注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
コロハ、フェネグリーク、フェヌグリーク [英]Fenugreek [学名]Trigonella foenum-graecum L.
概要
コロハはインドおよび北アフリカが原産のマメ科の1年草で、40〜80 cmほどに生長し、強い特有の香気があり、3枚の小葉と白〜黄白色の花、細長い鎌状の鞘をつける。鞘の中で成熟する種子には独特のにおいと苦味があり、カレーのスパイスとしても使用される。薬用部位は種子で生薬名は「コロハ<>」。 ●有効性俗に、「食欲を減退させる」「血糖値の上昇を抑制する」「コレステロール値を下げる」「中性脂肪を下げる」などと言われているが、人においては信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性 一般的な食品に含まれている量の摂取はおそらく安全である。妊娠中の、食品に含まれる以上の量の摂取は、おそらく危険である。小児が摂取することは危険性が示唆されているため、摂取を避けること。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・種子:「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■海外情報 ・米国では、GRASに該当する。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・揮発油、アルカロイド (トリゴネリン (trigonelline) を含む) 、4-ヒドロキシロイシン (4-hydroxyleucine) 、4-ヒドロキシイソロイシン (4-hydroxyisoleucine) 、ソトロン (sotolon) 、クマリン、サポニン (ジオスゲニンが主) 、フラボノイド、粘液質、タンパク質、不揮発油、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、無機質など。 ・種子には4種のフラボノイドと2種のステロイドサポニンを含む (PMID:19922253) 。
分析法
・コロハ葉に含まれるカロテノイドをHPLC-PDA (波長:450 nm) にて分析した報告がある (PMID:15826027) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
メタ分析 ・2019年6月までを対象に5つのデータベースで検索できた無作為化比較試験3報 (検索条件:期間≧2週間) について検討したメタ分析において、健康成人によるコロハの摂取は、体重、血中脂質 (TC (3報) 、HDL-C (3報) 、TG (3報)) との関連は認められなかった (PMID:32087319) 。
消化系・肝臓
調べた文献の中に見当たらない。
糖尿病・内分泌
一般情報 ・2型糖尿病に対し有効性が示唆されている (94) 。 メタ分析 ・2013年11月までを対象に5つのデータベースで検索できた介入試験9報 (検索条件:期間≧7日) について検討したメタ分析において、コロハの摂取は、空腹時血糖値 (9報) 、食後2時間血糖値 (6報) 、HbA1c (3報) の低下と関連が認められたが、全体的に試験の質が低く、血糖値に関しては試験によるばらつきが大きかった (PMID:24438170) 。 ・2011年2月までを対象に3つのデータベースで検索できた無作為化プラセボ対照試験2報について検討したメタ分析において、2型糖尿病患者におけるコロハの摂取はHbA1cの低下と関連が認められたが、空腹時血糖との関連は認められなかった。ただし、試験によるばらつきが大きく、さらなる検討が必要である (PMID:21843614) 。 RCT ・インスリン療法を受けている1型糖尿病患者10名 (12〜37歳、インド) を対象としたランダム化比較対照交差臨床試験において、脱脂コロハ種子粉末を100 g×2回/日、10日間摂取したところ、24時間尿糖と空腹時血糖値、75 g OGTT値は低下したが、血清インスリン値とインスリン濃度のAUCには影響は認められなかった (PMID:2194788) 。
生殖・泌尿器
一般情報 ・月経困難症、性機能に対し有効性が示唆されている (94) 。 メタ分析 ・2015年3月までを対象に8つのデータベースで検索できた無作為化比較試験27報について検討したメタ分析において、ディル (1報) 、ウイキョウ (1報) 、コロハ (1報) 、ショウガ (3報) 、グアバ (1報) 、バレリアン (1報) 、カミツレ (1報) 、シナモン (1報) などのハーブの月経困難症の痛みに対する効果は、報告数が少なく試験の質が低いため、結論づけることができなかった (PMID:27000311) 。 RCT ・閉経期前後の女性104名 (試験群54名、平均53.1±4.1歳、オーストラリア) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、コロハ種子抽出物を300 mg×2回/日、12週間摂取させたところ、更年期症状に関連するQOLの指標 (Menopause-Specific Quality of Life) の4項目全てで改善が認められたが、血中エストラジオール濃度に影響は認められなかった (PMID:28707431) 。
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
