専門家に聞きました 【第5回】健康食品を利用する前に確認してほしい3つのポイント

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専門家に聞きました
【第5回】
健康食品を利用する前に確認してほしい3つのポイント
 

島根大学医学部附属病院臨床研究センター
教授 (センター長) 大野 智

もくじ
1.はじめに
2.健康被害
3.経済被害
4.機会損失



1.はじめに
皆さんは、どのようなことがきっかけで健康食品を使ってみようとしましたか?

「健康診断で血圧が高めと指摘された」「最近、お腹周りが気になる」といった健康上の問題がきっかけという人もいれば、「がんと診断され、少しでも体に良いものを」と言うように切羽詰まった状況がきっかけという人もいるかも知れません。あるいは、家族や知人・友人から勧められたことがきっかけということもあるでしょう。

今回は、健康食品を利用する前に、ここだけは気をつけておきたいポイントについて紹介します。



2.健康被害
「健康食品」で「健康被害」
駄洒落のようですが、現実に目を向けると無視できない現状があります。ともすると、「健康食品は“食品(食べ物)”だから、どれだけ食べても大丈夫」と認識してしまっている人がいるかも知れませんが、それは誤解です。どのような健康被害に注意すべきなのか整理します。

(1)アレルギー
食品で蕁麻疹などのアレルギーを経験したことがある人がいるのと同様、健康食品でもアレルギーを起こす人がいます。さらに、健康食品の場合、これまで食経験のない食品から製造された商品も多く流通していますので、アレルギーのリスクには更に注意しなければなりません。

(2)過剰摂取
健康食品の多くが、製造過程で特定の成分を抽出したり濃縮したりして商品化されています。もともとの食品は食経験があるものであっても、本来であれば食べることのできないような量を、健康食品では摂取することになってしまいます。いくら体に良いとされる食品でも「食べ過ぎればお腹が痛くなる」と言ったことは想像に難くないと思います。また、カプセルや錠剤の形状をした健康食品の場合、大量摂取が容易になってしまいます。何事も、過ぎたるは及ばざるが如し、であることを忘れないでください。

(3)相互作用
近年、健康食品と医薬品との相互作用について研究が進められ、新たな知見が得られてきています。相互作用で問題となるのが、健康食品によって医薬品の効果が弱まったり、逆に強くなりすぎて副作用が出たりすることです。薬を服用している人が健康食品を利用しようとする場合、相互作用のリスクがないか、薬剤師などに必ず事前に確認をしてください。また「薬を飲んでいるときは健康食品を利用しない」といった判断も、リスクマネジメントの観点から選択肢の一つであることを覚えておいてください。



3.経済被害
消費者庁や国民生活センターのデータベースによると、 健康食品に関する事故報告として多いのが、契約・請求あるいは解約時のトラブルです。具体的には、「初回限定価格の商品を購入したら、2回目の商品が送りつけられ高額料金を請求された」「10日間返金保証付きだったため解約を申し込もうとしたが連絡が取れない」「定期購入でお試し価格のダイエットサプリメントを注文した。いつでも解約できると記載があったので解約を申し出ると、高額な解約料を請求された。」などです。

また、マーケティングの名の下、人が持つ心理効果を悪用しているとも受け取られかねない販売手法にも注意が必要です。例えば、「値段が高いとその商品の価値が高いと思ってしまう」といった心理効果(ヴェブレン効果)を狙って、健康食品の成分にはほとんど違いがないのに、パッケージだけ豪華にして値段だけ釣り上げるといったことが平然と行われている現状があります。消費者として、成分表示も確認するなど冷静な目が求められます。

なお、金額によって利用して良い・悪いと単純に線引きできるものではありませんが、もし長期間利用したことを想定したとき経済的負担を感じるようであれば、「はじめから利用しない」という判断を躊躇しないでください。一度利用し始めると、効果に疑問を感じつつも、それまでに支払った費用を無駄にしたくない一心で「効いているはず」と思い込もうとする心理が働いてしまいます。経済学の分野で「サンクコストの呪縛」という用語があります。「もったいないから、やめられない」そんなアリ地獄のような罠にはまってしまうことがないよう注意してください。



4.機会損失
 「抗がん剤は毒である」
 「手術は体を切り刻む野蛮な治療」

インターネットで検索すると、こんな極論が真実であるかのように書かれているものがあります。また、「抗がん剤を受けてはいけない」「ステロイドは危険」など、病院で行われている西洋医学を否定する書籍が、書店で平積みされていることもあります。さらには、医者と製薬企業は患者を食い物にしているといった陰謀論めいたものまで…。

そして、これら極論・陰謀論とセット販売かのように健康食品がお勧めされていることがあります。確かに、薬には副作用はつきものですし、手術の合併症はゼロではありません。ですが、そこだけに注目してしまうと、「木を見て森を見ず」になりかねません。医学の進歩、臨床試験の積み重ねによって、副作用や合併症のことを考慮しても、それを上回るメリットがあることが確認されている治療(一般的に「標準治療」といいます)が病院では行われています。

極論・陰謀論の情報に振り回されてしまい、病院で治療を受けることを躊躇してしまうと、本来、標準治療を適切なタイミングで受けていれば得られていたかもしれないメリットを手に入れることができなくなること(機会損失)になりかねません。これは突き詰めていくと命にも関わる問題です。もし、西洋医学を否定しているような情報とセットで販売されている健康食品があったら、「絶対に近づかない」というぐらい強い意思を持つことが求められます。





大野 智 (おおの さとし)
1998年島根医科大学(現島根大学医学部)卒業。その後、金沢大学、東京女子医科大学、帝京大学、大阪大学等を経て2018年より現職。
健康食品を始めとした補完代替療法(統合医療)の情報発信等に取り組む。
厚生労働省「統合医療」情報発信サイト[eJIM](リンク:https://www.ejim.ncgg.go.jp/



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