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骨・筋肉
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一般情報
・グルコサミン塩酸塩またはグルコサミン硫酸塩による関節の痛みや関節炎に対する効果が検討されているが、現時点ではポジティブな (有効性があるとする) 結果とネガティブな (有効性がないとする) 結果の両方が存在している。個々の情報は以下の通り。
≪関節との関連が示唆されたという報告≫
一般情報
・グルコサミン硫酸塩は変形性関節症におそらく有効である (94) 。
・膝に骨関節炎を持つ患者において、グルコサミン硫酸塩の摂取は、痛みの軽減と機能を測定する値が改善したという報告があり、この効果は投与期間を数週間から3年までとした複数の研究で再現性があった (94) 。
メタ分析
・2008年6月までを対象に2つのデータベースで検索できた無作為化比較試験2報について検討したメタ分析において、変形性関節症の患者によるグルコサミン硫酸塩の長期 (3年間) 摂取は、関節腔の狭小化 (JSN) をわずかに抑えた (PMID:19544061) 。
RCT
・軽度から中程度の変形性関節症患者118名 (50歳前後、インド) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン500 mgとメチルスルフォニルメタン500 mgのいずれか、または両方を1日3回、12週間摂取させたところ、全ての投与群で疼痛指数、膨潤指数、痛みの視覚アナログ尺度評価、15 m歩行時間、関節可動性指数、Lequesne指標 (痛み、歩行能力、身体機能を評価) が改善、鎮痛剤の使用が減少し、その効果は併用群でより大きかった (PMID:17516722) 。
≪関節への影響は限定的であったという報告≫
メタ分析
・2013年5月までを対象に8つのデータベースで検索できた無作為化プラセボ対照試験25報について検討したメタ分析において、変形性関節症患者によるグルコサミンの摂取は痛みの減少と関連が認められたが試験によるばらつきが大きかった。特に、同一ブランド製品を用いた試験 (12報) においては痛みの減少と関連が認められたもののばらつきが大きく、その他のブランド製品を用いた試験 (13報) においては痛みの減少との関連は認められなかった (PMID:24905534) 。
RCT
・変形性関節症患者40名 (試験群20名、平均55.1±10.9歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン塩酸塩1,200 mg/日+コンドロイチン硫酸60 mg/日+ケルセチングリコシド45 mg/日を16週間摂取させたところ、症状評価の4項目中2項目と総得点、痛み評価の3項目中1項目でのみ改善が認められた (PMID:21969261) 。
・膝の痛みを経験したことがある成人46名 (試験群24名、平均41.6±12.5歳、オーストラリア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン塩酸塩2,000 mg/日を12週間摂取させたところ、膝外傷とKOOSの6項目中1項目 (膝関連QOL) で改善が認められた。一方、Joint line palpation、ダックウォーク後の痛み、階段昇降後の痛み、膝疼痛スコアに影響は認められなかった (PMID:12547742) 。
・急性膝傷害を負った男性競技者108名 (試験群56名、平均25.1±3.6歳、セルビア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン500 mg×3回/日を28日間摂取させたところ、膝の屈曲、伸長の改善が認められた。一方、疼痛強度、膝の腫れに影響は認められなかった (PMID:17578751) 。
≪関節と関連が認められなかったという報告≫
一般情報
・グルコサミン硫酸塩の摂取は、症状の急激な再発の予防や重篤な長期にわたる変形性関節症の痛みを緩和する目的には、効果がないと考えられる (94) 。
メタ分析
・2014年3月までを対象に6つのデータベースで検索できた無作為化プラセボ対照試験5報について検討したメタ分析において、変形性関節症患者におけるグルコサミン塩酸塩またはグルコサミン硫酸塩の摂取は、長期間 (2年間、3報) 、短期間 (3〜6ヶ月間、3報) のいずれにおいても関節疼痛や機能性の評価指標 (WOMAC) との関連は認められなかった (PMID:28754801) 。
