注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
ドオウレン、クサノオウ、ヨウシュクサノオウ、グレーターセランディン [英]Celandine、Greater celandine、Swallow-wort [学名]Chelidonium majus L. var. asiaticum (H.Hara) Ohwi
概要
ドオウレンは、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカ原産のケシ科の多年生植物。海外では、葉をよく茹で、よく水にさらして野菜として食されているが、日本では食品衛生法に基づき、「食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分等 (指定成分等)」に指定されている。 ●有効性 俗に、「解毒作用がある」「消化不良によい」「胃がんに効く」と言われているが、人においては、信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性 ドオウレンには肝毒性があるため、摂取することは危険性が示唆されている。妊娠中・授乳中信頼できる十分な情報が見当たらないため、避ける。 ●摂取してはいけない人 (禁忌) 肝疾患の既往歴のある人、胆管閉塞がある人 コラム (一般の方向け) :「ドオウレンについて」 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食品衛生法 「食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物であって、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定したもの(指定成分等)」に該当する。 ■食品表示基準 当該成分を含有する食品は、「指定成分等含有食品」に該当し、指定成分等含有食品である旨等の表示が義務表示となる。 ■食薬区分 ・ドオウレン (クサノオウ/ハックツサイ):「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・アルカロイド (アロクリプトピン、ベルベリン (berberine) 、ケリドニン (chelidonine) 、プロトピン (protopine) 、コプチシン (coptisine) 、スチロピン (stylopine) 、サンギナリン (sanguinarine) 、ケレリトリン、スパルテインなど) を含む (7) (33) (102) 。
分析法
・ベルベリンやケリドニンなどのアルカロイドをUPLC-PDAやHPLC (逆相カラム) にて分析した報告がある (PMID:17236060) (PMID:20183823) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中に見当たらない。
消化系・肝臓
調べた文献に見当たらない。
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・ドオウレン摂取による肝炎が多数報告されているため、摂取することは危険性が示唆されている (94) 。 ・生のドオウレン摂取による消化器系への強い刺激が報告されている (22) 。 ・摂取により発疹を生じる可能性がある (94) 。 ・ドオウレン抽出物を摂取し、溶血性貧血による血小板減少症、肝障害、腎不全を生じた事例が報告されている (94) 。 【肝毒性に関する情報】 ・ドオウレン摂取との関連が疑われる肝障害が多数報告されていることから、オーストラリアTGAは、ドオウレン製品を摂取して体調不良を生じた場合は医療機関を受診するように注意喚起を発信している (103) 。 ・2008年1月までを対象に2つのデータベースで検索できたドオウレンによる肝炎の症例報告は16件であった (PMID:19397968) 。 ・ドイツで報告されているドオウレン摂取による肝機能障害事例22件のCIOMS (国際医学団体協議会) における因果関係評価は、”highly probable”が2件、”probable”が6件、”possible”が10件、”unlikely”が1件、”excluded”が3件であり、”highly probable”または”probable”と評価された8件 (男性3名、女性5名、平均56.4歳) について解析したところ、平均摂取期間は36.4日、症状出現まで29.8日、黄疸出現まで35.6日であった (PMID:21893153) 。 ・ヨーロッパで報告されているドオウレン摂取による肝機能障害事例21件について解析したところ、CIOMS(国際医学団体協議会)における因果関係評価は、”highly probable”が2件、”probable”が6件、”possible”が10件、”excluded”が3件であり、”highly probable”または”probable”と評価された8件 (男性3名、女性5名、平均46.4歳) について解析したところ、平均摂取期間は2.8ヶ月、症状出現まで1.2ヶ月であった (PMID:22189691) 。 ・ヨーロッパで報告されているドオウレン摂取による肝機能障害事例43件のうち、CIOMS (国際医学団体協議会) における因果関係評価が”highly probable” (4件) または”probable” (12件) であった16件 (男性6名、女性10名、平均55歳) について解析したところ、ドオウレン製品の平均摂取量は2.6個/日 (ケリドニン10 mg/日含有) 、平均摂取期間は2.4ヶ月間であり、全ての症例で肝機能マーカー (ALT、AST) の上昇と黄疸が認められた (PMID:23109446) 。 <妊婦・授乳婦> ・妊娠中・授乳中おける安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらないため、自己判断での摂取を控えること (94) (22)。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらない。 <病者> ・免疫機能に影響をおよぼす可能性があるため、自己免疫疾患患者は注意が必要である (94) 。 ・胆管閉塞患者の摂取は、症状を悪化させる可能性がある (94) 。 ・肝疾患患者は使用を避ける (94) 。 <被害事例> 【肝臓疾患に関する被害事例】 ・37歳女性 (ドイツ) が、アトピー性湿疹改善を目的に、ドオウレンを含む多数のハーブ、ホメオパシー製品を3ヶ月間摂取 (摂取量不明) したところ、吐き気、黄疸を生じ、検査所見により肝機能マーカー (AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン) 上昇を認め、胆汁うっ滞性肝炎と診断された。ドオウレンの摂取中止と加療により改善したが、摂取を再開したところ再び肝機能が悪化し、摂取していたハーブ製品の内ドオウレンのみ摂取中止したところ、すべての肝機能マーカーが改善した (PMID:10535888) 。 ・女性9名 (40〜66歳、ドイツ) が、胆石、消化不良、便秘、腹痛などのためにドオウレンを1〜9ヶ月間摂取したところ、肝機能障害を生じた。このうち肝生検を実施した7名が薬物性肝障害と診断され、すべての患者がドオウレンの摂取中止により改善した (PMID:10535888) 。 ・39歳女性 (ドイツ) がドオウレンを含む製品を4週間摂取 (摂取量不明) したところ、衰弱、息切れ、黄疸、褐色尿を生じ、摂取中止と加療により改善したが、再摂取により再度黄疸、吐き気、嘔吐、寝汗、発疹、倦怠感を生じた。再度摂取中止と加療により改善し、摂取したドオウレンを含む製品による急性肝炎と診断された (PMID:12795472) 。 ・胆嚢切除、人工股関節置換術の受療歴がある69歳男性 (ドイツ) が、食後の不快感のためにドオウレンを含む製品 (ケリドニン4 mg含有) を6週間摂取 (合計で80カプセル以上) したところ、衰弱、消化不良、右上腹部痛、吐き気、黄疸、褐色尿などの症状を呈し、急性肝炎と診断され摂取中止により改善した (PMID:12795472) 。 ・食道裂孔ヘルニア、胃炎、食道炎のためランソプラゾールを服用中の65歳男性 (イタリア) が、胸やけのために乾燥ドオウレン葉をスプーン4〜5杯、150 mLの熱水に抽出したハーブティーを1ヶ月間摂取したところ、衰弱、消化不良、黄疸、暗色尿を呈し、ドオウレンとランソプラゾールの摂取中止、加療によって改善した。因果関係評価 (Naranjo) はスコア6 (probable) であり、ドオウレンによる急性胆汁うっ滞性肝炎と診断された (PMID:19397968) 。 ・肥満のため胃緊縛術の受療歴がある58歳女性 (ベルギー) が、筋肉痛を和らげるためにドオウレン50 mg、ゲンチアナ50 mg、ウコン根100 mg配合カプセルを6週間摂取したところ、無痛性黄疸、暗色尿、白色便が出現し受診。ドオウレンによる急性肝炎と診断され、摂取中止と加療により回復した (PMID:18720945) 。 ・生理痛のためパラセタモールを服用中の22歳女性 (イタリア) が、痩身のためにドオウレン、Lycopodium serratum (ホソバトウゲシバ) を含むハーブ製品を摂取したところ (摂取量不明) 、黄疸、掻痒、上腹部痛、微熱、吐き気、嘔吐、暗色尿、白色便を生じ、摂取中止と加療により改善した。ハーブ製品による薬物性肝障害と診断され因果関係評価 (RUCAM) はLikelyであった (PMID:19452589) 。 ・46歳女性 (イタリア) が不眠のためにドオウレンやLycopodium serratum (ホソバトウゲシバ) などの植物を含むハーブ製品 (液体) を50滴/日、約8週間摂取したところ、吐き気、食欲不振、無力、腹部不快感を訴え受診、肝機能マーカー (AST、ALT、総ビリルビン、γ-GTP、ALP) 上昇を認め、ドオウレンとホソバトウゲシバの関与が疑われる急性肝炎と診断され、ハーブ製品の摂取中止と加療により改善した (PMID:18403950) 。 【その他の被害事例】 ・64歳女性 (スペイン) が、いぼ治療を目的としてドオウレン汁を首に塗布したところ、数時間後に丘疹を伴う掻痒、紅斑が出現し、ドオウレンによる接触皮膚炎と診断された (PMID:10902593) 。
