注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
ウイキョウ、フェンネル [英]Fennel [学名]Foeniculum vulgare Mill
概要
ウイキョウは、ヨーロッパでも中国漢方でも古くから重要な薬用植物として利用されてきた。香りがよいので、ヨーロッパでは葉と種子が魚料理に欠かせない、重要な食用ハーブでもある。苦味フェンネル (コモンフェンネル) と甘味フェンネルという2種の汎用種があり、甘味フェンネルは自生せず栽培のみである。スパイス名で呼ばれる場合、苦味フェンネルが、フェンネルという呼び名でよく使われる。 ●有効性 俗に、「ダイエットによい」「利尿作用がある」と言われているが、乳児の仙痛に有効性が示唆されているものの、その他の有効性は信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性通常の食品に含まれる量を摂取することはおそらく安全である。授乳中の摂取は危険性が示唆されている。 ●摂取してはいけない人 (禁忌) 妊婦:ウイキョウ油、種子禁忌。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・果実、種子、根、葉:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■日本薬局方 ・ウイキョウ、ウイキョウ末、ウイキョウ油が収載されている。 ■食品添加物 ・既存添加物 香辛料抽出物:苦味料等 ・精油除去ウイキョウ抽出物:酸化防止剤 ■海外情報 ・米国では、GRASに該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・精油を約8%含み、その中のフェンチン (d-fenchone) とアネトール (anethole) 、エストラゴン (estragon) が芳香成分 (33) 。 ・含有する精油成分は、栽培する土地の年平均気温によって異なるという報告がある (2006174188) 。
分析法
・trans-anethole、p-anisaldehyde、quercetin-3-O-β-D-glucuronide、chlorogenic acidがダイオードアレイ検出器 (検出波長254 nm) 、質量分析器を装着したHPLCにより分析されている (PMID:11052726) 。漢方製剤中のanetholeが紫外可視検出器 (検出波長273 nm) を装着したHPLCにより分析されている (101) 。 ・果実中のp-anisaldehyde、estragole、anetholeをHPLC (波長280 nm) で分析したという報告がある (2006174188) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中に見当たらない。
消化系・肝臓
メタ分析 ・2015年7月までを対象に5つのデータベースで検索できた無作為化比較試験17報について検討したメタ分析において、小児疝痛の乳児 (6ヶ月齢以下) によるL.reuteri (6報) 、ウイキョウ (3報) の摂取は泣く時間の短縮と関連が認められたが、試験によるばらつきが大きかった (PMID:26655941) 。 RCT ・乳児仙痛発作の既往歴がある乳児121名 (2〜12週、試験群62名、ロシア) を対象とした無作為化プラセボ対照試験において、0.1%フェンネル種子油懸濁液5〜20 mL (上限12 mL/kg/日) を4回/日、7日間摂取させたところ、仙痛が軽減した (PMID:12868253) 。
糖尿病・内分泌
RCT ・顔に限局した軽度および中程度の特発性多毛症の女性38名 (16〜53歳、試験群26名、イラン) を対象とした二重盲検比較試験において、1%または2%フェンネル含有クリームを2回/日、12週間顔面に塗布させたところ、顔面における毛髪の直径が減少した (PMID:13678227) 。
生殖・泌尿器
メタ分析 ・2015年3月までを対象に8つのデータベースで検索できた無作為化比較試験27報について検討したメタ分析において、ディル (1報) 、ウイキョウ (1報) 、コロハ (1報) 、ショウガ (3報) 、グアバ (1報) 、バレリアン (1報) 、カミツレ (1報) 、シナモン (1報) などのハーブの月経困難症の痛みに対する効果は、報告数が少なく試験の質が低いため、結論づけることができなかった (PMID:27000311) 。
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
RCT ・過体重または肥満の閉経後女性47名 (試験群22名、平均57.36±5.6歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、フェンネル100 mg×3回/日を12週間摂取させたところ、体重、ウエスト径、ヒップ径に影響は認められなかった (PMID:29354616) 。
