注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
α-リノレン酸 [英]Alpha-Linolenic acid [学名]Alpha-Linolenic Acid
概要
α-リノレン酸は、n-3系 (ω3、オメガ3系) 不飽和脂肪酸の1つであり、二重結合を3個もつ多価不飽和脂肪酸。細胞膜を構成する脂質に含まれる。人の体内では合成されないため食物から摂取する必要があり、必須脂肪酸に分類されている。生体内で代謝され、エイコサペンタエン酸 (EPA)やドコサヘキサエン酸 (DHA)の合成に利用される。シソ油、エゴマ油、アマニ油に多く含まれる。n-3系不飽和脂肪酸、魚油については、それぞれのページを参照のこと。 ●有効性俗に、「アレルギーを改善する」「アンチエイジングに良い」「血流を改善する」「血圧を低下させる」「心血管疾患を予防する」などと言われているが、情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない、もしくは現時点で十分ではない。 ●安全性 通常の食事に含まれる量を摂取する場合、おそらく安全であるが、多量摂取した場合の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらない。妊娠中、授乳中は、通常の食事に含まれる量を摂取する場合、おそらく安全であるが、多量摂取した場合の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらないため、サプリメントなど濃縮物の摂取は控えること。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・リノレン酸:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・C18H30O2、分子量 (MW) 278.44。9、12、15位にシス二重結合をもつ炭素数18のn-3系列の直鎖不飽和脂肪酸。略号18:3n-3。融点-10〜−11.3℃(32) 。
分析法
・試料をケン化後、脂肪酸を抽出し、ガスクロマトグラフィーで測定する (101) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
一般情報 ・心血管疾患の初期予防、あるいは二次予防のための食事の一環として摂取するのは、有効性が示唆されている。6年にわたってα-リノレン酸を食事からよく摂取した人は男女ともに、心筋梗塞のリスクが59%低下していたという知見がある。α-リノレン酸を10年摂取した女性では、死に至る虚血性心疾患のリスクが65%低下したと報告されているが、サプリメントでの摂取で同等の効果を得られるかどうかは不明である (94) 。 メタ分析 ・2017年8月までを対象に3つのデータベースで検索できたコホート研究14報について検討したメタ分析において、成人によるα-リノレン酸の摂取量は、冠動脈性心疾患 (13報) 、致死的冠動脈性心疾患 (9報) の発症リスク低下と関連が認められた (PMID:29355094) 。 ・2012年1月までを対象に5つのデータベースで検索できた観察研究27報について検討したメタ分析において、食事からのα-リノレン酸の摂取量は、致死性冠動脈性心疾患 (6報) 発症リスクの低下と関連が認められた。一方、非致死性冠動脈性心疾患 (3報) 、総冠動脈性心疾患 (5報) 、脳卒中 (3報) の発症リスクとの関連は認められなかった (PMID:23076616) 。
消化系・肝臓
調べた文献の中に見当たらない。
糖尿病・内分泌
メタ分析 ・2011年6月までを対象に4つのデータベースで検索できたコホート研究16報について検討したメタ分析において、魚介類の摂取、EPA+DHAの摂取、α-リノレン酸の摂取は2型糖尿病の発症リスクとの関連は認められなかった (PMID:22591895) 。
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
メタ分析 ・2011年6月までを対象に5つのデータベースで検索できたコホート研究4報について検討したメタ分析において、α-リノレン酸の摂取は前立腺がんのリスク低下と関連が認められた (PMID:23193480) 。 ・2007年までを対象に1つのデータベースで検索できた症例対照研究8報と前向き研究8報について検討したメタ分析において、α−リノレン酸の多量摂取は、前立腺がんのリスクを上昇させた (PMID:19321563) 。
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
-
安全性
危険情報
<一般> ・通常の食事に含まれる量を摂取する場合、おそらく安全であるが、多量に摂取した場合の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらない (94) 。 ・乳製品や肉類由来のα-リノレン酸の多量摂取は、前立腺がんのリスクを高める可能性がある (94) 。 <妊婦・授乳婦> ・通常の食事に含まれる量を摂取する場合、おそらく安全であるが、多量摂取した場合の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらないため、サプリメントなど濃縮物の摂取は控えること (94) 。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して、信頼できる十分な情報は見当たらない。 <病者> ・腎臓移植を受けた患者は、多量のα-リノレン酸の摂取と死亡リスク上昇の関連の可能性が報告されているため、サプリメントなど濃縮物の摂取は避けること (94) 。 ・前立腺がん患者は、乳製品や肉類由来のα-リノレン酸の多量摂取により、病状進行のリスクが上昇する可能性があるため、サプリメントなど濃縮物の摂取は避けること (94) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
動物他での 毒性試験
1. LD50 (半数致死量) ・9,12,15-オクタデカトリエン酸エチルエステルを投与:マウス経口111.25 g/kg (91) 。 ・塩化9,12,15-オクタデカトリエン酸を投与:ラット経口10.2 g/kg (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
総合評価
・通常の食事に含まれる量を摂取の場合、おそらく安全であるが、多量摂取した場合の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらない。 ・妊娠中、授乳中は、通常の食事に含まれる量を摂取する場合、おそらく安全であるが、多量摂取した場合の安全性については信頼できる十分な情報が見当たらないため、サプリメントなど濃縮物の摂取は控えること。 ・腎臓移植を受けた患者、前立腺がん患者の摂取は注意が必要であるため、自己判断でのサプリメントなど濃縮物の摂取を控えること。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない、もしくは現時点で十分ではない。
参考文献
(PMID:7774533) Eur J Clin Nutr. 1995 Mar;49(3):169-78. (PMID:6391903) Dtsch Z Verdau Stoffwechselkr. 1984;44(5):245-51. (PMID:15495044) Cochrane Database Syst Rev. 2004 Oct 18;(4):CD003177. (PMID:10951510) Eur J Clin Nutr. 2000 Aug;54(8):618-25. (PMID:19321563) Am J Clin Nutr. 2009 May;89(5):1558S-1564S. (PMID:22591895) Br J Nutr. 2012 Jun;107 Suppl 2:S214-27. (PMID:23193480) Prostate Cancer. 2012;2012:826254. (94) Natural Medicines (PMID:23076616) Am J Clin Nutr. 2012 Dec;96(6):1262-73. (PMID:29355094) Br J Nutr. 2018 Jan;119(1):83-89. (32) 生化学辞典 第4版 東京化学同人 (102) 健康・機能性食品の基原物質事典 中央法規