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【第14回】妊娠とサプリメントの利用について

カテゴリー:専門家に聞きました
更新日:2023/08/22

共立女子短期大学 生活科学科 准教授 佐藤陽子

もくじ

  1. はじめに
  2. 妊活中
  3. 妊娠中
  4. 授乳中
  5. おわりに

 

1. はじめに

妊娠・出産は女性の人生において、とても大きな、そして特別なイベントです。元気な赤ちゃんを産み、健やかに育てたいと願うのは、どの女性にも共通の想いでしょう。妊娠を望んでいる女性や妊娠中の女性は、そのためにたくさんの情報収集を行なうことと思います。昨今は、インターネットやSNSによる情報収集が主流となっており、そこでは、様々なサプリメント製品が紹介されています。

今回は、妊娠・出産に向けてサプリメントを利用する際に知っておいて欲しい基本的なことについてご紹介します。
(本記事では、サプリメントとは、錠剤・カプセル・粉末・シロップなどのおくすりと同じような形状の健康食品のことをいいます。)

2.妊活中

妊娠に関する情報を収集したり、妊娠に向けて体調管理や準備をしたりする「妊娠活動」が妊活とよばれ、妊活中の女性を対象とした妊活サプリメントと称する製品が数多く出回っています。
妊活サプリメントには、あたかも妊娠しやすくなる効果が期待できるような印象を与える宣伝広告が目立ちますが、現時点で妊娠率の向上が科学的に証明されたサプリメントはありません。
妊活サプリメントに用いられている成分には、ビタミンCやビタミンE、葉酸などのビタミンや、亜鉛や鉄などのミネラルの他、DHAやEPA、α-リポ酸、コエンザイムQ10のような生体成分、生姜やウコン、ナツメのような生薬成分、マカやスピルリナなどの天然素材など多岐にわたりますが、ヒトが食事から必ず摂取しなければならない成分はビタミンとミネラルに限られます。そして、このビタミンやミネラルの多くは食生活を整えることで充分に摂取することが可能です。

妊活サプリメントの広告でも、よく読めばビタミンやミネラルの摂取の重要性を謳ったものがほとんどです。まずは、食生活を含めた生活習慣の見直しと改善が何より大切です。
ビタミン・ミネラル以外の成分は、サプリメントとして摂取する必要性は不明です。特に、「天然」「自然」を強調した製品は、その安全性が不明なものが多いので避けたほうが良いでしょう※1。また、生薬と同名の成分であっても、食品であるサプリメントに使用されている場合、生薬または漢方薬とは異なりますので同等の効果は期待できません。

※1 安全性についての正しい考え方については、第4回「健康食品の安全性」が参考になります。

 

 

このような中、唯一、サプリメントの利用が推奨されている成分があります。それが、水溶性ビタミンの一つである葉酸です。

葉酸 は細胞の増殖に必要なDNAの合成に必要な栄養素であり、妊娠の初期に母親の体内に充分な葉酸があると、胎児の神経管閉鎖障害という先天異常の発生リスクを下げることができます 。

葉酸はビタミンですので、通常の食事から摂取することができますが、食事から摂取する天然型の葉酸は体内での利用率が悪く、神経管閉鎖障害を予防できる充分な量を摂取するのはとても大変です。そこで、合成型の葉酸をサプリメントや食品添加物として摂取することが勧められています。
胎児の神経管が出来上がる時期は、まだ妊娠に気付いていない人が多い程の妊娠初期ですので、妊活中(妊娠1ヶ月以上前)から妊娠3ヶ月までの間、合成型の葉酸を400μg/日摂取することが推奨されています (1) 。
ただし、たくさん摂れば摂るほど良いというわけでもありません。摂り過ぎた場合、中枢神経障害や腸管障害、アレルギーなどの原因となりますので、1,000μg/日を超えないように注意しましょう。サプリメント製品を選ぶ際に注意したいのは、葉酸サプリメント中に、葉酸以外に何が入っているか?です。
前述のとおり、安全性の不明確な成分が混合されていないものを選ぶと良いでしょう。

 

