難消化性デキストリンはでん粉由来の水溶性食物繊維であり、低粘性・低甘味で水溶液はほぼ透明。耐熱性・耐酸性に優れており、様々な食品に応用しやすい。ミネラルの吸収阻害はなく、FDA (米国食品医薬品局) のGRAS (Generally Recognized As Safeの略称.米国における食品安全性に関する審査制度) にリストされた安全性の高い素材である。
食事由来の脂質は、腸内で消化吸収される過程でリパーゼにより分解された後胆汁酸などと共にミセルとなり腸内を移動するが、難消化性デキストリンを食事と同時に摂取することにより、ミセルの崩壊が抑制される。その結果、ミセルからの脂肪酸やモノグリセロールの放出を抑制することで脂質の吸収を遅延させ、便量増加によって便中への脂質排泄量を促進させることにより、食後血中中性脂肪の上昇を抑制する。
(1) Y. Kishimoto et. al, J. Health Sci.,55(5), 838-844(2009)
低分子水溶性食物繊維を含む食品に適用される酵素-HPLC法 (1) に準じ、下記の操作を行う。 1. 酵素処理液の調製:各種酵素により炭水化物およびたんぱく質の消化を行う。 2. 高速液体クロマトグラム用溶液の調製:イオン交換樹脂によりイオン性不純物質(たんぱく質、有機酸、無機塩類等)の除去を行い、難消化性デキストリンを濃縮する。 3. 高速液体クロマトグラムで定量:得られた高速液体クロマトグラムより三糖類以上の画分中の難消化性デキストリン画分を求める。
(1)AOAC 2001.03:Journal of AOAC International, 85,2,435-444(2002)
研究1:空腹時血中中性脂肪が30 mg/dL~200 mg/dLであった成人男女29名を対象とした2群ランダム化二重盲検並行群間比較試験を行った。被験飲料(当該食品)または難消化性デキストリンを含まない対照飲料を1日1回12週間摂取させ、摂取開始前、摂取4、8、12週後および16週後(後観察期)に診察、採血、採尿を行った。理学的検査、血液学的検査、血液生化学的検査を行った結果、いずれの項目においても臨床上問題となる所見は認められなかった。なお、吸収阻害が心配される脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE)に関しても問題となる変動はみられず、長期摂取による安全性に問題がないことが確認された(1)。 研究2:空腹時血中中性脂肪が30 mg/dL~200 mg/dLであった成人男女29名を対象とした2群ランダム化二重盲検並行群間比較試験を行った。被験飲料(当該食品)または難消化性デキストリンを含まない対照飲料を摂取目安量の3倍に相当する量を1日1回、4週間摂取させ、摂取開始前、摂取後2、4および6週(後観察期)に診察、採血、採尿を行った。理学的検査、血液学的検査、血液生化学的検査を行った結果、いずれの項目においても臨床上問題となる所見は認められなかった。なお、吸収阻害が心配される脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE)に関しても問題となる変動はみられず、過剰摂取による安全性に問題がないことが確認された(1)。
(1) 高橋ら、薬理と治療、42(1),35-45(2014)
研究1:大腸菌とネズミチフス菌を用いた遺伝子突然変異試験の結果、いずれの指示菌株においても復帰突然変異コロニー数は増加しなかったことより、変異原性に関しては陰性であることが確認された(1)。 研究2:雄性ICR系マウスを用いた急性毒性試験の結果、難消化性デキストリンは経口投与による死亡例を認めず、本試験における最大投与量である20 g/kg体重以上のLD50値を有すると推定された(1)。 研究3:生後5週齢の雄性ラットに水道水(対照)および難消化性デキストリン製剤パインファイバー20%(食物繊維として11.6%)、パインファイバーC 20%(食物繊維として18.3%)、10%(食物繊維として9.2%)、5%(食物繊維として4.6%)水溶液を与え5週間飼育した後、各臓器の重量測定および血清成分の分析を行った。 各群の体重に差異はなく、また内容物込みの盲腸重量はパインファイバーおよびパインファイバーC摂取群で増加がみられたものの、その他の臓器および脂肪組織重量は各群に差異はなかった。また、血清総コレステロールとトリグリセリド (中性脂肪) は難消化性デキストリン製剤摂取群で低下がみられたが、その他の血液生化学検査値については5群間で差異はなかった(2)。
(1)若林ら, 食品衛生学雑誌, 33(6), 557-562 (1992) (2)若林ら, 日本栄養・食糧学会誌, 44(6), 471-478 (1991)
研究1:成人男女10名を対象に、難消化性デキストリン5 gを配合した清涼飲料水あるいはプラセボ飲料を摂取期間10日間、非摂取期間11日間のクロスオーバーで摂取させ、各飲料摂取期間中の最後3日間で便を採取し、便中に排泄された脂肪量を測定した。その結果、難消化性デキストリン摂取期間では便重量及び便中脂肪量が増加した(1)。 研究2:空腹時血中中性脂肪が120 mg/dL~200 mg/dLの成人男女80名を対象に、難消化性デキストリンを食物繊維として5 g含有する被験飲料(当該食品)、あるいは難消化性デキストリンを含まない対照飲料を、負荷食品(ハンバーグ、フライドポテト、パン、バター/脂肪量42.5 g)と同時に摂取させ、摂取後の血中中性脂肪およびRLP-コレステロールなど血中脂質の経時的変化を比較した。その結果、当該食品摂取2、3、4時間後の中性脂肪およびRLP-コレステロールは対照飲料と比較して低い値を示し、当該食品は高脂肪食と同時に摂取することにより、食後血中中性脂肪上昇抑制作用を示すことが確認された(2)。
(1) Y. Kishimoto et. al, J. Health Sci., 55(5), 838-844(2009) (2)高橋ら、薬理と治療、41(11),1061-8(2013)
研究1:ラットに難消化性デキストリン2.5%、5%配合した高脂肪食を5週間摂取させ、飼育期間最後の糞便を回収し、糞便中の中性脂肪量を測定した。その結果、難消化性デキストリンの用量依存的に便中に排泄される脂質量が対照群より増加した(1)。 研究2:難消化性デキストリンの脂肪の消化吸収の過程に対する影響をin vitroで評価した。その結果、難消化性デキストリンはリパーゼの活性に影響は及ぼさないことが確認された。しかし、脂肪酸とモノグリセロールを混合しタウロコール酸を添加した擬似的なミセル溶液に難消化性デキストリンを添加したところ、難消化性デキストリン非存在下では時間の経過とともにミセルの崩壊が見られたのに対し、難消化性デキストリン存在下では油層は認められず、ミセルが保持され脂肪酸やモノグリセロールの放出が抑制されていた(1)。
(1) Y. Kishimoto et. al, J. Health Sci., 55(5), 838-844(2009)