鉄解説

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A.鉄とは?
 鉄は古代ギリシアで既に貧血治療に用いられていた形跡があるほど、古くから知られている重要なミネラルです (3) 。鉄は赤血球の血色素 (ヘモグロビン) や各種酵素の構成要素として、酸素の運搬や細胞呼吸において重要な役割を担っており、不足すると貧血により運動機能や免疫機能の低下を招くことがあります (6) 。特に乳幼児や妊産婦では鉄不足が問題となりますので、十分な摂取を心がけることが大切です (1) 。鉄摂取に有効的な食品として、豆類・種実類・藻類・肉類などがあげられます (3) 。

B.鉄の供給源になる食品
 主な食品の鉄含有量は以下の通りです (4) 。(可食部100 gあたり)




※鉄を多く含むレシピ紹介はこちら

C.鉄の特性 (単位・化学的安定性)
 鉄は元素記号Fe、原子番号26、原子量55.85の灰白色の金属です。地球上にケイ酸塩、酸化物などとして広く分布しています。乾いた空気中では安定していますが、湿気により酸化されて錆 (さび) が生じます。塩酸、硫黄、リンと激しく反応し、希酸に溶けます (8) 。水溶液中では2価か3価のいずれかの酸化状態をとります (6) 。

D.鉄の吸収や働き
 成人の体内には男性で約4.0 g、女性では約2.5 gの鉄が存在します (6) 。体内の鉄は、酸素運搬機能や酵素機能を果たす「機能鉄」と、鉄の貯蔵や輸送に使用される「貯蔵鉄」に分類されます。機能鉄は体内の鉄の約70%を占め、その大部分がヘモグロビンとして赤血球中に存在し (5) 、残りの機能鉄は鉄含有酵素やミオグロビンに存在します (6) 。一方、貯蔵鉄はフェリチンやヘモシデリンとして肝臓や脾臓、骨髄、筋肉などに存在します (5) 。また、鉄の輸送途中にあたる血清鉄も貯蔵鉄の一部とみなされています (3) 。
 食品から摂取した鉄は小腸で吸収されますが、その吸収量は1日に1〜1.5 mgと極めてわずかで、食物中の鉄の大部分 (10〜20 mg) は糞中にそのまま排泄されてしまいます (3) 。吸収率は体内の貯蔵鉄量や食事中の鉄の生物学的利用効率などにより、1%未満から50%を上回るまで変化します (6) 。食品に含まれる鉄の大部分は非ヘム鉄ですが、肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来する鉄はヘム鉄で、非ヘム鉄の2〜3倍の吸収率を示します (6) 。非ヘム鉄は、ビタミンCにより吸収が促進されますが、加工されていない全粉穀物製品に含まれる「ふすま」やフィチン酸、お茶や野菜類に含まれるポリフェノールなどは非ヘム鉄の吸収を阻害します (6) 。

E.鉄不足の問題
鉄不足はどのようにして起こるの?
 鉄不足は、世界的に最も多く見られる栄養欠乏症です (6) 。特に、急激な成長を伴う年長乳児や幼児、月経血損失のある女性、鉄要求量の増加する妊婦・授乳婦で鉄不足が多く見られます。
 鉄不足は食物からの摂取不足、出血による鉄の喪失、吸収障害などによって起こります。この中でも食物からの摂取不足は、摂取した食事中の鉄量が少ない場合や、全体の食事量が少ない場合の他、鉄の吸収に影響を与える物質の摂取量の過不足によっても起こります (3) 。また、習慣や経済的理由、宗教、文化的理由によって鉄分の少ない食物を摂取することにより、鉄不足が起こる場合もあります (3) 。

鉄が不足すると、どのような症状が起こるの?
 鉄不足の代表的な症状は貧血です。その他、運動機能や認知機能の低下 (1) 、体温保持機能の低下 (6) 免疫機能の低下 (6) などがみられることがあります。また、小児では、豊かな感情の減退、集中力の低下、いらいら、学習能力の減退などが指摘されています (6) 。
貧血とは、血液中に含まれる血色素 (ヘモグロビン) 量が減少した状態のことを言いますが、鉄欠乏が重度にならないと症状や徴候は現れません (6) 。鉄欠乏性貧血の症状がみられたときには、既に貯蔵鉄の枯渇や血清鉄の減少が進んでいると考えられます (3) 。




F.鉄過剰摂取のリスク
 健康な人が通常の食事によって鉄の過剰症を起こすことはほとんどありませんが、治療用の鉄剤などを過剰に摂取すると、便秘、胃腸障害、鉄沈着、亜鉛の吸収阻害などが起こる可能性があります (1) (3) (6) 。また、幼児では、鉄剤やサプリメントの誤飲により急性鉄中毒を起こすことがあり (1) 、この場合、重度の臓器障害や死を招くおそれがあります (6) 。鉄は過剰摂取によって毒性が認められるため、食事摂取基準でも上限量が設けられています (1) 。 

(C型慢性肝炎と鉄制限食)
 近年、瀉血療法と合わせて食事中の鉄を7〜8 mg/日以下に抑えた鉄制限食を摂取することにより、C型慢性肝炎の改善が見られるとの報告があります (9) 。さらに、C型慢性肝炎患者13名 (男性5名、女性8名、平均年齢66±6歳) を対象として鉄量6 mg/日以下、エネルギー30 kcal/kg/日、たんぱく質1.1〜1.2 kg/kg/日、脂肪比率20%の鉄制限食を3ヶ月間摂取させたところ、指導開始前と比較して、ALTやAST、フェリチン値、総コレステロール値が低下したとの報告もあります (7) 。なお、鉄制限食とは鉄量の多い食品を絶対に食べてはいけないということではなく、量や頻度、組み合わせを工夫し、多種類の食品を摂取するように心がける必要があります (7) 。

     
G.鉄はどのぐらい摂取すればよいの?
 各年齢別の鉄の食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2015年版) は以下の通りです。


H.鉄摂取状況
 平成29年の国民健康・栄養調査では、通常の食品から男性は平均7.8 mg/日、女性は平均7.2 mg/日摂取しています(2)。

I.栄養機能食品としての関連情報
 鉄は基準値を満たした場合に栄養機能食品として表示することができます。
・下限値:2.04 mg、上限値:10 mg
・栄養機能表示
「鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素です。」
・注意喚起
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」

 栄養機能食品の表示に関する基準の詳細についてはこちらの資料をご参照ください。

参考文献

(1) 日本人の食事摂取基準 2015年版:第一出版
(2) 平成29年 国民健康・栄養調査報告
(3) ミネラルの辞典:朝倉書店
(4) 日本食品標準成分表2015年版(七訂)
(5) 健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック:第一出版
(6) 専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社
(7) 肝胆膵:2006:52(6):927-932
(8) 理化学辞典 第5版:岩波書店
(9) 栄養食事療法必携 第3版:医歯薬出版

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