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健康食品の「有効性」情報の見極め方 ~信頼できる確かな情報とは~

更新日:2021/03/26

もくじ

 

 世の中には健康に関する情報があふれていて、テレビやインターネットで、「ある食品 (健康食品・サプリメント) を食べたら〇〇の効果があった」といった情報をよく耳にします。それらは体験談から研究報告まで玉石混交です。
 なかでも「わずか1カ月で体重〇kg減少」といった具体的な数字がある宣伝や広告をみると、「たぶん専門家が行った研究だろう」「研究された結果なら信頼できそうだ」と思われがちです。しかし、一口に「研究」といってもさまざま* で、人を対象とした研究においても、研究の種類によって情報の確からしさが異なります。
 そこで今回は、有効性情報の証拠となる研究の種類を説明し、信頼できる確かな情報がどのような研究で検討された結果に基づく情報であるのかをご紹介しましょう (*「その情報は「確かな情報」ですか?」もご参照ください) 。

 

 「研究の種類」はいくつかあり、さらにそれぞれの研究には様々な研究方法があります。それぞれの研究方法のことを「研究デザイン」と呼んでいます (図1)。図の上にあるものほど、人での有効性を示すための信頼度の高い研究デザインとされています。

 

図1

図1の画像

 

 たとえば、 「ヨーグルトを食べたらおなかの調子がよくなった」という事例を見てください (図2) 。この場合、「ヨーグルトを食べる」ことを 「曝露 (原因) 」と言い、「おなかの調子がよくなった」ことは「結果」にあたります。

 

図2

図2の画像

 

この事例のような情報が信頼できるかどうかは、原因とその結果との関係 (因果関係) を証明できる能力が高い研究デザインで検討したかがポイントになります。

 次の2つのポイントが妥当であるほど、原因と結果の因果関係を証明する能力が高い研究デザインです。証明能力にあわせて情報の信頼度も高くなります。

  • ポイント1. 必ず先に「原因」があって、その後に「結果」がくる
  • ポイント2. 結果を比べるためのグループ (対照群) がある

 

 では、上の2つのポイントがなぜ重要であるのかについて詳しく説明しましょう。
例えば、あるグループに対して、今現在、お腹の調子が良い人がどの程度いるのか調べてみたところ、ヨーグルトを毎日摂取している人の方が、摂取していない人に比べてお腹の調子が良いと回答しました。しかし、この情報だけではヨーグルトの摂取による効果か知ることはできません。このような事例の研究デザインは、記述研究であり、原因と結果との関係を調べることはできません。

 因果関係を示すには、比較するための対照群の設定が大事です。もし、「ある健康食品をとった後にお腹の調子がよくなった」ということが事実であっても、その健康食品をとらなくてもある一定数の人は自然にお腹の調子が良くなっている場合もあります。また、健康食品を摂取しているからと、それだけで調子がいいと感じる人もおり (プラセボ効果と言います) 、健康食品による効果なのかどうかを明らかにすることは不可能です。

 これら2つのポイントを考慮した上で、研究デザインの種類と情報の信頼度の順を図1にまとめました。
研究デザインの特徴を、「▼もっと詳しく知りたい方はこちら」を参照ください。

 

 一般的に、観察研究より介入研究で得られた結果が信頼できる確かな情報です (図1)
 さらにメタ分析 (メタアナリシス) は、複数の結果を統合した研究であることから、最も信頼度が高い情報と言われています。

 

 あふれる健康情報のなかで、効果があると聞くと期待してしまうものです。しかし、それら情報の研究の種類や研究デザインはさまざまです。すぐに飛びつくのではなく、その情報の背景を探りましょう。信頼できる確かな情報か判断ができない場合は、健康サポート薬局の薬剤師や栄養士、健康食品に関するアドバイザリースタッフに相談してみましょう。

 

■主な研究の種類とその特徴

権威者や個人の意見 (研究ではない)

 「権威者の●●教授が〇〇の健康食品は便秘解消に効果があると言っている」といった権威者の意見や、「〇〇を摂取したら便秘が改善した」といった個人の意見は、1人の意見や考えであり、具体的な研究に基づかない情報の場合もあります。本当にその健康食品に効果があるのか、はっきりしていない場合も多いです。

 

基礎研究

 「動物に〇〇を与えたら△△が改善した」などの動物や試験管内で行った基礎研究の結果は、動物と人では生物学的な違いがあるため、人で同じような効果が得られるとは限りません。まずは、その効果がきちんと人で認められているものであるのか確認するようにしましょう。

 

観察研究
  • 症例報告

 個人について、症状や兆候、経過、追跡調査などをまとめて報告することです。1人に対する結果なので、ほかの人がとったときにどうなるかは分かりません。

例) サプリメントをとって、やせた人が1人いた

 

  • 記述研究

 記述研究とは、集団の状態を正確に客観的に把握することです。この研究デザインでは、「曝露 (原因) 」と「結果」の関係性を明らかにすることはできません。

例)国勢調査

 

  • 症例対照研究

 症例対照研究とは、過去を振り返って原因を探す研究です。「曝露 (原因) 」と「結果」に何らかの関係を探ることはできますが、過去の「曝露」状況を思い出す際に記憶があいまいだったり、結果に影響を与える他の要因を取り除くことが難しかったりします。

例) やせた人とやせなかった人のグループで、過去に〇茶を飲んだ人の割合を調べた

 

  • コホート研究

 コホート研究とは、未来 (または過去) に向かって「曝露群」と「非曝露群」を追跡調査して期待する「結果」の発生を観察する方法です。「曝露 (原因) 」と「結果」の関係を明らかにすることができます。しかし、長期間の追跡のため対象者が途中で転居により追跡できない場合もあります。また、結果に影響を与える他の要因を管理することは難しく、そのため「結果」の発生状況は正確とは言えません。

例) ある健康食品をとる人ととらない人の各100人を20年間、追跡調査した

 

介入研究

  • クロスオーバー試験

 クロスオーバー試験とは、研究参加者をいくつかのグループに分け、各グループに別々の試験を行った後に、各グループの試験内容を交換して再度評価する方法です。ただし、前の試験条件の影響が次の試験条件の結果に影響を与える可能性があります。

例) 参加者100人に対して、ある健康食品を1カ月間摂取させた前後の体重変化を調べる。一定期間経過した後 (ウォッシュアウト) 、今度は対象食品を1カ月間摂取させた前後の体重変化を調べ、健康食品を摂取した時と比較する

 

  • 無作為化比較試験 (RCT)

 無作為化とは、”ランダムに“という意味です。研究参加者を試験群または対照群のいずれかにランダムにふり分ける方法です。無作為化することで、明らかにしたい曝露 (原因) 以外の要因 (年齢、性別など) が両群で均等になり、グループの性質が同質になります。無作為化比較試験は、結果をゆがめる要因を排除でき、比較可能性を高めます。

例) 研究参加者100人をある成分入りのサプリメントをとるグループととらないグループのいずれかにランダムにふり分けた後、やせた人の割合をグループ間で比較する

 

メタ分析 (メタアナリシス)

 複数の結果を統合する研究です。
 たとえば、研究報告が1つある場合よりも、複数の研究の積み重ねによってより信頼できる確かな情報となります。

 

参考資料
  • 基礎からわかる看護疫学入門 (医歯薬出版株式会社)
  • 「医療統計」わかりません! (東京図書)
  • 一般社団法人日本疫学会 (疫学用語の基礎知識)

 

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