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
・フェンネル油は実験動物の平滑筋に対して鎮痙作用をもつことが報告されている (23)。 ・腸管の蠕動運動促進作用がある (58) 。 ・アネトールとフェネシンに、去痰活性が強い。カエルでの実験で上皮の粘膜絨毛を活性化することが示されている (58) 。 ・精油はin vitro で抗菌作用を示す (58) (23) 。 ・フェンネル油のテルペン分画は強い細胞毒性を示した (23) 。 ・エストロゲン様作用がある。ウイキョウのアセトン抽出液を雄性ラットに15日間経口投与した結果、精巣と精管のタンパク質量が減少した。一方、雌性ラットに10日間投与したところ、乳腺、卵管、子宮内膜および子宮の重量が増加した (92) 。
安全性
危険情報
<一般> ・ドイツのコミッションE (薬用植物評価委員会) では、自己判断で使用してはならないとしている。 ・種子油は医師への相談なしに数週間以上続けて摂取しないこと (58) 。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらない。 <被害事例> ・乳幼児 (女児) のウイキョウ茶摂取との関連が疑われる、早期乳房発育症4例 (トルコ) が報告されている。5ヶ月齢の乳児が4ヶ月間、3歳の幼児が2年間、5歳の幼児2人が18〜19ヶ月間、ウイキョウ茶を摂取し、早期乳房発育症を発症した (PMID:18970951) 。 ・12ヶ月齢の女児 (トルコ) がウイキョウ茶をティースプーン2〜3杯/日、6ヶ月間摂取したところ、摂取開始3ヶ月目頃から乳房発育がみられ、摂取中止により徐々に改善した (PMID:24030028) 。 ・ウイキョウは痙攣誘発が報告されているフェンチンを含むため、ウイキョウ摂取により強直間代性および全身性発作が起こる可能性がある (PMID:10460442) 。 ・ラミクタール300 mg/日の服用で症状の安定していたてんかん患者の38歳女性 (モロッコ) が、フェンネルオイル入りのケーキ5〜6個 (フェンネル含有量不明) を摂取したところ、2時間後にてんかん発作に伴う不随意性下痢を起こし、45分間意識不明になった (PMID:21865126) 。 ・花粉症の既往歴がある34歳女性 (イタリア) が、ウイキョウとキュウリを摂取した直後に口腔アレルギー症候群が生じた (PMID:10795656) 。 ・授乳中の母親が、母乳の出をよくすることを目的に、カンゾウ、ウイキョウ、アニス等を含むハーブティーを2 L/日以上摂取していたところ、母乳を与えていた生後15および20日の新生児 (2名) で低血圧、昏睡、嘔吐などの中枢神経系障害が生じた。ハーブティーの摂取中止により改善したため、母親が摂取していたハーブティーによる神経毒性と診断された (PMID:7919774) 。 ・ヨモギ花粉症をもつ30歳女性 (日本) が、ライチを摂取したところ (摂取量等不明) 、口腔アレルギー症候群、全身蕁麻疹、呼吸困難、腹痛、下痢、下血を生じ、2年後に市販のカレールー2種を用いたカレーを摂取したところ (摂取量等不明) 、同様の症状を生じたため受診。プリックテストの結果、ライチおよびカレールーに含まれていた複数のスパイス (クミン、ディル、パセリ、セロリ、コリアンダー、フェンネル、アジョワン、Bマスタード、パプリカ) に対して陽性を示し、これらを原因とするアナフィラキシーショックと診断された (2007119508) 。 ・春季、初夏、秋季にアレルギー症状を自覚する46歳女性 (日本) が、約5年前より食後のアナフィラキシー症状 (全身の膨疹、四肢の痺れ、呼吸困難、下痢、全身倦怠感など) を繰り返し経験、カレーとヨーグルトを摂取して発症したため医療機関を受診。特異的IgE検査で複数の花粉類 (カモガヤ、ハルガヤ、スギ、ヨモギ、ニガヨモギ、ヒノキ、ブタクサ) に対して陽性、プリックテストでクミン、コリアンダー、アニス、セロリ種子、ウイキョウ (フェンネル) に対して陽性を示し、花粉類との交差反応によるスパイスアレルギーと診断された (2017028885) 。
禁忌対象者
・妊娠中のウイキョウ油、種子は禁忌 (58) 。
医薬品等との 相互作用
<動物・試験管内> ・in vitro試験 (ヒト酵素タンパク) において、ウイキョウの水抽出物はCYP2D6、CYP3A4活性を抑制した (PMID:23843424) 。 ・in vitro試験 (ヒトCYPタンパク) において、ウイキョウ種子のメタノール抽出物はCYP3A4、CYP3A7、CYP2D6活性を、水抽出物はCYP3A4、CYP3A7活性を阻害した (PMID:24934554) 。 ・in vitro試験 (ヒト酵素タンパク) において、ウイキョウ茶の熱水抽出物はCYP2E1活性を阻害した (PMID:24458977) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・種子や果実をシプロフロキサシン (抗生物質:CYP1A2基質) と併用すると、同薬の効果を減弱させる可能性がある。その生物学的利用能を50%低下させたという知見もある (PMID:10678493) 。
