プエラリア・ミリフィカについて (Ver.181211)

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■はじめに
 最近、「プエラリア」や「ガウクルア」という健康食品が、「豊胸」「美肌」「若返り」「強壮」「不妊の改善」「更年期障害の緩和」「骨粗鬆症や高脂血症の防止」などの効果を宣伝して販売されています。これらの商品にはプエラリア・ミリフィカという植物の成分が入っており、植物性エストロゲンの女性ホルモン様作用を期待しているようです。しかし、摂取による有害事象も報告されているため、厚生労働省や消費者庁は安易な摂取を控えるよう呼びかけています。そこで、プエラリア・ミリフィカについて現時点での科学的知見をまとめてみました。

■プエラリア・ミリフィカとは?
 プエラリア・ミリフィカ (学名Pueraria mirifica、以下プエラリア) は、タイ北部に自生するマメ科の植物で、根が大きな塊状になるのが特徴です。タイでは白ガウクルア (一般名White kwao keur) と呼ばれ、その塊根は若返りの薬として知られ、食用にもされていたようです。また、女性ホルモンのエストロゲンとよく似た物質が多く含まれていることが知られています。
 古くは、赤ガウクルア(学名Butea superba)と呼ばれる植物と混同されていましたが、現在では違う植物として区別されています。日本でよく知られている葛 (クズ、学名Pueraria lobata) の近縁種ですが、含まれる特徴的な成分が違うので、プエラリアとクズは全く異なる植物と考えるべきです。クズの情報はこちらをご参照ください。

■女性ホルモンのエストロゲンとは?
 女性ホルモンには、大きく分けてエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。これらは主に卵巣から分泌され、拮抗または協調して作用します。ヒトのエストロゲンとしては、エストロン、エストラジオール、エストリオールが知られています。エストロゲンは、その受容体に結合することで子宮、乳房の発育や第二次性徴の発現といった「女性化作用」を発揮します。そのほか、脂質代謝や骨代謝などとも密接な関係にあり、血漿コレステロールや骨量の維持などにも関わります。そのため、閉経に伴ってエストロゲン分泌が著しく低下する更年期以降は、コレステロール値の上昇や骨量の低下など、様々なからだの変化が生じます。そうした低エストロゲンと関連した月経異常や更年期障害、骨粗鬆症の治療にはホルモン療法としてエストロゲン剤が用いられることもあります。このように女性ホルモンのエストロゲンは、特に女性にとって大切な役割を担っていますが、一方で、エストロゲン製剤の添付文書には、「外国においてエストロゲン製剤とプロゲステロン製剤を長期併用した女性では乳がんになる危険性が高くなるとの報告があるので、必要最小限の使用にとどめ、漫然と長期投与を行わないこと。」とあり、その投与には医師の厳密な管理が重要とされています。

■プエラリアに含まれる植物性エストロゲンとは?
 植物中には、ヒトのエストロゲンとよく似た構造と性質をもつ物質が多く見いだされています。これらは総称して植物性エストロゲンと呼ばれ、大豆に含まれるイソフラボン類が有名です。ヒトの体内では、エストロゲン受容体に結合することでホルモン様作用を示します。
 プエラリアにはミロエストロール、デオキシミロエストロール、プエラリン、ダイゼインゲニステインダイジンゲニスチンといった多くの植物性エストロゲンが含まれています (1) (2)(3) 。
※赤字は大豆にも含まれることで知られている成分です

 この内、ミロエストロールや、その前駆物質であるデオキシミロエストロールは、イソフラボンと比べて非常に強いエストロゲン活性を示します。エストロゲン受容体に対する結合能はイソフラボン類のゲニステインのそれぞれ約4倍および20倍、また17β-エストラジオール (ヒトの主要エストロゲン) に匹敵するエストロゲン活性を示したという報告があります (4) 。プエラリアに含まれるミロエストロールやデオキシミロエストロールの量はイソフラボン類より少ない (2) とも言われていますが、作用が非常に強いため、充分なエストロゲン作用を示す可能性があります。
 また、プエラリアには、他にもspinasterol (3) やkwakhurin (5) という植物性エストロゲンが見いだされていますが、含有量やその活性の強さなどは明らかになっていません。

