センナやその類似植物を含む製品が、「おなかスッキリ」「ダイエットに」などという謳い文句で販売されています。こうした製品の中には、「食品だから安全」といった宣伝もあるようです。そこで、センナとその類似植物について、現時点で分かる範囲の情報を作成してみました。[文中の ( ) つき番号は、文末の参考文献一覧に該当します。]
目次
1.センナとゴールデンキャンドル(1)(2)(3)(4)
植物の名称には、和名、英名、学名のほか通称などが使われることもあり、一つの植物にいくつもの名前が付けられています。また、これとは逆に数種類の植物を同じ名前で呼ぶこともあり、とても混乱してしまいます。植物の種類を判断するときには、和名や通称名ではなく、学名をチェックすることを覚えておきましょう。学名が同じであれば、和名や通称名が異なっていても、同じ植物を指しています。 センナとその類似植物の学名を下の表にまとめました。センナと呼ばれる植物と、ゴールデンキャンドル、ゴールドブッシュ、ハネセンナなどと呼ばれる植物は見た目も含めて非常に良く似ていますが、学名が異なるため、別の植物であるといえます。
和名、英名、その他の呼称 |
学名 |
アレキサンドリアセンナ、センナ |
Cassia acutifolia |
チンネベリセンナ、センナ、ホソバセンナ |
Cassia angustifolia |
ゴールデンキャンドル、ゴールドブッシュ、ハネセンナ |
Cassia alata |
2.センナと食薬区分 (1) (2) (3) (5) (6)
センナは古くからその小葉が生薬として用いられてきました。生薬のセンナとは、アレキサンドリアセンナ (Cassia acutifolia Delile.) またはチンネベリセンナ (Cassia angustifolia Vahl.) の小葉で、有効成分としてセンノシドAおよびBを1.0%以上含むものと規定され、瀉下薬として使用されています (6) 。日本では、食薬区分で果実・小葉・葉柄・葉軸が「医薬品」に該当するため、食品に使用することは禁止されています (5) 。
もし、センナのこれらの部位を無断で使用した場合、それは「食品」ではなく「無承認無許可医薬品等」に該当し、薬事法に抵触する「違法製品」となります。ただし、センナの茎の部分は「非医薬品」に分類されていますので、食品に使用することが出来ます。センナ (茎以外) が含まれた製品の摘発事例は、下記を参照してください。
- 医薬品成分 (センナ葉等) が検出されたいわゆるダイエットティーについて (20060405)
- 医薬品成分を添加した食品 (無承認無許可医薬品) の過去の事例の情報1
- 台湾衛生署が摘発した違法食品
3.使用に当たっての注意 (7) (8)
センナが含まれる健康茶やいわゆる健康食品には、食品に使用できる茎の部分が入っていると考えられます。しかし、センナの茎 (形態学的には1年枝の部位) にも、小葉の薬効成分と同様のセンノシドA,Bが含まれています (7) 。また、センナの類似植物であるゴールデンキャンドルの小葉・葉軸・茎・花などにも、センノシドA,Bが含有されていることが報告されています (8) 。
したがって、食薬区分では「非医薬品」に該当する部位や植物であっても、瀉下作用があるセンノシドA,Bが含まれていれば、その摂取量や摂取した人の感受性などにより、ひどい腹痛や下痢などの有害事象の原因となる可能性が否定できません。もし、センナやゴールデンキャンドルなどを含む食品を使用する場合は、適量かつ短期間の摂取とし、万が一下痢などの症状が出た場合は直ぐに中止するなど、慎重に対応することが賢明といえそうです。
参考文献
(1) 牧野和漢薬草大図鑑 北隆館
(2) 中薬大辞典 小学館
(3) 世界薬用植物百科事典 誠文堂新光社
(4) 有用植物和・英・学名便覧 北海道大学図書刊行会
(5) 「医薬品の範囲に関する基準」別添3 (平成16年3月31日 薬食発第0331009号 厚生労働省医薬食品局長)
(6) 第15改正日本薬局方
(7) Functional Food,2008,1(2),192-195
(8) 日本薬学会年会要旨集,2009,129(3),259