専門家に聞きました 【第4回】健康食品の安全性

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専門家に聞きました
【第4回】
健康食品の安全性
 

国立医薬品食品衛生研究所
安全情報部長 畝山智香子

もくじ
1.「食品が安全」の意味
2.安全であることはどうやって証明するか
3.いわゆる健康食品の安全性



1.「食品が安全」の意味
食品は私たちが生きるために食べてきたものですが、何を食べ物とみなすかは地域や文化によって違う場合もあり、その詳細な成分・組成はわかっていない「未知の化学物質のかたまり」です。そして食品は様々な理由で有害物質が混入したり微生物で汚染されて痛んだりすることがあり、これまでたくさんの人の食中毒などの病気の原因にもなってきました。

そのような食品を安全にするために、これまで多くの努力が重ねられてきました。食べられる部分を増やす品種改良、有毒成分を除去する加工、食中毒菌を殺すための調理など、食品には人類の智慧が詰まっています。それでも食品にはまだまだ膨大なハザード(危害要因)があり、私たちは日々食品をさらに安全にするための方法を探っています。

このような食品が「安全」だというのはどういう意味でしょうか?その食品を食べて病気になる可能性が全くない(ゼロリスク)という意味ではありません。リスクが十分低い、許容できるレベルであることを意味します。では「許容できるレベル」はどうやって決めるのでしょうか?それは私たちみんなで決めていて、時代や国によって変わっていくものです。

一方リスクはハザードと暴露量(食品の場合摂取量)で決まります。発がん性のようなハザードがあるものであっても僅かしか摂取されないならリスクは小さく、たくさん摂取するならリスクは大きくなります。従って食品中に望ましくないものが含まれていてそのリスクを小さくしようとするためには、通常摂取量を減らす対策がとられます。食品に含まれる濃度を減らしたり、その食品の摂取量を減らしたりするわけです。ただ食品は「未知の化学物質のかたまり」なので、実際のところ何がどのくらい入っているのか正確な数字は誰にもわかりません。

そこで採用される対処法がリスク分散です。特定のものだけを大量に摂取しない、いろいろなものを食べることによって未知のものであってもそれによるリスクを大きくしないようにできるわけです。これは栄養の観点から多様な食品を摂取しましょうと言われることと一致しています。



2.安全であることはどうやって証明するか
一般的にはこれまで問題無く食べてきた経験(食経験)と、動物実験などから決めた許容摂取量などの安全目安量を指標に食品(成分)の安全性を判断します。食品添加物や残留農薬など、ヒトが意図的に使うものや遺伝子組換えのような新しい技術を使ったものは安全性を証明するための実験データから、ヒトが摂取しても健康に害がでないような量を決めています。しかしご飯や野菜のようなものは今までずっと食べてきて問題なかったのだから大丈夫だろう、という食経験が安全性の根拠とされています。

この「食経験」は、日本では明確に定義されてはいないのですが、欧州や米国では「相当数の人々が日常的な食事で少なくとも25年間使い続けている経験」と定義されています。相当数、は類似の食習慣をもつ地方や国、のような規模です。日常的な食事なので、加熱調理して食べてきたものを生で食べるような場合には食経験があるとは言いません。野菜として食べていたものを粉末や錠剤にして食べるのも食経験はありません。発がん物質のようなものはこの程度の時間と人数では有害影響は検出できないので、食経験は安全性の証明としては必ずしも万全ではないのですが、一定レベルの担保にはなります。食経験のないものについては別途安全性に関するデータを揃える必要があります。



3.いわゆる健康食品の安全性

ここまで述べた、食品の安全性の基礎からいわゆる健康食品の安全性を考えてみましょう。いわゆる健康食品の中には、食品由来であっても成分を抽出したりカプセル剤にしたりしたものがあります。そういうものは食経験はありませんので安全性に関する試験を行わない限り安全性はわかりません。また普通の食事からは摂れないような量の成分が含まれることを宣伝しているものもありますが、そのような製品は暴露量が多いためにリスクが高いと考えられます。

実際のところ、食品の中でいわゆる健康食品は最もリスクが高いグループで、世界中で健康被害が報告されています。例えば私たち日本人は緑茶を日常的に飲んでいて特に問題はありませんが、米国では緑茶粉末やその抽出物のサプリメントが肝障害の原因となった事例が多く報告されています。普通に食べている食品であっても普通でない食べ方をすれば病気になることはあるのです。いわゆる健康食品は、毎日続けて摂りましょうと宣伝されていることが多く、リスクを分散するという基本原則にも反します。

健康食品は使用する前に、最も大切な安全性をどう確認しているのかを確かめてください。



参考文献
食品安全委員会 「健康食品」に関する情報
https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html
(冊子を是非ご覧下さい)




畝山智香子 (うねやま ちかこ)
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部長
昭和61年東北大学薬学部卒、昭和63年同大学院博士課程前期2年の課程修了、国立衛生試験所(現国立医薬品食品衛生研究所)安全性生物試験研究センター病理部、平成15年安全情報部、平成28年8月 より安全情報部長
薬学博士



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