RCT ・過体重の健康な成人男性38名 (18〜59歳、試験群18名、フランス) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、コロハ種子抽出物1,176 mg/日を6週間摂取させたところ、脂質エネルギー摂取量/総エネルギー消費量比とインスリン/グルコース比の低下が認められたが、総エネルギー摂取量、体重、体組成、食欲/満足感スコア、血漿中脂質濃度、酸化ストレスマーカーに影響は認められなかった (PMID:20020282) 。
その他
メタ分析 ・2018年11月までを対象に5つのデータベースで検索できた無作為化比較試験4報 (検索条件:期間≧4週、年齢>18歳) について検討したメタ分析において、健康な男性によるコロハ抽出物サプリメントの摂取は、血中総テストステロン濃度の上昇と関連が認められたが、試験によるばらつきが大きかった (PMID:32048383) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・食品に含まれている量を摂取することはおそらく安全である (94) 。 ・血小板凝集能に影響を与える可能性がある (94) 。 ・子宮や腸、心臓への刺激作用が示唆されている (94) 。 ・摂取により、下痢や消化不良、腹部膨満感、鼓腸などを生じる可能性がある (94) 。 ・過剰摂取により低血糖を起こす可能性がある (94) 。また、コロハによって鼻づまりや嗄声、持続性の咳、喘鳴、顔面の血管性浮腫、ショックなどのアレルギー反応を起こす可能性がある (94) 。 ・摂取により、尿からメープルシロップ臭がする可能性があり、メープルシロップ尿症と混同しやすいので注意が必要である (94) 。 <妊婦・授乳婦> ・妊婦が通常の食事に含まれている量以上を経口摂取すると、子宮収縮や子宮刺激の原因となる可能性があるため、おそらく危険である (94) 。 ・出産直前に摂取すると、新生児にメープルシロップ尿症と混同する体臭が起こる可能性がある (94) 。 ・授乳婦に対する信頼性の高い情報が十分に得られていないため、使用を避ける (94) 。コロハは乳汁の分泌を促進するとして使用されているが、授乳婦や乳児の安全性に関する臨床試験は見当たらない (94) 。 <小児> ・小児が摂取することは危険性が示唆されているため、使用を避ける (94) 。コロハ茶を摂取すると、意識消失やメープルシロップ尿症と混同する体臭の原因となる可能性がある (94) 。 <病者> ・血糖降下薬を服用している場合は危険性が示唆されている (94) 。 <その他> ・マメ科のヒヨコマメはコロハアレルギーの人では交差反応を起こす可能性がある (94) 。ダイズやピーナッツ、グリーンピースなどのマメ科植物もコロハによってアレルギーを起こす可能性がある (94) 。 <被害事例> ・26歳女性 (日本) がスパイスとしてコロハなどを使用したカレーを摂取したところ、全身のそう痒や下痢、重度の気管支痙攣、喘鳴などアナフィラキシー症状を起こした。カレーに使用されていたスパイスをそれぞれ食事に含まれている量摂取したところ、コロハを摂取した際の1秒間努力呼気容量が20%減少したため、コロハがアレルゲンであると診断された(PMID:9574894) 。 ・ヒヨコマメアレルギーと軽度の喘息の既往歴のある36歳女性 (インド) がコロハパウダーを吸引したところ、くしゃみ、鼻漏、過度の涙の分泌に続いて持続性の咳、喘鳴を起こし、失神した。治療を受けて3時間後に回復し、コロハによるIg-E媒介性の即時型アレルギーと診断された (PMID:9087156) 。 ・アレルギー性鼻炎と喘息の既往歴のある45歳女性 (インド) が掻痒とふけの改善を目的にコロハ種子ペーストを塗布したところ、数分以内に鼻づまりと嗄声を起こし、その後顔面の血管性浮腫、喘鳴、頭部のしびれ感を起こした。治療を受けて5時間以内に回復し、Ig-E媒介性の即時型アレルギーと診断された(PMID:9087156) 。 ・生後5週の男児 (ドイツ) が鼓腸と発熱を改善するためにコロハを含むハーブティを摂取したところ、10分間の意識消失とメープルシロップ尿症と誤解されるような臭気があった (PMID:10475807) 。 ・肝硬変、糖尿病のためウルソデオキシコール酸 (他消化器治療薬) 、ビタミンB製剤、亜鉛、オリゴ糖、プロプラノロール (β遮断薬)、メトホルミン (糖尿病治療薬) を服用中の55歳男性 (インド) が、症状改善のため民間療法として多量のコロハ入り粥を2〜4回/日、少なくとも2ヶ月間摂取していたところ、肝移植のための検査で凝血障害 (INR上昇、APTT延長) が認められたが、民間療法の中止と加療により改善した (PMID:29330279) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<ヒト症例> ・心房細動のためにワルファリン (抗凝固薬:CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4) の投与を受けていた67歳女性 (カナダ) がコロハとボルド (ともに摂取量不明) を数週間併用したところ、INRの増加が認められた (PMID:11310527) 。 <動物・試験管内> ・動物実験 (ラット) において、コロハの摂取は、CYP2Dの遺伝子発現および活性を阻害した (PMID:25985573) 。 ・コロハは、動物実験 (ラット) において肝臓CYP2C11の遺伝子、タンパク質発現を阻害し、in vitro試験 (ラット肝ミクロソーム) においてトルブタミド (糖尿病治療薬:CYP2C9基質) の代謝活性を阻害した (PMID:25099385) 。 ・in vitro試験 (ラット肝ミクロソーム) において、コロハ抽出物およびコロハ中のトリゴネリンはCYP2D6、CYP3A4活性をわずかに阻害した (PMID:26600643) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・コロハはクマリン誘導体を含むため、血液凝固時間を示すINRを高める可能性がある (94) 。また、ワルファリン (抗凝固薬:CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4) と相加作用を持つ可能性がある (94) 。 ・抗凝血作用や抗血小板作用のある薬物やハーブ、サプリメントと併用すると、出血のリスクが増加する可能性がある (94) 。 ・血糖値低下作用のあるハーブと併用すると、有害事象を増強する可能性がある (94) 。
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) ・ラット (経口) :5 g/kg体重以上 (PMID:18928139) 。 ・ウサギ (経皮) :2 g/kg体重以上 (PMID:18928139) 。 2.その他 ・マウスとラットを対象に、苦みを取り除いたコロハ粉末の急性投与および亜慢性投与を行ったところ、毒性の徴候または死亡は認められなかった (PMID:18928139) 。 ・離乳ラットにコロハ種子を90日間投与したところ、明らかな血液の変化や肝臓の変化、または病理組織学的変化は認められなかった (PMID:18928139) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・クラス2b (22) 。
総合評価
・過剰に摂取すると、低血糖を起こす可能性がある。 ・妊婦が通常の食事に含まれている量以上を摂取すると、子宮収縮や子宮刺激の原因となる可能性があるため、おそらく危険である 。妊婦は使用禁忌。 ・出産直前に摂取すると、新生児にメープルシロップ尿症と混同する体臭が起こる可能性がある 。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・信頼できる情報が十分ではない。
参考文献
(33) 世界薬用植物百科事典 誠文堂新光社 A.シェヴァリエ (22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (PMID:10475807) N Engl J Med. 1999 Sep 2;341(10):769. (PMID:18928139) J Herb Pharmacother. 2007;7(3-4):143-77. (PMID:9574894) Allergy. 1998 Apr;53(4):452-4. (PMID:19922253) J Altern Complement Med. 2009 Nov;15(11):1215-21. (PMID:15826027) J Agric Food Chem. 2005 Apr 20;53(8):2838-42. (PMID:9087156) Ann Allergy Asthma Immunol. 1997 Mar;78(3):297-300. (PMID:9175175) Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 1997 May;56(5):379-84 (PMID:2194788) Eur J Clin Nutr. 1990 Apr;44(4):301-6. (PMID:11310527) Pharmacotherapy. 2001 Apr;21(4):509-12 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (PMID:21843614) J Ethnopharmacol. 2011 Oct 11; 137(3):1328-33. (PMID:20020282) Eur J Clin Pharmacol. 2010 May;66(5):449-55. (PMID:25985573) Pharmazie. 2014 Nov;69(11):799-803. (PMID:25099385) Drug Res (Stuttg). 2015 Jul;65(7):366-72. (PMID:26600643) Indian J Pharmacol. 2015 Sep-Oct;47(5):530-4. (94) Natural Medicines (PMID:24438170) Nutr J. 2014 Jan 18;13:7. (PMID:27000311) Cochrane Database Syst Rev. 2016 Mar 22;3:CD002124. (PMID:28707431) Phytother Res. 2017 Sep;31(9):1316-1322. (PMID:29330279) BMJ Case Rep. 2018 Jan 12;2018 (PMID:32048383) Phytother Res. 2020 Jul;34(7):1550-1555. (PMID:32087319) J Ethnopharmacol. 2020 May 10;253:112538.