健康食品等の素材情報データベース

注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.

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項 目

内 容

名称

マグネシウム [英]Magnesium (Mg) [学名]Magnesium (Mg)

概要

マグネシウムは、幅広い細胞反応に必須なミネラルであり、生体において300種以上の酵素反応に関与している。また、カルシウムと共に骨の健康に必要なミネラルでもあり、カルシウムの作用と密接に関与している。マグネシウムの欠乏では神経疾患、精神疾患、不整脈、心疾患などが起こる。マグネシウムは保健機能食品(栄養機能食品)の対象成分となっているが、乳幼児・小児については、あえて錠剤やカプセル剤の形状で補給・補完する必要性がない旨の注意喚起が出されている。マグネシウムを多く含む食品としては、ナッツ類、魚介類、豆類などがある。


●有効性
俗に、「心臓病や高血圧を予防する」と言われ、マグネシウム欠乏症の治療および予防、軽・中症の高血圧の治療、片頭痛の予防などに対しては、一部に人での有効性を示唆する報告もある。


●安全性
適切に摂取すればおそらく安全であるが、過剰摂取により下痢や高マグネシウム血症などを起こすことがあり、特に重篤な腎不全患者には注意が必要である。



基礎的な解説は「マグネシウム解説」を参照。

▼他の素材はこちら



法規・制度

■食薬区分
「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。

■栄養機能食品
「栄養機能食品」の対象成分である (下限値:96 mg、上限値:300 mg) 。

成分の特性・品質

主な成分・性質

・元素記号Mg、原子番号12、原子量24.31。酸化物、水酸化物、フッ化物、炭酸塩、リン酸塩などは水に難溶。

分析法

・干渉抑制剤添加-原子吸光法分析が行われている (107) 。
・カプセルまたはタブレット状の製品中のステアリン酸マグネシウムを、ガスクロマトグラフィー (GC) を用いて測定した簡易測定法が報告されている (PMID:16640294)

有効性








循環器・
呼吸器


一般情報
・高血圧者に対する有益性は不明である (25) 。
・男性において食事からのマグネシウム摂取量を増加させることは脳卒中のリスクを減少させる可能性がある。しかしサプリメントでの摂取では同じ効果があるという証拠はない。
メタ分析
・2017年12月までを対象に11のデータベースで検索できた無作為化比較試験22報について検討したメタ分析において、急性冠症候群患者によるマグネシウムサプリメント摂取は、心室性不整脈 (13報) 、上室性不整脈 (14報) のリスク低下と関連が認められたが、試験によるばらつきが大きかった。一方、徐脈 (4報) との関連は認められなかった (PMID:29954320)
・2017年5月までを対象に6つのデータベースで検索できた無作為化比較試験11報について検討したメタ分析において、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病、冠動脈疾患などの非伝染性慢性疾患の患者によるマグネシウムサプリメントの摂取は、収縮期および拡張期血圧の低下と関連が認められた (PMID:28724644)
・2016年1月までを対象に2つのデータベースで検索できた無作為化比較試験34報 (検索条件:期間>1週) について検討したメタ分析において、マグネシウムサプリメントの摂取は、収縮期および拡張期血圧の低下と関連が認められたが、試験によるばらつきが大きかった (PMID:27402922)
・2015年8月までを対象に6つのデータベースで検索できた人口ベースの前向き研究9報 (8試験) について検討したメタ分析において、マグネシウムの摂取量が多いと心血管疾患による死亡率の低下と関連が認められたが、試験によるばらつきが大きかった (PMID:27053099)
・2012年5月までを対象に11のデータベースで検索できた前向き研究16報について検討したメタ分析において、血中マグネシウム濃度が高いと心血管疾患リスク (8報) の低減が認められたが、虚血性心疾患 (4報) 、致死性虚血性心疾患 (4報) リスクとの関連は認められず、マグネシウム摂取量が多いと虚血性心疾患リスク (7報) 低減が認められたが、致死性虚血性心疾患 (3報) 、心血管疾患 (9報) リスクとの関連は認められなかった (PMID:23719551)
・2012年2月までを対象に3つのデータベースで検索できた前向き研究19報について検討したメタ分析において、血清マグネシウム濃度依存的に心血管疾患リスクの低減が認められ (8報) 、マグネシウム摂取量が多いと心血管疾患リスクの低減が認められたが、摂取量依存性との関連は認められなかった (13報) (PMID:23520480)
・2010年7月までを対象に2つのデータベースで検索できた無作為化比較試験22報について検討したメタ分析において、成人によるマグネシウム120〜973 mg/日、3〜24週間の摂取は、収縮期、拡張期血圧のわずかな低下と関連が認められた (PMID:22318649)
RCT
・糖尿病前症および低マグネシウム血症の患者57名 (試験群29名、平均39.8±16.0歳、メキシコ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、5%塩化マグネシウム溶液30 mL/日 (382 mgマグネシウム相当) を3ヶ月間摂取させたところ、空腹時血糖および血清中の高感度CRP濃度が低下した (PMID:24814039)
・メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病の家族歴がある健康な成人14名 (平均26.3±3.1歳、イタリア) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、ピドロ酸マグネシウム8.1 mmol×2回/日を8週間摂取させたところ、血圧、血中脂質 (TC、HDL-C、LDL-C、TG) 、糖代謝マーカー(血糖、インスリン、HOMA-IR、HbA1c) 、血管内皮機能 (FMD) 、血管硬化度 (carotid distensibility、stiffness Index、reflection Index) に影響は認められなかった (PMID:24984823)
・過体重または肥満の男女51名 (試験群26名、平均62±5歳、オランダ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、マグネシウム350 mg/日を24週間摂取させたところ、PWVの改善が認められたが、脈波増大係数、収縮期および拡張期血圧 (外来血圧、24時間血圧) 、脈圧、心拍数に影響は認められなかった (PMID:27053384)


