医薬品と健康食品の併用による注目すべき有害事象 (Ver.20190711)

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医薬品と健康食品の併用による注目すべき有害事象 (Ver.190711)


■はじめに
薬を使用している患者さんが健康食品を利用した場合、健康食品が薬の効きめに影響して、有害事象を起こしてしまうことがあります。また、患者さんはそもそも健康な人よりも摂取したものの影響を受けやすいため、健康食品そのものの影響により有害事象を受ける可能性もあります。
しかし、市場には非常に多くの健康食品が出回っており、消費者 (患者さん) の自己判断で利用されています。実は、健康食品は薬と違ってその中身 (素材や成分の組成や含有量) が明確ではなく、似た名称の製品でも中身が大きく異なっています。これらのことが薬と健康食品を併用した時におこる有害事象の原因究明や対策を難しくしています。
そこで、特に注意が必要な薬 (注) と健康食品の併用による有害事象の事例を集め、有害事象を起こしやすい状況について、重症度に焦点を定めて調べ、論文発表しましたので、ご紹介します(PMID:29695676)
(注) 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤、抗HIV剤など。 (厚生労働省保健局「特定薬剤 管理指導加算等の算定対象となる薬剤一覧」より)

■論文の収集と重症度による分類
当サイトに2017年8月までに掲載した「特に注意が必要な薬を使用中の患者さんが健康食品を併用して有害事象を生じた71名の事例」について、有害事象が発生した際の状況を調べました。症状の重症度は「医薬品等の副作用の重篤度分類基準について (平成4年薬安第80号) 」を参考に、グレード1 (軽微な副作用) 、グレード2 (中等度の副作用) 、グレード3 (重篤な副作用、死亡又は日常生活に支障をきたす永続的な機能不全のおそれがある) の3段階に分類しました。

■医薬品と健康食品を併用して発症した有害事象の特徴
71名の患者さんのうち、10%は特に症状がなく、薬の血中濃度の変化だけを観察したものでしたが、残りの90%は何らかの症状がみられ、その半数は最も重症のグレード3に該当し5名の死亡事例がありました (図1) 。発生件数が多く重症度が高い症状は、肝障害、精神神経系障害、代謝・電解質異常でした。薬の薬効分類別にみると、発生件数が多いのは血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、抗不整脈用剤、精神神経用剤で、重症度が高いのは抗てんかん剤、抗悪性腫瘍剤、抗不整脈用剤、血液凝固阻止剤でした。

図1 有害事象の発生件数と重症度


■医薬品と健康食品の相互作用による重症例
薬と健康食品の併用事例の中でも、相互作用が原因と判断された症例 (42名) のうち、グレード3の事例 (16名) を表1に示します。ほかに血液凝固阻止剤では、ワルファリンとノニ、朝鮮ニンジン、タンジンの併用、アスピリン単独あるいはアスピリンとクロピドグレルの組み合わせにニンニク、ノコギリヤシ、ビタミンE+魚油を併用したことによる出血や血液凝固異常の報告がありましたが、重篤度分類には血液凝固に関する指標が少ないことから、血液凝固阻止剤に関する症例は判定しにくいことがわかりました。薬と健康食品の相互作用と判断された事例では、薬の血中濃度や薬の効果を調べる臨床検査が多く行われており、これらの検査が相互作用の判断に役立っていました。

表1 医薬品−食品相互作用による有害事象 (重症度グレード3) を発生した症例

薬効分類使用薬健康食品と併用期間患者数診断名と転帰
抗てんかん剤バルプロ酸*1キトサン、
数日・1週間・2か月間
3てんかん発作
バルプロ酸*1
フェニトイン*1
イチョウ葉、
1年
1てんかん発作 (死亡)
フェニトイン*1ノニ、
10年 (衰弱時に1.5倍量を飲用)
1てんかんコントロール不良、運動失調、歩行困難
フェノバルビタール*1ノニ、
1週間
1肝障害
ラモトリギン*1朝鮮ニンジン、
49日間
1好酸球増多症と全身症状を伴う薬疹 (DRESS症候群)
抗悪性腫瘍剤カペシタビン*1アロエベラ、
2週間
1低カリウム血症
エトポシド*1エキナセア、
期間不明
1てんかん様発作、好中球減少性発熱、血小板減少
イマチニブ*1朝鮮ニンジン、
3か月間
1イマチニブによる薬剤性肝障害
血液凝固阻止剤ワルファリン*1クランベリー、
6週間
1消化管及び心嚢出血、INR>50 (死亡)
ワルファリン*1タンジン、
3〜5日
1INR延長、メレナ (消化管出血)
ワルファリン*1海藻とクマザサ (ビタミンKを含有) 、
15日間
1大腿動脈塞栓症、トロンボテスト値上昇
精神神経用剤クロザピン*1セイヨウオトギリソウ、
期間不明 (直後に発症)
1統合失調患者における精神症状の悪化
抗不整脈剤ジソピラミド*1
ガレノキサシン
カンゾウ、
12カ月間
1トルサデポアン (心室頻拍) 、低カリウム血症
糖尿病用剤メトホルミン*1
glipizide*2
メキシコサボテン、
2ヶ月間
1頻回の低血糖発作 (1か月間に4回)

