注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
サフラン [英]Saffron、Saffron crocus [学名]Crocus sativus L.
概要
サフランは、南ヨーロッパ原産の多年生草本で、イランを中心に広く栽培されている。スペインやフランス、インドなどの米料理の着色や香りづけに用いられ、高価なスパイスとして知られている。 ●有効性 俗に、「血行をよくする」「記憶力を増進させる」などと言われているが、月経前症候群 (PMS) に対して有効性が示唆されているものの、その他の有効性については、情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない、もしくは現時点で十分ではない。 ●安全性 柱頭、花弁を通常の食事に含まれる量摂取する場合、おそらく安全であるが、柱頭、花弁を多量または長期間摂取する場合、危険性が示唆されている。妊娠中に通常の食事に含まれる量以上を摂取する場合、堕胎作用があるためおそらく危険であり、摂取を避けること。授乳中は信頼できる十分な情報が見当たらないため、自己判断での摂取を避けること。双極性障害患者、糖尿病患者、心疾患患者、低血圧患者の摂取は、注意が必要であるため、自己判断でのサプリメントなど濃縮物の摂取を控えること。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・柱頭:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■日本薬局方 ・サフランが収載されている。 ■食品添加物 ・既存添加物 香辛料抽出物 (スパイス抽出物/香辛料/スパイス):苦味料等 ・天然香料基原物質リスト サフランが収載されている。 ・一般飲食物添加物 サフラン、サフラン色素:着色料 ■海外情報 ・米国では、GRASに該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・セコカロテノイド (クロセチン、γ-クロセチン、クロシン2〜4) 、イリドイド (クロクサチンA、F〜H、J〜L) 、トリテルペンサポニン (アザフリン1、2) (102) 、アデノシン (1995027304) などを含む。
分析法
・品質の指標として、クロシン1、クロシン2、クロシン3、クロシン4およびクロセチンがC18逆相カラム付HPLCにより分析されている (PMID:10457433) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
RCT:海外 ・健康な成人60名 (イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、サフラン柱頭乾燥物200 mg/日 (20名、平均31.47±9.11歳) または400 mg/日 (20名、平均29.95±7.54歳) を7日間摂取させたところ、血液凝固・抗凝固因子 (フィブリノーゲン、VII因子、プロテインC、プロテインS、PT、PTT) に影響は認められなかった (PMID:23733488) 。
消化系・肝臓
調べた文献の中に見当たらない。
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
RCT:海外 ・月経前症候群の成人女性47名 (20〜45歳、試験群24名、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、サフラン花弁エタノール抽出物15 mg×2回/日を2性周期間、摂取させたところ、月経前症状の総スコアの減少が認められた (PMID:18271889) 。
脳・神経・感覚器
RCT:国内 【機能性表示食品】 健康な成人21名 (試験群10名、平均37.70±5.45歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、サフラン抽出物 (クロシン0.6 mg含有) /日を4週間摂取させたところ、睡眠の質 (ピッツバーグ睡眠質問票) に影響は認められなかった (2019146349) 。 RCT:海外 【機能性表示食品】 気分の落ち込みがある健康な成人121名 (オーストラリア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、サフラン抽出物 22 mg/日 (42名、平均36.7±14.59歳) または28 mg/日 (41名、平均40.4±12.71歳) を4週間摂取させたところ、28 mg群で気分の評価 (POMS) の総合評価、下位6項目中4項目 (抑うつ-落ち込み、混乱、疲労、活気) の改善、短期的気分の評価 (PANAS) のネガティブ感情の減少、抑うつ・不安・ストレス尺度 (DASS-21) のスコア低下が認められた。一方、睡眠の質 (ピッツバーグ睡眠質問票) に影響は認められず、22 mg群では、いずれにおいても影響は認められなかった。 (PMID:28735826) 。
免疫・がん・炎症
RCT:海外 ・健康な成人男性99名 (試験群45名、平均22.5±0.6歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、サフラン柱頭乾燥物100 mg/日を6週間摂取させたところ、免疫機能マーカー (IgG、IgM、IgA、C3、C4) に影響は認められなかった (PMID:21480412) 。
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
-
安全性
危険情報
