注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
ハチ花粉 [英]Bee Pollen、Buckwheat Pollen、Honeybee Pollen [学名]-
概要
ハチ花粉は種子植物の花粉粒から構成されており、働きバチの体に付着した花粉そのもの、およびそれらを商業用に収穫したものをさす。ハチ花粉の成分組成は、花粉を採取した植物や採取場所に大きく由来し、またハチミツやハチの唾液もたくさん含まれているため、一定ではない。 ●有効性 俗に、「食欲を刺激する」「運動能力や持久力が向上する」「花粉症によい」と言われているが、運動能力の向上や乳がん関連のホットフラッシュ、月経前症候群については効果がないことが示唆されている。その他の、人での有効性については、信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性 ハチ花粉摂取による有害事象が多数報告されているため、感受性の高い人は特に注意が必要である。ハチ花粉は子宮刺激作用を有する可能性があるため、妊娠中の摂取は危険性が示唆されている。また、信頼できる十分な情報が見当たらないため、授乳中は避ける。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・カフン (ガマ、ヒメガマ) 花粉:「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に該当する。 ・カフン (ガマ、ヒメガマ) 以外の花粉:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・成分は植物の種類や産地によって大きく異なる (23) 。 ・水分3〜16%、粗タンパク質5.9〜28.3%、アミノ酸および遊離アミノ酸14.6〜21.9%、脂質1〜20%、炭水化物44%、単糖類4〜10%、フラボノイド類2〜2.5%、ビタミン類などを含む (23) 。 ・ある種の花粉にはペンタコサン、イソラムネチン配糖体、ナルシシン、遊離パルミチン酸、ステアリン酸、オリゴ糖、シトステロールなどを含むと報告されているが、全ての花粉に存在するとは限らない (23) 。
分析法
-
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
・調べた文献に見当たらない。
消化系・肝臓
糖尿病・内分泌
生殖・泌尿器
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
RCT ・競泳選手20名 (男性16名、女性4名、11.5〜20歳、イギリス) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、花粉抽出物を含む製品を6週間摂取させたところ (摂取量不明) 、運動能力や持久力の向上には影響が認められなかった (PMID:7139223) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・ホオウ (別名:ガマ、ヒメガマ) の花粉は、国内では「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に区分される (30) ため、食品に使用することは認められていない。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報が見当たらない。 <被害事例> ・49歳男性 (日本) がハチ花粉などを含むサプリメントを5ヶ月以上摂取したところ、全身性掻痒が出現、そのまま1ヶ月間摂取したところ、呼吸困難や無尿症、全身浮腫による著しい体重増加 (20 kg) 、食欲不振などの症状が出現し、薬物誘発性急性腎不全と診断された (PMID:20438524) 。 ・33歳女性 (アメリカ) がスプーン2杯/日のハチ花粉を数ヶ月間摂取したところ、上腹部痛が生じ、血中ALT値、AST値が上昇した。摂取中止後6ヶ月で回復したため、ハチ花粉による急性肝炎と診断された (PMID:10586838) 。 ハチ花粉摂取によるアレルギー被害が多数報告されている。 ・季節性アレルギー鼻炎の既往歴がある46歳白人男性 (アメリカ) が、花粉症の症状緩和を目的として、ハチ花粉を茶さじ1杯摂取したところ、15分後に発作的なくしゃみ、30分後に全身性血管性浮腫、じんましん、喘鳴を伴う呼吸困難、頭部ふらつき感が生じ、ハチ花粉によるアナフィラキシーと診断された (PMID:7270986) 。 ・アレルギー性鼻炎の既往歴がある56歳女性 (アメリカ) が、ハチ花粉が入ったスムージーを飲んだところ、20分以内に手のひらの掻痒、全身性蕁麻疹、急性呼吸困難、のどの締め付け感、倦怠感などが生じた。プリックテストにより花粉が陽性であったため、摂取したハチ花粉によるアナフィラキシーと診断された (PMID:11258697) 。 ・33歳男性 (アメリカ) がハチ花粉を摂取したところ、15分以内にのどの締め付け感、首の掻痒、腫脹、呼吸困難が認められ、摂取したハチ花粉によるアナフィラキシーと診断された (PMID:8059632) 。 ・季節性の鼻炎があり、トマトやヒマワリを含む健康食品摂取による蕁麻疹の経験がある25〜31歳の白人男女 (男性1名、女性2名、アメリカ) が、ハチ花粉を茶さじ1杯弱〜1.5杯程度を摂取したところ、30〜45分後にのどのむずがゆさや皮膚のかゆみ、全身性蕁麻疹による全身のかゆみ、呼吸困難などの症状が生じた。スクラッチテストによりハチ花粉が陽性であっため、ハチ花粉による急性アレルギー反応と診断された (PMID:479479) 。 ・喘息の既往歴があり、プリックテストで卵黄やハウスダスト、ダニなどが陽性で、プレドニゾロン (抗炎症薬:CYP3A基質) を服用している19歳男性 (オーストラリア) が、加工した花粉錠を2錠噛んだところ、1〜2分後にのどの痛み、嚥下困難、数分後に顔のかゆみ、腫れ、呼吸困難、2時間後には胸痛、喘鳴が生じた。RAST法により、加工花粉が陽性であったため、摂取した花粉による急性過敏症反応と診断された (PMID:3864427) 。 ・37歳白人女性 (アメリカ) が、活力増強目的でハチ花粉 (摂取量不明) を約3週間摂取したところ、全身倦怠感、頭痛、嘔吐、腹痛、下痢、筋痛、班状丘疹を伴う全身性掻痒が生じ、さらに3週間摂取を継続したところ、症状が悪化した。好酸球の増加も認められ、摂取中止により回復した。ハチ花粉の再摂取試験により同様の症状が出現したため、ハチ花粉摂取による好酸球増加症と診断された (PMID:2708739) 。 ・季節性の鼻炎がある4歳男児 (スペイン) が、ハチ花粉を小スプーン1杯摂取したところ、すぐに、口腔、舌、咽頭の痒みを伴う浮腫、嚥下障害、胸部蕁麻疹を生じた。