ビタミンE解説
 
A.ビタミンEとは?
ビタミンEは脂溶性のビタミンで、天然にはα-、β-、γ-、δ-トコフェロールと、α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの8種類が存在します (7) 。その中でも、α-トコフェロールが最も生理活性が強く、生体内のトコフェロールの90%を占めています (9) 。ビタミンEは細胞膜や脂質に豊富に存在し、それ自体が酸化されることによって、多価不飽和脂肪酸の酸化を防止します (7) 。食品では、植物油 (コーン、大豆、サフラワー油) や小麦胚芽、種実類などに多く含まれます。
B.ビタミンEの供給源になる食品
主な食品のビタミンE含有量は以下の通りです (6) 。
食品名 | 1食あたり
の重量(g) | α-トコフェロール(mg) | 1食あたり | 100gあたり | 西洋かぼちゃ(ゆで) | 100 | 4.7 | 4.7 | アーモンド(フライ味付け) | 15 | 3.3 | 22.0 | 赤ピーマン(油炒め) | 60 | 2.6 | 4.4 | だいこん葉(ゆで) | 50 | 2.5 | 4.9 | ほうれん草(ゆで) | 80 | 2.1 | 2.6 | ブロッコリー(電子レンジ) | 50 | 1.7 | 3.4 | アボカド | 50 | 1.7 | 3.3 | サフラワー油 | 6 | 1.6 | 27.0 | さつまいも(蒸し) | 100 | 1.5 | 1.5 | トマトジュース | 200 | 1.4 | 0.7 | キウイフルーツ | 100 | 1.3 | 1.3 |
※サフラワー油 別名 べに花油
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用) 食品名 | 1食あたり
の重量(g) | α-トコフェロール(mg) | 1食あたり | 100gあたり | はまち(生) | 80 | 4.4 | 5.5 | 子持ちがれい(水煮) | 100 | 4.2 | 4.2 | うなぎ (かば焼き) | 80 | 3.9 | 4.9 | ぎんだら(水煮) | 70 | 3.8 | 5.4 | いわし缶詰(油漬) | 40 | 3.3 | 8.2 | たいせいようさけ(焼き) | 70 | 3.1 | 4.4 | たらこ(生) | 40 | 2.8 | 7.1 | あんこうきも(生) | 20 | 2.8 | 14.0 | イクラ(生) | 20 | 1.8 | 9.1 | さば缶詰(みそ煮) | 90 | 1.7 | 1.9 |
※たいせいようさけ 別名 アトランティックサーモン
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)
C.ビタミンEの特性 (単位・化学的安定性)
近年の成分表ではビタミンE効力 (IU) に代えて、ビタミンEとしてα-,β-,γ-,δ-トコフェロール重量 (mg) の成分値が示されています (6) 。なお、mg×1.5でIUに変換することができます (7) 。
ビタミンEは有機溶媒には溶けますが、水には溶けません (10) 。空気中での酸化は、光、熱、アルカリによって促進されます (13) 。
D.ビタミンEの吸収や働き
摂取したビタミンEは、胆汁酸などによってミセル化された後に小腸から吸収されます。小腸で吸収されたビタミンEは、キロミクロンに取り込まれてリンパ管を通り、肝臓に運ばれます。肝臓では、ビタミンE同族体 (類似の化合物) のうち、α-トコフェロールが優先的に輸送タンパク質に結合し、他のビタミンE同族体は肝細胞内で代謝されます。α-トコフェロールは、輸送タンパク質に結合することで肝細胞内を輸送され、今度はVLDLに取り込まれて血流中に移行し、LDLに変換されて各組織に運搬されます (1) 。生体内でのビタミンEの代謝は以下の通りです (1) (13) 。

ビタミンEは生体膜に存在し、生体膜や血中リポタンパク質に多く含まれる不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ働きをしています (12) 。
E.ビタミンE不足の問題
ビタミンE不足はどのようにして起こるの?
