注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
アサ (麻) [英]Cannabis, Chingma, Hemp, Linen, Indian hemp, Marijuana [学名]Cannabis sativa L.
概要
アサは世界各地で栽培されているアサ科の一年生草本。実が薬味として、種子油が麻実油として食用され、それぞれヘンプシード、ヘンプオイルとも呼ばれる。葉や未熟な花穂は大麻取締法により規制されている。また、発芽防止処理されていない種子は「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に分類されるため食品に用いることはできない。 含有成分のCBD (カンナビジオール) に関する情報は別項を参照。 ●有効性 俗に、「生活習慣病を防ぐ」「ダイエット効果がある」「ストレス緩和によい」などと言われているが、食品として利用できるのは発芽防止処理されている種子のみであり、食品として摂取した場合について、情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない。 ●安全性 多量または長期間摂取する場合、危険性が示唆されている。妊娠中の摂取は危険である。授乳中の摂取はおそらく危険である。 躁うつ病患者、心血管疾患患者、うつ病患者、精神病患者、糖尿病患者、てんかん患者、慢性肝炎患者、脳卒中の既往がある患者、術前の患者の摂取は、注意が必要である。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・マシニン (麻子仁) 発芽防止処理されていない種子:「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に該当する。 ・アサ (タイマ、オノミ、アサノミ) 発芽防止処理されている種子:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■大麻取締法 ・大麻草 (Cannabis sativa L.) 及びその製品 (大麻草の成熟した茎及びその製品 (樹脂を除く) 並びに大麻草の種子及びその製品を除く) は、「大麻研究者」でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール (THC) 、カンナビジオール (CBD) をはじめとするカンナビノイドを含む (94) (102) 。
分析法
−
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中に見当たらない。
消化系・肝臓
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・多量または長期間摂取する場合、危険性が示唆されている。短期間、少量する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報は見当たらない (94) 。 ・摂取により、めまい、口腔内の乾燥、疲労感、頭痛、食欲亢進、吐き気、妄想、解離性思考、鎮静などを生じる可能性がある。多量摂取した場合、陳述記憶、運動協調性、反応速度、視覚認識などの低下、まれに急性冠症候群、不整脈、血圧変動、カンナビノイド悪阻症候群、幻覚、膵炎、パニック、精神障害、発作を生じる可能性がある (94) 。 <妊婦・授乳婦> ・妊娠中の摂取は危険である。胎盤を通過し、胎児の成長不良や早産の可能性を高める可能性がある (94) 。 ・授乳中の摂取はおそらく危険である。摂取を中止した後も6週間以上、濃縮されたTHCが母乳に移行する (94) 。 <小児> 信頼できる十分な情報は見当たらない。 <病者> ・躁うつ病患者は、躁症状の発症リスクが高まる可能性がある (94) 。 ・心血管疾患患者は、頻脈や一時的な高血圧を生じ、心臓麻痺を発症するリスクが高まる可能性がある (94) 。 ・うつ病患者、統合失調症を伴う精神病患者は、摂取により症状が悪化する可能性がある (94) 。 ・糖尿病患者は、血糖コントロールに影響し、合併症を増悪させる可能性がある (94) 。 ・てんかん患者は、多量摂取により発作を生じる可能性がある (94) 。 ・慢性肝炎患者は、肝線維化が進行する可能性がある (94) 。 ・脳卒中の既往がある患者は、再発リスクが高まる可能性がある (94) 。 ・麻酔薬などの薬剤の作用に影響し、有害事象を生じる可能性があるため、外科的手術の2週間前までに摂取を中止した方がよい (94) 。 <その他> ・果物や野菜に過敏な人は、アレルギー反応を生じる可能性がある (94) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<動物・試験管内> ・動物実験 (マウス) において、アサ抽出物 (57.9% CBD含有) の摂取は肝臓のCYP2C65、CYP2D22、CYP2E1遺伝子発現およびグルタチオン合成に影響を与えなかった。一方、CYP1A2、CYP2B10、CYP2C29、CYP2C66、CYP3A4、CYP3A11遺伝子発現を増加させた (PMID:33096940) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・アルコール、中枢神経抑制薬、鎮痛効果を持つハーブやサプリメントとの併用は、それらの作用を増強する可能性がある (94) 。 ・麻酔薬との併用は、薬剤の作用と安全性に影響する可能性がある (94) 。 ・抗凝固薬や抗血小板薬、血小板凝集に作用するハーブやサプリメントとの併用は、出血のリスクが高まる可能性がある (94) 。 ・ワルファリン (抗凝固薬:CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4基質) との併用は、薬剤の作用を増強する可能性がある (94) 。 ・抗血栓薬との併用は、薬剤の作用を増強し、出血のリスクが高まる可能性がある (94) 。 ・バルビツール酸系向精神薬との併用は、薬剤の血中濃度を増加させ、有害事象を生じる可能性がある (94) 。 ・CYP2C9、CYP3A4によって代謝される薬剤との併用は、薬剤の血中濃度を増加させ、有害事象を生じる可能性がある (94) 。 ・CYP2E1によって代謝される薬剤との併用は、薬剤の作用を減弱させる可能性がある (94) 。 ・P糖タンパク質基質との併用は、薬剤の血中濃度を増加させる可能性がある (94) 。
動物他での 毒性試験
1.LD (致死量) ・アサを投与:サル経口>5 g/kg (91) 。 2.LD50 (半数致死量) ・アサを投与:ラット経口1,380 mg/kg (91) 。 ・アサを投与:イヌ経口5 g/kg (91) 。 3.TDLo (最小中毒量) ・アサを投与:マウス経口10 mg/kg (呼吸器) (91) 。 ・アサを投与:ラット経口 (間欠的) 89.25 g/kg_17週 (発作、死亡) 、68 g/kg/91日 (脳) (91) 。 ・アサを投与:雄性ラット経口 (受胎後12〜22日) 1.6 g/kg、 (受胎後2〜21日) 3 g/kg、 (受胎後3〜22日) 3 g/kg (胎児毒性) (91) 。 ・アサを投与:雄性ラット (交配9週前) 、雌性ラット (交配2週前および出産後) 経口176 mg/kg、 雄性ラット (交配9週前) 、雌性ラット (交配2週前および受胎後) 経口44 mg/kg (胎児毒性) (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・参考文献中に記載なし (22) 。
総合評価
・多量または長期間摂取する場合、危険性が示唆されている。 ・摂取により、めまい、口腔内の乾燥、疲労感、頭痛、食欲亢進、吐き気、妄想、解離性思考、鎮静、陳述記憶、運動協調性、反応速度、視覚認識などの低下、急性冠症候群、不整脈、血圧変動、カンナビノイド悪阻症候群、幻覚、膵炎、パニック、精神障害、発作を生じる可能性がある。 ・妊娠中の摂取は危険である。授乳中の摂取はおそらく危険である。 ・躁うつ病患者、心血管疾患患者、うつ病患者、精神病患者、糖尿病患者、てんかん患者、慢性肝炎患者、脳卒中の既往がある患者、術前の患者の摂取は、注意が必要である。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・情報の信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない。
参考文献
(22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS). (94) Natural Medicines (101) 学名でひく食薬区分リスト (102) 基原植物事典 中央法規 (PMID:33094069) Cureus. 2020 Sep 18;12(9):e10528.