消化系・肝臓

RCT
・結腸切除回復術を受けた患者49名 (試験群22名、平均63.5歳、デンマーク) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、酸化マグネシウムを1 g×2回/日、術後7日間摂取させたところ、腸機能回復や入院期間に影響は認められなかった (PMID:21883811)

糖尿病・
内分泌

RCT
・妊娠糖尿病患者70名 (試験群35名、平均29.1±4.6歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、酸化マグネシウム250 mg/日を6週間摂取させたところ、糖代謝マーカー (空腹時血糖、インスリン、HOMA-IR、QUICKI) の改善、血中脂質 (TG、VLDL-C) 、炎症マーカー (高感度CRP) 、酸化関連マーカー (MDA) の低下が認められたが、その他の血中脂質 (TC、LDL-C、HDL-C) 、酸化関連マーカー (血漿NO、総抗酸化能、グルタチオン) に影響は認められず、糖代謝マーカー (HOMA-β) の改善が抑制された (PMID:26016859)

生殖・泌尿器

一般情報
・月経困難症に対する有益性は不明である (25) 。
RCT
・乳がんの既往歴がありホットフラッシュを訴える女性275名 (18歳以上、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、酸化マグネシウムを800 mg/日 (93名) または1,200 mg/日 (91名) 、8週間摂取させたところ、ホットフラッシュの回数および症状の自己評価に影響は認められなかった (PMID:25423327)
・妊娠25週の妊婦59名 (試験群29名、平均28.8±0.7歳、スウェーデン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、マグネシウム300 mg/日を分娩まで摂取させたところ、妊娠37週における収縮期血圧の低下が認められたが拡張期血圧、分娩時の持続時間、在胎期間、出生体重に影響は認められなかった (PMID:23715924)
・多嚢胞性卵巣症候群の女性60名 (試験群30名、平均23.8±5.7歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、マグネシウム100 mg×2回/日、亜鉛4 mg×2回/日、カルシウム400 mg×2回/日、ビタミンD 200 IU×2回/日を12週間摂取させたところ、多毛の指標 (mF-G score) 、MDA、高感度CRP、総テストステロンの低下および総抗酸化能の増加が認められた。一方、遊離アンドロゲン指標、血中グルタチオン、一酸化窒素、性ホルモン結合グロブリンに影響は認められなかった (PMID:28668998)

脳・神経・
感覚器

RCT
・健康な高齢女性220名 (平均63歳、試験群111名、ドイツ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、ビタミンサプリメント (ビタミンC 150 mg、ビタミンE 36 mg、ビタミンB1 2.4 mg、ビタミンB2 3.2 mg、ビタミンB6 3.4 mg、ビタミンB12 9μg、ナイアシン 34 mg、パントテン酸 16 mg、ビオチン 200μg、葉酸 400μg、カロテン 9 mg、マグネシウム 50 mg、セレン 60μg含有) を6ヶ月間摂取させたところ、認知機能に影響は認められなかった (PMID:15917019)
・再発性単極性うつ病患者37名 (試験群17名、平均48.1±15.5歳、ポーランド) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、通常の治療 (フルオキセチン服用) とともにマグネシウム40 mg×3回/日を8週間併用させたところ、うつ病症状 (ハミルトンうつ病評価尺度、ハミルトン不安評価尺度、CGI) に影響は認められなかった (PMID:30081500)

