注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
スピルリナ [英]Spirulina [学名]Spirulina platensis、Arthrospira platensis、Spirulina maxima、Arthrospira maxima
概要
スピルリナは、微細藻類と呼ばれる小さな藍藻の一種で、熱帯から亜熱帯地域のアルカリ度の高い湖などに自生している。クロロフィルなどの光合成色素を持ち、光合成を行う。古代からメキシコやアフリカの塩水湖周辺の原住民のタンパク質源として利用されてきた。タンパク質の他、食物繊維、ミネラル、βカロテンの含量も多いため、サプリメントとして利用されている。 ●有効性俗に、「免疫力を高める」「ダイエットに良い」と言われているが、高血圧に有効性が示唆されているものの、その他の人での有効性は信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性肝毒性があるミクロシスチン (藍藻毒の一種) を含むものは避けること。妊娠中・授乳中は信頼できる十分な情報が見当たらないため、自己判断での摂取を控えること。自己免疫疾患患者、出血性疾患患者、フェニルケトン尿症患者の摂取は注意が必要であるため、自己判断でのサプリメントの摂取を控えること。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・全藻:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■食品添加物 ・既存添加物 スピルリナ色素 (スピルリナ青色素/スピルリナ青):着色料
成分の特性・品質
主な成分・性質
分析法
・スピルリナ含有製品中のミクロシスチン (microcystins) をLC-MS、ELISA等により測定した報告がある (PMID:11501902) 。 ・脂肪酸をGCにより測定した報告がある (PMID:11767135) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
メタ分析 ・2015年7月までを対象に2つのデータベースで検索できた臨床試験7報について検討したメタ分析において、スピルリナの摂取は血中脂質 (TC、LDL-C、HDL-C、TG) の改善との関連が認められた (PMID:26433766) 。
消化系・肝臓
RCT ・慢性ウイルス性肝疾患患者24名 (試験群12名、平均45歳、ルーマニア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、スピルリナ3.2 gを30日間摂取させたところ、全身状態評価 (VAS) に影響は認められなかった。一方、肝機能マーカー (ALT、AST) の改善抑制が認められた (PMID:15526544) 。
糖尿病・内分泌
調べた文献の中に見当たらない。
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
RCT ・本態性眼瞼痙攣またはメージュ症候群患者24名 (42〜83歳、アメリカ) を対象とした二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験において、通常の治療とともに、スピルリナ1.5 gを6ヶ月間摂取させたところ、眼瞼痙攣に影響は認められなかった (PMID:15234278) 。
免疫・がん・炎症
RCT ・HIV治療中の成人女性58名 (23〜35歳、試験群28名、カメルーン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、スピルリナ (Arthrospira platensis) 粉末5 g/日を3ヶ月間摂取させたところ、総抗酸化能の増加が認められた。一方、免疫マーカー (CD4リンパ球数、ウイルス量、CD8-T細胞におけるCD38陽性率) 、腎機能マーカー (アルブミン、尿素) に影響は認められず、腎機能マーカー (eGFR、クレアチニン) の悪化が認められた (PMID:25057105) 。 ・ボート選手の男性19名 (試験群10名、平均20.4±0.84歳、ポーランド) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、通常の練習とともに、食前にスピルリナ (Spirulina platensis) 抽出物500 mg×3回/日を6週間摂取させ、漕艇テストを行ったところ、テスト前およびテスト後の免疫マーカー (制御性T細胞/細胞傷害性T細胞比) の減少が認められた。一方、漕艇テストの運動強度と総運動時間に影響は認められなかった。また、漕艇テストを通して、免疫マーカー (制御性T細胞、Tδγ細胞、細胞傷害性T細胞、NK細胞) に影響は認められなかった (PMID:29467598) 。
骨・筋肉
発育・成長
肥満
メタ分析 ・2019年5月までを対象に5つのデータベースで検索できた無作為化比較試験5報 (条件:年齢≧18歳、期間≧2週) について検討したメタ分析において、肥満者におけるサブグループ解析では、スピルリナの摂取は、体重 (3報) の減少と関連が認められたが、試験によるばらつきが大きかった (PMID:31780031) 。 RCT ・肥満の成人56名 (試験群29名、平均34.75±8.04歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、スピルリナ (Spirulina platensis) 500 mg×2回/日を12週間摂取させたところ、体重、BMI、食欲 (VAS) の減少が認められた。一方、ウエスト径、血中脂質 (TC、LDL-C、HDL-C、TG) 、血管内皮増殖因子に影響は認められなかった (PMID:28431534) 。
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
-
安全性
