もくじ
- カルシウムとは?
- カルシウムの供給源になる食品
- カルシウムの特性 (単位・化学的安定性)
- カルシウムの吸収や働き
- カルシウム不足の問題
- カルシウム過剰摂取のリスク
- カルシウムはどのぐらい摂取すればよいの?
- カルシウムの摂取状況
- 栄養機能食品としての関連情報
- 関連情報
カルシウムとは?
カルシウムは古代から石灰 (炭酸カルシウム) として利用されてきたミネラルです (1) 。カルシウムは、ミネラルの中で最も多く体内に含まれ、体重の1~2%を占めています。そのうち99%は歯と骨に存在し (2) 、残りの1%は血液や細胞外液などで血液凝固や心機能、筋収縮などに関与し、体内で重要な役割を担っています (3) 。しかし、近年の国民健康・栄養調査の結果が示すように、日本人のカルシウム摂取量は目標を充たしていないため (2) 、積極的に摂取することが大切です。カルシウムは乳・乳製品、魚介類、大豆製品、種実類、藻類などに多く含まれます。
カルシウムの供給源になる食品
主な食品のカルシウム含有量は以下の通りです(4) 。
植物性食品
食品名 | 1食あたり の重量(g) |
カルシウム(mg) | |
1食あたり | 100gあたり | ||
生揚げ | 75 | 180 | 240 |
木綿豆腐 | 150 | 140 | 93 |
小松菜(ゆで) | 80 | 120 | 150 |
絹ごし豆腐 | 150 | 113 | 75 |
だいこん葉 (ゆで) | 50 | 110 | 220 |
チンゲンサイ(ゆで) | 80 | 96 | 120 |
いりごま | 5 | 60 | 1,200 |
ひじき(ステンレス釜ゆで) | 60 | 58 | 96 |
こんにゃく | 125 | 54 | 43 |
切り干し大根(乾) | 10 | 50 | 500 |
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)
動物性食品
食品名 | 1食あたり の重量(g) |
カルシウム(mg) | |
1食あたり | 100gあたり | ||
煮干し | 15 | 330 | 2,200 |
低脂肪牛乳 | 200 | 260 | 130 |
ししゃも干物(焼き) | 60 | 228 | 380 |
普通牛乳 | 200 | 220 | 110 |
さば缶詰(みそ煮) | 90 | 189 | 210 |
うるめいわし丸干し | 30 | 171 | 570 |
ほっけ開き干し(焼き) | 80 | 144 | 180 |
オイルサーディン | 40 | 140 | 350 |
プロセスチーズ | 20 | 126 | 630 |
アイスクリーム(高脂肪) | 90 | 117 | 130 |
※オイルサーディン:いわし缶詰(油漬)
※ししゃも干物:からふとししゃも(別名 カペリン)
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)
カルシウムの特性 (単位・化学的安定性)
カルシウムは元素記号Ca、原子番号20、原子量40.08の銀白色の軟らかい金属です。化合物としては一般に無色のイオン型結晶で存在します。カルシウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、酢酸塩などは水に溶けやすく、フッ化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、多くの有機酸塩などは、水に溶けにくい、もしくは溶けないという性質を持ちます (5) 。
カルシウムの吸収や働き
食品から摂取したカルシウムは小腸で吸収されます。小腸上部では活性型ビタミンDの作用により吸収され、小腸下部では濃度の差による受動輸送で吸収されます(3)。カルシウムの吸収率は、乳児期・思春期・妊娠後期で特に高くなります。また、カルシウムの吸収率・吸収量は、摂取量や食品に含まれる成分によって影響を受けます (2) (3) 。カルシウムの摂取量が多ければ吸収量・尿中排泄量は増加します。逆にカルシウムの摂取量が少なければ吸収率は上昇し、尿中排泄量は低下します (1) 。したがって、カルシウムは1食で集中的に摂取するよりも、何食かに分けて摂取するほうが効率よく摂取することができます (6) 。カルシウムの吸収を阻害する物質として、野菜に含まれるシュウ酸や、穀物に含まれるフィチン酸が知られており、多量の脂質もカルシウムの吸収に悪影響を与えるといわれています (1) 。
カルシウムは骨および歯の主要構成成分であるとともに、神経筋興奮、血液凝固、生理活性物質の分泌、筋肉の収縮・伸長・興奮性の抑制、酵素反応、ホルモンや神経伝達物質の放出反応、ホルモンの細胞内情報伝達作用など、生命を維持する上で重要な生理機能の調節を担っています。これらの反応を正常に行うため、血液中のカルシウム濃度はビタミンD 、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、エストロゲン、男性ホルモンなどによって、一定 (9~12 mg%) に保たれています。血中濃度は厳格に調節されているため、カルシウムの摂取が不足し、血中濃度が低下すると、骨からの溶出量が増加します。この現象は骨吸収と呼ばれています (1) 。
カルシウム不足の問題
カルシウム不足はどのようにして起こるの?