3.妊娠中

妊娠中は、母親のからだだけでなくお腹の子どもへの栄養補給も大切です。胎児期の栄養状態は、その子の出生後の健康に成人期まで影響を与えることが分かってきました。妊婦を含めた日本人女性の栄養状態は、人によりますが、エネルギー、カルシウム、鉄、葉酸などが不足しがちです (2) 。

これらの栄養素の不足分を補う目的でサプリメントを利用することは許容できると考えられます。
特に、妊娠初期のつわり等で食事の摂取が困難な時などは、上手に利用すると良いでしょう。
また、妊娠初期には妊活中からの葉酸の継続摂取が勧められています。

なお、子どものアレルギー予防のために勧められる科学的根拠が充分なサプリメントはありません。製品選択時の注意点は妊活中と同じです。加えて、妊娠初期はビタミンAの過剰摂取に注意が必要です。
ビタミンAの過剰摂取には催奇形性が報告されていますので (3) 、ビタミンA含有のサプリメントは利用しないようにしましょう。

その他に妊娠中は注意すべきものとして、ハーブティーおよびポリフェノールが挙げられます。
ハーブティーの中には「安産によい」などといわれているものもありますが、多くのハーブティーの中には高用量のポリフェノールが含まれています。
近年、国内では妊娠後期のポリフェノール摂取による胎児動脈管早期収縮が増加傾向にあると報告されています。胎児は早期に動脈管が収縮してしまうと、心不全や肺高血圧症、死亡などをきたす可能性があります。これは、ポリフェノールによる動脈管拡張作用の阻害が原因と考えられていますが、詳細はまだ不明な部分が多く、安全に摂取できるポリフェノール量は分かっていません (4) 。

ポリフェノールは、ハーブの他、ベリー類やプルーン、コーヒー、カカオ、野菜などにも多く含まれます。「ポリフェノールはからだに良い」という情報を多く目にすると思いますが、妊娠後期には摂り過ぎないように注意し、ポリフェノール含有サプリメントの利用は避けてください。

4.授乳中

授乳中は妊娠中と同様、妊娠前よりも多くの栄養素が必要となりますが、安易にサプリメントに頼るのではなく、まずは食事から数多くの食材を用いて摂取することを最優先とすべきです。
ビタミン・ミネラルを含むサプリメントの利用による母乳への移行はわずかな量であり、子どもへの影響も少ないと考えられていますが、ビタミン・ミネラル以外のサプリメントについては充分なデータがありませんので、利用は控えるほうが望ましいとされています (4) 。

授乳中の摂取に注意が必要な成分には、カフェインがあります。母親が摂取したカフェインはその0.06〜1.5%程度が母乳中に移行します。乳児の場合、成人よりもカフェインの体内除去能力が低く、長い時間カフェインにさらされることになります。母乳へ移行したカフェインにより子どもの不眠、不機嫌、いらいらなどが報告されています。また、乳児突然死症候群との関連も指摘されていますので、カフェイン含有サプリメントの利用は避けましょう (4) 。

なお、妊娠中と同様、科学的根拠の明確な、子どものアレルギー予防のために勧められるサプリメントや母乳量の増加のために勧められるサプリメントなどは、ありません.

5.おわりに

妊活中から妊娠中、授乳中にかけて、子どもの健康のために何か特別なことをしなければ不安になってしまうかもしれませんが、実際は、全期間を通してバランスの良い食事を心がけ、食を含めた生活習慣全体を整えることが何よりも大切です。サプリメントの利用には、各時期に注意すべき点を踏まえ、冷静に考慮する姿勢が求められます。

 

文献

(1)厚生労働省:神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な女性に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html

(2) 厚生労働省:令和元年国民健康・栄養調査報告
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html

(3) 厚生労働省:日本人の食事摂取基準
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html

(4) 周産期医学. 2022; 52 (増刊号) :92-206

 

佐藤陽子 (さとう ようこ)
2000年共立女子大学家政学部卒業、2011年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。
共立女子短期大学、国立健康・栄養研究所 (現、医薬基盤・健康・栄養研究所) 、城西大学を経て、2023年より現職。

 

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