■プエラリアの有効性について
 プエラリアの有効性をヒトで検証した研究を検索したところ、閉経後女性を対象とした2つの研究(3報)が見つかりましたが、血中脂質や血中ホルモン量に対し、一定の明確な効果は認められていません (6) (7) (8) 。また、多くの健康食品でうたわれている「豊胸」「美肌」「若返り」「不妊の改善」などについての研究は一つも見当たりませんでした。
※詳しくは、素材情報データベースの「プエラリア・ミリフィカ」をご参照下さい。

■プエラリアの安全性について
 プエラリア製品の摂取による、不正出血、頭痛、肝機能障害などの健康被害が報告されています。また、全国の消費者センターや国民生活センターには2012年〜2017年の5年間で209件の被害情報が寄せられ、腹痛や嘔吐、下痢などの消化器症状、発疹や蕁麻疹、月経不順や不正出血などが報告されました(国民生活センター発表情報) 。これを受け、厚生労働省消費者庁日本医師会では、安易な摂取を控えるように注意喚起を行っています。
 プエラリアを摂取したときの安全性は、含まれる植物性エストロゲンの量や種類によって異なると考えられます。しかし、製品中の植物性エストロゲン量は製品によってまちまちで、プエラリア・ミリフィカの量は明記されていたとしても、その中にミロエストロールや、デオキシミロエストロールといった植物性エストロゲンがどれだけ含まれているのかは、ほとんどの製品で把握されていません (厚生労働省調査結果) 。すべてのプエラリア製品で誰もが健康被害を起こすとはかぎりませんが、その一方で、エストロゲンに対する反応は個人差が大きいことから、体質によってプエラリアの影響が過剰に現れてしまう人もいます。
 プエラリアを更年期や無月経の女性に摂取させた試験では、一部の被験者で貧血、肝機能検査値の変動、乳房痛、腟分泌物、腟出血、頭痛、吐き気、嘔吐がみられたことが報告されています (9) (10)。
※詳しくは、素材情報データベースの「プエラリア・ミリフィカ」をご参照下さい。

■安易な利用は控えましょう
 プエラリア製品には、「プエラリアには植物性エストロゲンが含まれている」「女性ホルモンの働きをサポートする「イソフラボン」が大豆の〇〇倍」などと表示され、一般的に女性が喜ぶようなエストロゲンの作用をたくさん得られる、より女性らしくなれるといったことをイメージさせます。しかし、体内ではエストロゲンとプロゲステロンのホルモンバランスによって性周期がつくられることから、エストロゲンが多いことが必ずしも良いとは限りません。
 プエラリアは、同様に植物性エストロゲンを含むクズや大豆に比べ、非常に強い作用があると考えられます。また、健康食品の安全性には、その成分自身の作用も影響しますが、摂取量 (過剰摂取) 、摂取対象者 (ハイリスクグループ:感受性の高い人) の影響も大きいと考えられます。現時点でプエラリアの安全な摂取量についてはわかっていません。そのため、過大な期待をして安易に利用するのでなく、その必要性を冷静に判断しましょう。もし、利用していて体調に異常を感じた場合には直ちに摂取を中止し、医療機関を受診する、もしくは最寄りの保健所へ相談してください。体調不良を感じた時の対応方法については、こちらをご参照ください。

参考文献
1. (PMID:10985090) Planta Med. 2000 Aug;66(6):572-5.
2. (PMID:10691701) J Nat Prod. 2000 Feb;63(2):173-5.
3. (PMID:15886524) Exp Mol Med. 2005 Apr 30;37(2):111-20.
4. (PMID:15876408) J Steroid Biochem Mol Biol. 2005 Apr;94(5):431-43.
5. (PMID:15703807) Org Biomol Chem. 2005 Feb 21;3(4):674-81.
6. (PMID:17415017) Menopause. 2007 Sep-Oct;14(5):919-24.
7. (PMID:18202589) Menopause. 2008 May-Jun;15(3):530-5.
8. (PMID:19060449) Tohoku J Exp Med. 2008 Dec;216(4):341-51.
9. (PMID:14971532) J Med Assoc Thai. 2004 Jan;87(1):33-40.
10. (PMID:13689829) Nature. 1960 Dec 3;188:774-7.
・医学大辞典 19版 南山堂
・ギャノング生理学 原書25版 丸善出版
・産婦人科診療ガイドライン−婦人科外来編2017 公益社団法人 日本産科婦人科学会、公益社団法人 日本産婦人科医会

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