コーヒー中に含まれる代表的なポリフェノールとして、クロロゲン酸類が広く知られている。クロロゲン酸類は、一般に桂皮酸誘導体とキナ酸のエステル化合物と定義される。コーヒー中には主にカフェオイルキナ酸、フェルロイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸からなる9種類の化合物が含まれており、これらの総称をクロロゲン酸類とする。本品には関与成分としてカフェオイルキナ酸、フェルロイルキナ酸の主要6成分のクロロゲン酸類を270 mg含有し、ヒドロキシヒドロキノンを低減したコーヒー飲料である。
【関与成分の構造式】 クロロゲン酸類の代表的化合物名: 5-カフェオイルキナ酸 (5-CQA) ![]() |
クロロゲン酸類には、血圧改善効果 (降圧作用) が見いだされ (PMID:11924733) 、その機序は血管内皮機能の改善作用に基づくことが動物 (PMID:16685206) 及びヒト試験 (PMID:16820341) により明らかになった。コーヒー中には、降圧作用に十分量のクロロゲン酸類が存在するにもかかわらず、焙煎により血管内皮改善効果、血圧改善効果が消失することがわかり (PMID:16579992) 、コーヒー豆の焙煎により生成するHHQが、クロロゲン酸類の降圧作用を阻害することを明らかにした (PMID:17951035) 。また、クロロゲン酸類には体脂肪低減作用もあり、12週間継続摂取によりヒトの体脂肪の減少が認められ (2009211385) 、ヒトのエネルギー消費量、脂肪燃焼量の増加が確認された (2011149729) 。
(PMID11924733) Hypertens Res. 2002:25(1);99-107. (PMID:16685206) J Hypertens. 2006:24(6);1065-1073. (PMID:16820341) Clin Exp Hypertens. 2006:28(5);439-449. (PMID:16579992) FEBS Lett. 2006:580(9);2317-2322. (PMID:17951035) Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2008:18(6);408-414. (2009211385) 薬理と治療. 2009:37(4);333-344. (2011149729) J Health Sci. 2010:56(6);745-751.
関与成分 (クロロゲン酸類) は、クロロゲン酸類主要6成分 [3-カフェオイルキナ酸 (3-CQA) 、4-カフェオイルキナ酸 (4-CQA) 、5-カフェオイルキナ酸 (5-CQA) 、3-フェルロイルキナ酸 (3-FQA) 、4-フェルロイルキナ酸 (4-FQA) 、5-フェルロイルキナ酸 (5-FQA) ] の総量とし、高速液体クロマトグラフィーにより分析した (1) 。
(1) 社内報告書
研究1: 過剰摂取試験 降圧剤を服用していない血圧が高めの男女12名を対象に、クロロゲン酸飲料 (299 mg/本) を1日当たり3本、4週間継続する過剰摂取試験を実施した。その結果、被験者の体調変化や自覚症状等に関する日誌、および試験期間中の血液学・血液生化学検査値に関して、臨床上問題となる結果は認められなかった。摂取前後の血中のミネラル類 (鉄、マグネシウム、銅、亜鉛) の変化は、いずれも有意な変動は認められなかった。試験責任医師による判定を実施した結果、本品の過剰摂取により臨床上問題となる影響なし、との結果を得た (2007132637) 。 研究2: 過剰摂取試験 対象BMI 30.0 kg/m2未満の成人男女35名。 方法:市販品相当のコーヒーを対照飲料とした4週間継続摂取による無作為化割付二重盲検並行群間試験を実施した。試験は事前観察期間を約3週間、試験飲料摂取期間を4週間、事後観察期間を2週間設けた。事前観察期間中の検査後、被験者を2群 (クロロゲン酸飲料群:Active群と対照飲料群:Control群) に分けた。クロロゲン酸飲料は1本あたりクロロゲン酸類を297 mg含むコーヒー飲料とした。試験飲料摂取期間中、被験者はクロロゲン酸飲料 (内容量:185 g/本) もしくは対照飲料 (内容量:185 g/本) を1日3本4週間摂取した。検査項目は、自覚症状、血液・尿検査、および理学的検査とした。試験期間中、被験者には他のコーヒー飲料の摂取を禁止すると共に、生活習慣や運動習慣を変えないよう指導した。 結果:試験飲料摂取により、理学的検査項目や血液・尿検査項目に問題となる変動は認められなかった。被験者の自覚症状の記録より、消化器系、もしくは腎・泌尿器系に関する症状を訴えたActive群の4名とControl群の1名について、試験責任医師は試験飲料との因果関係を否定できないため、これら症状を副作用と判定した。しかし、それらは軽微で一過的であり、一般的なコーヒーを摂取したときにも認められる症状であったため、最終的に試験責任医師は、Active飲料の過剰摂取はControl飲料以上の安全性上の問題となる事象は認められなかったと評価した (2011175703) 。
(2007132637) 薬理と治療. 200634(11);1231-1237. (2011175703) 薬理と治療. 2010:38(9);825-832.