*1: 注意が必要な医薬品 *2: 日本では未承認

■健康食品自体による重症例
薬との相互作用ではなく、健康食品自体による有害事象の可能性がある症例 (29名) のうち、グレード3の事例を表2に示します。29名のうち12名で肝障害が、7名で何らかのアレルギー症状がみられました。

表2 健康食品自体による有害事象 (重症度グレード3) を発生した可能性がある症例

使用薬健康食品と併用期間患者数診断名と転帰
シクロホスファミド*1、ドキソルビシン*1、5-フルオロウラシル*1アガリクス
(両事例とも数日間)
1アガリクスによる劇症肝炎 (死亡)
シクロホスファミド*1、ドキソルビシン*11
リチウム*1、ペルフェナジン*1、トリヘキシフェニジルレイシ、
2ヶ月
1レイシによる劇症肝炎 (死亡)
インターフェロンβ1b*1メリロート、
2週間
1メリロートによる重度の肝機能障害
リツキシマブ*1、プレドニゾロン*1、コトリモキサゾール、アレンドロン酸、炭酸カルシウム、ビタミンD、塩化カリウムルイボス、
2週間
1ルイボスによる肝障害
アカルボース*1、アムロジピンベシル酸、シンバスタチンスピルリナ、
5週間
1スピルリナによる薬剤性肝障害
レベチラセタム*1ノニ、
2週間
1ノニによる肝障害
ベラパミル*1、塩化カリウム、スピロノラクトンカンゾウ、
リチャレンジ試験前の1週間、あるいは長期間
1カンゾウによる高血圧、低カリウム血症
メトプロロール*1、エナラプリル、カリウム1
メトプロロール*1、アレンドロン酸、メロキシカム、アトルバスタチン、シタロプラム、ファモチジン、ドクサート、オキシコドン (疼痛時) 、マルチビタミン、ビタミンDカルシウム、
3か月
1カルシウムによるミルクアルカリ症候群 (非ST上昇型心筋梗塞)
アテノロール*1、カルシウム、アレンドロン酸、ヒドロクロロチアジド、リシノプリル、イブプロフェンビタミンD、
2週間
1ビタミンDによる高カルシウム血症
インスリン*1、メトホルミン*1ナギイカダ、
5日間
1ナギイカダによる糖尿病性ケトアシドーシス
プレドニゾン*1、アテノロール*1、メトラゾン、フロセミド、ニフェジピンキャッツクロー、
期間不明
1キャッツクローによる急性アレルギー性間質性腎炎
プレドニゾロン*1、気管支拡張剤 (詳細不明) ハチ花粉、
単回摂取
1ハチ花粉によるアナフィラキシー

*1: 注意が必要な医薬品

■おわりに
調査の結果から、重篤な有害事象を起こした人が特定の医薬品と特定の成分を含む健康食品を組み合わせて利用していたこと、また医薬品との相互作用ではなく健康食品の利用そのものが重篤な有害事象につながる場合もあることが明らかになりました。ただし、これらの症例は、単一の素材を含む健康食品を摂取していたため有害事象との因果関係が証明しやすく、また症状が重症であったため報告につながったと考えられます。しかしながら実際に流通している健康食品は複数の素材や成分を含むものが多く、また多くの人が複数の製品を同時に利用しており、有害事象が起きても因果関係が証明できないために報告されないことが考えられます。薬を服用中の患者さんやそのご家族は、健康食品の利用を必ず医師や薬剤師に伝え、適切な健康食品の利用について改めて考えてみてください。
→ 行政機関が作成した健康食品関連のパンフレット集
消費者向け:パンフレット集 (国立健康・栄養研究所発行)
消費者向け:パンフレット集 (行政機関発行)

■出典
(PMID:29695676) 食品衛生学雑誌 (2018) Vol.89, No.2 p.80-88

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