注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
トウチュウカソウ、冬虫夏草 [英]Cordyceps、Plant worms、Vegetative wasps [学名]Cordyceps sinensis
概要
トウチュウカソウはキノコ (胞子) が昆虫 (主に麟翅目、鞘翅目の幼虫) に寄生して、その体内に菌糸の固まりである菌核を充満させ、時期が来ると昆虫の頭部や関節部から棒状の子実体 (キノコの地上部) を伸ばしたものの総称である。冬は虫で夏になるとキノコ (草) になることから冬虫夏草と呼ばれている。コウモリガの幼虫に寄生するチベット産のもの (Cordyceps sinensis) が有名であるが、他にも多くの種類がある。古くから中国で用いられてきた漢方素材の一つで、俗に、「滋養強壮作用がある」「慢性疲労や病後の回復によい」などと言われているが、ヒトでの有効性については信頼できる十分な情報が見当たらない。安全性については、適切に使用する場合には安全性が示唆されている。その他、詳細については、「すべての情報を表示」を参照。
法規・制度
・別名としてホクチュウソウがある。全草は「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」に区分される (30) 。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・Cordyceptic acid (キナ酸の異性体) 7%、その他ステロール:ergosterol、cholesterol、campesterol、sitosterolなど、また抗菌成分cordycepinを含む。
分析法
-
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中に見当らない。
消化系・肝臓
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
一般情報 ・運動能力の向上に対し、効果がないことが示唆されている (94) 。 RCT ・健康な男性10名 (19〜40歳、日本) を対象とした二重盲検クロスオーバー試験において、トウチュウカソウエキスを1 g/100 g含む冬虫夏草菌糸体エキス飲料を1日1回、1週間摂取させ、平均21分間のトレッドミル走行の運動負荷を行ったところ、運動直後の心拍数、体重あたりの酸素摂取量、拡張期血圧、血液中の平均乳酸蓄積量、SOD量が減少した (2003052593) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
・水浸液は動物の気管支の拡張や平滑筋抑制などの作用がある (29) 。
安全性
危険情報
<一般> ・適切に使用する場合、安全性が示唆されている (94) 。 <妊婦・授乳婦> ・妊娠中及び授乳中の安全性については十分な情報がないため、摂取は避ける (94) 。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらない。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<動物・試験管内> ・動物実験 (マウス) において、6週齢よりレンチナン (抗がん剤) 1または4 mg/kgをシスプラチン (抗がん剤) 2 mg/kgと併用で10回、腹腔内投与したところ、レンチナン単独投与に比較し心筋障害の増強が認められた (2005052247) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・免疫抑制作用を減弱させる可能性があるため、シクロスポリン (免疫抑制剤:CYP3A4、P糖タンパク質基質) 、アミノグリコシド系抗生物質、サイクロホスファミド (免疫抑制剤) 、プレドニゾロン (抗炎症薬:CYP3A基質) などの薬剤とトウチュウカソウの併用は避けるべきである (94) 。 ・他のハーブやサプリメントとの相互作用については十分なデータがない (94) 。
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) ・トウチュウカソウを投与:マウス腹腔内27.1 g/kg (92) 。中毒症状として、動悸がいったん鈍くなった後に興奮に転じ、その後に痙攣が起こり、呼吸が抑制されることによって死亡する。 2.LD (致死量) ・トウチュウカソウ水抽出物を投与:マウス腹腔内30〜50 g/kg (7) 。 3.TDLo (最小中毒量) ・トウチュウカソウを投与:マウス経口 (間欠的) 140 mg/kg/7日 (91) 。 ・トウチュウカソウ酢酸エチル抽出物を投与:マウス腹腔内 (間欠的) 1.35 g/kg/27日 (91) 。 4.その他 ・慢性毒性試験:胎児や生殖能力に関する毒性試験では、明らかな異常は見られなかった (92) 。 ・動物実験 (マウス) において、6週齢よりレンチナン (抗がん剤) 1または4 mg/kgを10回、腹腔内投与したところ、投与量依存的に拡張型心筋症を発症し、胸腹水発生により生存期間が短縮した (2005052247) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・子実体と幼虫、菌糸体:クラス1 (22) 。
総合評価
・適切に使用する場合、安全性が示唆されている。 ・妊娠中及び授乳中の安全性については十分な情報がないため、摂取は避ける。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・調べた文献の中に見当らない。
参考文献
(29) 牧野和漢薬草大図鑑 北隆館 (22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (92) 現代中薬薬理学 王本祥編集 (2003052593) 日本運動生理学雑誌.2002;9(2):85-92 (7) 中薬大辞典 小学館 (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (94) Natural Medicines (2005052247) 日本癌治療学会誌. 2004: 39(2); 426.