フラクトオリゴ糖はおなかの中の代表的な有用菌ビフィズス菌の餌になり選択的に代謝される。
【関与成分の構造式】 |
ヒトの腸内に棲む細菌は、ヒトのために良い働きをする善玉菌 (ビフィズス菌、乳酸菌など) と主に悪い働きをする悪玉菌、その他の中間菌に分けられます。日本人は食生活の変化により栄養価の高い食物 (高脂肪・高タンパク食) をとることが多くなり、それは腸内悪玉菌の増えやすい腸内環境の要因となっています。フラクトオリゴ糖を摂取することで、(1) 善玉菌がフラクトオリゴ糖を食べ、(2) 善玉菌が増え活性化し、(3) 善玉菌が有機酸を出し腸内のpHが低下し弱酸性になります。(4) 悪玉菌は酸性に弱く、減少して不活発になり、(5) 悪玉菌の出す有害物質が減り、(6) 腸内環境が良好になります。
フラクトオリゴ糖摂取による人腸内細菌叢及び代謝産物に及ぼす影響. 社内文書
アクリルアミド基化学結合シリカカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにて、3糖以上のフラクトオリゴ糖量を求めて算出する。
消食表第259号 別添3 (平成26年10月30日)
研究1 対象:30歳代~50歳代の健康な被験者 (男性51名 女性34名) 方法:フラクトオリゴ糖の常用相当量8 gを体重当たりに直し、その1.5、2、3、4、5、6倍まで水に溶かして摂取したときの下痢の発生頻度を調べた。 結果:下痢の発生を全く見なかった最大無作用量は、男性では0.3 g/kg (フラクトオリゴ糖混合物として44 g) 、女性では0.4 g/kg (フラクトオリゴ糖混合物として49 g) であった。50%作用量ED50は男性0.78 g/kg (フラクトオリゴ糖混合物として115 g) 、女性0.84 g/kg (フラクトオリゴ糖混合物として102 g) であった。20~50歳代までの年齢階級別にみても胃腸への影響に差は見られなかった。男女間での影響の差も認められなかった。フラクトオリゴ糖は、単体としても食品と混じて摂取されても老若男女を問わず差を見ない。安全な摂取量の上限は、1日18 g (フラクトオリゴ糖混合物として約44 g) であると結論付けた。 研究2: フラクトオリゴ糖はタマネギ、ゴボウなどに多く含まれ、それぞれ乾燥中に25.0%、16.7%含まれる。その他ネギ、ニンニク、バナナ、ライムギなど数多くの食品にも少量ではあるが含まれている。このことから、通常の食品に多く含まれ、長期間にわたり食されていることから、食経験上安全といえる。
(1986061745) Geriatric Medicine. 198523(5);817-28. (1987148357) 栄養学雑誌. 1986:44(6);291-306.
研究1: 経口投与においてLD50は、マウスで>60 mL (フラクトオリゴ糖として約18 g) /kg、ラットで>30 mL (フラクトオリゴ糖として約9 g) /kg、と極めて低く無毒性の範囲にある事がわかった。腹腔内投与においては、LD50は、マウスで>60 mL (フラクトオリゴ糖として約18 g) /kg、ラットで>30 mL (フラクトオリゴ糖として約9 g) /kgと極めて低く低毒性の範囲にある事がわかった (両動物とも、雌雄各10匹/群) (1) 。 研究2: 20 mL (フラクトオリゴ糖として約3 g) /kg、10 mL (フラクトオリゴ糖として約1.5 g) /kgをラットに1日1回32日間連続投与した (雌雄各10匹/群) 。外観、体重、尿、眼底撮影、耳介反射、血液学的所検査、血匹/群 4群 計) 液生化学的検査、病理解剖学的検査、病理組織学的検査、肝、腎、脾の電顕検査、大腿骨髄塗沫標本の検鏡を行った。いずれの検査も異常は認められなかった (2) 。
(1) 新しい自然甘味料BD-101の安全性に関する試験 第一報BD-101の急性毒性試験 (株式会社生物医学研究所) 社内文書 (2) 新しい自然甘味料BD-101の安全性に関する試験 第二報BD-101のラットにおける亜急性毒性試験 (株式会社生物医学研究所) 社内文書
研究1: 対象:健康な男女30名 (平均年齢41.2歳) 方法:被験者30名をフラクトオリゴ糖摂取量3 g/日、6 g/日、9 g/日の3群に分け、あらかじめ該当する量のフラクトオリゴ糖を含むように調製されたコーヒードリンクを11日間にわたり摂取した。0日目、4日目、11日目、および摂取終了後14日目の計4回採便した。 結果:フラクトオリゴ糖は3 g/日では10日程度、6 g/日では4日程度で腸内のビフィズス菌を増やすことが分かった。また、初期のビフィズス菌数が少ない場合、それの多いとき(>109.6) よりも増殖効果が高い傾向があり、ビフィズス菌数が1010程度になると、増殖が頭打ちになった。総菌数に占めるビフィズス菌の割合も最初1~2%だったものが平均で10%前後まで増加したが、最大でも30%を超えた例はなかった。フラクトオリゴ糖を摂取することにより糞便のpHは低下し、水分は増える傾向があった。ビフィズス菌を増やすにはフラクトオリゴ糖は6 g/日摂りつづければ十分であることが分かった (1) 。
(1) フラクトオリゴ糖(ベータオリゴ)腸内ビフィズス菌に対する増殖活性と胃腸に与える影響 (日本オリゴ株式会社・金沢大学医学部) 社内文書
研究1: 対象:ラット5匹 (10群) 方法:ラットにケストース (フラクトオリゴ糖3糖)とニストース (フラクトオリゴ糖4糖) を経口投与し、その糞便の性状、酵素活性、低級脂肪酸量 (C2~C4の揮発性脂肪酸) に与える影響について検討した。 結果:ケストース、ニストース投与により糞便のpHは低下を示した。また、ニストース投与により糞便中の酪酸量の増加が認められた。ラット糞便のpH7.2における酵素活性の変化は、トリプトファナーゼが低下を示した。各糞便のpHにおける4種類の酵素活性の変化は、ケストース投与により、β-グルクロニダーゼ、β-グルコシダーゼ、トリプトファナーゼが、ニストース投与ではこれらに加えてウレアーゼも低下を示した。フラクトオリゴ糖投与によりこれら有害酵素活性が抑制されることが明らかになった (1) 。 研究2: 対象:ラット7匹 方法:ラットに放射性同位体でラベルしたフラクトオリゴ糖[U-14C]を経口投与し、排出される14Cについて検討した。 結果:抗生物質投与ラット (無菌ラット) にフラクトオリゴ糖[U-14C]を投与したとき、投与後最初の8時間において14CO2はほとんど排出せず、24時間以内に排出された14CO2の量も少なかったこと、糞便中の14C排出量が多かったことから、フラクトオリゴ糖がラットの内臓器官により水解されず腸内細菌によって代謝されることが示唆された。フラクトオリゴ糖は直接エネルギー源として利用されず、難消化性で大腸に到達し腸内細菌により代謝され腸内細菌のエネルギー源として利用されると考えられる (PMID2495342) 。
(1) Bifidobacteria Microflora. 199413(2);91-98. (PMID:2495342) J Nutr. 1989:119(4);553-9.
消食表第259号 別添3 (平成26年10月30日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/syokuhin1568.pdf 【関与成分の構造式】 https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/tokuho/19070301.jpg