カルシウム不足は、食事からの摂取不足や腸からの吸収不良によって起こります。カルシウムの吸収にはビタミンDを必要とするため、ビタミンD不足により、カルシウム不足が引き起こされることもあります (1) 。
カルネシウムが不足すると、どのような症状が起こるの?
長期に渡ってカルシウムが不足すると、小児のくる病、骨量減少症、骨粗鬆症などを引き起こします。また、高血圧、動脈硬化、認知障害、免疫異常、糖尿病、肥満、腫瘍、軟骨の変性と変形性関節症など、多くの疾病を引き起こす可能性もあります (1) (6) 。また、極度の不足により、筋肉の痙攣が起こることがあります (6) 。
カルシウム過剰摂取のリスク
健康な人が通常の食事からカルシウムを過剰に摂取しても健康障害が発生することは稀ですが、サプリメントなどの利用による過剰摂取で、泌尿器系結石、ミルクアルカリ症候群、他のミネラルの吸収抑制などが起こることが知られています (2) 。また、カルシウムの摂取は他のミネラルとのバランスが重要ですが、カルシウムの過剰摂取により、マグネシウムやリン酸などの吸収が妨げられることがあります。理想的な摂取量の比は、カルシウム:マグネシウムは2:1、カルシウム:リンは1:1と考えられています。
カルシウムはどのぐらい摂取すればよいの?
各年齢別のカルシウムの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2020年版) は以下の通りです (2) 。
<カルシウムの食事摂取基準 (mg/日) >
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢等 | 推奨量 (RDA) |
目安量 (AI) |
耐容 上限量 (UL) |
推奨量 (RDA) |
目安量 (AI) |
耐容 上限量 (UL) |
0~5 (月) | – | 200 | – | – | 200 | – |
6~11 (月) | – | 250 | – | – | 250 | – |
1~2 (歳) | 450 | – | – | 400 | – | – |
3~5 (歳) | 600 | – | – | 550 | – | – |
6~7 (歳) | 600 | – | – | 550 | – | – |
8~9 (歳) | 650 | – | – | 750 | – | – |
10~11 (歳) | 700 | – | – | 750 | – | – |
12~14 (歳) | 1,000 | – | – | 800 | – | – |
15~17 (歳) | 800 | – | – | 650 | – | – |
18~29 (歳) | 800 | – | 2,500 | 650 | – | 2,500 |
30~49 (歳) | 750 | – | 2,500 | 650 | – | 2,500 |
50~64 (歳) | 750 | – | 2,500 | 650 | – | 2,500 |
65~74 (歳) | 750 | – | 2,500 | 650 | – | 2,500 |
75以上 (歳) | 700 | – | 2,500 | 600 | – | 2,500 |
妊婦(付加量) | +0 | – | – | |||
授乳婦 (付加量) | +0 | – | – |
推奨量 (RDA,recommended dietary allowance)
ある性・年齢階級に属する人々のほとんど (97~98%) が1日の必要量を充たすと推定される1日の摂取量。
目安量 (AI,adequate intake)
ある性・年齢階級に属する人々が、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。
(特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量)
耐容上限量 (UL,tolerable upper intake level)
ある性・年齢階級に属するほとんど全ての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
カルシウムの摂取状況
2019 (令和元) 年の国民健康・栄養調査では男性で平均517 mg/日、女性で平均494 mg/日摂取しています (7) 。
栄養機能食品としての関連情報
カルシウムは基準値を満たした場合に栄養機能食品として表示することができます。
- 下限値:204 mg、上限値:600 mg
- 栄養機能表示
「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。」 - 注意喚起
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」
栄養機能食品の表示に関する基準の詳細についてはこちらの資料をご参照ください。
関連情報
- カルシウムの有効性について、個々の研究結果は「素材情報データベース<有効性情報>【カルシウム】」をご覧下さい。
- ミネラルについての解説:一覧
- ビタミンについての解説:一覧
参考文献
(1) ミネラルの辞典:朝倉書店
(2) 日本人の食事摂取基準 2020年版
(3) 健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック:第一出版
(4) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(5) 理化学辞典 第5版:岩波書店
(6) 専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社
(7) 令和元年 国民健康・栄養調査報告