葛の花エキスは、マメ科クズ属に属するPueraria lobatasubsp. thomsonii の花部の熱水抽出物である。葛の花エキスに含まれるフラボノイド類のうちテクトリゲニン類は、Tectorigenin-7-O-xylosylglucoside、Tectoridin およびTectorigenin である。
葛の花エキスは、肝臓で脂肪合成を抑制し、脂肪組織で脂肪分解および熱産生を亢進する作用を有し、その抗肥満作用の活性は、テクトリゲニン類が関与しているものと推察される。(1)(2)
(1)Evid Based Complement Alternat Med., 2012,272710, 2012 (2) Glob J Health Sci., 4, 147- 155, 2012
「食品中の大豆イソフラボンアグリコン(アグリコン当量)の試験方法」に準じて、高速液体クロマトグラム法(HPLC 法)を用いて定性及び定量を行う。
食安発第0823001 号(平成18 年8 月23 日付け)の「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針について」の別紙「食品中の大豆イソフラボンアグリコン(アグリコン当量)の試験方法」
研究1: 健常者および軽度肥満者(BMI が 30 未満の成人男女)を対象に、「葛の花エキス含有粉末茶飲料」(被験食品)または葛の花エキスを澱粉分解物およびカラメル色素に置き換えた粉末茶飲料(対照食品)を、1 日あたりの摂取目安量の 3 倍量にあたる 3 袋を 4 週間にわたって継続摂取させるプラセボ対照二重盲検並行群間試験を実施した(被験食品の摂取量;テクトリゲニン類として 124.8 mg/日)。 その結果、29 名の解析対象者(被験食群 14 名)において、臨床上問題となる変動は認められなかった。また、試験食品と因果関係のある有害事象の発現は認められなかった。(1) 研究2: 軽度肥満者(BMI が25 以上30 未満の成人男女)を対象に、「葛の花エキス含有粉末茶飲料」(被験食品)または葛の花エキスを澱粉分解物およびカラメル色素に置き換えた粉末茶飲料(対照食品)を、1 日あたりの摂取目安量にあたる1袋を12週間にわたって継続摂取させるプラセボ対照二重盲検並行群間試験を実施した(被験食品の摂取量;テクトリゲニン類として34.9 mg/日)。 その結果、97名の解析対象者(被験食群50 名)において、臨床上問題となる変動は認められなかった。また、試験食品と因果関係のある有害事象の発現は認められなかった。(2) 葛の花エキスの原材料である乾燥葛花から抽出されたお茶に関する試験について研究3,4 に示す。 研究3: BMI が30 未満の被験者15 名を対象に、葛の花エキスの原材料である乾燥葛花から抽出されたお茶(テクトリゲニン類として294.9 mg/日含有)を4 週間にわたり摂取させる試験を実施した。 その結果、解析対象者15 名中2 名において、肝機能検査値の上昇が発現し、試験食品との因果関係は「あるかもしれない」(因果関係の判定4 段階(①あり、②あるかもしれない、③多分なし、④なし)中2 番目)と判断された。以上より、乾燥葛花から抽出されたお茶(テクトリゲニン類として294.9 mg/日含有)を連続的に摂取した場合、体質や体調によっては肝機能検査値が上昇する可能性は否定しきれないと考えられた。(3) 研究4: BMI が30 未満の被験者15 名を対象に、葛の花エキスの原材料である乾燥葛花から抽出されたお茶(テクトリゲニン類として98.3mg/日含有)を12 週間にわたり摂取させる試験を実施した。試験開始後、試験と関連のない理由による脱落者2 名が認められ、最終解析対象者13 名において、臨床上問題となる変動は認められず、試験食品と因果関係のある有害事象の発現は認められなかった。 (4)
(1) 薬理と治療, 41, 167-182, 2013 (2) 機能性食品と薬理栄養, 7, 233-249, 2012 (3) 株式会社東洋新薬 社内報告, 2020 (4) 株式会社東洋新薬 社内報告, 2020
