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【第21回】GMPとは

カテゴリー:専門家に聞きました
更新日:2024/12/19

星薬科大学薬学部 創薬科学科長、薬品分析化学研究室 教授(現職)
国立医薬品食品衛生研究所 名誉所員、客員研究員

穐山 浩(あきやまひろし)

もくじ

  1. はじめに
  2. 基本的な考え方
  3. GMP組織
  4. 製品標準書等
  5. 原材料及び中間品の供給者の管理
  6. 製造管理
  7. 品質管理
  8. 出荷管理、バリデーションの実施
  9. 製造手順等の変更、逸脱の管理
  10. 品質情報の管理
  11. 自己点検および文書管理
  12. 構造設備の構築(GMP ハード)

 

1.はじめに

いわゆる「健康食品」の錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の食品(健康食品)は、原材料等に関して安全性確認がなされていても、濃縮等の工程を経ることにより個々の製品の偏りが生じ、必ずしも確認された安全性レベルが保証されない等の可能性があるので、製造工程管理による製品の品質の確保を図ることが必要です。そのため定められた品質規格に適合することを確認するだけでなく、製造する過程についても適切に管理し、品質の良い優れた製品を恒常的に製造する必要があります。このような最終製品を製造するための要件をまとめたものがGMP(Good Manufacturing Practice)であり、日本語では「製造管理及び品質管理の基準」と表現されております。

原材料等の安全性に関しては、その原材料を用いて製造された製品の食経験に関する情報を収集し、十分な食経験があるかを確認します。食経験がない原材料に関しては、その原材料と基原となる材料に関して文献検索により安全性・毒性に関する情報を収集し、最終製品の摂取量も考慮して安全性を評価します。食経験や文献情報収集に基づいて安全性を担保できない場合は、安全性試験を実施する必要があります。

 

2.基本的な考え方

健康食品製品について、適正な製造及び品質確保を図るためには、最終製品で不良品が生じる前に、各製造段階において不良品が生じないようなチェックを行うシステムを構築していく必要があります。つまり、原材料の受け入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、主に作業員、機械等による製造行為に着目した製造管理と、原材料、中間製品、最終製品の試験等、品質の確認行為に着目した品質管理を組織的に実施する必要があります。これらを実施するには、次の3つの観点から管理システムを構築することが重要です。

  1. 各製造工程における人為的な誤りの防止
  2. 人為的な誤り以外の要因による製品そのものの汚染及び品質低下の防止
  3. 全製造工程を通じた一定の品質の確保

これらについて、適切な管理組織の構築及び作業管理(品質管理、製造管理)の実施 (GMP ソフト)と、適切な構造設備の構築(GMP ハード)とに分けて以下に示します。

 

3.GMP組織

GMP組織を図に示します。製造業者は、総括管理者の下に、製造管理部門の責任者として製造管理責任者を、品質管理部門の責任者として品質管理責任者を置きます。総括管理者は製造管理責任者を兼ねられません。また、製造管理責任者は品質管理責任者を、品質管理責任者は製造管理責任者を、それぞれ兼ねられません。

4.製品標準書等

製造業者は、製造所ごとに、製品標準書、製造管理基準書、衛生管理基準書、品質管理基準書、手順書等を作成し、それらを製造所に適切に備え置きます。また、製造所の構造設備は、上記の書類に沿って製造管理、衛生管理、品質管理をするために、適合する必要があります。

 

5.原材料及び中間品の供給者の管理

製品の製造等に用いる原材料は、製品標準書の規格に適合したものを使用します。製造業者等は、製品標準書等に基づき、原材料をロットごとに適正に保管し出納を行うとともに、その記録を作成し、これを保管します。

 

6.製造管理

製造業者等は、次に掲げる製品等の製造管理に係る次の1~9を適切に行います。

  1. 製品標準書等に基づき、製品の製造等の工程における指示事項、注意事項等を記載した製造指図書を作成し、それに基づいて製品を製造する。製造指図書は原則としてロットごとに作成し、必要事項を記載します。
  2. 同等性及び均一性が確認された原材料を用いて、製品標準書の規格に基づき管理を行うとともに、最終製品においても均一化し、規格に定められた範囲を確保します。
  3. 製品の製造等に関する記録をロットごとに作成し、これを保管します。
  4. 製品の容器包装及び表示が適正であることをロットごとに確認し、その記録を作成し、これを保管します。
  5. 製品についてはロットごとに、容器包装資材については管理単位ごとに適正に保管し出納を行うとともに、その記録を作成し、これを保管します。
  6. 構造設備の定期的な点検整備及び計器の校正を行うとともに、その記録を作成し、これを保管します。
  7. 製品等の製造、保管及び出納並びに衛生管理に関する記録により製造管理が適切に行われていることを確認します。
  8. 製品設計時に定めた製品の規格に適合させるために、他の物質を追加又は混合する場合は、その量を明記しておきます。同じ基原材料の異なるバッチを混合する場合、同種の基原材料で異なるロットの中間品を混合する場合は、追跡できるように工程記録を保管するとともに、必要に応じて規格に適合しているか試験を行います。
  9. その他必要な製造管理を行います。

 

