説」をご覧ください。

不足しがちな栄養素は?

 「平成20年国民健康・栄養調査」によると、子ども達の実際の摂取状況はカルシウムや鉄の不足という結果が出ています (16) 。
 カルシウムは骨や歯の主な構成成分であり、鉄は血液に必要な栄養素で、どちらも生命を維持する上で重要な生理機能の調節を担っています。カルシウムは乳・乳製品、魚介類、大豆製品、種実類、藻類などに、鉄は豆類・種実類・藻類・肉類に多く含まれます。食事の他にもおやつなどで積極的に摂取することが大切です。

摂りすぎに注意するものは?

 「平成20年国民健康・栄養調査」では、食塩が摂りすぎでした (平均値5.9 g) 。また、脂質については27.6%で、幼児に望ましいとされる目標量 (20%以上30%未満) の後半という結果となっており、食の洋風化傾向を反映していると思われます。
 食塩や脂質の過剰摂取は、生活習慣病の早期発症を促す一因です。米を主食とし、魚介類や野菜、大豆製品などの多様な食品を組み合わせた薄味の和食の良さを見直し、食塩や脂質の過剰摂取に注意しましょう (16) (18) (19) (22) 。

 

2.バランスのよい食事

何をどれだけ食べればいいの?

 「何を」「どれだけ」食べたらよいか、イラストを用いてわかりやすく示したものが「食事バランスガイド」です。食事バランスガイドでは、1日の適切な食事内容を、料理の単位で主食・副菜・主菜の順に、コマのイラストを用いてあらわしています。コマは食事のバランスが悪くなると倒れてしまうこと、運動 (コマの回転) によって安定すること、水やお茶などの水分が大切な軸であることなど、現代の食事についての注意点が盛り込まれたものとなっています。また、お菓子やジュースなどの嗜好品はコマを回す紐として描かれており、「楽しく適度に」と注意書きがあります(24)。
 幼児についての食事バランスガイドは、東京都のサイト (「東京都幼児向け食事バランスガイド」) が参考になります。

少食なのですが・・・。

 幼児では、少食、食が細いという訴えが多く聞かれますが、この時期では食事の量に個人差があることは普通です。病的なやせ、発達の遅れがなく、元気に過ごしているならば、食事の量が周囲より少なくても問題ではありません。
 まずは少なめに盛り付けて、気持ちよく完食させ、次第に盛り付ける量を増やしていくと、食べることに自信がついてくるでしょう (18) (19) (20) 。

 

3.偏食への対応

好き嫌いがあるのですが・・・。

 幼児期は精神の発達が目覚しく、食べ物に対する好き嫌いの感情もはっきりとしてきます。好き嫌いは自己主張の現われであり、この時期に好き嫌いがあることは珍しいことではありません。

どう対応すべき?

 好き嫌いの原因には、単にその食べ物を食べ慣れていない、以前食べたときに嫌な思いをした、親自身がその食べ物が苦手、ということ等が考えられます。
 決して無理強いはせず、調理法や味付けを工夫したり、時には子どもと一緒に苦手な食べ物を調理するなど、子どもの意欲を引き立てながら好き嫌いを克服しましょう。そして、少しでも食べられたらたくさんほめましょう。
 周囲の大人は、「ある食品が食べられなくても、欠ける栄養素は他の食品で補える」、「成長に従い、好き嫌いも減る」というように、気持ちをおおらかに持つことが大切です。

克服方法は?

 子ども(幼児)が苦手とすることが多い食品と、克服方法について以下にまとめました (18) (19) (20) (21) 。

●野菜が苦手

しっかりゆでて、アクを除いてから調理しましょう。
 うまみのある肉やベーコン、油揚げと組み合わせたり、ダシを効かせたり、ゴマやしょうゆなどの香ばしさを利用すると、野菜そのものの味がやわらぎ食べやすくなります。
 初めのうちは少量を刻んで調理し、徐々に形を残して味付けなどを工夫すると、子ども自身「食べられるようになった」と自信がつき、野菜嫌いを克服できるかもしれません。

●魚が苦手

 生臭さや内臓・血合いの苦さを苦手とすることが多いので、新鮮な魚を使い、下味や味付けで臭み・苦味を抑えます。
 また、骨ごと食べて嫌な思いをしたことが原因となって魚嫌いになることもあるので、幼児のうちは骨や皮は取り除いて調理しましょう。
 塩焼き・照り焼き・煮魚・フライなど、魚の持ち味にあった調理法や味付けを試してみましょう。

●肉が苦手

肉の噛み切りにくさを苦手とする幼児が多いようです。肉の繊維を短くするように切ったり、ひき肉を使って食べやすく調理しましょう。
 肉のにおいが苦手な場合は、ケチャップやカレー粉などで味付けすると食べやすくなります。

 

4.おやつについて

何で必要?

