大豆たん白質の70%以上を占めるグリシニン及びコングリシニンの大豆グロブリン系たん白質は優れた乳化特性、水和特性、粘弾性、ゲル形成能等を持っている
大豆たん白質の血清コレステロール濃度低下作用のメカニズムは、大豆たん白質が消化される段階で疎水性の強いたん白質加水分解物ができ、腸管内で胆汁酸等と結合して吸収を抑制し、余剰ステロール類を体外に排出して、血清コレステロール濃度を正常範囲に保つことが示されている。
山本文男、日本食品工業学会誌、26、266~277、1979. Sugano,M.et al., Atherosclerosis,72,115~122,1988.
酵素イムノアッセイ法
Christopher C. Hall et al., J. Assoc. Publ. Analysts 25 1 (87)
研究1: 高コレステロール血症を持つ閉経後の女性66名を対象に、分離大豆たん白質食及び乳たん白質食を用いた6ヶ月間の摂取試験を行った。方法は、並行2重盲検法による臨床試験で試験食を3群(A:ISP56/分離大豆たん白質食(イソフラボン56mg含有 B:ISP90/分離大豆たん白質食(イソフラボン90mg CNFDM/カゼイン及び脱脂粉乳食)に分けてたん白質として40g/日を摂取した。対照期間14日間、試験食6ヶ月とした。その結果、分離大豆たん白質食群では乳たん白質食群に対して有意に血清脂質の改善がみられ、摂取中の体の変調も見られなかった。1日あたり40gもの大豆たん白質の摂取を6ヶ月間継続しても体の変調が見られなかった(1)。 研究2: 大豆たん白質またはカゼイン含有低コレステロール食の摂取が正常血清脂質濃度者の血清脂質に及ぼす影響について検討した。肥満でない正常血清脂質濃度者(26~68歳)10名に、蛋白質20%、脂肪28%、コレステロール100mgを含む大豆蛋白食(大豆たん白質140g/日)またはカゼイン食を、クロスオーバーで1カ月間ずつ摂食させた。(両食事間に1ケ月の通常食を挟む、クロスオーバーデザインによる臨床試験)その結果、健常者に対してはさらなる血清コレステロールの低下を引き起こさず、LDLコレステロールのみ低下させた。また、大豆たん白質140g/日を1ヶ月間摂取し続け、健康が維持されていた(2)。
(1) Baum,J.A. et al. Am.J.Clin.Nutr., 68, 545~551, 1998. (2) Meinertz,H.et al., Atherosclerosis, 72, 63~70, 1988.
研究1: 食餌カゼインを大豆たん白質に代替することにより、寿命及び加齢による病理学的変化に及ぼす食餌たん白質の影響について検討した。方法は、Fischer344系雄ラットを用いて、カゼイン群計172匹(寿命試験60匹、交差試験90匹、モニター)、分離大豆たん白質食計112匹(寿命試験60匹、交差試験30匹、モニター)とし 食事組成は、たん白質21%(カゼインまたは分離大豆たん白質)、自然死に至るまでを期間終了とした。その結果、2年以上に渡るラットの飼育において、たん白質源を大豆たん白質のみとしてもラットに大きな異常は見られず、逆にカゼイン群に比べ、腎炎の発症率が抑えられ、寿命も長かった(1)。 研究2: たん白質の摂取量増加及び種類の差が加齢に伴うCa及びMg出納に及ぼす影響について検討した。Fischer系雌ラット(5週齢)24匹を6匹/群の4群に分け、たん白質含量(カゼイン又は分離大豆たん白質)20%または、40%食、試験食期6カ月で試験した。結果は、CaとMgの吸収率でたん白質の種類による差は認められなかった。大豆たん白質はカゼインに比べCa及びMgの尿中排泄率を低くし、Caの体内保留率は有意差はないものの、大豆たん白質食群の方が高い傾向を示した(2)。
(1) Iwasaki,K. et al., J.Gerontology, 43, B5-B12, 1998. (2) 阿左美章治ら、栄養学雑誌、47、103-112、1989.
研究1: スタチン治療に抵抗性あるいは不耐性を示したことのある、重度の高コレステロール血症患者21名に対し、牛乳と豆乳との摂取試験で、2重盲検法を用いたクロスオーバーデザインによる臨床試験を行った。その結果、豆乳の摂取により、総コレステロール、LDLコレステロール濃度が摂取前に対し、有意に減少した。豆乳の摂取による総コレステロール及びLDLコレステロールの減少は牛乳の摂取に対しても有意であった。牛乳も若干の血清コレステロールの減少を示したが、有意なものではなかった。試験期間を通してHDLコレステロール、中性脂肪値に特に変化はなかった(1)。 研究2: 豆乳の摂取が、総コレステロールが200mg/dl以上の血清コレステロール高値者の男性14名(52.9±11.3歳)に対する血清脂質に及ぼす影響について検討した。方法は、当該食品を用いたその他のデザインによる臨床試験(対照のないヒト試験)を実施した。その結果、大豆たん白質として1日6gを摂取することで、総コレステロール、non HDLコレステロール、LDLコレステロール及びLDL/HDL比の有意な低下が認められた。大豆たん白質摂取量が6g/日で血清コレステロールの改善効果(LDLコレステロール及びLDL/HDL比の有意な低下など)が確認された。摂取期間中、試験食は毎日摂取され、体調不良を起こした症例はなく、4週間を通じて摂取率は良好、血液生化学値も異常値を示すことはなかった(2)。
(1) Sirtori CR et al., Br. J. Nutr., 82, 91-96, 1999. (2) 秋岡 壽ら、健康・栄養食品研究 3(3)、37-46、2000.
研究1: 豆乳と発酵豆乳が、コレステロール無添加食又は添加食を与えたハムスターの血清脂質、肝脂質、糞中ステロイド排泄に及ぼす影響について調べた。方法は雄ハムスター(5週齢)36匹を6郡に分け、対照食をカゼインとして調整食期7日、試験食期7日で動物試験を実施した。その結果、豆乳と発酵豆乳の摂取により、コレステロール無添加群では血清VLDL+LDLコレステロール値が有意に低下し、コレステロール添加群では血清総、VLDL+LDLコレステロール値が有意に低下した。コレステロール無添加群、添加群の両方で、胆汁酸排泄量が増加し、コール酸合成系に入るコレステロールの割合が増加した。しかし、中性ステロイド排泄には影響なかった(1)。 研究2: 豆乳及び醗酵豆乳の摂取が乳癌発生及び血清脂質に及ぼす影響について検討した。方法は4週齢のSD系雌ラット129匹を4郡に分け、A:コントロール(イオン交換水)、B:豆乳、C:無調整牛乳、D:醗酵豆乳、E:醗酵牛乳を自由摂取させ、摂取期間20週間とした その結果、豆乳、醗酵豆乳の両群の血清総コレステロールは牛乳、ヨーグルトの両群より有意に低値を示した(コントロール:91.6mg/dl、豆乳:82.2mg/dl、醗酵豆乳:90.8mg/dl、牛乳:110.4mg/dl、ヨーグルト:105.4mg/dl)。コレステロール摂取量は実験群間で差がないため、豆乳摂取が血清コレステロールを低下させたものと推定される(2)。
(1) Kikuchi-Hayakawa H. et al., Br.J.Nutr., 79, 97-105, 1998 (2) 柳 進ら、大豆たん白質研究会会誌、18、120-124、1997.