専門家に聞きました 【第7回】子どものサプリメント利用の考え方

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専門家に聞きました
【第7回】
子どものサプリメント利用の考え方

城西大学 薬学部医療栄養学科
助教 佐藤陽子

もくじ
1.はじめに
2.乳幼児
3.小児
4.健康被害
5.おわりに



1.はじめに
皆さんも、インターネットや雑誌、ドラッグストアなどで、子ども用のサプリメントの広告や製品を目にしたことがあると思います。「体が小さいから」「好き嫌いが多いから」「食が細いから」「スポーツをしているから」「持病があるから」など、様々な理由で、自分の子どもにもサプリメントを与えた方がいいのかな?と考える人も多いでしょう。

今回は、子どもにサプリメントを与える前に知っておいて欲しいことについてご紹介します。
(本記事では、サプリメントとは、錠剤・カプセル・粉末・シロップなどのおくすりと同じような形状の健康食品のことをいいます。)



2.乳幼児 (0〜6歳くらい)
日本では、約10〜20%の乳幼児がサプリメントを利用した経験があるといわれています (1,2) 。乳幼児期は、まだ、からだが未発達なため、食べたものの影響を大きく受けます。サプリメントはおくすりと違い、その安全性や有効性が十分に確保されているとは言い難いので、この時期のサプリメントの利用には慎重になるべきです。

好き嫌いやムラ食い、食が細い、などがあると心配になるかもしれませんが、こうした問題は乳幼児期によくみられる発達段階の特徴で、成長とともに解決することが多いです。幼児期の野菜・果物摂取量が多い男の子は就学時の背が高かったという報告が示すように (3) 、背が伸びる (機能) =カルシウム (成分) =牛乳 (食品) だけではありません。機能と成分と食品は単純に1:1:1で結びつくものではないことが分かります。たとえ食べられない食品があっても、他の食品が食べられれば過度な心配はいりません。また、周りの子より小食でも、極端な成長障害が見られなければ心配ありません。子どもの食について心配なことがある場合には、自己判断でサプリメントを与えるのではなく、管理栄養士などの専門家に相談してください。

乳幼児期は、様々な食品に出会う大切な時期です。また、食べることの楽しさを知る時期でもあります。栄養素の摂取も大切ですが、この時期の食経験が将来の食生活の基礎となりますので、いろいろな食品と出会い、楽しく食べる習慣を身につけることが何よりも重要です。



3.小児 (7〜14歳くらい)
日本の小学生のサプリメント利用率は6.8%であり、特スポーツに取り組んでいる子で利用率が高いことが報告されています (4) 。激しい運動のため、より多くの栄養素摂取が必要なのではないかという不安や、パフォーマンスを向上させたいという思いが利用を後押ししているのかもしれません。

しかし、小児期に必要となるエネルギーや栄養素は、食事とおやつから摂取することが基本です。スポーツ栄養の分野でも、小児での「サプリメントを利用しなくては維持できないような運動量は、本来お勧めできません。しっかりと食べて補いきれるだけの運動量にすべきです。」と言われています (5) 。

それでも、試合が続いたり食欲不振が続いたりして、栄養素の摂取不足が心配な時もあるかもしれません。そのような時には、食事評価を行ったうえで不足分だけ、必要なビタミン・ミネラルを補うという利用方法を基本とすべきです。また、食事摂取基準で設定されている栄養素以外の成分を、サプリメントとして摂取することは、おすすめしません。

スポーツの指導者やスポーツ活動を行っている子どもの保護者の間では、子どもにサプリメントを与えることに前向きな人が多いと報告されていますが (6) 、サプリメントへの過剰な期待はせず、なぜ必要なのか?何が、どれくらい必要なのか?をしっかりと見極めてから利用させるべきです。

また、スポーツ活動における安易なサプリメントの利用はアンチ・ドーピングのルール違反につながることがあります。実際に、国内外を問わず世界中で、サプリメントが原因のアンチ・ドーピングのルール違反が報告されています (7) 。スポーツ活動における子どもへのサプリメント提供は、アンチ・ドーピング教育と抱き合わせて実施することが求められます。


4.健康被害
サプリメントは「食品だから安全」、「天然素材だから安全」などと考えられがちですが、サプリメントが原因と考えられる健康被害が報告されています※1。最近、日本国内で報告された、子どもにおける健康被害の具体例には、10歳男児のスピルリナ含有サプリメントによるアレルギー性肝機能障害 (8) 、9歳女児のDHA・EPA含有サプリメントによる薬物性肝障害 (9) 、0〜1歳乳幼児のプルーンサプリメントと民間療法の併用による重篤な栄養障害 (10) などが挙げられます。
※1 健康被害についての詳しい解説は、第5回「健康食品を利用する前に確認してほしい3つのポイント」が参考になります。

子どもにサプリメントを与えたことのある母親は、「天然物は化学的に合成されたものより安全である」と考える人が多いという研究結果がありますが (11) 、ハーブや植物由来サプリメントの素材にも、毒性を示す成分が多数含まれていることが報告されています (12) 。「食品だから」「天然・自然だから」は、安全の理由にはなりません※2
※2 食品の安全性についての正しい考え方については、第4回「健康食品の安全性」が参考になります。

また、製品自体に問題は無くても、利用する側の体質や、使い方によっても健康被害は起きてしまいます。子どもにサプリメントを与える際には、正しい知識を持って、管理栄養士など専門家の指導のもとで与えるようにしましょう。



5.おわりに
乳幼児・小児期は、生涯にわたる食習慣を形成する大切な時期です。子どもの間食摂取習慣は父親の食生活の影響を受けていたという研究報告が示すように (13) 、この時期の食習慣は身近な大人の影響を色濃く表します。子どもにサプリメントを与える前に、まずは、ご自身を含め、家族全員の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

そのうえで、どうしてもサプリメントによる栄養素の補給が必要だと判断した場合に限り、
 ・品質のしっかりした、ビタミンやミネラルのサプリメントを選択する。
 ・必要な時に、必要な量だけ利用する(できるだけ、専門家の指導を仰ぐ)。
 ・利用により何か望まない体調変化が見られたら、すぐにやめる。
 ・ある程度利用しても良い効果が実感できなければ、やめる。
という姿勢で、お付き合いすることをおすすめします。



文献
1. J Nutr Sci Vitaminol. 2016; 62(1): 47-53.
2. 小児内科. 2019; 51(9): 1278-1283.
3. Int J Environ Res Public Health. 2021; 18(11): 6106.
4. Environ Health Prev Med. 2021; 26(1): 63.
5. スポーツ栄養Web. https://sndj-web.jp/
6. 小児科診療. 2020; 83(2): 217-222.
7. 公益社団法人日本アンチ・ドーピング機構. https://www.playtruejapan.org/
8. アレルギーの臨床. 2019; 39(1): 66.
9. 高松赤十字病院紀要. 2019; (6): 58-62.
10. 日本小児アレルギー学会誌. 2017; 31(4): 653.
11. 京都文教短期大学研究紀要. 2020; (58): 35-44.
12. Planta Med. 2018; 84(9-10): 613-626.
13. Nutrients. 2021; 13(4): 1138.




佐藤陽子 (さとう ようこ)
城西大学薬学部医療栄養学科 助教
2000年共立女子大学家政学部卒業、2011年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。
共立女子短期大学、国立健康・栄養研究所 (現、医薬基盤・健康・栄養研究所) を経て、2021年より現職。



<国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所>


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