菌名:Bifidobacterium longum BB536 起源:1969年に健康な乳児の糞便より分離したビフィズス菌 細菌学的性状:偏性嫌気性、グラム陽性、無芽胞、多形性桿菌、グルコースからの主生産物は乳酸、酢酸、ガス産生無し、カタラーゼ無し 遺伝学的性状:GC含量 62% Bifidobacterium longum ATCC15707T (基準株) とのDNA相同性82%
BB536はin vitroにおいて腸内有害菌の生育を抑制し、腐敗産物の生成を抑制する。BB536含有ヨーグルト摂取により腸内環境が改善、BB536の腸管内での増殖が確認された。
Bifidobacteria Microflora 1459-66,1995. Lait,73, 249~256,1993
BB536の培養物1 gを9 mLの滅菌生理食塩水に加え十分に混合し、10-1希釈液を調製する。これをもとにして、順次10倍段階希釈液を調製し、検体中の生菌数に応じて適当な2~3段階の希釈液の0.1 mLずつをBL血液寒天平板にそれぞれ滴下し、コンラージ棒で一様に塗布する。これを37℃、48~72時間嫌気培養した後、20~200個のコロニーが発育した希釈度の平板について、コロニーの性状、コロニー数を観察する。BB536は円形、凸円状~半球状に隆起し、周縁、表面ともに円滑で濃褐色~淡褐色のコロニーを呈する。数個のコロニーからグラム染色標本を作製し、菌の形態を観察する。BB536はグラム陽性~弱陽性、やや湾曲した多形性桿菌を呈する。必要に応じて糖分解性状等の性状を調べBB536であることを確認する。
光岡知足:嫌気性菌の同定法. 腸内菌の世界、pp110-119叢文社、1980年 光岡知足:乳酸菌の細菌学. 臨床検査 18(11)1163-1172、1974年 (社) 全国はっ酵乳 乳酸菌飲料協会編:はっ酵乳・乳酸菌飲料中のビフィズス菌の検出と菌数測定法. pp1-12、1984年
研究1: BB536含有牛乳の過剰摂取試験1:BB536含有牛乳を12名の健常なボランティアに1日200 mL、1週間摂取させ、糞便フローラ、腸内腐敗産物及び腸内腐敗産物生成酵素活性を測定した本試験において、BB536を1日当たり2×1010 (200億、最小有用量の10倍) 摂取させた群 (5名) において、試験期間中に下痢・腹痛等のおなかの不調があったとは報告されていない (1) 。 研究2: BB536含有牛乳の過剰摂取試験2:BB536含有牛乳を排便不安定な高齢者18人に1日当たり100 mL (BB536 2×1010 最小有用量の10倍) を10日間摂取させ、糞便フローラ、排便回数及び便性状を測定した本試験において、排便回数の改善と腸管内でのBB536の増殖がみられたが、試験期間中に下痢・腹痛等のおなかの不調があったとは報告されていない (2) 。 研究3: BB536含有ヨーグルトの過剰摂取試験:BB536を含有するヨーグルトを10人の健常人に1日当たり130 g (BB536 1.3×1010以上) を3~6週間摂取させ、腸内菌叢の改善、腸内腐敗産物の生成抑制及び便性改善を検討した本試験において、整腸効果が確認され、かつ、試験期間中、下痢や腹痛などのおなかの不調は認められなかった。また、血清蛋白質、コレステロール、中性脂肪、GOT及びGPTは各摂取期及び試験期間中において異常値は認められず、また有意な変動は認められなかった。以上の結果より、BB536含有ヨーグルト1日130 g (BB536 1.3×1010以上) 摂取による安全性及び整腸効果が確認された (3) 。 研究4: 「ビヒダスプレーンヨーグルト」の過剰摂取試験:健常なボランティア6名に対してBB536含有ヨーグルトを1日当たり250 mL (BB536 5×109 50億個以上、最小有用量の2.5倍以上含有) 、2週間摂取させ糞便フローラ、便性状及び腸内腐敗産物等を調べた本試験において、整腸効果がみられたが、試験期間中に下痢・腹痛等のおなかの不調があったとは報告されていない (4) 。 研究5: BB536含有牛乳の長期摂取試験:腸内環境の改善による感染菌に対する抵抗力の影響を検討するために、抗癌剤投与した白血病患者にビフィズス菌製品 (BB536含有牛乳またはレベニン (ビフィズス菌製剤)) を3ヶ月以上経口摂取させ、糞便中のCandida菌数及びカンジダ症の発症率を検討した。 (方法) 100例の抗癌剤投与白血病患者のうち、糞便1 g当たりCandida菌数が105以上検出された49例を対象として、2群に分け (21名及び28名) 、28名にビフィズス菌製品を3ヶ月以上摂取させた。 (結果) ビフィズス菌製品を経口摂取させた結果、腸管内Candida 菌数が糞便1 g当たり104 以下に減少した場合に罹病率が低下した。以上の結果よりビフィズス菌製品の摂取により、抗癌剤投与患者の糞便中Candida 菌数の減少及びCandida 菌数の減少によるカンジダ症発症率の低下が観察され、ビフィズス菌製品摂取の有用性が示唆された。また、臨床上の問題は報告されていない (5) 。 研究6: BB536含有牛乳の長期摂取試験:抗癌剤や免疫抑制剤投与患者の腸内常在菌に対するBB536含有牛乳の摂取効果を検討した。 (方法) 60例の患者を2群に分け、28名にBB536含有牛乳200 mLを2~6ヶ月間経口摂取させ、糞便中のKlebsiella、Citrobacter、Pseudomonas、P.vulgaris及びCandidaの菌数を1ヶ月毎に測定した。 (結果) 対照とした健常者 (10例) では、糞便1 g当たりグラム陰性桿菌が106以上に増加した例はみられなかったが、牛乳非摂取患者 (32例) においてはPseudomonas等の菌数が25%及びCandida等の菌数が56%と増加していた。一方、BB536含有牛乳摂取により、Candida を含む数菌種の増加の抑制を認め、BB536含有牛乳摂取の有用性が確認された。また、臨床上の問題は報告されていない (6) 。