免疫・がん・
炎症

調べた文献の中に見当たらない。

骨・筋肉

RCT
・過体重の中年女性69名 (試験群35名、平均46.5±3.8歳、イラン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、マグネシウム250 mg/日を8週間摂取させたところ、握力、膝伸展筋力、Timed Up and Goテスト結果に影響は認められなかった (PMID:23619906)
・夜間下肢こむらがえりの経験がある成人94名 (試験群48名、平均63.1±12.4歳、イスラエル) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照において、酸化マグネシウム865 mg/日を就寝前に4週間摂取させたところ、夜間下肢こむらがえりの発生回数、重篤度、症状持続時間、QOLに影響は認められなかった (PMID:28241153)

発育・成長

調べた文献の中に見当たらない。

肥満

調べた文献の中に見当たらない。

その他

一般情報
・CFSに対する有益性は不明であるという報告がある (25) 。
・CFSに対する効果に関するシステマティック・レビューは見つからなかった。1件の無作為割付臨床試験 (RCT) (32例) でマグネシウムの注射とプラセボとを6週間にわたって比較していたが、この試験では有意な効果が認められた (25) 。しかし小規模試験であるため、ただちにマグネシウムの有益性を示すものとはいえない。
メタ分析
・2016年8月までを対象に、5つのデータベースで検索できた無作為化比較試験3報について検討したメタ分析において、マグネシウムサプリメントの摂取は、総死亡率 (2報) 、心血管疾患発症リスク (2報) との関連は認められなかった (PMID:28096125)
RCT
・嚢胞性線維症の小児44名 (平均12.86±3.72歳、ブラジル) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、通常の治療とともにマグネシウム300 mg/日を8週間摂取させたところ、最大呼気圧、最大吸気圧、SKスコアの増加が認められた (PMID:22648717)
その他
・高齢女性38,772名 (平均61.6歳、アメリカ) を対象に平均19年間の追跡を行ったコホート研究において、カルシウムサプリメント利用者では総死亡リスクの低下が認められたが、マルチビタミン、ビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅サプリメントの利用者では死亡リスクの増加が認められた (PMID:21987192)

欠乏症・先天性異常
・マグネシウム欠乏により神経過敏症 (28) 、抑うつ (19) 、興奮 (19) 、痙攣 (28) (56) 、などを招く。
・欠乏すると筋肉細胞でのカルシウムとのバランスが崩れ、筋肉の収縮がうまくいかず、痙攣、震えなどの症状が出る (1) 。
・欠乏により脱力感 (56) 、振戦 (1) (56) を招く 。





試験管内・
動物他での
評価

調べた文献の中に見当たらない。



安全性

危険情報

<一般>
・通常の食品に含まれるマグネシウムの過剰摂取で健康障害が起こったという報告は見当たらない (3) (108) 。
・経口摂取で下痢 (3) 、嘔吐 (1) 、筋力低下 (19) 、血圧低下 (1)、呼吸抑制 (1) などが起こる。
・臨床試験において、マグネシウム摂取した女性では25例中5例が血液循環障害および腸不快感を経験した (25) 。
・重篤な中毒はマグネシウム含有薬 (制酸剤、下剤) などが重篤な腎不全を持つ患者に慢性的に投与された場合に生じる (1) 。

<妊婦・授乳婦>
・出産前2時間以内の静脈投与はおそらく危険である。
<病者>
・吸収不良(胆汁分泌障害、腸内感染症などさまざまな要因による)の場合、マグネシウムの腸管吸収が低下することがある (PMID:3294519) (PMID:9583850)
・腎機能障害を持つ人は注意して用いること (105) 。
<その他>
・高齢者は低マグネシウム血症になりやすいので注意 (PMID:9595547)

