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安全性
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危険情報
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<一般>
・通常の食品に含まれるマグネシウムの過剰摂取で健康障害が起こったという報告は見当たらない (3) (108) 。
・経口摂取で下痢 (3) 、嘔吐 (1) 、筋力低下 (19) 、血圧低下 (1)、呼吸抑制 (1) などが起こる。
・臨床試験において、マグネシウム摂取した女性では25例中5例が血液循環障害および腸不快感を経験した (25) 。
・重篤な中毒はマグネシウム含有薬 (制酸剤、下剤) などが重篤な腎不全を持つ患者に慢性的に投与された場合に生じる (1) 。
<妊婦・授乳婦>
・出産前2時間以内の静脈投与はおそらく危険である。
<病者>
・吸収不良(胆汁分泌障害、腸内感染症などさまざまな要因による)の場合、マグネシウムの腸管吸収が低下することがある (PMID:3294519) (PMID:9583850) 。
・腎機能障害を持つ人は注意して用いること (105) 。
<その他>
・高齢者は低マグネシウム血症になりやすいので注意 (PMID:9595547) 。
<被害事例>
高マグネシウム血症による死亡が複数報告されている。
・知的障害、痙性四肢麻痺、発達障害の既往歴がある28ヶ月の男児 (アメリカ)が、麻痺と便秘の治療のため炭酸カルシウム、マルチビタミン、必須脂肪酸、乳酸菌のサプリメントと共に酸化マグネシウムを800 mg/日、3週間 (搬送前数日間は2,400 mg/日) 摂取したところ、心肺停止となり医療機関に搬送、血中マグネシウム濃度は20.3 mg/dLまで上昇しており、治療を受けたが死亡した。(PMID:10654978) 。
・31歳女性 (アメリカ) がエプソン塩 (ほぼ100%硫酸マグネシウム)で数週間うがいをしたところ、意識を消失し医療機関に搬送、血中マグネシウム濃度は23.6 mg/dLまで上昇しており、治療を受けたが死亡した。(PMID:11858925) 。
・高血圧のため降圧剤を服用していた75歳女性 (日本) が、民間療法として減量目的に塩化マグネシウムを含む牛乳摂取 (摂取量不明) と温浴中での腹部マッサージを4日間に3回実施したところ、激しい下痢を生じ、数時間後に高マグネシウム血症により死亡した(PMID:24020515) 。
・摂食異常と統合失調症の既往歴がある35歳の妊婦 (日本) が、酸化マグネシウムや市販の潟下薬等を20錠/日 (摂取期間等詳細不明) 摂取していたところ、母体の体重増加不良および胎児の発育不良傾向がみられ、37週で低出生体重にて分娩、無呼吸発作および代謝性アルカローシスが認められ、加療により回復した。母親にも代謝性アルカローシス、腎機能低下および低カリウム血症を認め、母子ともに偽性バーター症候群と診断され、潟下薬乱用が原因と考えられた (2015304554) 。
・神経性食欲不振症の既往歴がある28歳女性 (日本) が、自己誘発性嘔吐の代わりにマグネシウム50〜200錠/日 (酸化マグネシウム16.7 g〜66.7 g/日) を3ヶ月間摂取したところ、鉄欠乏性貧血を呈した。クエン酸第一鉄ナトリウム50 mgにて9ヶ月間治療するも回復せず、マグネシウムの摂取中止と含糖酸化鉄の静脈内投与により回復した。退院後、クエン酸第一鉄ナトリウム100 mg/日の処方で安定していたが、マグネシウムの過剰摂取を再開したところ再度ヘモグロビン値が低下した (PMID:31384293) 。
・2005年4月から2008年8月までに、国内において、医薬品の酸化マグネシウム剤の長期投与によると疑われる高マグネシウム血症が15例 (うち死亡が2例:80代女性が2 g/日摂取、90代女性が1.5 g/日摂取) (109) 、2015年10月の時点における直近3年度で29例 (うち、因果関係が否定できない症例19例) 、死亡4例 (同1例) が報告されており (110) 、医療用の酸化マグネシウム服用中に高マグネシウム血症の症状 (吐き気、嘔吐、立ちくらみ、めまい、脈が遅くなる、皮膚が赤くなる、力が入りにくくなる、体がだるい、傾眠(眠気でぼんやりする、うとうとする)) があらわれた場合、すぐに医療機関を受診するよう注意喚起が出されている (111) 。ただし、医薬品として投与される場合の量は、食品からの摂取量に比較しかなり多い。
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禁忌対象者
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調べた文献の中に見当たらない。
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医薬品等との
相互作用
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<理論的に考えられる相互作用>
・ホウ素との併用で血中マグネシウム濃度が上昇することがある (PMID:7840072) (PMID:3678698) (PMID:7889883) 。
・カルシウムとの同時摂取でマグネシウムの吸収が抑えられるが、臨床的にはマグネシウムの挙動に有意差はない。しかし同時摂取を避けることが望ましい (101); (PMID:7836628) (PMID:9277559) 。
・ビタミンDはマグネシウムの吸収を促すため、正常なマグネシウム摂取量の人では高濃度のビタミンDと併用すると、高マグネシウム血症を招くおそれがある (7) ; (PMID:1992050) (PMID:6335925) (PMID:3680484) (PMID:6689108) 。
・アミノグリコシド系抗生物質と、高レベルのマグネシウム静注で、神経筋の衰弱や麻痺が起こる可能性がある (102) 。
・マグネシウムはCa拮抗薬の作用を強める可能性がある (103) 。
