専門家に聞きました 【第8回】ビタミンDを含むサプリメント類の利用について

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専門家に聞きました
【第8回】
ビタミンDを含むサプリメント類の利用について

東京農業大学総合研究所
教授 石見佳子

もくじ
1.はじめに
2.ビタミンDの生理作用
3.ビタミンDの摂取量
4.サプリメント類からのビタミンD摂取
5.おわりに



1.はじめに
 ビタミンDには食事から摂取するビタミンD2と皮膚で合成されるビタミンD3があります。どちらも脂溶性で、肝臓で25-ヒドロキシビタミンDに代謝され、さらに腎臓に運ばれて活性型の1α,25-ジヒドロキシビタミンDに代謝されて活性を発揮します。このような代謝から、ビタミンDはビタミンというよりはむしろホルモンに似ているといえます。



2.ビタミンDの生理作用
 ビタミンDは血液中のカルシウム濃度を一定に保つため、様々な作用を発揮します。カルシウムは、体の機能を調節している最も重要なミネラルですから、その血中濃度は厳格に調節されています。すなわち、ビタミンDは、食物から摂取したカルシウムとリンを小腸から吸収するのを助け、腎臓においてはカルシウムの再吸収を促します。また、血中のカルシウム濃度が低下した場合は生命に関わるため、直ちに骨からカルシウムを溶かすことで、血中のカルシウム濃度を一定に保ちます。このようにカルシウム代謝が正常に維持されることで、骨へのカルシウムの蓄積も促され、生命の維持に繋がります。一方、ビタミンDには様々な細胞の増殖や分化を調節する働きがあり、この作用を利用して皮膚疾患の治療薬も開発されています。なお、ビタミンDがインフルエンザウイルスやコロナウイルスに働くかは、現時点では明確な結論は得られていません。



3.ビタミンDの摂取量
 ビタミンDは、さけやきくらげ、干ししいたけ等に豊富に含まれています。一方、ビタミンDは、皮膚において紫外線により7-デヒドロコレステロールから合成されます。科学的根拠に基づき推奨されているビタミンDの必要量は、70歳以下の成人で1日当たり15μgとされており、顔と両手におけるビタミンDの皮膚での合成量は、冬の札幌では5μg程度と報告されていることから、食事からはおおよそ10μg/日の摂取が必要とされています。現在厚生労働省が定めている日本人の食事摂取基準 (2020年版) におけるビタミンDの摂取目安量は8.5μg/日 (1) ですが、令和元年の国民健康・栄養調査ではビタミンDの摂取量は平均で男性7.4μg/日、女性6.4μg/日であり (2) 、不足しがちな栄養素といえます。重要なことは、目安量は皮膚で合成される量を考慮していない量であるということです。したがって、私たちは日常的に日光浴を心掛ける必要があります。
  ビタミンDの栄養状態を示す指標として、肝臓の代謝物である血中25-ヒドロキシビタミンDが採用されています。日本人を対象とした疫学研究では、50歳以上の女性の半数が、その基準値 (20 ng/ml) を満たしていませんでした (3) 。このような疫学研究の結果からも、ビタミンDは不足しがちな栄養素であることが分かります。ビタミンDの欠乏症はくる病 (大人は骨軟化症) であり、骨にカルシウムが沈着しないため弱い骨になってしまいます。また、長期間ビタミンDの不足状態が続く場合は、特に高齢者で骨折のリスクが高まります。一方、ビタミンDの過剰摂取は、高カルシウム血症を引き起こし、重篤な症状に陥ることもあります。



4.サプリメント類からのビタミンD摂取
 このように不足しがちなビタミンDですが、サプリメント類からのビタミンDの摂取には過剰摂取に留意する必要があります。令和3年度に実施された消費者庁の調査事業では、未成年者におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況の調査が実施されました (4) 。
 不足しがちな栄養成分の補給・補完を目的とした食品として「栄養機能食品」があります。栄養機能食品は栄養成分の機能表示ができるもので、特に消費者庁の許可や届け出は必要ありませんが、1日摂取目安量の上限量と下限量等の規格基準が設定されています。調査では、ビタミンDの補給を目的とした栄養機能食品では、含有量の表示値は規格基準の範囲内のものが殆どでしたが、ビタミンD以外の栄養成分の補給を目的とする製品においては、ビタミンDの含有量が上限量 (5μg) を超える製品が複数確認されました。
 また、サプリメント形態の機能性表示食品では、1日摂取目安量が1.65〜54μgの製品があり、栄養機能食品の上限量を超えた食品が多数ありました。このような結果から、ビタミンDは不足しがちな栄養素ですが、サプリメント類からの摂取には注意が必要であることが分かります。
 未成年者 (3歳〜17歳) におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況調査では、男女とも全年齢層で「シリアル類」「乳製品」が多い結果でした (4) 。また、摂取量としては、特に低年齢でサプリメント類の食品からの摂取量が最も多い結果でした。日本人の食事摂取基準の耐容上限量を超えるケースがあり、比較的低い年齢層でその割合が高いという結果でした。ビタミンDを含む加工食品を取る理由としては、サプリメント類や乳製品摂取者の親では「健康のため」「成長のため」と回答した方の割合が高かったようです。これらの結果から、ビタミンDを含むサプリメント類の食品については、特に未成年者の過剰摂取に留意する必要があります。
 ごく最近、食品安全委員会は、栄養成分関連添加物としての25-ヒドロキシビタミンD3の健康影響評価を行い、栄養強化剤として「カプセル・錠剤等通常の食品形態でない食品」に使用する際は、過剰摂取の懸念からリスク管理について改めて検討する必要があるとしました (5) 。



5.おわりに
 ビタミンDは不足しがちな栄養素ですが、特にカプセル・錠剤形態のサプリメント類からの摂取については、過剰摂取に留意する必要があります。



文献
(1) 日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省
(2) 令和元年「国民健康・栄養調査」の結果 厚生労働省
(3) Osteoporos. Int. 2017; 28:1903-1913.
(4) 栄養機能食品等の摂取状況等に関する調査事業報告書(未成年者におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況等) 消費者庁
(5) 25-ヒドロキシコレカルシフェロールの健康影響評価 食品安全委員会



石見佳子 (いしみよしこ)
1980年東京理科大学薬学部薬学科卒業、昭和大学歯学部 (歯学博士) 、アルバート・アインシュタイン大学、国立健康・栄養研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所を経て2019年より現職。専門は食品保健、骨・カルシウム代謝。



<国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所>


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