<被害事例>
高マグネシウム血症による死亡が複数報告されている。
・知的障害、痙性四肢麻痺、発達障害の既往歴がある28ヶ月の男児 (アメリカ)が、麻痺と便秘の治療のため炭酸カルシウム、マルチビタミン、必須脂肪酸、乳酸菌のサプリメントと共に酸化マグネシウムを800 mg/日、3週間 (搬送前数日間は2,400 mg/日) 摂取したところ、心肺停止となり医療機関に搬送、血中マグネシウム濃度は20.3 mg/dLまで上昇しており、治療を受けたが死亡した。(PMID:10654978)
・31歳女性 (アメリカ) がエプソン塩 (ほぼ100%硫酸マグネシウム)で数週間うがいをしたところ、意識を消失し医療機関に搬送、血中マグネシウム濃度は23.6 mg/dLまで上昇しており、治療を受けたが死亡した。(PMID:11858925)
・高血圧のため降圧剤を服用していた75歳女性 (日本) が、民間療法として減量目的に塩化マグネシウムを含む牛乳摂取 (摂取量不明) と温浴中での腹部マッサージを4日間に3回実施したところ、激しい下痢を生じ、数時間後に高マグネシウム血症により死亡した(PMID:24020515)
・摂食異常と統合失調症の既往歴がある35歳の妊婦 (日本) が、酸化マグネシウムや市販の潟下薬等を20錠/日 (摂取期間等詳細不明) 摂取していたところ、母体の体重増加不良および胎児の発育不良傾向がみられ、37週で低出生体重にて分娩、無呼吸発作および代謝性アルカローシスが認められ、加療により回復した。母親にも代謝性アルカローシス、腎機能低下および低カリウム血症を認め、母子ともに偽性バーター症候群と診断され、潟下薬乱用が原因と考えられた (2015304554) 。
・神経性食欲不振症の既往歴がある28歳女性 (日本) が、自己誘発性嘔吐の代わりにマグネシウム50〜200錠/日 (酸化マグネシウム16.7 g〜66.7 g/日) を3ヶ月間摂取したところ、鉄欠乏性貧血を呈した。クエン酸第一鉄ナトリウム50 mgにて9ヶ月間治療するも回復せず、マグネシウムの摂取中止と含糖酸化鉄の静脈内投与により回復した。退院後、クエン酸第一鉄ナトリウム100 mg/日の処方で安定していたが、マグネシウムの過剰摂取を再開したところ再度ヘモグロビン値が低下した (PMID:31384293)

・2005年4月から2008年8月までに、国内において、医薬品の酸化マグネシウム剤の長期投与によると疑われる高マグネシウム血症が15例 (うち死亡が2例:80代女性が2 g/日摂取、90代女性が1.5 g/日摂取) (109) 、2015年10月の時点における直近3年度で29例 (うち、因果関係が否定できない症例19例) 、死亡4例 (同1例) が報告されており (110) 、医療用の酸化マグネシウム服用中に高マグネシウム血症の症状 (吐き気、嘔吐、立ちくらみ、めまい、脈が遅くなる、皮膚が赤くなる、力が入りにくくなる、体がだるい、傾眠(眠気でぼんやりする、うとうとする)) があらわれた場合、すぐに医療機関を受診するよう注意喚起が出されている (111) 。ただし、医薬品として投与される場合の量は、食品からの摂取量に比較しかなり多い。