 幼児にとっておやつは大きな楽しみであるとともに、大切な食事の一部です。幼児の胃は大人の1/3-1/4程度の大きさなので、1日3回の食事だけでは必要な栄養が摂りきれません。そこで「補食」の意味合いを持つおやつが必要となります。

適量は?

 おやつの量は、必要なエネルギーの10~20%程度が適量といわれていますので、3-5歳では200 kcal前後が適量となります。

どんなものがいい?

 次の食事に影響しない程度の消化の良いものを用意しましょう。不足しがちなカルシウムを補うため、乳製品や豆類を使ったおやつもおすすめです。また、幼児にとって水分補給も大切ですが、麦茶や牛乳など、甘くないものを選び、糖分の摂り過ぎに注意しましょう。

与え方は?

 市販品をおやつとして与える場合、袋ごと渡すのではなく、適量をお皿に分けてあげましょう。スナック菓子や甘いジュースは子どもの好きな食べ物・飲み物でもありますが、これらは量の割にはエネルギーや糖分、塩分が多いので、袋や包装に記載してある栄養成分表示を見ながら適量を与えましょう。

「おやつはよく食べるけれども、食事は少食」という声がよく聞かれますが、おやつを食べ過ぎれば食事の時間にはおなかが空かず、食事量は少なくなってしまいます。そして食事の時間が終り、少し時間が経つとおなかが空いて、おやつを食べる、という悪循環に陥ってしまいます。足りない栄養を補うためのおやつでおなかがいっぱいになり、十分な食事が食べられないのでは本末転倒です。おやつは適量を守りながら楽しみましょう (18) (19) (20) (21) (25) 。

 

III.情報とのつきあい方

1.不安を煽る情報への接し方

 情報化社会と呼ばれて久しく、生活していく中で私たちの意志とは関係なく、様々な情報が耳に入ってきます。特に、生活や健康に密接した食品、食生活については多くの人々が関心を持つ事柄であり、その分、非常に多くの情報が玉石混淆しています。中には病気や不安など、消費者の弱みに付け込む悪質な商品、業者もありますので注意が必要です。情報に接する際は、冷静な目と耳と心を忘れず、少しでも不安や疑問を感じたときは、専門家や信頼できる公的機関などに助言を求めるなど、リスクを回避する姿勢を持ちましょう。
 科学的根拠のある情報について、詳しくは「その情報は「確かな情報」ですか?」をご覧下さい。

 

参考文献

(1) 株式会社三菱総合研究所:健康食品の利用に関する3万人調査,2006
(2) 食品安全委員会:食品安全モニター課題報告「食品の安全性に関する用語集等について」(平成19年2月実施)の結果
(3) Am J Epidemol 2004;160:339-49.
(4) Pediatrics 1997;100(5): e4.
(5) Arch Fam Med 2000; 9(3): 258-62.
(6) Pediatrics 2004; 114: 27-32.
(7) J Am Diet Association 2005; 105(5): 763-772.
(8) J Am Diet Association. 2006; 106(1): suppl1 s52.e1-15
(9) J Am Diet Association 2006; 106(2): 227-237.
(10) Arch Pediatr Adolesc Med 2007;161(10): 978-85.
(11) J Nutr Sci Vitaminol. 2009; 55:317-325.
(12) Pediatrics. 2002; 09(3): e46.
(13) Pediartics.2003;111(5):981-985.
(14) J Am Diet Assoc.2006;106:227-237.
(15) 厚生労働省:平成17年乳幼児栄養調査結果の概要,2006
(18) 食育の時代~楽しく食べる子どもに:第一出版
(19) 子どもの心と体を育てる食事学:第一出版
(20) 子どもの栄養・食教育ガイド:医歯薬出版
(21) 好き嫌いをなくす幼児食:女子栄養大学出版部
(22) 日本人の食事摂取基準2010年版:第一出版
(24) 食事バランスガイド:第一出版
(25) 新ビジュアル食品成分表:大修館書店
(16) 厚生労働省:平成20年国民健康・栄養調査結果
(17) 東京都:幼児期からの健康習慣調査報告書.2007

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