・2010年6月までを対象に4つのデータベースで検索できた、200名以上を対象とした大規模無作為化比較試験10報について検討したメタ分析において、膝や腰の変形性関節症患者によるグルコサミンやコンドロイチン硫酸の単独または併用摂取は、関節の痛み、関節腔の狭小化との関連は認められなかった (PMID:20847017) 。
RCT
・変形性膝関節症患者158名 (試験群80名、平均65±8歳、スペイン) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照において、コンドロイチン硫酸1,200 mg/日とグルコサミン硫酸塩1,500 mg/日を24週間摂取させたところ、痛みの改善が抑制された (PMID:27477804) 。
・変形性股関節症患者222名 (試験群111名、平均63歳、オランダ) を対象とした無作為化比較試験において、グルコサミン1,500 mg/日を2年間摂取させたところ、WOMACスコア (関節疼痛や機能性の指標) の改善は認められず、症状のタイプ別解析においてもWOMACスコアや関節腔の狭小化(JSN) に影響は認められなかった (PMID:18283204) (PMID:18848470) 。
・中等度膝変形性関節症の女性患者142名 (平均69.4±7.1歳、試験群49名、日本) を対象としたオープンラベル無作為化比較試験において、グルコサミン塩酸塩を1,500 mg/日、18ヶ月摂取させたところ、膝の痛みと機能において、運動療法との併用に影響は認められなかったという予備的な報告がある (PMID:18470670) 。
・膝関節炎患者1,583名を対象とし、多施設間 (アメリカ) で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン塩酸塩500 mg (試験群317名、平均58.6±10.2歳) 、コンドロイチン硫酸400 mg (試験群318名、平均58.2±10.0歳) もしくは併用 (試験群317名、平均58.6±10.6歳) で3回/日、24週間摂取させたところ、それぞれ単独でも併用でも痛みの軽減効果は認められなかった (PMID:16495392) 。また、同じ試験において継続して24ヶ月間摂取させた572名 (平均56.9±9.8歳、試験群207名) を対象とした解析では、脛大腿関節腔幅 (JSW) の減少や症状の進行に影響は認められず (PMID:18821708) 、同じ試験の662名 (平均57歳、試験群389名) を対象とした解析では、WOMACスコア (関節疼痛や機能性の評価指標) に影響は認められなかった (PMID:20525840) 。
・罹患期間が6ヶ月以上の慢性腰痛症もしくは変形性腰部関節症患者250名 (平均48.5±11.2歳、試験群125名、ノルウェー) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン硫酸塩1,500 mg/日を6ヶ月間摂取させ、介入開始から6ヶ月後と1年後に評価したところ、RMDQ (ローランド-モリス障害問診票) 、静止・活動時の痛み評価尺度、EQ-5D (QOLを数値化する質問票) に影響は認められなかった (PMID:20606148) 。
・変形性関節症患者39名 (試験群20名、平均57.05±1.30歳、トルコ) を対象とした無作為化比較試験において、運動療法または運動療法とグルコサミン硫酸塩1,500 mg/日の摂取の併用を12週間実施させたところ、いずれの群とも痛みや症状評価 (WOMAC) 、運動機能、筋力、QOL、MRIの結果が改善し、グルコサミン硫酸塩に付加的な効果はなく運動療法のみで効果が認められた (PMID:23220811) 。
・変形性股関節症患者201名 (試験群98名、平均52.17±6.05歳、アメリカ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン塩酸塩1,500 mg/日を24週間摂取させたところ、MRIによる膝軟骨損傷検査結果に影響は認められなかった (PMID:24616448) 。
・過体重または肥満の女性407名 (オランダ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、グルコサミン硫酸塩1,500 mg/日を単独 (102名、平均55.7±3.1歳) または食事・運動療法とともに (102名、平均55.7±3.1歳) 、30ヶ月間摂取させたところ、食事・運動療法の有無に関わらず、膝関節炎発症リスク、QOL、WOMACスコア (関節疼痛や機能性の指標) 、体重に影響は認められなかった (PMID:25818496) 。
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