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) ウイキョウ油を投与:マウス経口3,120 mg/kg、ラット経口3,100 mg/kg (91) 。 2.その他 ・オオウイキョウ抽出物3 mg/kgを3週齢雄性マウスに6週間投与したところ、体重と性器官重量の低下、生殖能力の低下、精子数と精子の運動性の低下が観察されるため、前思春期にオオウイキョウ抽出物に暴露されると、成体となっても生殖能力が損なわれる危険性があるとの指摘がある (PMID:11603570) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・果実(一般に”種子”として知られる部分):クラス1 (22) 。
総合評価
・種子や果実は短期間、適切に摂取する場合は安全性が示唆されているが、長期摂取は危険性が示唆されている。成分の一つであるエストラゴールは前発がん物質である。 ・妊娠中はウイキョウ油、種子は使用禁忌である。その他の部位の安全性についても信頼できる情報が十分に見当たらないので、妊娠中は使用を避ける。 ・授乳中の摂取は危険性が示唆されている。 ・ウイキョウ油にはエストロゲン様作用があると示唆されているので、乳がん・子宮がん・卵巣がん・子宮内膜症・子宮筋腫の患者は摂取を避けたほうがよい。 ・ニンジン、セロリ、ヨモギ、セリ科の植物にアレルギーのある人は、ウイキョウにもアレルギーが起こる場合があるので要注意。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・調べた文献の中に見当たらない。
参考文献
(22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (23) 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店 小林彰夫ら 監訳 (58) The Complete German Commission E Monographs (101) 医薬品研究. 1996;27(3):111-8. (92) 現代中薬薬理学 天津科学技術出版社 (PMID:10678493) J Pharm Pharmacol. 1999 Dec;51(12):1391-6. (PMID:12868253) Altern Ther Health Med. 2003 9:58-61. (PMID:13678227) Phytomedicine. 2003;10:455-458. (PMID:11052726) J Agric Food Chem. 2000; 48(10): 4734-8. (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS). (2006174188) 北海道立衛生研究所報. 2003;53:76-8. (PMID:18970951) J Pediatr Surg. 2008 Nov;43(11):2109-11. (33) 世界薬用植物百科事典 誠文堂新光社 A.シェヴァリエ (PMID:10460442) J Neurol. 1999 Aug;246(8):667-70. (PMID:10795656) Ann Allergy Asthma Immunol. 2000 Apr;84(4):460-2. (PMID:7919774) Acta Paediatr. 1994 Jun;83(6):683. (PMID:21865126) Epileptic Disord. 2011 Sep;13(3):345-7. (PMID:24030028) J Pediatr Endocrinol Metab. 2014 Jan 1;27(1-2):175-9. (PMID:23843424) Phytother Res. 2014 Apr;28(4):603-10. (PMID:24934554) J Pharm Pharm Sci. 2014;17(2):254-65. (PMID:24458977) Phytother Res. 2014 Oct;28(10):1573-6. (2007119508) 日本皮膚科学会雑誌. 2006;116(13):2212-7. (PMID:27000311) Cochrane Database Syst Rev. 2016 Mar 22;3:CD002124. (PMID:26655941) J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2016 May;62(5):668-86. (2017028885) アレルギーの臨床. 2016;36(11):1072-5. (PMID:29354616) J Menopausal Med. 2017 Dec;23(3):166-171. (PMID:11603570) Endocrine Journal. 2001; 48(4):473-82