注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
タウリン (2-アミノエタンスルホン酸) [英]Taurine [学名]
概要
タウリンは生体中のほとんどすべての組織に存在している含硫アミノ酸の代謝中間体。様々な動植物組織に含まれているが、植物に含まれている量はわずかで、動物、特に魚介類 (イカ、タコなど) に多く含まれている。ヒトでは心筋、筋肉、脾臓、脳、肺、骨髄などに存在している。タウリンは「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に区分されるため、原則として抽出物や生成物として食品に添加することはできない。 ●有効性俗に、「血中脂質を改善する」「肝機能を高める」「血圧を下げる」と言われており、タウリン摂取によりうっ血性心不全および肝炎に対して一部で有効性が示唆されているが、その他の有効性については十分な情報が見当たらない。 ●安全性適切に摂取する場合は安全性が示唆されている。妊娠中・授乳中の安全性については、濃縮物として摂取する場合の信頼できる十分なデータがないため使用を避ける。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料)」に該当する。 ■日本薬局方 ・タウリンが収載されている。 ■食品添加物 ・既存添加物:調味料等
成分の特性・品質
主な成分・性質
・C2H7NO3S、分子量 (MW) 125.15の含硫アミノ酸の代謝中間体。体内ではシステインから合成される (16) 。
分析法
・イオン交換クロマトグラフィーにて分離後、ニンヒドリンなどの発色試薬で発色し蛍光検出器 (励起波長440 nm、蛍光波長570 nm) を装着したアミノ酸自動分析計により分析する方法が一般的である (101) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
一般情報 ・うっ血性心不全に有効性が示唆されている (94) 。 RCT ・健康な成人80名 (試験群41名、ノルウェー) を対象とした二重盲検並行群間無作為化比較試験において、EPA+DHA 1.1 g/日とタウリン425 mg/日を含む魚パテを7週間摂取させたところ、血中のTC、LDL-C、ApoB、TC/HDL-C比の低下が認められた (PMID:18242615) 。 ・うっ血性心不全患者14名 (46〜84歳、日本) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、通常の治療に加えてタウリン6 g/日を4週間摂取させたところ、症状スコアの改善が認められた (PMID:3888464) 。
消化系・肝臓
一般情報 ・肝炎に有効性が示唆されている (94) 。 RCT ・急性肝炎患者63名 (試験群31名、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、タウリン4 g×3回/日を6週間摂取させたところ、血清ビリルビン濃度、胆汁酸濃度の低下速度が促進した (PMID:6878421) 。
糖尿病・内分泌
調べた文献の中に見当たらない。
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
RCT ・健康な成人男性29名 (試験群15名、20〜33歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、タウリン粉末2 g×3回/日を肘屈筋レジスタンス運動前に2週間、運動後に4日間摂取させたところ、運動直前の血管内皮機能 (FMD) の増加が認められた。一方、運動後のFMD、動脈直径に影響は認められなかった (PMID:31468418) 。 ・運動習慣のある男性17名 (平均26±5歳、ブラジル) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、タウリン6 gをトレッドミル走行の90分前に摂取させたところ、疲労困憊するまでの時間、血中乳酸濃度、VO2max、最大酸素借に影響は認められなかった (PMID:27109264) 。
発育・成長
肥満
その他
RCT ・75歳以上の股関節骨折患者236名 (試験群113名、平均84.4±5.4歳、オランダ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、入院時から手術6日後までタウリン6 g/日を摂取させたところ、術後の血中ストレスマーカー15項目中1項目 (8-OHdG) のみ減少が認められたが、入院期間、術後合併症リスク、動作機能評価、併存疾患リスク、術後1年までの死亡率に影響は認められなかった (PMID:26035756) 。 ・自転車選手の男性11名 (平均34.6±11.5歳、イギリス) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、タウリン1,000 mgを単回摂取させ、2時間後に4 km自転車タイムトライアルを実施したところ、成績、心拍、酸素消費量、乳酸産生量に影響は与えなかった (PMID:27380030) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・適切に摂取する場合、安全性が示唆されている (94) 。 ・国内では「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に区分される (30) ため、食品に使用することは認められていない。 <妊婦・授乳婦> ・妊娠中・授乳中に食品に含まれている量のタウリンを摂取することはおそらく安全であるが、濃縮物として摂取した場合の安全については十分なデータがないため、使用を避ける (94) 。 <小児> ・小児でも適切に用いれば安全性が示唆されている (94) 。4ヶ月まで安全に摂取できた (94) 。 <被害事例> ・19歳男性 (コソボ) が、タウリン含有のエナジードリンクを摂取したところ、臀部、下肢、大腿部、腹部、背中などに、そう痒、局所熱、不快感を伴う多形紅斑を生じた。以前にも同製品を摂取し、同様の症状を呈したことから、摂取した製品のタウリンに起因する多形滲出性紅斑と診断された (PMID:28006882) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<動物・試験管内> ・in vitro 試験 (LS-180V細胞) において、タウリンは48時間事前処理および同時作用のいずれもP糖タンパク質活性に影響を及ぼさなかった (PMID:20118549) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・タウリンは利尿作用を有する可能性があるため、リチウムの排出が減少し、リチウムレベルが増加する可能性がある (94) 。
動物他での 毒性試験
1. LD50 (半数致死量) ・タウリンを投与:ラット経口5 g/kg以上、マウス経口7 g/kg以上 (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
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総合評価
・食品に含まれている量のタウリンを適切に摂取する場合は安全性が示唆されている。 ・妊娠中・授乳中に食品に含まれている量のタウリンを摂取することはおそらく安全であるが、濃縮物として摂取した場合の安全については、信頼できる十分なデータがないため使用を避ける。 ・国内では「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に区分されるため、食品に使用することは認められていない。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・うっ血性心不全、肝炎に有効性が示唆されている。
参考文献
(16) 生化学辞典 第3版 東京化学同人 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (101) 衛生試験法・注解2000 金原出版株式会社 日本薬学会編 (PMID:3888464) Clin Cardiol. 1985;8:276-82. (PMID:6871923) Clin Ther. 1983;5(4):398-408. (PMID:11713623) Psychopharmacology (Berl). 2001 Nov;158(3):322-8. (PMID:1669669) Am J Dis Child. 1991 Dec;145(12):1401-4. (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS). (PMID:18242615) Atherosclerosis. 2008 Oct;200(2):396-402. (78) 改訂 食品添加物インデックス 和名・英名E No.検索便覧 中央法規 社団法人日本輸入食品安全推進協会 (94) Natural Medicines (PMID:26035756) Int J Mol Sci. 2015 May 29;16(6):12288-306. (PMID:28006882) Acta Dermatovenerol Alp Pannonica Adriat. 2016 Dec;25(4):83-84. (PMID:27380030) Amino Acids. 2016 Nov;48(11):2581-2587. (PMID:31468418) Adv Exp Med Biol. 2019;1155:407-414. (PMID:20118549) Biol. Pharm. Bull. 2010;33(2):255-259. (PMID:27109264) Appl Physiol Nutr Metab. 2016 May;41(5):498-503.