アルミニウムの安全性について (Ver.190711)

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アルミニウムの安全性について (Ver.190711)


■はじめに
 アルミニウムは、地殻中に豊富に存在し、飲料水に微量ながら含まれるほか、医薬品や食品添加物 (ベーキングパウダー (膨脹剤) や着色料、色止め剤など) として利用されています。ヒトがアルミニウムを摂取した場合、99%以上はそのまま排泄され、体内に吸収されるのはおよそ0.1%といわれます。吸収されたアルミニウムは、腎臓を通って尿中に排泄されますが、一部は細胞内に取り込まれ、脳内にも移行すると考えられています。
 アルミニウムの安全性については、長年にわたって、摂取量やアルツハイマー病など疾病との関連性が議論されてきました。そこで、アルミニウムの摂取状況やアルツハイマー病との関連性など現時点におけるアルミニウムの安全性情報をまとめました。

■アルミニウムの摂取許容量
 アルミニウムは、毒性試験などの安全性の研究に基づき、暫定耐容週間摂取量 (ヒトが一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される1週間あたりの暫定的な許容量;provisional tolerable weekly intake; PTWI) が設定されています。国際機関であるJECFA (FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives; FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会) では、アルミニウムのPTWIを2 mg/kg体重/週 (1週間あたり、体重1 kgあたり2 mg) としています (1) 。ただし、腎機能に障害がある人や、排泄機能が成熟していない乳児では、体内に蓄積しやすい傾向があるので注意が必要です (2) 。また水道水では、水質管理の目標値として0.1 mg/L以下と設定されています (3) 。

■アルミニウムの摂取状況
 平成23〜24年度に行われた厚生労働省の調査では、日本人の平均アルミニウム摂取量は、どの年齢層の人でも、PTWIを下回っていました。総摂取量は成人で最も多かったものの、体重あたりでは、成人 < 青年 < 学童 < 小児の順で多かったと報告されています。アルミニウムの摂取量には膨張剤を使用した穀類加工品や菓子類などが大きく寄与しており、これらの⾷品をたくさん食べる⼀部の小児では、PTWIを超える可能性があるため (4) 、平成25年に厚生労働省は、硫酸アルミニウムカリウムや硫酸アルミニウムアンモニウムを含む膨張剤の使用量を低減するよう、パンや菓⼦類の関連業界に通知しました (5) 。その結果、平成27〜28年度の東京都の調査で、洋菓子、中華菓子、スナック菓子中のアルミニウム量が、平成21年度の調査時よりも減少しており、アルミニウム低減化の取り組みが進んでいることが示されました (6) 。
 アルミニウム製の調理器具や容器包装からのアルミニウムの溶出を心配される方がいらっしゃいます。特に、アルミニウムはアルカリ性や酸性の強い食品で溶解性が高くなるため (7) 、酸や塩濃度の高い食品 (リンゴをすりつぶしたものやトマトピューレ、塩漬けニシンなど) に使用する場合には注意が必要とされています。しかし、すべての加熱調理をアルミニウム製品でおこなった場合の摂取量は、調理器具から1.68 mg、アルミ箔製品から0.01 mg、飲料缶0.02 mgで、PTWIの約1/10と推計されており (2) 、調理器具・容器包装からのアルミニウムの溶出がヒトの健康に影響を与える懸念はないと考えられます。
 平成29年における厚生労働省の推計によると、食品、飲料水だけではなく、アルミニウム製品からの溶出量を含むアルミニウムの推定摂取量は、多めに見積もっても、成人で0.682 mg/ kg体重/週、小児 (1〜6才) で1.305 mg/kg体重/週であり (8) 、PTWI (2 mg/kg体重/週) を下回っています。

■アルミニウムとアルツハイマー病に関連はあるのか
 アルミニウムとアルツハイマー病の関連性は、さまざまな研究結果をもとに議論されてきました。
 関連があるとする研究は、アルツハイマー病患者において、アルミニウムが含まれるベーキングパウダーを使用した食品摂取が多く (9) 、脳のアルミニウム蓄積 (10) (11) が認められた、飲料水中のアルミニウム濃度が高い地域 (12) (13) や慢性的なアルミニウムの暴露 (14) によりアルツハイマー病の発症率が高かったなどと報告していますが、アルミニウム以外のアルツハイマー病の発症要因や、その他の飲食物による摂取量が考慮されていないといった問題点が指摘されています。
 一方、関連がないとする研究は、アルミニウムを多く含む医薬品 (制酸薬) の摂取 (15) (16) や飲料水中のアルミニウム濃度 (17-19) 、職業的アルミニウムの暴露 (20) とアルツハイマー病や記憶力に関連性はなかったなどと報告しています。しかし、これらの研究では、アルツハイマー病に対するリスクの考え方に一貫性がなく、正確性に欠けるといわれています。
 そのため、WHOのEHC (Environmental Health Criteria;環境保健基準) は、「アルツハイマー病の発症とアルミニウムの因果関係は完全に否定はできないが、アルミニウムの摂取が原因でアルツハイマー病が発症するという根拠もない (21) (22) 」と報告しています。

■おわりに
 アルミニウムは、安全性研究に基づいたPTWIが設定され、私たちの通常の食事におけるアルミニウム摂取量はPTWIを下回っていることが明らかとなっています。アルミニウムを比較的多く含む小麦粉の菓子類などに極端に偏った食事をしない限りは、アルミニウムの取り過ぎを心配する必要はありません。

参考文献
1. アルミニウムに関する情報 (厚生労働省)
2. ミネラルの辞典:朝倉書店
3. 水質管理目標設定項目と目標値(26項目)(平成 27 年4月1日施行)
4. (PMID:25473496) Food Sci Nutr. 2014 Jul;2(4):389-97.
5. 硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アルミニウムアンモニウムを含有する膨脹剤の使用量の低減について(依頼)(厚生労働省)
6. (PMID:30626785) Shokuhin Eiseigaku Zasshi. 2018;59(6):275-281.
7. (PMID:8885317) Food Addit Contam. 1996 Oct;13(7):767-74.
8. 硫酸アルミニウムアンモニウム及び硫酸アルミニウムカリウム 概要書 平成29年3月21日(厚生労働省)
9. (PMID:29439342) J Alzheimers Dis. 2018;62(1):361-372.
10. (PMID:10350420) Age Ageing. 1999 Mar;28(2):205-9.
11. (PMID:26401698) J Alzheimers Dis. 2015;47(3):629-38.
12. (PMID:10901330) Am J Epidemiol. 2000 Jul 1;152(1):59-66.
13. (PMID:30868981) Br J Psychiatry. 2019 Mar 14:1-6.
14. (PMID:26592479) Neurosci Lett. 2016 Jan 1;610:200-6.
15. (PMID:12196314) Am J Epidemiol. 2002 Sep 1;156(5):445-53.
16. (PMID:26098935) Epidemiology. 2015 Sep;26(5):769-73.
17. (PMID:7629459) J Epidemiol Community Health. 1995 Jun;49(3):253-8.
18. (PMID:9115023) Epidemiology. 1997 May;8(3):281-6.
19. (PMID:1889888) Int Arch Occup Environ Health. 1991;63(2):97-103.
20. (PMID:26247643) J Occup Environ Med. 2015 Aug;57(8):893-6.
21. BfR Health Assessment No.033/2007
22. aluminium in drinking-water WHO 2010
・Casarett & Doull's Toxicoogy 6th ed. The Basic Science of Poisons キャサレット&ドール トキシコロジー 初版 サイエンティスト社 仮家公夫ら監訳

<国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所>



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