純粋な酢酸は、刺激臭の臭気、酸味をもつ無色の液体で、皮膚を侵す。分子量60.05、融点16.635℃、沸点117.8℃、比重d20=1.0492、pKa=4.56(20℃)。水溶液は弱酸性で、そのpHは2.4(1M)、2.9(0.1M)。
【関与成分の構造式】 |
ラットに放射線標識された高分子微粒子を導入して血流量や血管抵抗値を分析する手法により、酢酸を静脈注入すると、濃度依存的に血流量の増加および血管抵抗値の低下が確認された。そして、この効果がアデノシン受容体遮断剤の共存によって抑制されることから、アデノシンを介した作用であることが明らかにされた(1)。また、ラット尾部の動脈組織を用いたアルギニンバソプレッシンによる血管収縮作用は、酢酸を添加することにより抑制される(2)。さらに、カテーテルを用いて酢酸を犬の静脈に注入し、血流量や血管抵抗値を測定すると同時に筋肉中のアデノシン量を測定した結果、酢酸を静脈内注入した試験群で酢酸の量に比例してアデノシン量が上昇した。また、血流増加および血管抵抗値の低下が血中のアデノシン濃度と相関があった(3)。以上より、酢酸の血管拡張効果により、血圧降下作用をもたらすと考えられる。
(1)F.J.Carmichael et al, Am. J. Physiol., 255, G417-G423 (1988) (2)J.T.Daugirdas et al, Kidney International, 32, 39-46 (1987) (3)R.P.Steffen et al, Am. J. Physiol., 244, H387-H395 (1983)
電気伝導度検出器を用いた高速液体クロマトグラフィーを行う。定性は酢酸標準品を同一条件下で分析を行い、リテンションタイムより同定する。また、定量は標準品をもとに、クロマトグラム上に出現したピークの面積値より算出する(1)。
(1) 高速液体クロマトグラフ 有機酸分析システムデータ集, (株)島津製作所
研究1: 健常者12名(男女各6名)を対象に、酢酸750mgを含む飲料(100ml/本)を1日1本、14週間にわたって飲用する安全性評価試験を行ったが、収縮期・拡張期の血圧共に変動がなく、心拍数、体重においても有意な変動は見られなかった。血液・尿検査の結果、臨床上、問題となる異常変動はみられなかった(1)。 研究2: 健常者12名(男女各6名)を対象に、酢酸750mgを含む飲料(100ml/本)を1日3本、4週間にわたって飲用する安全性評価試験を行ったが、収縮期・拡張期の血圧共に変動がなく、心拍数、体重においても有意な変動は見られなかった。血液・尿検査の結果、臨床上、問題となる異常変動はみられなかった(2)。 研究3: 健常者12名(男性10名、女性2名)を対象に、酢酸1500mgを含む飲料(100ml/本)を1日3本、4週間にわたって飲用する安全性評価試験を行ったが、収縮期・拡張期の血圧共に変動がなく、心拍数、体重においても有意な変動は見られなかった。血液・尿検査の結果、臨床上、問題となる異常変動はみられなかった(2)。 研究4: 軽症および中等症高血圧者35名(男性22名、女性13名)を対象に、酢酸750mgを含む飲料(100ml/本)、または、酢酸1500mgを含む飲料(100ml/本)を1日1本、8週間にわたり摂取させた。血液検査値、尿検査値および身体的測定において臨床的に問題となる異常変動は認められなかった。また、消化器症状、空咳、皮膚症状、アレルギー症状などの副次作用も認められなかった(3)。 研究5: 正常高値血圧者および軽症高血圧者67名(男性33名、女性34名)を対象に、酢酸750mgを含む飲料(100ml/本)を1日1本、10週間にわたって摂取させた。血液検査値、尿検査値および身体的測定において臨床的に問題となる異常変動は認められなかった。また、消化器症状、空咳、皮膚症状、アレルギー症状などの副次作用も認められなかった(4)。
(1) ㈱ミツカングループ本社社内資料(2002) (2) 岸幹也ら, 日本臨床栄養学会雑誌,27,313-320 (2006) (3) 梶本修身ら, 健康・栄養食品研究,4(4),47-60 (2001) (4) 梶本修身ら, 健康・栄養食品研究,6(1),51-68 (2003)
研究1: マウスを対象に、4%酢酸水溶液、米酢を経口単回投与した。 4%酢酸水溶液のLD50は、米酢同様21.5ml/kgであり、死因は上部消化管に対する障害作用に基づくことが認められた。しかし、10ml/kg以下の容量では消化管の異常は肉眼的に全く認められなかった(1)。 研究2: マウスを対象に、4.5%酢酸水溶液を経口単回投与した。 4.5%酢酸水溶液のLD50は、12.5ml/kgであった。死因は、胃および十二指腸粘膜の出血、充血、びらんなど上部消化管障害による衰弱であると思われた。急性毒性は、2倍希釈液で減弱した(2)。 研究3: 塩酸+エタノールで胃粘膜障害を誘起したラットに0~1%の酢酸水溶液1mlを、単回もしくは4週間(1日2回)連続投与した。その結果、0.3~1%の低濃度酢酸は単回もしくは1ヶ月連続投与によって、塩酸+エタノールの障害から胃粘膜を保護する作用が強化された。低濃度の酢酸水溶液の胃内適用により、胃粘膜血流の増大を引き起こすが、解析の結果、酢酸が胃粘膜に対してマイルドな刺激剤として保護的に作用することが判明した(3)。
(1) 谷澤久之ら, 日本栄養・食糧学会誌,36,283-289 (1983) (2) 中山貞男ら, 基礎と臨床,27,3107-3115 (1993) (3) 河内 正二ら, Pharmacol Ther (薬理と治療) 28,473-480 (2000)
研究1: 軽症・中等症の高血圧者51名(男性31名、女性20名)を対象に、3群比較2重盲検試験を行った。3群にはそれぞれ、酢酸750mgを含む飲料(100ml/本)、酢酸1500mgを含む飲料(100ml/本)、プラセボ飲料を1日1本、8週間にわたり摂取させた。その結果、750mg酢酸摂取群では、収縮期血圧変化量において、摂取6週間後より、プラセボ群と有意差を認めた。1500mg酢酸摂取群では、収縮期および拡張期の血圧変化量において、摂取4週間後より、プラセボ飲用群と有意差を認めた(1)。 研究2: 正常高値血圧者および軽症高血圧者98名(男性48名、女性50名)を対象に、3群比較2重盲検試験を行った。3群にはそれぞれ、酢酸750mgを含むリンゴ酢飲料(100ml/本)、酢酸750mgを含む黒酢飲料(100ml/本)、プラセボ飲料を1日1本、10週間にわたり摂取させた。その結果、リンゴ酢および黒酢摂取群の収縮期血圧は、対照群と比して2週後および6~10週間後まで継続して有意な低値を示した (2)。
(1) 梶本修身ら, 健康・栄養食品研究,4(4),47-60 (2001) (2) 梶本修身ら, 健康・栄養食品研究,6(1),51-68 (2003)
研究1: 5週齢の高血圧自然発症ラット(SHR、n=6)に、水(対照)、酢酸水溶液(酢酸4.62%)、食酢(酢酸4.62%含有)を6%添加した飼料を8週間自由摂取させた。その結果、酢酸水溶液と食酢の両群では、対照群に比べて5週間摂取以降で有意に血圧が低かった。また、酢酸水溶液と食酢の両群間には有意差はなかった(1)。
(1) S. Kondo et al, Biosci.Biotechnol.Biochem., 65, 2690-2694 (2001)