禁忌対象者

調べた文献の中に見当たらない。

医薬品等との
相互作用

<理論的に考えられる相互作用>
・ホウ素との併用で血中マグネシウム濃度が上昇することがある (PMID:7840072) (PMID:3678698) (PMID:7889883)
・カルシウムとの同時摂取でマグネシウムの吸収が抑えられるが、臨床的にはマグネシウムの挙動に有意差はない。しかし同時摂取を避けることが望ましい (101); (PMID:7836628) (PMID:9277559)
・ビタミンDはマグネシウムの吸収を促すため、正常なマグネシウム摂取量の人では高濃度のビタミンDと併用すると、高マグネシウム血症を招くおそれがある (7) ; (PMID:1992050) (PMID:6335925) (PMID:3680484) (PMID:6689108)
・アミノグリコシド系抗生物質と、高レベルのマグネシウム静注で、神経筋の衰弱や麻痺が起こる可能性がある (102) 。
・マグネシウムはCa拮抗薬の作用を強める可能性がある (103) 。
・マグネシウムの排出を促進する薬物 (ループ系・チアジド系利尿薬、アミノグリコシド系抗生物質、アンホテリシンB、シスプラチン (抗がん剤) 、β-2アゴニスト、コレスチラミン (脂質異常症治療薬) 、副腎皮質ホルモン、シクロスポリン (免疫抑制剤:CYP3A4、P糖タンパク質基質) など) との併用はマグネシウム摂取の効果を低下させる可能性がある (102) (104) (PMID:7988180) (PMID:3542342) (PMID:2896843) (PMID:5052395) (PMID:3987479) (PMID:2671213) (PMID:3551599) (PMID:2436474) (PMID:6536835) (PMID:1514533) (PMID:3543513) 。マグネシウムの排出を抑制する薬物 (カリウム保持性利尿薬) との併用はマグネシウム摂取の効果を増大させ、血中濃度を上げる可能性がある (PMID:3551599) (PMID:2436474) (PMID:6536835) 。テトラサイクリン (抗生物質) 、フルオロキノロン (抗生物質) 等の薬剤との併用で、同薬の吸収を低下させるおそれがある。これらの薬剤はマグネシウム摂取の少なくとも2時間前か、4時間後に使用すること (103) 。ビスホスホネート系薬との同時摂取で、その吸収を妨げる。2時間以上間隔をあけて摂取する (102) (105) 。
・ニフェジピン (カルシウム拮抗薬:CYP3A4基質) 経口摂取と硫酸マグネシウム静注との併用で、深刻な低血圧および神経遮断が起こることがある (103) 。
・非経口摂取のマグネシウムは骨格筋弛緩剤 (塩酸ツボクラリンなど) の作用を増強させることが考えられる (103) 。
・医薬品の中にはマグネシウム濃度に影響を与えるものがある。ジゴキシン (強心薬:P糖タンパク質基質) は、マグネシウムの尿細管再吸収を減少させ、尿中への排出を増加させる (PMID:1507935) 。エストロゲンは、柔組織や骨によるマグネシウムの取り込みを増強する (PMID:2132751) 。ペニシラミン (リウマチ治療薬) は、マグネシウムとキレートを形成することがある (PMID:6285552) 。緩下薬の長期使用は、低マグネシウム血症のような電解質の障害を引き起こすことがある (102) 。
・臨床検査値に対する影響はいくつか知られているので注意が必要である。[ALP、ACE、血圧、カルシウム、コルチゾル、心電図、甲状腺ホルモンなど] (106) 。
・高齢者は低マグネシウム血症になりやすいので注意 (PMID:9595547) 。高マグネシウム血症は心ブロックを起こすことがあるので、マグネシウム静注は、心ブロック患者には使用禁忌 (104) (105) 。吸収不良 (胆汁分泌障害、腸内感染症などさまざまな要因による) の場合、マグネシウムの腸管吸収が低下することがある (PMID:3294519) (PMID:9583850) 。腎機能障害を持つ人は注意して用いること (105) 。

動物他での
毒性試験

調べた文献の中に見当たらない。

AHPAクラス分類
及び勧告

-

総合評価

安全性

・通常の食品に含まれるマグネシウムの過剰摂取による有害事象は見当たらない。適切に用いれば、成人および子どもは経口摂取でおそらく安全である。
・過剰摂取では下痢や高マグネシウム血症が起こることがある。特に重篤な腎不全患者における大量摂取は非常に危険である。
・種々の医薬品との相互作用の可能性がある。

有効性

(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。)
・マグネシウム欠乏症の治療と予防に有効と判断される。
・経口摂取で有効性が示唆されているのは、1) 軽症-中等症の高血圧の治療、2) 冠状動脈疾患を持つ人における狭心症発作の低減、3) 高コレステロール血症の改善、4) 片頭痛の予防と月経前症状としての片頭痛及び騒音による難聴の予防、5) グルテン過敏腸疾患による骨粗鬆症における骨密度の増加、6) 便秘時および手術や検査前の下剤としての利用、7) 腎結石の再発防止、8) 女性における排尿筋不全などによる尿失禁の改善、9) 妊娠中のこむらがえりである。

参考文献

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(3) 日本人の食事摂取基準 (2020年版) 第一出版
(19) ミネラルの事典 朝倉書店 糸川嘉則 編
(28) 最新栄養学 第9版 (建帛社) 木村修一ら 翻訳監修
(25) クリニカル・エビデンス ISSUE9 日本語版 日経BP社 日本クリニカル・エビデンス編集委員会
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(104) AHFS Drug Information. Bethesda, MD: American Society of Health-System Pharmacists, 1998.
(105) Martindale the Extra Pharmacopoeia. Pharmaceutical Press, 1999.
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(30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添1、別添2、一部改正について)
(108) 栄養機能食品の規格基準設定のための情報解析・調査報告書(平成15年9月、独立行政法人国立健康・栄養研究所)
(109) 厚生労働省HP 医薬品・医療機器等安全情報252号(2008年度)
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