禁忌対象者
・肝疾患の既往歴のある人、胆管閉塞がある人は使用禁忌 (22) 。
医薬品等との 相互作用
<試験管内・動物> ・in vitro試験 (ヒト肝ミクロソーム) において、ケリドニンはCYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C9、CYP3A4活性に影響を及ぼさなかったが、CYP2D6活性を阻害した (PMID:30368994) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・肝毒性を持つ医薬品やハーブ、サプリメントと併用すると、肝機能障害のリスクを高める可能性がある (94) 。 ・免疫機能に影響を及ぼし、免疫抑制剤の効果を減弱する可能性がある (94) 。 MAO阻害剤との併用により、副作用のリスクを高める可能性がある (94) 。
動物他での 毒性試験
1.TDLo (最小中毒量) ドオウレン抽出物を投与:ヒト経口7.1 g/kg (91) 。 2.LD50 (半数致死量) ドオウレン抽出物を投与:マウス経口13 g/kg (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・地上部:クラス2b、2c、2d (22) 。 危険情報、禁忌対象者 参照
総合評価
・摂取による肝機能障害が多数報告されているため、「指定成分等」に指定されている。 ・妊娠中・授乳期間中は、医療従事者監督下以外での使用は禁止。 ・肝疾患の既往歴のある人、胆管閉塞がある人は使用禁忌。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・信頼できる十分な情報が見当たらない。
参考文献
(7) 中薬大辞典 小学館 (22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (33) 世界薬用植物百科事典 誠文堂新光社 A.シェヴァリエ (34) 有用植物和・英・学名便覧 北海道大学図書刊行会 由田宏一 (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (PMID:10535888) Gastroenterology. 1999 Nov;117(5):1234-7. (PMID:15992405) BMC Cancer. 2005 Jul 1;5:69. (PMID:20183823) J Sep Sci. 2010 Apr;33(8):1004-9. (PMID:17236060) Planta Med. 1994 Aug;60(4):380-1. (PMID:12795472) Scand J Gastroenterol. 2003 May;38(5):565-8. (PMID:19397968) J Ethnopharmacol. 2009 Jul 15;124(2):328-32. Epub 2009 May 3. (PMID:10902593) Contact Dermatitis. 2000 Jul;43(1):47. (PMID:18403950) Eur J Gastroenterol Hepatol. 2008 May;20(5):469-71. (PMID:21893153) Regul Toxicol Pharmacol. 2011 Dec;61(3):282-91. (94) Natural Medicines (PMID:22189691) Eur J Gastroenterol Hepatol. 2012 Mar;24(3):270-80. (PMID:23109446) Ann Hepatol. 2012 Nov-Dec;11(6):838-48. (PMID:18720945) Acta Gastroenterol Belg. 2008 Apr-Jun;71(2):281-2. (101) 学名でひく食薬区分リスト (102) 健康・機能性食品の基原植物事典 中央法規 (103) オーストラリアTGA「Greater celandine (Chelidonium majus)」 (PMID:30368994) J Biochem Mol Toxicol. 2019 Feb;33(2):e22251. (PMID:19452589) World J Gastroenterol. 2009 May 21;15(19):2414-7.