もくじ
1.はじめに
ベニコウジは、食品原料や食品添加物として用いられてきた歴史をもつ一方で、いわゆる「健康食品」の素材としても使用されています。含有成分による効果が期待されている中で、安全性についても注目が集まっています。
ここでは、いわゆる「健康食品」としてのベニコウジについて解説します。食品添加物のベニコウジ色素は、健康食品に用いられるベニコウジ原料とは異なり、法律で定められた規格・用途に基づき使用されているものですので、混同しないようご注意ください。
また、健康食品を安全に利用するためには製品の品質が確保されていることも重要です。どうしても使用したいと思ったときには、製品の選び方も含めて、専門の方にご相談ください。
2.ベニコウジってきくの?
ベニコウジにはモナコリンKというコレステロール低下薬の有効成分と化学的に同一の物質が含まれますが(1)、厚生労働省による食薬区分において「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」とされています(2)。このため、医学的な表現や、治療効果、予防効果を暗示する表示はできません。そして、疾病に罹患していない方の健康の維持・増進に役立つまたは適する旨を表示する機能性表示食品の原料として用いられていました。
2024年までに、モナコリンKを含むベニコウジの成分 (米紅麹ポリケチド) を関与成分とした機能性表示食品が4製品届け出られ、それらには、血中コレステロールに対する機能について、「LDL (悪玉) コレステロールが高めの方のLDL (悪玉) コレステロールを下げて、LDL (悪玉) コレステロール値とHDL (善玉) コレステロール値の比率 (L/H比) を下げるのに役立つ機能が報告されています」などと表示されていました (これらの製品は、現時点ではいずれも届出が撤回されています)。
ベニコウジのコレステロールに対する効果を調べた複数の研究結果をまとめて解析したところLDLコレステロール低下がみられた、とする研究報告(3)(4)もありますが、これらの研究には脂質異常症の患者さんが対象者に含まれていました。
一方、「コレステロール値が高め」の健康な人を対象とした研究として、上記の機能性表示食品の表示の根拠とされた日本での報告が2件あります(5)(6)。これらの研究は特定のベニコウジ製品を摂取させ、LDLコレステロール値の低下がみられたと報告しています。
3.ベニコウジは安全なの?
海外では、ベニコウジのサプリメントを使用した方の筋肉障害 (ミオパチー、横紋筋融解症など) や肝障害などの健康被害が報告されています(7)。
2014年、フランス食品環境労働衛生安全庁は、モナコリンKを含むベニコウジサプリメントの使用による健康被害が25件報告されたことを受けて、このようなサプリメントを使用する場合は医師に相談することを推奨しています(8)。
また、ベニコウジを含むサプリメントの使用を控えるべき人として、未成年および高齢の方、妊娠中・授乳中の女性、脂質異常症の薬などの医薬品を使用している方などをあげています。
米国では2004年から2017年の間にベニコウジをサプリメントなどとして使用した方の健康被害が1,459件寄せられ、このうち28件は死に至る重篤な事例だったと報告されています(9)。
ベニコウジは発酵の過程で、例えば、かび毒のシトリニンといった有害な物質を生成することが報告されています。
日本では食品添加物のベニコウジ色素におけるシトリニンの基準値を0.2μg/g以下とし(10)、欧州連合 (EU) ではベニコウジに由来するフードサプリメントのシトリニンの最大基準値を100μg/kgに設定しています(11)。
4.からだの悩みがあるときは
日常の生活でからだに悩みがあるときは、ベニコウジなどの健康食品を試してみる前に、まずは、医療機関を受診しましょう。
ベニコウジにかぎらず、いわゆる「健康食品」に病気を予防、治療する、あるいは症状を緩和するといった効果を期待することはできません。これは、特定保健用食品 (トクホ) や機能性表示食品などの国の制度にもとづいて身体に対する特定の機能を表示することができるものであっても同じです。
-
どうしてもベニコウジの健康食品を利用したい場合
治療を受けていない場合であっても、医師、薬剤師、健康食品・サプリメントのアドバイザリースタッフ (「もっと詳しく」を参照) など専門職の方に相談してください。食事などの生活習慣を見直すために、管理栄養士のアドバイスを受けることもおすすめします。
- ベニコウジの健康食品を利用していて体調の異常を感じたら
すぐに利用をやめて、医療機関を受診してください。
受診の際には、ベニコウジの健康食品を利用していたことをお伝えください。利用を開始する際に、商品のパッケージなどを写真に残すとともに、利用した期間や摂取した量、体調の変化などをメモするようにしましょう。体調不良がみられた場合の原因究明に役立ちます。
5.まとめ
ベニコウジを含む健康食品が販売されています。 コレステロール値が高めの方がベニコウジのいわゆる「健康食品」を使用した場合の効果に関してはいくつかの研究結果があります。しかし、その一方で、いわゆる「健康食品」としてのベニコウジの使用による健康被害も報告されています。
ベニコウジにかぎらず、いわゆる「健康食品」を病気の治療に使うことはできません。
コレステロール値の異常がわかったらまずは医師の指導にしたがって、治療の必要がない場合であってもベニコウジの健康食品を自己判断で使用することは控えましょう。
また、錠剤・カプセル剤等のいわゆる「健康食品」 については、原材料の中に微量に含まれる毒性物質が濃縮されているおそれがあるため、過剰摂取による健康被害の発生防止の観点から、製品が適切に製造され品質が確保されているかを意識する等、より一層安全性に注意することが必要です(12)。 この点について、もっと詳しく知りたい方は専門家コラム「GMPとは」もあわせてご参照ください。
参考文献
もっと詳しく知りたい方はこちら