■注意喚起および勧告内容
2021年12月30日、シンガポールHSA (Health Science Authority) が医薬品成分 (デキサメタゾンなど) を含む5製品 に注意喚起。当該製品との因果関係が疑われる健康被害が3件報告されている。
X-Gout | デキサメタゾン インドメタシン パラセタモール ピロキシカム |
dcr Natural Herbs Honey Enzyme | パラセタモール |
KMS2 Dark Chocolate Mocha Botanical Beverage | スルファメトキシジアジン テトラカイン |
Speedy Slim Capsules (Black) | シブトラミン |
Speedy Slim Capsules (Gold) |
■解説
ウェブサイトやソーシャルメディアを通じて販売されていた当該製品との関連が疑われる健康被害の報告と消費者からの通報を受け、シンガポールHSAが検査したところ、医薬品成分が検出された。
・40代女性が、インターネットで販売されていた「X-Gout」を友人の勧めで膝痛の緩和を目的に1年間摂取したところ、急激な体重増加と息切れ、下肢の浮腫を生じ、糖尿病と診断された。当該製品を検査したところ、デキサメタゾンなどの医薬品成分が検出されたため、ステロイドの副作用によるクッシング症候群と診断された。
・40代男性が、「dcr Natural Herbs Honey Enzyme」を6か月摂取したところ、クッシング症候群を発症した。摂取を中止したところ、食欲不振、活力低下、発疹などの離脱症状を生じた。当該製品のサンプルからパラセタモールが検出されたが、男性の症状から長期摂取による副作用が考えられたため、当該製品の他のバッチにおける他の医薬品成分の混入が疑われた。
・1名 (性、年齢不明) が、脂肪燃焼と代謝促進をうたって販売されていた「KMS2 Dark Chocolate Mocha Botanical Beverage」を数日間摂取したところ、心拍数上昇、のどと口内の渇きなどを生じた。
また、著しい体重減少効果をうたってソーシャルメディアで販売されていた「Speedy Slim Capsules (Black)」および「Speedy Slim Capsules (Gold)」に関する通報を受けて検査したところ、シブトラミンが検出されたため、シンガポールHSAは当該製品を押収した。
シンガポールHSAは、消費者に対し、「KMS2 Dark Chocolate Mocha Botanical Beverage」、「Speedy Slim Capsules (Black)」、「Speedy Slim Capsules (Gold)」を使用している場合はすぐに使用を中止するように、また、ステロイドを含む2製品を使用している場合は、離脱症状を防ぐため自己判断で中止せず医療機関を受診するように勧告し、大げさに有効性をうたう健康製品を使用しないよう注意を促している。
■関連成分■
デキサメタゾン (dexamethasone)
抗炎症作用が強く、作用の持続時間もステロイドの中で最も長い薬物。抗炎症や免疫抑制に使用されるが、糖尿病やムーンフェースなどの副作用が起こる可能性がある。連用後、急に服用を中止すると重篤な離脱作用が起こることがあり、連用後の服用中止時には、徐々に減量するなど注意が必要な医薬品。
インドメタシン (indomethacin)
非ステロイド性抗炎症薬の代表的薬物。強い抗炎症、鎮痛、解熱作用を示す。副作用として悪心・嘔吐、食欲不振等があげられる。
パラセタモール (paracetamol、別名:アセトアミノフェン acetaminophen)
非ピリン系の解熱鎮痛薬で、過量投与により重篤な肝障害が起こることがある。様々な一般用医薬品に含まれているため、市販薬を含め併用薬に注意が必要。
ピロキシカム (piroxicam)
非ステロイド抗炎症薬として国内でも承認されている医薬品。一般的に関節リウマチ、変形性関節症などの関節痛に使用。副作用としては胃腸障害や吐き気、胃痛や出血などが知られており、消化性潰瘍またはその既往歴のある患者には禁忌。ワルファリンやアスピリンと併用すると作用を増強する可能性があり、注意が必要。
テトラカイン (tetracaine、amethocaine)
国内では、テトラカインの塩酸塩(塩酸テトラカイン)が医薬品として承認されている。
【適応】麻酔
【副作用】ショック(血圧降下、不整脈)、振戦・痙攣 等
シブトラミン (sibutramine)
シブトラミンは、1997年に肥満抑制薬としてアメリカFDAの許可を受けたが、日本では未承認。副作用として血圧上昇および心拍数増加などが報告され、心臓病の方は服用を避けたほうがよいとされている。アメリカ国内ではFDAの許可後、2003年8月までに54例の死亡事例 (うち30例は心血管が原因) が報告された。2005年8月、FDAはシブトラミンの使用停止に関する消費者団体の請願書に対し、シブトラミンの使用に細心の注意を呼びかけ、その安全性を監視することにより、引き続き医薬品として承認していくことを公表した。しかし、心血管疾患歴のある患者では心血管疾患再発リスクが高くなるという欧州で実施されたSCOUT試験 (Sibutramine Cardiovascular OUTcome Trial) の結果をうけ、2010年10月、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでメーカーによる任意回収が決定。開発したメーカーはすでに販売・流通を中止している。2010年11月、インド医薬品規制当局 (Drugs Controller General of India、DCGI) も販売を禁止した。
■関連情報
シンガポールHSAウェブページ (2021年12月30日、英語) →「HSA Alert: Five Products Detected to Contain Potent Adulterants; Three Consumers Experienced Serious Adverse Effects Including Diabetes」
外国製健康食品の入手や個人輸入等についての注意事項等→「健康食品や医薬品、化粧品、医療機器等を海外から購入しようとされる方へ (厚生労働省作成2012年版) 」