プリックテストによりハチ花粉および一般的な花粉が陽性であったため、ハチ花粉によるアレルギー反応と診断された (PMID:20447747) 。 ・季節性の鼻炎がある30歳女性 (カナダ) が、ハチ花粉、n-3-6-9脂肪酸、ビタミンD3のサプリメントを摂取し始めたところ、2回目の摂取の約10分後に、瞼や唇、喉の腫れ、嚥下障害、呼吸困難などを生じた。プリックテストによりハチ花粉が陽性であったため、ハチ花粉サプリメントによるアナフィラキシーと診断された (PMID:22619345) 。 ・季節性アレルギー性鼻炎の既往歴がある40歳男性 (韓国) が、ハチ花粉を大さじ1杯摂取したところ、約1時間後に全身性蕁麻疹、顔の浮腫、呼吸困難、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、喘鳴を生じ救急搬送された。プリックテスト、特異的IgEが陽性を示したため、ハチ花粉によるアナフィラキシーと診断された (PMID:25749764) 。 ・32歳女性 (アメリカ) が、痩身を目的に、ゴールデンシール、朝鮮ニンジン、ハチ花粉、ショウガなどを含む製品を1ヶ月程度摂取したところ (摂取量不明) 、皮膚が露出している腕および足に痛みを伴う掻痒性皮疹が出現。摂取中止により回復したため、当該製品摂取との因果関係が疑われる光過敏症と診断された (PMID:14677798) 。 ・季節性アレルギー性鼻炎がある40歳男性 (アメリカ) が、ハチ花粉サプリメントを約1ヶ月間常用し、サプリメントの摂取から約2時間後にランニングをしていたところ、鼻閉、息切れ、蕁麻疹、舌および手の浮腫を生じて抗ヒスタミン薬の服用により改善した。プリックテストによりハチ花粉が陽性であったため、ハチ花粉サプリメントによる運動誘発性アナフィラキシーと診断された (PMID:30261295) 。
禁忌対象者
調べた文献に見当たらない。
医薬品等との 相互作用
<ヒト症例> ・心房粗動等の既往歴がある71歳男性 (アメリカ) が、ワルファリン (抗凝固薬:CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4) (1週間のうち5日間は7.5 mg/日、2日間は5 mg/日) 、ヒドロクロロチアジド (利尿薬) 、シンバスタチン (脂質異常症治療薬:CYP3A4、OATP1B1基質) などの医薬品 (10種) とハーブ製品 (3種) を摂取し、INR値が1.9〜3.3と安定していたが、ハチ花粉を含む製品 (顆粒) を1ティースプーン (5 gのハチ花粉含有) ×2回/日、1ヶ月間摂取したところ、INR値が7.1まで上昇した。ワルファリンを一時中断しINR値が回復した後、ワルファリン投与を低用量より再開した。ワルファリンとハチ花粉のDrug Interaction Probability Scale (DIPS) が5 (probable) であったため、摂取したハチ花粉とワルファリンの相互作用と推察された (PMID:21098375) 。
動物他での 毒性試験
1.TDLo (最小中毒量) ・ハチ花粉 (Cystus incanus L.由来) を投与:マウス経口 (間欠的) 1.4 g/kg/14日 (91) 。 ・ハチ花粉抽出物フェノール化合物を投与:マウス (投与経路不明) 100 mg/kg (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
総合評価
・適切に短期間摂取する場合は安全性が示唆されているが、花粉アレルギーのある人は重篤なアレルギー反応が起こる可能性があるため、注意が必要である。 ・妊娠中の摂取は危険性が示唆されている。また、信頼性の高い情報が十分に得られていないため、授乳中の使用は避ける。 ・ホオウ (別名:ガマ、ヒメガマ) の花粉は、国内では「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」に区分されるため、食品に使用することは認められていない。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・運動能力の向上や乳がん関連のホットフラッシュ、月経前症候群に効果がないことが示唆されている。
参考文献
(23) 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店 小林彰夫ら 監訳 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添1、別添2、一部改正について) (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (PMID:10586838) South Med J. 1999 Nov;92(11):1095-7. (PMID:7270986) Ann Allergy. 1981 Sep;47(3):154-6. (PMID:2708739) J Allergy Clin Immunol. 1989 Apr;83(4):793-6. (PMID:479479) J Allergy Clin Immunol. 1979 Oct;64(4):270-4. (PMID:20438524) Ther Apher Dial. 2010 Feb;14(1):93-7. (PMID:7139223) Br J Sports Med. 1982 Sep;16(3):142-5. (PMID:3864427) Aust N Z J Med. 1985 Jun;15(3):346-7. (PMID:11258697) Ann Allergy Asthma Immunol. 2001 Feb;86(2):239-42. (PMID:8059632) J Am Board Fam Pract. 1994 May-Jun;7(3):250-2. (PMID:20447747) Allergol Immunopathol (Madr). 2010 Sep-Oct;38(5):263-5. (PMID:14677798) J Toxicol Clin Toxicol. 2003;41(6):865-7. (PMID:21098375) Am J Health Syst Pharm. 2010 Dec 1;67(23):2034-7. (PMID:22619345) CMAJ. 2012 Jul 10;184(10):1167-9. (PMID:25749764) Allergy Asthma Immunol Res. 2015 Sep;7(5):513-7. (PMID:30261295) Ann Allergy Asthma Immunol. 2019 Jan;122(1):118-119.