ヘルシアWコーヒー 無糖ブラックの関与成分クロロゲン酸類について、変異原性試験、単回投与毒性試験、反復投与毒性試験および催奇形性試験を行った結果、いずれの試験においても毒性は認められなかった (1) 。
(1) 社内報告書
研究1: 12週間継続摂取有効性試験 正常高値以上の血圧 (収縮期血圧130-159 mmHg、拡張期血圧85-99 mmHg) の男女の被験者100名に対して各試験飲料を毎日1本 (184 mL) 12週間継続飲用してもらい、血圧の測定を行った。「対照群」は、飲料1本当たりクロロゲン酸類0 mg、HHQ 0.02 mgで51名の被験者とし、「クロロゲン酸類群」は、飲料1本当たりクロロゲン酸類299 mg、HHQ 0.05 mgで49名の被験者とした。その結果、12週間の継続飲用によりクロロゲン酸類群は対照群に比べて収縮期血圧が低下することが明らかになった (2006318600) 。 研究2: 12週間継続摂取有効性試験 対象BMIが25 kg/m2以上30 kg/ m2未満でかつ、腹部の内臓脂肪面積 (VFA) が80 cm2以上170 cm2未満の成人男女109名。 方法:本試験は、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験法で実施した。試験は事前観察期間を4週間、試験飲料摂取期間を12週間、事後観察期間を4週間設けた。事前観察期間の開始時の測定後に、ランダムに被験者を2群 (クロロゲン酸飲料摂取群、プラセボ摂取群) に分けた。試験飲料摂取期間中、被験者はクロロゲン酸飲料またはプラセボ飲料のいずれかを1日1本摂取した。クロロゲン酸飲料はクロロゲン酸類297 mg含み、プラセボ飲料は、クロロゲン酸類を低減したコーヒー飲料とした。解析対象は、事前観察期間中に腹部脂肪面積の変化が少なかった者109名 (Per Protocol Set;PPS クロロゲン酸飲料摂取群53名、プラセボ摂取群56名) とした。検査項目は、腹部脂肪面積 (内臓脂肪面積、皮下脂肪面積 (SFA) 、全脂肪面積 (TFA)) 、理学検査項目として身長、体重、体脂肪率、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、血圧 (収縮期血圧、拡張期血圧) 、その他項目として、血液学検査、血液生化学検査、尿検査、および問診とした。検査は、試験飲料の摂取開始時を0週目として、-4週目、0週目、4週目、8週目、12週目、および16週目に実施した。 結果:〔腹部脂肪面積〕被験者109名 (PPS、クロロゲン酸飲料摂取群53名、プラセボ摂取群56名) について解析を行った。12wk時の0wkに対する変化量 (Δ12wk) に関して、クロロゲン酸飲料摂取群では-4.4 cm2、プラセボ摂取群では3.6 cm2となり、クロロゲン酸飲料摂取によるVFAの低減効果が認められた。またSFA、TFAに関してもクロロゲン酸飲料摂取群においてプラセボ摂取群と比較して減少が認められた。 〔理学検査項目〕体重、BMI、ウエスト周囲長、およびヒップ周囲長において、プラセボ摂取群と比較してクロロゲン酸摂取群に低減効果が認められた (2009211385) 。
(2006318600) Prog Med. 200626;1723-1736. (2009211385) 薬理と治療. 2009:37(4);333-344.
研究1: クロロゲン酸の単回摂取による血圧低下効果の検証 評価群は自然発症高血圧ラット (SHR) を6匹ずつ、4群調整し、生理食塩水のみの「Saline群」、クロロゲン酸は豊富でHHQを含まない「Without HHQ群」、クロロゲン酸は豊富だがHHQも含まれる「+HHQ 3 mg/kg群」、クロロゲン酸は豊富だがHHQを段階的に減らした「+HHQ 0.3 mg/kg群」と「+HHQ 0.03 mg/kg群」として、摂取12時間後の収縮期血圧を測定した。その結果、「Saline群」と比べて「Without HHQ群」、「+HHQ 0.03 mg/kg群」、「+HHQ 0.3 mg/kg群」は収縮期血圧の低下効果が観察されたが、生コーヒー豆抽出液と同等のクロロゲン酸を摂取したにもかかわらず「+HHQ 3 mg/kg群」の血圧低下効果はほとんど認められなかった。一方、焙煎コーヒー豆抽出液ではあるがHHQの除去処理を行うことで「焙煎コーヒー豆抽出液HHQ低減群」は「生コーヒー豆抽出液群」と同等の血圧低下効果が観察された。このことからクロロゲン酸には血圧低下効果はあるが、焙煎によるHHQの生成によって血圧低下効果が阻害されることが示唆された (PMID16579992) 。 研究2: コーヒーポリフェノール継続投与による体脂肪抑制効果検証 対象:C57BL/6Jマウス (食餌依存性肥満モデルマウス、6週齢、雄性) 、10匹×4群。 方法:摂取させる食餌によってマウスを4群に分け、低脂肪食群、対照群 (高脂肪・高蔗糖食) 、0.5%CPP群 (高脂肪・高蔗糖食にCPP (コーヒーポリフェノール) を0.5%添加した食餌) 、1%CPP群 (高脂肪・高蔗糖食にCPPを1%添加した食餌) とした。各群において15週間飼育した。飼育後に体重を測定し、対照群と0.5%CPP群および1%CPP群を比較した。 結果:対照群とCPP群で食餌の摂食量に差はなかった。対照群は食餌依存性の肥満を示したが、1%CPP群において体重増加の抑制が認められた (PMID:20943752) 。
(PMID16579992) FEBS Lett. 2006:580(9);2317-2322. (PMID:20943752) Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011:300(1);E122-133.