無β-リポタンパク血症の患者や、長期に渡って脂質吸収障害があった場合は、ビタミンEの吸収が減少するため、血漿中のビタミンE濃度が異常に低い値になります (7) 。
また、未熟児では、多価不飽和脂肪酸を多く含み鉄を添加された食事によって、血漿中のビタミンE濃度が低下する溶血性貧血が起こることが確認されています (7) (9) 。
ビタミンE不足の判断基準
ビタミンEの血清濃度は、総脂肪とコレステロール濃度に関係があります。そのため、血清ビタミンE濃度の評価は、脂質濃度を踏まえて評価する必要があります (13) 。
ビタミンEが不足すると、どのような症状が起こるの?
ビタミンEが不足すると、神経や筋障害の症状がみられることがあります (7) 。しかし、ヒトではほとんどみられません (10) 。
F.ビタミンE過剰摂取のリスク
通常、一般的な食事内容でビタミンEを過剰摂取することはほとんど考えられません。ただし、最近の報告において、サプリメントとして過剰摂取すると死亡率が高まるとの報告も出され、過剰摂取に対する警鐘となっています (1) 。
G.ビタミンEはどのぐらい摂取すればよいか?
各年齢別のビタミンEの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2020年版) は以下の通りです (1) 。
<ビタミンEの食事摂取基準 (mg/日) 1 >
性別 | 男性 | 女性 | 年齢等 | 目安量
(AI) | 耐容上限量
(UL) | 目安量
(AI) | 耐容上限量
(UL) |
0〜5 (月) | 3.0 | - | 3.0 | - | 6〜11 (月) | 4.0 | - | 4.0 | - | 1〜2 (歳) | 3.0 | 150 | 3.0 | 150 | 3〜5 (歳) | 4.0 | 200 | 4.0 | 200 | 6〜7 (歳) | 5.0 | 300 | 5.0 | 300 | 8〜9 (歳) | 5.0 | 350 | 5.0 | 350 | 10〜11 (歳) | 5.5 | 450 | 5.5 | 450 | 12〜14 (歳) | 6.5 | 650 | 6.0 | 600 | 15〜17 (歳) | 7.0 | 750 | 5.5 | 650 | 18〜29 (歳) | 6.0 | 850 | 5.0 | 650 | 30〜49 (歳) | 6.0 | 900 | 5.5 | 700 | 50〜64 (歳) | 7.0 | 850 | 6.0 | 700 | 65〜74 (歳) | 7.0 | 850 | 6.5 | 650 | 75以上 (歳) | 6.5 | 750 | 6.5 | 650 | 妊婦 | | 6.5 | - | 授乳婦 | 7.0 | - |
目安量 (AI,adequate intake)
ある性・年齢階級に属する人々が、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。
(特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量)
耐容上限量 (UL,tolerable upper intake level)
ある性・年齢階級に属するほとんど全ての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
1:α−トコフェロールについて算定した。α−トコフェロール以外のビタミンEは含んでいない。
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H.ビタミンE摂取状況
2019 (令和元) 年の国民健康・栄養調査では、男性で平均7.0 mg/日、女性は平均6.5 mg/日摂取していま (α-トコフェロール量。α-トコフェロール以外のビタミンEは含んでいない) (14) 。
I.栄養機能食品としての関連情報
ビタミンEは基準値を満たした場合に栄養機能食品として表示することができます。
・下限値:1.89 mg、上限値:150 mg
・栄養機能表示
「ビタミンEは、抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養素です。」
・注意喚起表示
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」
栄養機能食品の表示に関する基準の詳細についてはこちらの資料をご参照ください。
■関連情報 ・ビタミンEの個々の研究結果については「素材情報データベース【ビタミンE (トコフェロール)】」をご覧下さい。
・素材情報データベース:一覧
・ビタミンについての解説:一覧
・ミネラルについての解説:一覧
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<国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所>
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