注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
ニンジン [英]Wild carrot、Common carrot [学名]野生種 Daucus carota L.var. sativus Hoffm.、栽培種 D.catota.subusp.sativus
概要
ニンジンは食用として日常に食する野菜の一つである。特にβ-カロテンが豊富な代表的緑黄色野菜の一つであり、その栄養的特長により健康によいとされている。別項のオタネニンジン (高麗人参) などはウコギ科であり、まったく別種である。 ●有効性 薬用としては、主に西洋で、現在の食用の栽培種の元となった野生種 (ワイルドキャロット) の種子油が、泌尿器系および婦人科系の不調に使われるようであるが、人においては、信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性 通常の食事に含まれる量の野生種 (ワイルドキャロット) の種子油を摂取する場合は、おそらく安全であるが、妊娠中の摂取はおそらく危険であり、授乳中は危険性が示唆されている。 摂取してはいけない人 (禁忌) 腎臓の炎症がある人、紫外線治療中の人 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・ニンジン (ニンジン油) 根、根の圧縮油:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■日本薬局方 ・ニンジン、ニンジン末が収載されている。 ■食品添加物 ・既存添加物 ニンジンカロテン (キャロットカロチン/キャロットカロテン/ニンジンカロチン/抽出カロチン/抽出カロテン/カロチノイド/カロチノイド色素/カロチン/カロチン色素/カロテノイド/カロテノイド色素/カロテン/カロテン色素):強化剤、着色料 ■海外情報 ・ワイルドキャロット種子油:米国では、GRASに該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・茎、葉、および種子に精油 (種子はピネンpinene、カロトール、ダウコール、リモネンlimonenなど) 、アルカロイド (ダウルシン) を含む。種子油にterpinen-4-olを含む。根にビタミンC、B1、B2、カロテン、糖類、ペクチン、ミネラルを含む。 ・薬用部分は葉と根 (人参<ニンジン>) 。葉には一種の揮発油を含み、薬のような香りがある。アフガニスタン、西トルコ原産、日本へは17世紀に伝わる。花期は春。
分析法
・飲料などの品質の指標として,ジアセチルがポーラログラフィーにより分析されている (PMID:12042016) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中に見当たらない。
消化系・肝臓
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・通常の食事としてワイルドキャロット種子油を摂取する場合はおそらく安全である (94) 。 ・医療目的で使用する量のワイルドキャロット種子油を適切に摂取する場合は、安全性が示唆されている (94) 。 ・過剰な量のワイルドキャロット種子油を摂取する場合はおそらく危険である。腎臓の炎症を引き起こす可能性があり、理論的に神経障害を引き起こす可能性もある (神経活性物質ミリスチシンを含むため) (94) 。 ・地上部の安全性については、十分なデータは得られていない (94) 。 ・外用で接触性皮膚炎を起こすことがある (94) 。 <妊婦・授乳婦> ・妊娠中の摂取については、ワイルドキャロット種子油、地上部ともおそらく危険である。これらは子宮刺激、堕胎薬、月経刺激薬としての活性があるからである (94)。 ・授乳中の安全性については、ワイルドキャロット種子油は弱いエストロゲン様活性と刺激物の活性があるため、危険性が示唆されている (94) 。その他の部位についての授乳中における安全性については、十分なデータが得られていない (94) 。 ・過剰に摂取すると紫外線 (UV) に過敏症になり、日焼けを起こすおそれがある (94) 。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらない。 <その他> ・アレルギー症状を起こすことがある。カバノキやセロリ、ヨモギに過敏症がある人は、ワイルドキャロットにも過敏であることが多い (PMID:8911702) 。 <被害事例> ・24歳女性 (中国) が、ワイルドキャロットの煎じ汁を3回/日、3日間、左足に塗布し素足にサンダルで過ごしたところ、足の甲に色素過剰の斑を生じ、植物性光線皮膚炎と診断された (PMID:22016300) 。
禁忌対象者
・腎臓の炎症などがある場合は使用禁忌 (94) 。 ・紫外線治療を行う場合は使用禁忌 (94) 。
医薬品等との 相互作用
<動物・試験管内> ・in vitro試験 (ヒト酵素タンパク) において、ニンジンジュースはCYP3A4活性を阻害した (PMID:28867739) 。 ・in vitro試験 (ヒト肝ミクロソーム) において、ニンジンジュースはCYP3A4活性に影響しなかった (PMID:16415112) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・鎮静作用のあるハーブとの併用により、それらの作用や有害事象を強めることが考えられる (94) 。 ・地上部を過剰に使用すると、ワイルドキャロットのエストロゲン様作用によりエストロゲンによる治療に影響を与える可能性がある (94) 。 ・キノロン系薬物やサルファ剤などの光過敏症を起こす医薬品と併用すると、光過敏症がより強く発症することが考えられる (94) 。 ・過剰の種子油の摂取は降圧薬に影響を与える可能性がある (94) 。 ・他の食品との相互作用や臨床検査値に対する影響は知られていない (94) 。
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) ・人参抽出物を投与:ラット経口 20,500 mg/kg (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・果実 (一般に"種子"として知られる部分) :クラス2b (22) 。
総合評価
・通常の食事に含まれる量の野生種の種子油を摂取する場合は、おそらく安全である。 ・野生種の種子油を過剰摂取する場合、おそらく危険である。 ・妊娠中の摂取については、野生種の種子油も地上部も子宮刺激作用があるため、おそらく危険である。その他の部位についての妊娠中の安全性については、十分なデータが得られていない。 ・授乳中については、野生種の種子油は弱いエストロゲン様活性と刺激作用があるため、危険性が示唆されている。 ・過剰に摂取すると紫外線に過敏になるおそれがある。 ・使用禁忌として腎臓の炎症をもつ人、紫外線治療を受ける人。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・信頼できる十分なデータが見当たらない。
参考文献
(22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (PMID:12042016) Food Addit Contam. 2002 Jun;19(6):519-23. (PMID:8911702) Clin Exp Allergy. 1996 Oct;26(10):1161-70. (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS). (94) Natural Medicines (PMID:22016300) Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2011 Nov-Dec;77(6):731. (PMID:28867739) Biol Pharm Bull. 2017;40(9):1561-1565. (PMID:16415112) Drug Metab Dispos. 2006 Apr;34(4):521-3.