クロム解説

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クロム解説


A.クロムとは?
 クロムは18世紀にシベリアで発見された元素で、通常、3価クロム、6価クロムの状態で存在します (3) 。自然界に存在するクロムはほとんどが3価クロムで、6価クロムは人為的に産出されます (1) 。6価クロムには強い酸化作用があり、毒性が強く、クロムメッキ工場等で6価クロムによる中毒が発生した事例がありました (3) 。人間の組織中や食品中のクロム含有量は極めて少ないのですが (1) 、生体内では、糖質代謝、コレステロール代謝、結合組織代謝、たんぱく質代謝の維持に関係しています (1) (3) 。

B.クロムの供給源になる食品
 主な食品のクロム含有量は以下の通りです (4) 。

植物性食品

食品名1食あたり
の重量(g)
クロム(μg)
 1食あたり 100gあたり
 がんもどき10088
 ミルクチョコレート30724
 木綿豆腐15064
 ほうれん草(冷凍 ゆで)8056
 そば(ゆで)20042
 梅干し10437
 刻み昆布8333
 かぼちゃの種(いり味付け)15213
 黒砂糖10113
 コーンフレーク4013
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)

動物性食品

食品名1食あたり
の重量(g)
クロム(μg)
 1食あたり 100gあたり
 まさば(焼き)7046
 牛リブロース 脂身つき(焼き)10044
 あわび(生)6046
 かき(生)6023
 ブラックタイガー(生)9022
 あさり(生)4024
 豚ロース 脂身つき(焼き)8022
 ほたてがい貝柱(生)5023
 鶏手羽先(生)6012
 豚ひき肉(焼き)5012
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)



C.クロムの特性 (単位・化学的安定性)
 クロムは元素記号Cr、原子番号24、原子量52.00で、銀白色の金属です。常温では安定しているため、空気中や水中において錆びることはありません。また、塩酸、希硫酸に溶けます (7) 。



D.クロムの吸収や働き
 食品中に存在するクロムのほとんどは3価クロムです (1) 。摂取した3価クロムの吸収率はとても低く、0.5〜2%と見積もられています (6) 。主に小腸で吸収されますが、その腸管吸収メカニズムは明らかになっていません (1) 。
 生体内に存在するクロムの量は極微量ですが (1) 、インスリン作用を増強し (6) 、正常な糖質代謝、コレステロール代謝、結合組織代謝、たんぱく質代謝の維持に関係しています (3) 。



E.クロム不足の問題
クロム不足はどのようにして起こるの?
 クロムは加齢とともに体内の含量が減少する唯一のミネラルですが (3) 、通常の食生活ではクロム不足が問題となることはありません (1) 。クロムを全く含まない完全静脈栄養や、高カロリー輸液を施行すると、耐糖能異常を引き起こしますが、塩化クロムの補給により症状は改善されます (1) 。

クロムが不足すると、どのような症状が起こるの?
 クロムが不足すると、インスリン感受性の低下 (1) 、窒素代謝異常、体重減少、末梢神経障害、昏迷 (5) 、角膜障害 (3) などが起こります。



F.クロム過剰摂取のリスク
 通常の食事から摂取されるクロムは毒性の低い3価クロムで、吸収率も低いため、過剰症が問題となることはあまりありませんが (1) 、長期間にわたる過剰摂取では、嘔吐、下痢、腹痛、腎尿細管障害、肝障害、造血障害、中枢神経障害が起こる可能性があります (3) 。また、6価クロムは毒性が強く、皮膚炎や肺がんの原因となります (3) 。



G.クロムはどのぐらい摂取すればよいの?
 各年齢別のクロムの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2020年版) は以下の通りです (1) 。


<クロムの食事摂取基準 (μg/日) >

性別男性女性
年齢等 目安量 
(AI)
耐容上限量
(UL)
 目安量 
(AI)
耐容上限量
(UL)
0〜5 (月)0.8-0.8-
6〜11 (月)1.0-1.0-
1〜2 (歳)----
3〜5 (歳)----
6〜7 (歳)----
8〜9 (歳)----
10〜11 (歳)----
12〜14 (歳)----
15〜17 (歳)----
18〜29 (歳)1050010500
30〜49 (歳)1050010500
50〜64 (歳)1050010500
65〜74 (歳)1050010500
75以上 (歳)1050010500
妊婦10-
授乳婦10-


目安量 (AI,adequate intake)
 ある性・年齢階級に属する人々が、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。
 (特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量)
耐容上限量 (UL,tolerable upper intake level)
 ある性・年齢階級に属するほとんど全ての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。


H.クロム摂取状況
 クロムは、現在、国民健康・栄養調査の調査項目に入っていないため、データがありません (2) 。

■関連情報
・クロムの有効性と安全性について、個々の研究結果については「素材情報データベース【クロム】」をご覧下さい。

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<国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所>


参考文献

(1) 日本人の食事摂取基準 2020年版
(2) 令和元年 国民健康・栄養調査報告
(3) ミネラルの辞典:朝倉書店
(4) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
(5) 健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック:第一出版
(6) 専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社
(7) 理化学辞典 第5版:岩波書店

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