コラム

  1. Home
  2. /
  3. コラム
  4. /
  5. 花粉症対策

花粉症対策

カテゴリー:その他
更新日:2019/03/01

はじめに

花粉症対策についての画像 花粉症は体内に入った花粉に対してヒトの身体が起こす過剰な免疫反応 (アレルギー反応) です。通常、免疫反応は異物から体を守る大切な反応ですが、免疫反応が過剰になると、くしゃみや鼻水、涙という症状が強くですぎてしまい生活の質が低下することがあります (1) 。スギやヒノキの花粉が飛ぶ春先の症状が注目されがちですが、花粉は1年を通して様々な植物から飛散するため、1年中起こる可能性があります。国内でも多くの方が悩まされているため、メディア等で花粉症対策を謳った健康食品や様々なグッズが紹介されています。
 そこで、花粉症対策の注意点をまとめました。

 

花粉症対策のための食品

 毎年、天気予報で花粉情報が取り上げられる時期になると、いろいろな「花粉症によい食品」の情報が飛び交います。お茶やヨーグルト、納豆、レンコンなど普段から食べ慣れている食材から、特定の成分を濃縮・添加した健康食品・サプリメントまで、様々な食品が紹介されています。一部には、花粉症の症状を緩和する機能について検討されているものもありますが、残念ながら、特定の食品を毎日食べ続けるだけで、花粉症が治るというものは、現在のところありません。一つの食品にこだわって、そればかりを摂取するのではなく、こうした食品も取り入れつつ、バラエティに富んだ食品で食事を整えるようにしましょう。また、健康食品の利用は、あくまでも必要な栄養素の補給・補完のためであり疾病予防や治療の目的で利用すべきものではありません。
 詳しくは、基礎知識:「健康食品は薬の代わりにはなりません」をご覧ください。

 

花粉含有食品には要注意

花粉の画像 過去には、スギやヒノキの花粉を入れた飴やカプセル、液体、錠剤、粉末などの食品が花粉症の症状緩和や治療を暗示して多数販売されていました。そんな中、スギ花粉加工食品を飲用した女性がアナフィラキシーショック (死に至ることもある、重篤なアレルギー反応) を起こしたという健康被害が発生しました (2) 。この被害を受けて厚生労働省は、国民に対してスギ花粉を含む食品に関する注意喚起を行うとともに (3) 、事業者に対して「花粉症の治療または予防のために使用されることを目的としている製品の販売中止と回収」「スギ花粉を含む食品は、原材料にスギ花粉を含む旨の表示と、スギ花粉症の人は重篤なアレルギー症状を引き起こす可能性がある旨の表示」をするよう発表しました (4) 。この対応により、現在では花粉加工食品の流通は減少しましたが、このような製品を安易に利用することは危険ですので、注意してください。

 

花粉症の治療法

 花粉症の治療法には、大きく分けて症状を緩和するための対症療法と症状を根本から治すための根治療法があります。対症療法には点眼薬や点鼻薬などによる局所療法 、内服薬などによる全身療法、レーザーなどによる手術療法があり、根治療法には、アレルギーの原因物質に身体を慣れさせるアレルゲン免疫療法(皮下または舌下免疫療法)があります (5-8) 。いろいろな治療法がありますが、自己判断で行うのではなく、花粉症の症状があるときは医師の診察を受け、適切な治療を受けましょう。
 前の項で紹介した花粉加工食品の多くは、根治療法であるアレルゲン免疫療法(詳しくは次の項を参照)と同じ効果を食品の摂取で期待できると謳っていました。しかし、実際に医療行為として行われているアレルゲン免疫療法と、花粉入り食品を摂取するのとでは内容が大きく異なります。

 

アレルゲン免疫療法とは

 アレルゲン免疫療法は、抗原特異的免疫療法とも呼ばれ、アレルギーの原因物質(抗原、アレルゲン)である花粉を少しずつ体内に入れて身体を慣れさせることで、過剰なアレルギー反応を抑えることを目的とする治療法です。花粉の飛散していない時期も含め、数年間かけて治療していくもので、即効性は期待できません。アレルゲンの量を厳密に調整した標準化エキスを皮下に注射する方法と、アレルゲンを舌の下に投与する方法がありますが、いずれも強い副作用を生じる危険がありますので、アレルゲン免疫療法に熟練した医師のもとで行うのが原則です。アレルゲンを直接体内に入れるので、副作用として、投与部位の腫れ、痒み、全身の発赤、喘鳴、アナフィラキシーのリスクがあり、万一の場合には、すぐに適切な処置が必要となるため、皮下の場合は毎回、舌下の場合は初回投与時には、投与後30分程度は医師の管理下にとどまるようにします。治療は少なくとも2~3年継続する必要がありますが、治療をやめた後でも、効果が持続するのがこの治療法の特徴です (5-11) 。

 

アレルゲン免疫療法のポイント
  • 医者の画像アレルゲン免疫療法の専門的なトレーニングを受けた医師が行う。
  • 使用するアレルゲンは、濃度を厳密に調整した製剤を用いる。
  • 開始前に必ず血液検査や皮内テストで、アレルゲンの検索を行う。
  • 副作用が生じた際に備え、適切な処置ができる施設で行う。

 

花粉症のセルフケア

 花粉症の治療や対策は季節前から予防的に行うとより効果的です。規則正しい生活やバランスのとれた食事とともに、メガネやマスクなどを活用して花粉を防ぎましょう。花粉症対策としてできるセルフケアを紹介します (7, 8, 10) 。ぜひ参考にしてください。

花粉をつけない ・外出時にマスクやメガネをする (マスクは花粉の飛散が多いときには吸い込む花粉を約1/3~1/6に減らす。また、メガネは目に入る花粉を1/2~1/3まで減らすことができる) 。
・表面がすべすべした素材の洋服を着用する。
・帽子を着用する。
ついた花粉を落とす ・帰宅したら、手洗い、うがい、洗顔をする。
体調を整える ・睡眠を十分とる。
・規則正しい生活を心がける。
・バランスのとれた食事を摂取する。
・お酒の飲みすぎに気をつける。
・タバコを控える (鼻の粘膜を正常に保つ) 。

花粉症についての詳しい情報は、厚生労働省ウェブページ「花粉症特集」もご覧ください。

 

おわりに

 春先はヒノキやスギにより花粉症の症状に悩む方が多い季節です。早めの対策で症状の軽減に心掛け、症状が出た場合は医師に相談してください。少しでも快適な毎日を送れるといいですね。

 

参考文献

1. 花粉症環境保健マニュアル 環境省
2. 厚生労働省と和歌山県が花粉加工食品との関連が疑われる健康被害事例を公表(070227)
3. スギ花粉を含む食品に関する注意喚起について (厚生労働省)
4. スギ花粉を含む製品の薬事法上の措置等について (厚生労働省)
5. 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016年度版(改訂第8版) 日本内科学会雑誌2017 106(6) 1159-64.
6. アレルギー性鼻炎ガイド ライフサイエンス 馬場廣太郎 監修
7. 的確な花粉症の治療のために (第2版) 大久保公裕 監修
8. はじめに~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~ 大久保公裕 (厚生労働省)
9. メルクマニュアル第17版 日本語版 福島雅典 総監修
10. 花粉症Q&A集 (厚生労働省)
11. スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版) 一般社団法人日本アレルギー学会 監修

上へ戻る
error: コンテンツが保護されています