関与成分CPP-ACPは、乳たんぱく質カゼインのトリプシン分解物 (CPP) と非晶質のリン酸カルシウム (ACP) からなるナノサイズの複合体である (CASRN:691364-49-5) 。CPP-ACPは、ホスホセリン残基を含むペプチドモチーフを介したリン酸カルシウムの結晶の形成阻害と歯面への高い親和性を示す。
【関与成分の構造式】 CPP-ACP (CASRN:691364-49-5) |
う蝕に対する牛乳及び乳製品の効果は、50年以上にも亘る昔からの研究テーマであり多くの動物実験を用いて様々な考察がなされてきた。その後のReynoldsらの研究により、トリプシンでカゼインを分解したペプチドが抗う蝕性を有することが見出された。CPP-ACPは歯の表面にカルシウムとリン酸イオンを過飽和で局在化させ、エナメル質の表層下脱灰を抑制し、再石灰化を増強する。さらに再石灰化部位が耐酸性をもつことにより高い歯質に改善する。
(PMID3476541) J Dent Res. 1987:66(1);38-41. (PMID:8955673) J Dent Res. 1996:75(10);1779-88. (PMID:9294493) J Dent Res. 1997:76(9);1587-95. (PMID:15528910) Caries Res. 2004:38(6);551-6. (PMID:17713338) Caries Res. 2007;41(5):377-83.
β-CPPに対するモノクローナル抗体を用いた免疫学的方法による測定、Caの灰化法及び原子吸光分析を用いた定量法。
研究1: 健常な男女学生33名を対象に、既許可品「リカルデント グレープミント」を用いて、1日摂取目安量の3倍量1週間摂取による影響を観察したところ、腹部症状の発症ならびに血液性状に及ぼす負の影響は極めて少ないことが明らかになった (1) 。
出典: (1) 日本食物繊維学会誌. 2007:11(2);67-74. その他資料: 安全性に関する科学的な評価に基づいて、米国FDA (食品医薬品局) によりGRASリスト※に登録されている (GRAS Notice No. GRN00011) 。 ※GRAS: Generally Recognized as Safe。米国の食品安全性に関する審査制度において一般に安全と認められる食品。
研究1: う蝕の進行抑制と健常状態への回復 最低22本の自然歯を持つ健康な成人男女30人を対象とした二重盲検、無作為化、クロスオーバーデザイン試験によるCPP-ACPの抗う蝕作用のヒトin situ試験での評価。CPP-ACP含有シュガーレスガムは甘味料 (キシリトールやソルビトールなど) やフレーバーの種類に係わらずエナメル質表層下脱灰病変の再石灰化が用量依存的に促進することが確認された (PMID:11808763) 。 研究2: 歯の表面での特性 最低22本の自然歯を持つ22~44歳の健康な成人男女30人を対象とした二重盲検無作為化クロスオーバー試験によるヒトin situ試験の結果、CPP-ACP含有シュガーレスガム咀嚼後3時間経過したプラークにCPP-ACPが滞留していた (PMID:12598550) 。この滞留性によりCPP-ACPは歯の表面に局在化するカルシウムとリン酸イオンとして表層下脱灰病変の再石灰化を増強することが確認された (PMID:12598550) (PMID:7629336) 。 研究3: 耐酸性とフッ化物との併用 最低22本の自然歯を持つ健康な成人男女10人を対象とした二重盲検無作為化クロスオーバー試験によるヒトin situ試験の結果、CPP-ACP含有シュガーレスガムにより再石灰化されたエナメル質は、プラセボガムに比べ後の酸の浸漬に対して有意な耐酸性を示した (PMID:15528910) (PMID:17713338) 。また、CPP-ACPはフッ化物イオンとの併用によりフッ化物のエナメル質への取り込みを高め、再石灰化を更に増強させた (1) 。 研究4: 無作為割付比較臨床試験 フッ化物濃度調整地域の2,720人 (平均12.5歳) を対象とした無作為化比較臨床試験の結果、CPP-ACP含有シュガーレスガムの24ヶ月間の摂取により、プラセボガムに比べう蝕の進行の抑制スコアとう蝕の回復スコアが改善した (PMID:18446025) 。
(PMID11808763) J Dent Res. 2001 Dec;80(12):2066-70. (PMID:12598550) J Dent Res. 2003 Mar;82(3):206-11. (PMID:7629336) J Dent Res. 1995 Jun;74(6):1272-9. (PMID:15528910) Caries Res. 2004:38(6);551-6. (PMID:17713338) Caries Res. 2007;41(5):377-83. (1) 84th IADR General Session and Exhibition. 2006:Abstract 0191. Sakaguchi Y. et al. (PMID:18446025) Caries Res. 2008:42(3);171-84. その他の資料: (PMID:3476541) J Dent Res. 1987:66(1);38-41. (PMID:9294493) J Dent Res. 1997:76(9);1587-95.
研究1 CPP-ACPのう蝕活性抑制作用についてStreptococcus sobrinusを接種したSPFラットを用いて試験した。同ラットには低フッ素食餌とMilli-Q水を与え、臼歯に2回/日CPP-ACP溶液を塗布した。その結果、0.5%w/v CPP-ACP溶液は500 ppmフッ化物イオン溶液と同等のう蝕活性抑制効果を示した (PMID7629336)
(PMID7629336) J Dent Res. 1995:74(6);1272-9.