でん粉由来の水溶性食物繊維であり、低粘性・低甘味で水溶液はほぼ透明。耐熱性・耐酸性に優れており、様々な食品に応用しやすい。ミネラルの吸収阻害はなく、FDA (米国食品医薬品局) のGRAS (Generally Recognized As Safeの略称.米国における食品安全性に関する審査制度) にリストされた安全性の高い素材である。
ラットおよびヒトを対象とした各種糖質負荷試験において、難消化性デキストリンは単糖類には影響を及ぼさず、二糖類以上の糖質に対して血糖上昇抑制効果を有することが確認されている。また、in vitro (試験管内で) およびin situ (生体内で) の試験において、二糖類の消化により生じたグルコースの吸収を抑制することが報告されている。これらの結果から、難消化性デキストリンは二糖類以上の糖質の吸収を緩やかにすることにより、食後血糖値の上昇を抑制することが明らかになった。 さらに、ヒト試験において、難消化性デキストリンを食事と共に摂取することにより、食後の血糖値上昇を抑制することが確認されている。この食後血糖上昇抑制効果は、難消化性デキストリンが食物繊維として2.7~16 gで認められている。
日本内分泌学会雑誌、68,623-635(1992) 日本栄養・食糧学会誌、46,131-137(1993) 日本内分泌学会雑誌、69,594-608(1993) 糖尿病、35,873-880(1992) 糖尿病、36,715-723(1993) 栄養学雑誌、53,361-368(1995) 日本栄養・食糧学会誌、45,21-25(1992) 日本食物繊維研究会誌、3,13-19(1999) 糖尿病、42,61-65(1999)
難消化性デキストリンを食物繊維として定量する。 難消化性デキストリンは国際的分析標準法AOAC2001.03 (栄養成分分析法の酵素-HPLC法に同じ) により定量することができる。しかし、AOAC2001.03においては難消化性デキストリンの高分子成分をアルコール沈殿により定量し、アルコール沈殿しない低分子成分をHPLCで定量して合算するため分析操作が煩雑となる。難消化性デキストリンは高分子成分も低分子成分も水溶性成分であり、一括してHPLCで定量できる。 本法は、分析検体の可消化性成分の分解、タンパク質の分解等の操作は従来のプロスキー法に従って実施し、得られた水溶液にアルコール添加を実施することなく脱塩精製を行い、これをHPLCで分析する方法である。
(1) AOAC 2001.03:Journal of AOAC International、85,2,435-444(2002)
研究1: 健常成人男女74名を対象とし、難消化性デキストリン (食物繊維として) 5.8~34.9 gを単回摂取させた結果、臨床的に問題となる胃腸症状は認められず、下痢発症のED50値は難消化性デキストリン (食物繊維として) 1.4 g/kg体重と推定された(1)。 研究2: 血清総コレステロール値あるいは中性脂肪値が正常範囲上限値を超える成人男性12名を対象とし、難消化性デキストリン (食物繊維として) 9 g/食を1日3回、12週間連続摂取させた結果、試験期間中において下痢などの消化器症状を含め、難消化性デキストリンに起因する随伴症状は認められなかった(2)。 研究3: 高脂血症を伴ったインスリン非依存型糖尿病患者5名を対象とし、難消化性デキストリン (食物繊維として) 17 g/食を1日3回、12週間連続摂取させた結果、摂取期間中において下痢・腹痛などの副作用は認められず、臨床上問題となる所見も認められなかった(3)。 研究4: 成人男女16名を対象とし、難消化性デキストリン (食物繊維として) 5.5 g/食を含有する茶飲料を1日3回、3ヶ月間連続摂取させた結果、臨床検査値は臨床上問題となる変化は認められず、試験期間中の副作用は観察されなかった(4)。 研究5: 血糖値が高めの者を含む成人男女36名を対象とし、難消化性デキストリン (食物繊維として) 6 g/200 mLを含有する茶飲料を、1回400 mL (1日摂取目安量の2倍量) 、1日3回、4週間連続摂取させた結果、臨床検査値に臨床上問題となる変化は認められなかった(5)。
(1) 栄養学雑誌、51,31-37(1993) (2) 日本食物繊維研究会誌、4,2,59-65(2000) (3) 日本栄養・食糧学会誌、45,21-25(1992) (4) 健康・栄養食品研究、4,2,19-26(2001) (5) 薬理と治療、36, 12, 1167-1176(2008)