危険情報
<一般> ・下痢や鼓腸、胃のむかつき、浮腫、アレルギー反応などが起こることがある (PMID:15234278) 。 <その他> スピルリナ含有製品から有害物質が検出されたという報告がある。 ・市販されているクロレラおよびスピルリナを主成分とする製品の一部から鉛 (0.07〜0.75 ppm) が検出された (1999118171) 。 ・市販されているスピルリナ食品から鉄 (418〜6,900 ppm) およびマンガン (28.2〜62.9 ppm) が検出された (1991097390) 。 <被害事例> スピルリナ含有製品摂取との因果関係が疑われる健康被害が報告されている。 ・C型肝炎、胃潰瘍の既往歴のある56歳男性 (日本) が、健康食品のスピルリナ製品を4ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、紫外線A波とB波に対し光線過敏症を示した (2000171344) 。 ・75歳女性 (日本) が、スピルリナ製品を約1ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、掻痒を伴う紅色皮疹と発熱をおこし、軽症型薬剤性過敏性症候群と診断された (2004276907) 。 ・高血圧や糖尿病などの治療のため、5種類の薬剤を数年間内服している75歳女性 (日本) が、健康食品のスピルリナ製品を1ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、腹部に掻痒 (皮膚や粘膜の不快な刺激感でかゆみがあり、こすったり、引っ掻いたりするようになること) を伴う紅色皮疹が出現し、スピルリナによる薬剤性過敏性症候群と診断された (2006061133) 。 ・28歳男性 (ギリシア) がスピルリナを3 g/日、1ヶ月間摂取したところ、胸部と腰部の急性横紋筋融解症を発症した (PMID:18434120) 。 ・高血圧や慢性片頭痛、線維筋痛の既往歴があり、数種のサプリメント (ビタミンやミネラル、ハーブを含む、摂取量不明) を1ヶ月程度摂取していた45歳女性 (アメリカ) が、スピルリナ含有サプリメントを併用しはじめたところ (摂取量不明) 、1〜2日で顔や指関節の発赤をおこした。数週間後、再びそのスピルリナ含有サプリメントの摂取を開始したところ、4日後に発疹が悪化し、目や耳にも腫脹が現れたためアレルギーと診断、サプリメントの使用を中止した。投薬治療を行ったが完全には回復しなかった (PMID:15210464) 。 ・14歳男児 (フランス) がスピルリナタブレット5粒を摂取した6時間後に、蕁麻疹、唇の水泡、喘息を発症し、再摂取テストにおいても下痢を発症、スピルリナの色素タンパク質によるアレルギーと診断された (PMID:19889119) 。 ・49歳女性 (日本) がスピルリナ含有サプリメントを数日間摂取したところ (摂取量等不明) 、顔面に浮腫性紅斑が出現し、そのまま2ヶ月間摂取を継続したところ、紅斑が広範に拡大した。摂取を中止してから3ヶ月後に皮疹が改善しないため医療機関で受診したところ、筋力低下も認められ、皮膚症状を伴った炎症性筋疾患と診断された (PMID:21706829) 。 ・妊娠初期よりビタミンDを、妊娠4ヶ月より過度のスピルリナサプリメント (摂取量等不明) を摂取した妊婦 (フランス) の新生児が、生後1日目に全身発作を呈した。新生児の血清カルシウム、イオン化カルシウム、リン酸塩、カルシトリオール、および母親の血清カルシトリオールの上昇が認められ、WHO-UMC基準で"likely"と評価されたため、妊娠中に摂取していたスピルリナサプリメントとの因果関係が疑われる新生児の重度高カルシウム血症と診断された (PMID:21842336) 。 ・高血圧、脂質異常症、2型糖尿病の52歳男性 (日本) が、ベシル酸アムロジピン、シンバスタチン (脂質異常症治療薬) 、アカルボースと併用してスピルリナを5週間摂取したところ (摂取量不明) 、肝機能マーカー (AST、ALTなど) の上昇が認められ、3週間そのまま摂取したところ悪化した。スピルリナにおけるリンパ球刺激試験が陽性であり、摂取中止により改善したため、摂取したスピルリナとの因果関係が疑われる肝機能障害と診断された (PMID:12492223) 。 ・アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、口腔アレルギー症候群のある17歳男性 (オランダ) が、スピルリナタブレット300 mgを摂取したところ、10分以内に、唇の掻痒感、顔の腫れ、腕と体にかゆみを伴う発疹と蕁麻疹、吐き気、腹痛、喘鳴、呼吸困難を伴うアナフィラキシーを呈した。プリックテストにより、スピルリナが原因と診断された (PMID:25445756) 。 ・乳幼児期からアトピー性皮膚炎と甲殻類、魚類、果物による食物アレルギーの既往のある10歳男性 (日本) が、身長促進をうたったスピルリナ含有サプリメントを1年間摂取したところ (摂取量不明) 、肝機能障害 (AST<ALT) を認め、リンパ球刺激試験でスピルリナに陽性を示した。スピルリナ含有サプリメントにより誘起されたアレルギー性肝機能障害と診断され、摂取中止により改善した (2019053409) 。 ・56歳男性 (日本) がスピルリナ含有サプリメントを2ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、日光裸露部に皮疹がみられ、摂取中止後も光線過敏が続いた。スピルリナに対するPersistent light reactorと診断され、加療により改善した (1999257470) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<ヒト症例> ・健康な55歳女性 (中国) が、スピルリナ製品 (詳細不明) を6ヶ月間摂取したところ、健康診断で腫瘍マーカー (CA19-9) が高値を示したが、異常は見つからず、スピルリナ摂取を中止したところ、正常値に戻ったため、スピルリナの摂取が検査値に影響したと考えられた (PMID:25153597) 。 <動物・試験管内> ・動物実験 (ラット) において、スピルリナの摂取は肝臓におけるCYP1A2およびCYP2E1の遺伝子、タンパク質発現および活性を阻害した (PMID:24082030) 。