7.品質管理

製造業者等は、品質管理責任者に、製品標準書等に基づき、次の1~7の製品等の品質管理に係る業務を適切に実施させます。

  1. 製品等はロットごとに、容器包装及び表示は管理単位ごとに試験検査に必要な検体を採取するとともに、その記録を作成し、これを保管します。
  2. 採取検体をロットごと又は管理単位ごとに試験検査を行うとともに、その記録を作成し、これを保管します。
  3. 原材料がロットごとに均一化され、製品について、規格に定められた範囲を確保していることを確認します。
  4. 試験検査に関する設備及び器具の定期的な点検整備並びに計器の校正を行うとともに、その記録を作成し、これを保管します。
  5. 試験に用いる試薬、標準品等の使用期限を定め、適切に管理します。
  6. 製品等について、ロットごとに所定の試験検査に必要な量の2倍以上の量を参考品として、当該製品の消費期限等から起算して1年間適切な保管条件の下で保管します。
  7. その他必要な品質管理を行います。

 

8.出荷管理、バリデーションの実施

製造業者等は、総括責任者に、製品標準書等に基づき、製造管理及び品質管理の結果を評価させ、製品の製造所等からの出荷の可否を判定します。
製造業者等は、次の1~3の場合においては、バリデーションを行います。

  1. 製品の製造等を行う施設において初めて製造等を開始する場合。
  2. 製品の品質に大きな影響を及ぼす製造手順等の変更がある場合。
  3. 製品の品質に大きな影響を及ぼす製造手順等の変更がある場合。

 

この規定によるバリデーションの結果に基づき、製造管理又は品質管理の改善が必要な場合は、所要の措置を講ずるとともに、措置に関する記録を作成し、これを保管します。

 

9.製造手順等の変更、逸脱の管理

製造業者等は、製造手順等について、製品の品質に影響を及ぼすおそれのある変更を行う場合においては、製品標準書等に基づき、変更による製品の品質への影響を評価し、その評価の結果をもとに変更を行うことについて、品質部門の承認を受け、その記録を作成し、保管します。
また製造手順等からの逸脱が生じた場合は、製品標準書等に基づき、次の1~5の措置を実施します。

  1. 逸脱の内容を記録します。
  2. 重大な逸脱が生じた場合の品質影響の評価及び評価内容に応じた措置を行います。
  3. 職員は、評価の結果及び措置について記録を作成し、保管するとともに、品質部門に対して報告します。
  4. 報告された評価の結果及び措置について、品質部門の承認を受けます。
  5. 品質部門は、製品標準書等に基づき、上記により確認した記録を作成し、 保管するとともに、上記の記録とともに、総括責任者に対して文書により適切に報告します。

 

10.品質情報の管理

製造業者等は、製品の品質情報を得たときは、製品標準書等に基づき、その品質情報に係る事項の原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合においては、改善する措置を講じます。その品質情報に係る事項の内容、原因究明の結果及び改善措置の記録を作成し、これを保管します。

 

11.自己点検および文書管理

製造業者等は、製造等の製造管理及び品質管理について、定期的に自己点検を行います。
また、製造業者等は、製品の製造等に関して、製品標準書等に基づいて、文書及び記録の管理を適切に行います。

 

12.構造設備の構築(GMP ハード)

構造設備は次の要件が必要です。

  1. 作業室は、作業に支障のない広さを持ち、例えば表示包装作業室では、ラベルの貼り違いを防ぐために異品目の作業台の間に仕切りをしたり、十分な間隔をとったりすることにより、混同等の間違いを防ぐことができるような広さと構造をもつこと。
  2. 粉塵等によって製品が汚染されることを防ぐことができること。
  3. 作業室を専用化するなど、交叉汚染を防止できること。
  4. 作業室の床、壁、天井等の材質は清掃しやすいものであって必要に応じて消毒ができること。
  5. 製品の製造に使用する機械器具及び容器等で特に原材料、製品等に直接接触する部分は、製品を変化させない材質のものであり、製造機械は潤滑油により製品を汚染しない構造となっていること。
  6. 作業室及び機械設備が、製造工程の順序に従って合理的に配置されていること。
  7. 手洗い設備及び更衣室を有すること。
参考資料
  1. 「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)」及び「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」について」(令和6年3月11日付け健生食基発第0311第2号)
  2. 穐山浩, いわゆる「健康食品」の品質確保の重要性について, 臨床栄養, 145, 866-871 (2024).

 

穐山 浩(あきやまひろし) 略歴

1993年 国立衛生試験所(現国立医薬品食品衛生研究所)食品部研究員
1999~2000年 科学技術庁長期在外研究員としてカナダ・オンタリオ州マックマスター大学医学部留学
2001年 国立医薬品食品衛生研究所 食品部 第3室長
2007年 同所 代謝生化学部 第2室長
2011年 同所 食品添加物部長
2015年 同所 食品部長
2021年4月~  星薬科大学薬学部 創薬科学科長、薬品分析化学研究室教授 薬品物理化学研究室教授(兼任)(現職)
(台北医科大学客員教授、東京大学農学部非常勤講師、立命館大学薬学研究科非常勤講師)

 

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