・マグネシウムの排出を促進する薬物 (ループ系・チアジド系利尿薬、アミノグリコシド系抗生物質、アンホテリシンB、シスプラチン (抗がん剤) 、β-2アゴニスト、コレスチラミン (脂質異常症治療薬) 、副腎皮質ホルモン、シクロスポリン (免疫抑制剤:CYP3A4、P糖タンパク質基質) など) との併用はマグネシウム摂取の効果を低下させる可能性がある (102) (104) (PMID:7988180) (PMID:3542342) (PMID:2896843) (PMID:5052395) (PMID:3987479) (PMID:2671213) (PMID:3551599) (PMID:2436474) (PMID:6536835) (PMID:1514533) (PMID:3543513) 。マグネシウムの排出を抑制する薬物 (カリウム保持性利尿薬) との併用はマグネシウム摂取の効果を増大させ、血中濃度を上げる可能性がある (PMID:3551599) (PMID:2436474) (PMID:6536835) 。テトラサイクリン (抗生物質) 、フルオロキノロン (抗生物質) 等の薬剤との併用で、同薬の吸収を低下させるおそれがある。これらの薬剤はマグネシウム摂取の少なくとも2時間前か、4時間後に使用すること (103) 。ビスホスホネート系薬との同時摂取で、その吸収を妨げる。2時間以上間隔をあけて摂取する (102) (105) 。
・ニフェジピン (カルシウム拮抗薬:CYP3A4基質) 経口摂取と硫酸マグネシウム静注との併用で、深刻な低血圧および神経遮断が起こることがある (103) 。
・非経口摂取のマグネシウムは骨格筋弛緩剤 (塩酸ツボクラリンなど) の作用を増強させることが考えられる (103) 。
・医薬品の中にはマグネシウム濃度に影響を与えるものがある。ジゴキシン (強心薬:P糖タンパク質基質) は、マグネシウムの尿細管再吸収を減少させ、尿中への排出を増加させる (PMID:1507935) 。エストロゲンは、柔組織や骨によるマグネシウムの取り込みを増強する (PMID:2132751) 。ペニシラミン (リウマチ治療薬) は、マグネシウムとキレートを形成することがある (PMID:6285552) 。緩下薬の長期使用は、低マグネシウム血症のような電解質の障害を引き起こすことがある (102) 。
・臨床検査値に対する影響はいくつか知られているので注意が必要である。[ALP、ACE、血圧、カルシウム、コルチゾル、心電図、甲状腺ホルモンなど] (106) 。
・高齢者は低マグネシウム血症になりやすいので注意 (PMID:9595547) 。高マグネシウム血症は心ブロックを起こすことがあるので、マグネシウム静注は、心ブロック患者には使用禁忌 (104) (105) 。吸収不良 (胆汁分泌障害、腸内感染症などさまざまな要因による) の場合、マグネシウムの腸管吸収が低下することがある (PMID:3294519) (PMID:9583850) 。腎機能障害を持つ人は注意して用いること (105) 。
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動物他での
毒性試験
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調べた文献の中に見当たらない。
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AHPAクラス分類
及び勧告
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-
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総合評価
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安全性
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・通常の食品に含まれるマグネシウムの過剰摂取による有害事象は見当たらない。適切に用いれば、成人および子どもは経口摂取でおそらく安全である。
・過剰摂取では下痢や高マグネシウム血症が起こることがある。特に重篤な腎不全患者における大量摂取は非常に危険である。
・種々の医薬品との相互作用の可能性がある。
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有効性
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(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。)
・マグネシウム欠乏症の治療と予防に有効と判断される。
・経口摂取で有効性が示唆されているのは、1) 軽症-中等症の高血圧の治療、2) 冠状動脈疾患を持つ人における狭心症発作の低減、3) 高コレステロール血症の改善、4) 片頭痛の予防と月経前症状としての片頭痛及び騒音による難聴の予防、5) グルテン過敏腸疾患による骨粗鬆症における骨密度の増加、6) 便秘時および手術や検査前の下剤としての利用、7) 腎結石の再発防止、8) 女性における排尿筋不全などによる尿失禁の改善、9) 妊娠中のこむらがえりである。
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参考文献
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(1) 最新栄養学 第10版 (建帛社) 木村修一ら 翻訳監修
(3) 日本人の食事摂取基準 (2020年版) 第一出版
(19) ミネラルの事典 朝倉書店 糸川嘉則 編
(28) 最新栄養学 第9版 (建帛社) 木村修一ら 翻訳監修
(25) クリニカル・エビデンス ISSUE9 日本語版 日経BP社 日本クリニカル・エビデンス編集委員会
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