(1) Bioscience Microflora,16, 53~58 (1997) (2) 栄養と食糧、31,379~387 (1978) (3) Bifidobacteria Microflora,10,123~130 (1991) (4) Microbial Ecology in Health and Disease, 11, 41~46 (1999) (5) Bifidobacteria Microflora,7,71~74 (1988) (6) 医学と生物学、103,45~49 (1981)
研究1: Bifidobacterium longum BB536の毒性試験: BB536を凍結乾燥し、生菌として1 g 当たり1012を含有する菌末をICR系マウス (雌雄各10匹) に経口あるいは腹腔内に投与し、急性毒性試験を実施した。又、SD系ラット (雌雄各10匹) に上記の菌末を0.5%添加した飼料を摂取させて慢性毒性試験 (1年間) を実施した。経口による急性毒性試験では、技術的に可能な摂取限界量である53.51 g/kg (雄) 及び54.99 g/kg (雌) においても死亡例はなく、BB536の急性毒性は全く観察されなかった。尚、腹腔内投与におけるLD50は、0.53 g/kg (雄) 及び0.56 g/kg (雌) と算出された。慢性毒性試験においては、試験群の雌雄各4匹、対照群の雄5匹及び雌4匹が死亡したが両群では差がみられず、BB536による中毒死は認められなかった。毒性試験終了時の生存例の病理学的検査において、試験群及び対照群ともに肺及び腎の変化がみられたが、投与したBB536との因果関係はないものと考えられた (1) 。
(1) 応用薬理、17,881~887 (1979)
研究1: BB536含有牛乳の有効性試験:20~28歳の女性40人を対象に2×109のBB536含有牛乳を3週間摂取させ、排便回数および便性状に対する効果を検討した結果、プラセボ期に比し、排便回数の増加及び便の軟便化、便の色の黄色化傾向が認められた (1) 。 研究2: BB536含有ヨーグルトの有効性試験1:10名のボランティア (22~50歳、男5名、女5名) に3週間のウォッシュアウト期間を挟んでBB536含有ヨーグルト (375 g/日) またはプラセボヨーグルトをエリスロマイシン (1日当たり2 g) と共に3日間摂取させ、糞便重量及び回数、腹痛の状態及び腸内フローラを調べた結果、エリスロマイシンとBB536ヨーグルトの併用摂取によりプラセボヨーグルトの併用摂取で発生した胃腸不良の頻度を減少させ、クロストリジウム属の検出頻度も摂取前8例から摂取後1例と減少した。以上の結果より、BB536ヨーグルトが抗生物質摂取により発生した腸内フローラの変調を改善することが示唆された (2) 。 研究3: 「森永カルダス」の有効性試験:「森永カルダス」を1日当たり180 mL (BB536 2×109 以上含有) を43名の便秘傾向の健常者 (32~53歳の女性) に2週間摂取させ、プラセボ期 (BB536不含牛乳) と比較した結果、排便回数の増加が観察された。また、便性状の好転傾向が認められた (3) 。 研究4: BB536含有ヨーグルトの有効性試験2:BB536を含有するヨーグルトを1日130 g (BB536 1.3×1010以上) を10名のボランティア (20~60歳、男5、女5) に3週間のウォッシュアウト期間を挟んで3~6週間摂取させた結果、便性状の好転、糞便1 g中のBifidobacteria菌数の増加、糞便1 g中のアンモニア含量の減少が確認された (4) 。
(1) Bioscience Microflora,16, 53~58 (1997) (2) The Lancet, July 4,1987,2(8549) (3) 健康・栄養食品研究、4(2)1-6, (2001) (4) Bifidobacteria Microflora,10,123~130 (1991) その他の関連資料: Bioscience Microflora,16, 73~77 (1997) Microbial Ecology in Health and Disease, 11, 41~46 (1999) 健康・栄養食品研究、1 (3/4), 1~6 (1998)
研究1: 無菌マウスとBB536単独定着マウスにE.coli O-111生菌体を投与又はエンドトキシンを静脈内に投与した結果、BB536定着マウスの生存率は有意に高く、BB536定着により大腸菌やエンドトキシンの毒性が軽減されることが確認された (1)。
(1) Bifidobacteria Microflora 155-59,1982。