キトサンは、カニ、エビなどの甲殻類の成分であるキチンの脱アセチル化物で、グルコサミンのポリマーである。構造はセルロースに類似しているが、官能基がアミノ基のポリカチオンである点がその他の食物繊維と異なる。
キトサンはアミノ基を有する陽イオンポリマーであるため、消化管内において酸性領域で溶解し、そのイオン交換能により胆汁酸と結合し、体外に排出することによって体内のコレステロールを減少させる。
堀江嘉明ら,健康・栄養食品研究,2(1),p27~36(1999) 平田千代枝ら,健康・栄養食品研究,4(1),p19~28(2001)
キトサンを含む食品に適用される酵素-重量法変法を準用する。
日本健康・栄養食品協会「特定保健用食品検査マニュアル(最終版)」第Ⅰ章(1)
研究1:基礎疾患のない34名の健康なボランティアをランダムクロスオーバー法で群分けし、カプセルに充填したキトサン粉末あるいは砂糖 (プラセボ) を1日当たり3、6及び9 gのいずれかを1日3回に分けて水とともに単日投与し、排便回数、便量、便の状態、消化管の状況、食欲を、投与後3日間観察し、記述させた。その結果、いずれの調査項目においても、またいずれの群においても、プラセボ摂取との差は認められず、1日当たり9 g程度のキトサンを摂取しても、健康上問題ないと判断した (1) 。 研究2:血清総コレステロール値が170~261 mg/dLの被験者40名を対象に、1日あたり0.88 gのキトサンを含有する大麦若葉青汁粉末食品 (当該食品) の摂取による血清脂質および安全性に及ぼす影響について、試験食品中のキトサンをマルトデキストリンに置き換えた食品(プラセボ食品)を対象として12週間にわたる二重盲検試験を実施した。その結果、試験食品の12週間の摂取で安全性において問題となる知見は得られなかった (2) 。
(1) 前崎祐二ら,健康・栄養食品研究,3(2),p1~9 (2000) (2) 池口主弥ら,健康・栄養食品研究,6(2),p39~50 (2003)
50匹のSPFマウスを使用し、キトサン、キトサン酢酸塩、及びキトサン蟻酸塩をそれぞれ20, 30及び50 g/kg体重となるように飼料に混合して19日間投与した。その結果、キトサンを連日摂取した場合は、体重1 kg当たり、遊離キトサンで約18 g、酢酸塩では14 g、蟻酸塩では16 gを越えると僅かではあるが、主として胃に障害が認められたが、その量はフラクトースなどを静注した時の致死量に相当し、毒性は少ないと判断された。
荒井君枝ら,東海水研報,56,89~94 (1968)
血清総コレステロール値 (TC) が170~261 mg/dLの被験者40名を対象に、1日あたり0.88 gのキトサンを含有する大麦若葉青汁粉末食品 (当該食品) の摂取による血清脂質および安全性に及ぼす影響について、試験食品中のキトサンをマルトデキストリンに置き換えた食品 (プラセボ食品) を対照として12週間にわたる二重盲検試験を実施した。その結果、プラセボ食品摂取群と比較して、試験食品摂取群でTCが、摂取8週後及び摂取12週後において低下した。また、試験食品摂取群では、摂取前と比較してTCは摂取4週後、摂取8週後及び12週後において低下した。
池口主弥ら,健康・栄養食品研究,6(2),p39~50 (2003)
コレステロール及びコール酸ナトリウムを含む飼料にキトサンを5%添加してラットを20日間飼育したところ、対照区に比べて、糞中のコレステロールの割合が増加し、キトサンによるコレステロールの排泄が示唆された。
Sugano,M. et al.,Nutr. Rept. Int.,18,531~537 (1978)