化学式:C12H22O11 分子量:342.30構造式:4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-フルクトース溶解度:30℃ 76.4%、60℃ 81.0%、90℃ 86.0%甘味度:蔗糖の48~62%融 点:168.5~169.0℃旋光度:-51.4度 (20℃)
【関与成分の構造式】 |
難消化性であって、ヒトには消化、吸収されずに大腸まで到達し (1) 、そこに棲息するビフィズス菌および乳酸菌により利用され (2) 、有用なビフィズス菌および乳酸菌を増殖させて腸内菌叢を改善し、便pH低下、便水分含量の調節等の便性を改善し (3) 、排便回数を改善する (4,5,6) 。
(1) 神戸医大紀要 20328-338,1960 (2) Bifidobacteria Microflora 5(1):27-35,1986 (3) Microbial Ecology in Health and Disease 5:43-50,1992 (4) 薬物療法 9(2):57-63,1976. (5) 診断と治療 63:171-174,1975. (6) Journal of the American Geriatrics Society 26(5):236-239,1978
示差屈折率検出器付高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いてラクチュロースの試験を行う。1) 定性試験:試験溶液とラクチュロース標準溶液を同一条件下でHPLCにより分析し、クロマトグラム上のリテンションタイムで同定する。2) 定量試験:HPLCを用いて、絶対検量線法にて行う。同一容量のラクチュロース標準溶液および試験溶液をHPLCに注入し、ラクチュロース含量はその相当する面積比より求める。
財団法人日本健康・栄養食品協会 「特定保健用食品試験検査マニュアル」
研究1: 「毎朝爽快」の摂取試験:ラクチュロースを配合した清涼飲料水を排便回数及び便性状に関して無作為に抽出した健常な296名のボランティア (3 g摂取群155名、5 g摂取群141名、13~66歳) に摂取した結果、両群共に排便回数の増加と便性状の改善が認められた。また、その効果は5g 摂取群で強い改善効果であったが、「お腹がゴロゴロした」、「お腹が張る」等の出現頻度も同時に増加した。ラクチュロースの摂取量としては3 gと5 gの中間量が望ましいと考えられたので、当該食品「毎朝爽快」 (ラクチュロース1日当り4 g) を用い、健常成人8名 (25~45歳) を対象として、3週間摂取し、2週間のウオッシュアウト期間後プラセボ食を2週間摂取し比較検討した。その結果、「便秘でお腹が張った」人は減少し、「おならが頻発」した人が増加する傾向が認められた。その他重篤な症状等の異常はまったく観察されておらず、当該食品「毎朝爽快」の摂取は安全と判断された (1) 。 研究2: 医薬品としての適応量:1日19.5 g~39 g (3分服) 、小児には0.33 g~1.3 g/kg (3分服) となっている。副作用としては、5%以上として下痢 (水様便が引き起こされた場合には減量するか、又は中止する) 、0.1%~5%未満として悪心、嘔吐、腹痛、腹鳴、鼓腸、食欲不振等が報告されている。ガラクトース血症の患者[ガラクトース (13%以下) 及び乳糖 (7%以下) を含有する]には禁忌、糖尿病の患者[ガラクトース (13%以下) 及び乳糖 (7%以下) を含有する]には慎重投与となっている (2) 。
(1) Milchwissenschaft, 57(6) 312-315 (2002) (2) 財団法人日本医薬情報センター編 「医薬品 日本医薬品集 2004(第27版)2338頁」
研究1: 毒性試験:マウス、ラット、ウサギ、イヌを用いてラクチュロースの急性毒性試験を実施した。経口投与によるLD50はマウスのオスで31.0 g/kg、メスで34.7 g/kg、ラットのオスで25.1 g/kg、メスで27.5 g/kgであり、蔗糖に近いレベルであった。ラットを用いた6週間の亜急性毒性試験では12 g/kg/dayでは生体に不利益な変化は認められなかった。イヌを用いた12週間の亜急性毒性試験では6 g/体重kg/日であり、ヒトの体重に換算した場合には1日当り360 gに相当し、ヒトに対して常用量、3~20 g/日を継続投与しても中毒をきたすことはないと考えられる (1) 。 研究2: 催奇形性試験:初妊娠マウス及び初妊娠ラットに妊娠初期からラクチュロースを経口投与し、母体、胎仔及び出生後の乳児の観察を行った結果、母体の状態ならびに胎仔の発育、異常の発現及び出生後の成長の上でラクチュロースによる催奇形性の危険は無いと考えられる (2) 。
(1) 奥村ら、基礎と臨床 7(14)3517-3527(1973) (2) 五味ら、基礎と臨床 7(6):128-136(1973)
研究1: 「毎朝爽快」の摂取試験:当該食品「毎朝爽快」 (ラクチュロース1日当り4 g) を用い、健常成人8名 (25~45歳) を対象として、3週間摂取し、2週間のウオッシュアウト期間後プラセボ食を2週間摂取し比較検討した。その結果、糞便のBifidobacteriumの菌数及び占有率の増加、Bacteroidaceae及びClostridium othersの菌数及び占有率の減少等による腸内菌叢の改善、糞便の水分及び有機酸の増加、pHの低下、糞便中腐敗産物の減少、糞便中の腐敗産物生成酵素活性の低下による便性状の改善、並びに排便回数の増加等の整腸作用が確認された (1) 。 研究2: ラクチュロースの成人における有効性試験: 健常成人 (18~22歳) 8例にラクチュロースを1日3 g、2週間摂取させ、摂取前、摂取中、摂取後の糞便中の菌叢、腐敗産物、酵素活性、pH、水分含量、重量を測定した。その結果、摂取期間中、ビフィズス菌が増殖し、一方バクテロイデス及びレシチナーゼ陽性のクロストリジウムは減少し、菌叢の改善が認められた。また、インドール及びフェノールが減少し、スカトール、p-クレゾール、アンモニアも減少傾向を示した。β-グルクロニダーゼ、ニトロレダクターゼ活性は低下し、腐敗産物及び産生酵素活性の低下傾向が見られた。糞便pHは7.0から6.4に有意に低下し、水分含量及び糞便重量の増加も認められた (2) 。
(1) Milchwissenschaft 57(6)312-315(2002) (2) Microbial Ecology in Health and Disease 5: 43-50 (1992) その他の資料: 診療と新薬 10(5):75-79(1973) 理研腸内フローラシンポジウム3 腸内フローラと栄養 73-87(1983)
研究1: 便性改善作用の検討:マウスを用いた動物実験により、ラクチュロースの経口投与による緩下作用を検討し、軟便が生じること、50%軟便発現量は1.6 g/kgであること、排便数の増加並びに硫酸バリウムの排泄効果が見られること、糞便pHの低下が6.5 g/kg以上において見られること、また水分量は1.4 g/kg投与で盲腸及び腸管全体で増加し、4.4g/kgではさらに大腸の水分量も有意に増加することを観察した。さらに、ウサギ生体腸管を用いて筋放電の変動を指標としてみた腸管運動は、蔗糖に比較してより強く亢進されるとともに、より持続的であったと報告している (1) 。
(1) 柿本ら、産婦人科の世界 30(5)93-101(1978)