動物他での 毒性試験
1.TDLo (最小中毒量) ・Spirulina maxima乾燥物を投与:マウス経口 (間欠的) 2184 g/kg/13週、10 mg/kg/10日 (91) 。 ・Spirulina maximaタンパク質抽出物を投与:マウス経口 (間欠的) 4 g/kg/10日 (91) 。 ・Spirulina sp.を投与:マウス経口 (間欠的) 60 g/kg/30日 (91) 。 ・Spirulina platensis熱水抽出物を投与:マウス経口 (継続的) 360 g/kg/60日、540 g/kg/180日 (91) 。 ・Spirulina platensis多糖を投与:マウス経口 (間欠的) 180 mg/kg/12日 (91) 。 2.その他 ・総フェオホルバイド値の異なる3種類のスピルリナ製品 (72 mg%、 92 mg%、151 mg%) を用い、ラットに10%スピルリナ混餌食を与え、4時間/日、2万ルクスの光照射を10日間おこなったが、光過敏症は認められず、光照射による体重、血液成分の変化も見られなかった (1996124243) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
総合評価
・重金属などの不純物や肝毒性のあるミクロシスチンを含まないスピルリナ種を摂取する場合、安全性が示唆されている。ミクロシスチンを含むものは肝毒性があり、摂取するのはおそらく危険である。 ・下痢や鼓腸、胃のむかつき、浮腫、アレルギー反応などが起こることがある。 ・妊娠中・授乳中の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらないため、自己判断での摂取を控えること。 ・自己免疫疾患患者は、症状を悪化させる可能性があるため、自己判断でのサプリメントの摂取を控えること。 ・出血性疾患患者は、出血のリスクを高める可能性がある。 ・フェニルケトン尿症患者は、症状を悪化させる可能性がある。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・信頼できる十分な情報は見当たらない。
参考文献
(PMID:11501902) J AOAC Int. 2001 Jul-Aug;84(4):1035-44. (PMID:11767135) J AOAC Int. 2001 Nov-Dec;84(6):1708-14. (PMID:12492223) Am J Gastroenterol. 2002;97(12):3212-3, (1996124243) 食品衛生学雑誌. 1995;36(5):632-4. (1991097390) 鳥取県衛生研究所報. 1989;29:43-7. (1999118171) Biomed Res Trace Elements.1998;9(2):63-9 (2000171344) 皮膚科の臨床. 2000;42(3):467-71. (2004276907) 皮膚病診療. 2004;26(8):995-8. (2006061133) Visual Dermatol. 2005;4(10):1006-7. (PMID:18434120) Phytomedicine. 2008 Jun;15(6-7):525-7. (PMID:8872497) Immunopharmacol Immunotoxicol. 1996 Aug;18(3):465-76. (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (PMID:12639401) J Med Food. 2001 Winter;4(4):193-199. (PMID:15234278) Am J Ophthalmol. 2004 Jul;138(1):18-32. (PMID:15210464) Arch Dermatol. 2004 Jun;140(6):723-7. (PMID:19889119) Allergy. 2010 Jul;65(7):924-5. (PMID:21706829) 臨床神経学. 2011 May;51(5):330-3. (PMID:21842336) Eur J Clin Pharmacol. 2012 Feb;68(2):221-2. (PMID:24082030) Int J Toxicol. 2013 Sep-Oct;32(5):376-84. (PMID:25445756) Food Chem Toxicol. 2014 Dec;74:309-10. (PMID:25153597) Clin Chem Lab Med. 2015 Feb;53(2):e45-6. (PMID:26433766) Clin Nutr. 2016 Aug;35(4):842-51. (PMID:28431534) BMC Complement Altern Med. 2017 Apr 21;17(1):225. (PMID:29467598) J Int Soc Sports Nutr. 2018 Feb 20;15:9. (PMID:15526544) Rom J Intern Med. 2002;40(1-4):89-94. (PMID:25057105) Nutrients. 2014 Jul 23;6(7):2973-86. (2019053409) アレルギーの臨床. 2019;39(1):66. (1999257470) 日本皮膚科学会雑誌. 1999;109(6):921-2. (PMID:31780031) Complement Ther Med. 2019 Dec;47:102211.