もくじ
1.はじめに
子どもがスポーツを頑張っているとき、何か少しでも力になってあげたいと、「サプリメントや健康食品でサポート!」と、ついついなりがちではありませんか。
ここでは、スポーツを頑張る子どもにサプリメントが本当に必要なのか?ということを中心にとりあげます。
一般的に、アスリートの場合、一般の人より多くのエネルギー、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルを必要とします(1)。
そうなるとふだんの食事ではなかなか難しく、ついついサプリメントやプロテイン製品を購入したくなるかもしれません。
実際、スポーツ選手におけるサプリメントの利用率は高く、男性選手63.2%、女性選手45.7%となっています(1)。
2.子どもにサプリメントって安全なの?
栄養素によっては、摂りすぎるとかえって体に良くない効果をもたらすことがあります。
アスリートにおいて、消費が多い栄養素である鉄分、カルシウム、ビタミンDについてみていきましょう。
- 鉄分 摂りすぎると、胃腸障害や臓器へ鉄が沈着し炎症を引き起こします(2)。
- カルシウム、ビタミンD 摂りすぎると、尿路結石症や腎障害となります(2)。
また、子どもにとってサプリメントは、特定の栄養素をたくさん摂りすぎてしまうリスクや、体が成長段階のため、大人では見られないような副作用がでることがあります(3)(4)(5)。
このような背景もあり、日本陸上競技連盟(JAAF)は次のようなメッセージを出しています。
「サプリメント摂取の基本8ケ条」(3)
1. サプリメントを摂る前にまず“食事の改善”を 2. 確かめよう!サプリを摂る“目的と使い方” 3. サプリの摂りすぎはむしろ“健康へのリスク”あり 4.「これ効くよ」と言われたサプリに要注意 5. “絶対に安全”そんなサプリありません 6. 気を付けよう!“海外サプリ”の安易な使用 7. サプリによるドーピングは“自己責任” 8. サプリを摂る前に医師・栄養士・薬剤師へ“相談”を |
3.ジュニアアスリートの食事とは
基本的には1日3食の食事をバランスよく摂ることが大切です。しかし、補食が必要となります。下の表をご覧ください。
- 男子の推定エネルギー必要量(単位:キロカロリー)
活動量 低い | 活動量 ふつう (通学や軽い運動) |
活動量 高い (活発な運動習慣あり) |
|
10~11歳 | 1,950 | 2,250 | 2,500 |
12~14歳 | 2,300 | 2,600 | 2,900 |
- 女子の推定エネルギー必要量(単位:キロカロリー)
活動量 低い | 活動量 ふつう (通学や軽い運動) |
活動量 高い (活発な運動習慣あり) |
|
10~11歳 | 1,850 | 2,100 | 2,350 |
12~14歳 | 2,150 | 2,400 | 2,700 |
(6)(2020年食事摂取基準より抜粋)
小中学生の男女ともに活動量が「ふつう」と「高い」を比べると、必要エネルギー量は 250~300 kcal ほど差があることがわかります。その差を補食として運動前に補う必要があります。
一例として、おにぎりやバナナなどは用意しやすく、良いエネルギー源となります。
さらに足りない分を炭水化物だけでなく、運動前にプロテイン飲料をとりいれたくなるかもしれませんが、日本陸上競技連盟によると、「ジュニア期では、プロテインなどに頼らなくても、牛乳、チーズ、ゆで卵、魚肉ソーセージといった普通の食事で補うように」としています(3)。
4.まとめ
スポーツを頑張るお子さんを応援する気持ちから「サプリメントを!」ではなく、まずは食事から改善していきましょう。
サプリメントは特定の成分を摂りすぎてしまうことがあるため、思いもよらない副作用が生じる可能性もあり、スポーツの練習や競技生活に悪影響が‥ということも危惧されます。しかし、ふだんの食事を工夫することで、その心配もなくなります。
子どものサプリメント利用について、動画もご覧ください 。
「いっしょに空の旅をたのしもう」
参考文献
(1)(E 2022183061) 食と医療 2022 20 42-4
(2)(E 2023112313) 臨床スポーツ医学 2023 40(1) 64-67
(3)JAAF 日本陸上競技連盟公式サイト 委員会情報 医事委員会スポーツ栄養部
(4)厚生労働省eJIM 小児および10代の若者のサプリメント利用について知っておくべき10のこと
(5)(E 2022260685) 小児内科 2022 54(6) 993-995
(6)日本人の食事摂取基準 (2020年版)