研究1: 細菌を用いた復帰突然変異試験(in vitro 試験)、ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験(in vitro 試験)、げっ歯類を用いた小核試験(in vivo 試験)を行った。 その結果、葛の花エキスは生体にとって問題となるものではないと考えられた。(1) 研究2: 6 週齢の雌雄ddY マウスを用いた急性毒性試験の結果、葛の花エキス5 g/kg 投与群において死亡例はなく、投与後14 日間の観察期間中、異常は認められなかった。また剖検においても、主要器官・組織に異常な所見は認められなかった。また、6 週齢の雌雄SD ラットに葛の花エキス0.5%、1.5%および5.0%を90 日間連続で混餌投与し、葛の花エキスの亜慢性毒性について検討した。 その結果、死亡例はなく、一般状態にも異常は認められず、毒性学的に意義のある変化もしくは葛の花エキスに直接起因すると考えられる変化は認められなかった。 (2) 研究3: 葛の花エキスおよびその主要イソフラボンのエストロゲン様作用に関する安全性を検証することを目的として、エストロゲン受容体α/βに対するアゴニスト活性の評価および葛の花エキスによる子宮肥大試験を実施した。 その結果、葛の花エキスに含まれるTectorigenin のエストロゲン様作用は大豆イソフラボン(Genistein)と比較して極めて弱く、葛の花エキスによる子宮肥大作用は認められなかった。(3)
(1) 応用薬理, 84, 53-58, 2013 (2) J Food Sci., 78, 1814- 1821, 2013 (3) Pharmacology & Pharmacy, 4, 255-260, 2013
研究1: 軽度肥満者(BMI が25 以上30 未満の成人男女)を対象に、「葛の花エキス含有粉末茶飲料」(被験食品)または葛の花エキスを澱粉分解物及びカラメル色素に置き換えた粉末茶飲料(対照食品)を、12 週間にわたって連続摂取させるプラセボ対照二重盲検並行群間試験を実施した(被験食品の摂取量;テクトリゲニン類として34.9 mg/日)。 その結果、解析対象者97 名において、被験食品群(50 名)では対照食品群と比較して、腹部内臓脂肪面積、腹部皮下脂肪面積、腹部全脂肪面積、体重、BMI およびウエスト周囲径(いずれも摂取前からの変化量)の低下が認められた。(1)
(1) 機能性食品と薬理栄養,7,233-249,2012
研究1: 7 週齢の雄性C57BL/6J マウスを2 群に群分けし、高脂肪食(HFD 群)、5%の葛の花エキスを混餌した高脂肪食(HFD+PFE 群)をそれぞれ14 日間摂取させた。 その結果、HFD+PFE 群ではHFD 群と比較して、体重および精巣周囲脂肪や後腹膜脂肪の白色脂肪重量が低い値を示し、肝臓Oil Red O 染色において脂肪肝の抑制が認められた。(1) 研究2: 多因子遺伝子性の肥満2 型糖尿病モデル動物であるTSOD マウス(4 週齢)を5 群に群分けし、普通食(TSOD-MF 群)、高脂肪食 (TSOD-WTD 群)、1%の葛の花エキスを混餌した高脂肪食(TSOD-WTD+1%PFE群)、3% の葛の花エキスを混餌した高脂肪食(TSOD-WTD+3%PFE 群)、5%の葛の花エキスを混餌した高脂肪食(TSOD-WTD+5%PFE 群)をそれぞれ8 週間摂取させた。 その結果、TSOD-WTD+5%PFE 群ではTSOD-WTD 群と比較して、体重、肝臓重量、腸間膜脂肪や腎周囲脂肪の白色脂肪重量および肝中中性脂肪が低い値を示し、血中アディポネクチンの増加および耐糖能の改善が認められた。(2)
(1) Evid Based Complement Alternat Med., 2012,272710, 2012 (2) J Nat Med., 66, 622-630, 2012