研究1: 難消化性デキストリンの急性毒性試験として、雄性ICR系マウスを対象に難消化性デキストリン (食物繊維として) 4.6~18.3 g/kg体重を単回経口投与した結果、死亡例は観察されず、LD50値は難消化性デキストリン (食物繊維として) 18.3 g/kg体重以上であると推定された。また、変異原性試験として、難消化性デキストリン (食物繊維として) 37~4,580μg/プレートの用量で添加し、代謝活性化 (S9Mix) の添加・非添加条件下で指示菌 (ネズミチフス菌TA100、TA1535、TA98、TA1537、大腸菌WP2uvrA) の復帰変異コロニー数を計測した結果、微生物突然変異誘起性は陰性であることが確認された(1)。 研究2: 6週齢のSD系雄性ラット40匹を対象とし、難消化性デキストリン (食物繊維として) 9.2~18.3%水溶液を5週間連続投与し、血清総コレステロール、中性脂肪、HDL‐コレステロール、総タンパク質、カルシウム並びに血清GOTおよびGPTを測定し、飼育終了後、各種臓器 (肝臓、小腸、盲腸、結腸+直腸) の重量ならびに副睾丸および腎臓周囲の脂肪組織重量を測定した結果、難消化性デキストリンの連続投与によって、体重、各種臓器 (肝臓、胃、小腸) 重量、副睾丸および腎臓周囲の脂肪組織重量、血清総タンパク質、カルシウム、血清GOTおよびGPT活性に何ら影響を与えなかった(2)。
(1) 食品衛生誌、33,557-562(1992) (2) 日本栄養・食糧学会誌、44,471-478(1991)
研究1 健常成人男性6名を対象に、ショ糖30 gに難消化性デキストリン(食物繊維として) 2.7、5.5、27.9 gを添加した炭酸水100 mLを摂取し、摂取前、摂取30分後および60分後の血糖値を測定した結果、ショ糖負荷後の血糖値の上昇率は難消化性デキストリン (食物繊維として) 2.7および5.5 g添加時のみ低下が見られた(1)。 研究2: 健常成人34例を対象に、難消化性デキストリン (食物繊維として) 5.9 gを含む茶飲料を米飯と共に摂取させたクロスオーバー試験において、摂取前、摂取30分後、60分後、120分後の血糖値を測定した結果、プラセボ食と比較して食後血糖値の低下がみられた(2)。 研究3: 健常成人35例を対象に、難消化性デキストリン(食物繊維として)5.9gを含む茶飲料を米飯およびうどんと共に摂取させたクロスオーバー試験において、摂取前、摂取30分後、60分後、120分後の血糖値を測定した結果、プラセボ食と比較して食後血糖値の低下がみられた(2)。
(1) 糖尿病、36,715-723(1993) (2) 健康・栄養食品研究、4,4,61-69(2001)
研究1 8週齢のSD系雄性ラットを対象に、ショ糖1.5 g/kg+難消化性デキストリン0.075 g (ショ糖投与量の1/20) 、0.15 g (同1/10) 、0.6 g (同2/5) 、あるいは1.5 g (同1/1) のショ糖30%水溶液を経口投与し、投与前、投与30分後、60分後、120分後における血糖値を測定した結果、難消化性デキストリン0.15 g、0.6 gおよび1.5 g/kg添加条件において血糖値上昇抑制効果がみられ、その効果は0.15 g/kg添加条件 (ショ糖の1/10量) において最も顕著に現れた(1)。 研究2: 3週齢のSD系雄性ラット42匹を対象に、ショ糖約65%の高ショ糖食で2週間予備飼育後、1群は高ショ糖食をそのまま、他の1群は高ショ糖食95部に難消化性デキストリンを5部添加した飼料を8週間連続投与した結果、高ショ糖群と比較して難消化性デキストリン添加高ショ糖群では空腹時血糖値およびフルクトサミン濃度は低値であり、耐糖能障害の程度は軽減された(2)。 研究3: 8週齢のSD系雄性ラット39匹を対象に、各種糖質 (グルコース、異性化糖、ショ糖、マルトース、乳糖およびマルトデキストリン) +難消化性デキストリン (食物繊維として) 0.14 g/kgの水溶液を経口投与し、投与前、投与30分後、60分後、120分後の血糖値およびインスリン分泌を測定した結果、ショ糖およびマルトースにおいて血糖値上昇抑制作用、ショ糖、マルトースおよびマルトデキストリンにおいてインスリン分泌抑制作用が認められた(3)。
(1) 日本内分泌学会雑誌、69,594-608(1993) (2) 糖尿病、35,873-880(1992) (3) 日本栄養・食糧学会誌、46,131-137(1993)