<一般> ・多量摂取により、皮膚や強膜、粘膜が黄色くなる黄疸様症状、嘔吐、めまい、血の混じった下痢、血尿、鼻や唇、目の縁、子宮からの出血、しびれ感、尿毒症による衰弱、鼻の壊死を招く血小板減少性の紫斑などの症状を起こす可能性がある (23) 。 ・成人30名 (20〜50歳、イラン) を対象とした二重盲検プラセボ対照試験において、乾燥サフラン柱頭200 mgもしくは400 mgを含むタブレット1錠/日を1週間摂取させたところ、摂取前と比較して血圧、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板の減少やナトリウム、BUN、クレアチニンの増加が認められた (PMID:18693099) 。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報は見当たらない。 <その他> ・サフランはオリーブ属、オカヒジキ属、ドクムギ属の植物と交差過敏症があるので、これらの植物に過敏症がある人は注意が必要である (PMID:9226057) 。 <被害事例:国内> ・55歳女性 (日本) が更年期障害に対して処方された2種の漢方薬 (女神散、サフランK) を2ヶ月程度服用していたところ、褐色尿、右上腹部痛、全身倦怠感、眼球黄染が生じて医療機関を受診、総ビリルビンおよび肝胆道系酵素の上昇が認められた。肝生検により薬物性肝炎を示唆する肝組織所見が認められ、また、DLSTにおいて服用していた2種の漢方薬において陽性であったため、摂取していた漢方薬による薬物性肝機能障害と診断された (2008199437) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<ヒト試験> ・健康な成人34名 (平均38.79±14.58歳、日本) を対象としたオープンラベル前後比較試験において、サフラン茶150 mL (C.sativus粉末300 mg含有) を6日間摂取させたところ、尿中CYP1A2、CYP2A6、キサンチンオキシダーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ2活性に影響を及ぼさなかったが、唾液中CYP1A2活性を減弱させた (PMID:31082462) 。
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) ・柱頭エタノール抽出物を投与:ラット腹腔内3.5 g/kg (91) 。 ・花弁水抽出物を投与:マウス腹腔内 6.67 g/kg (91) 。 2.TDLo (最小中毒) ・柱頭水抽出物を摂取:ヒト経口42 mg/kg/7日 (間欠的) 、23.1 mg/kg/7日 (間欠的) (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・柱頭:クラス2b (22) 。
総合評価
・柱頭、花弁を通常の食品として摂取する場合、おそらく安全であるが、多量または長期間摂取する場合、危険性が示唆されている。 ・多量摂取により、皮膚や強膜、粘膜が黄色くなる黄疸様症状、嘔吐、めまい、血の混じった下痢、血尿、鼻や唇、目の縁、子宮からの出血、しびれ感、尿毒症による衰弱、鼻の壊死を招く血小板減少性の紫斑などの症状を起こす可能性がある。 ・柱頭、花弁を妊娠中に通常の食品に含まれる量以上を摂取する場合、堕胎作用があるためおそらく危険であり、摂取を避けること。 ・授乳中は柱頭、花弁の安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらないため、自己判断での摂取を避けること。 ・双極性障害患者、糖尿病患者、心疾患患者、低血圧患者は、柱頭、花弁の摂取により状態が悪化する可能性があるため、自己判断での摂取は控えること。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・月経前症候群 (PMS) に対して有効性が示唆されているものの、その他の有効性については、情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない、もしくは現時点で十分ではない。
参考文献
(22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (23) 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店 小林彰夫ら 監訳 (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (PMID:9226057) Allergy. 1997 Jun;52(6):633-41. (1995027304) 和漢医薬学会誌. 1993;9(3):175-81. (PMID:18693099) Phytomedicine. 2008 Dec;15(12):1032-7 (PMID:10457433) J Chromatogr A. 1999 Jul 23;849(2):349-55. (2008199437) 肝臓. 2008;49(4):166-70. (PMID:21480412) Phytother Res. 2011 Dec;25(12):1801-5. (PMID:22552758) Psychopharmacology (Berl). 2012 Oct;223(4):381-8. (PMID:24299602) J Integr Med. 2013 Nov;11(6):377-83. (PMID:23733488) Phytother Res. 2014 Apr;28(4):539-43. (PMID:26611571) Asian J Psychiatr. 2016 Aug;22:174-6. (PMID:30343354) Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2019 Jan;257(1):31-40. (101) 学名でひく食薬区分リスト 薬事日報社 佐竹元吉 監修 (102) 健康・機能性食品の基原植物事典 中央法規 (2019146349) 薬理と治療. 2018;46(8):1407-15. (PMID:28735826) Complement Ther Med. 2017 Aug;33:58-64. (PMID:31082462) Food Chem Toxicol. 2019 Aug;130:32-43. (PMID:18271889) BJOG. 2008 Mar;115(4):515-9.