注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
アキウコン (秋鬱金) 、ウコン (鬱金) [英]Turmeric [学名]Curcuma longa L.、Curcuma domestica Val.
概要
アキウコンは、ショウガ科の植物であるウコンの一種で、熱帯アジア原産の多年生草本である。インド、中国、インドネシアなどで広く栽培され、日本では、沖縄,九州南部で多少栽培されている。古くから香辛料、薬用として利用され、根茎を煮て粉末にしたものはターメリックと呼称され、インドや東南アジアでスパイスや食品の黄色着色料として用いられている。沖縄では根茎を煎じ、茶として飲む習慣がある。アキウコンの成分であるクルクミンについては個別ページを参照のこと。 ●有効性 俗に、「肝臓の機能を高める」「二日酔いを防止する」などと言われているが、そう痒に対し有効性が示唆されているものの、その他、人での有効性においては信頼性が高いとされる研究方法で検討した報告は見当たらない、もしくは十分ではない。 ●安全性 短期間、適切に摂取する場合、おそらく安全であるが、妊娠中の多量摂取はおそらく危険である。授乳中の多量摂取は、信頼できる十分な情報が見当たらない。胆管障害または胆石患者、出血性疾患者、懐妊希望夫婦、鉄欠乏患者の摂取は注意が必要であるため、自己判断でのサプリメントの摂取を控えること。 その他のウコン類はこちらを参照:ハルウコン、ガジュツ、クスリウコン。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・根茎:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■日本薬局方 ・ウコン、ウコン末が収載されている。 ■食品添加物 ・既存添加物 ウコン色素:着色料 香辛料抽出物:苦味料等 ・一般飲食物添加物 ウコン、ターメリック:着色料 ・天然香料基原物質リスト ウコン (ターメリック) が収載されている。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・黄色色素のクルクミノイド類 (主にクルクミン (curcumin) 、デメトキシクルクミン (demethoxycurcumin) 、ビスデメトキシクルクミン (bis-demethoxycurcumin)) が3〜6%含まれる (PMID:6993103) 。 ・精油には、ターメロン (turmerone) 、セスキテルペン類などが含まれる。セスキテルペン類には、ビサクロンが含まれる。この他、糖質、カリウム、ビタミンC、カロテンなどを含む (102) (PMID:18602074) 。
分析法
・クルクミンをUV検出器 (262 nm、425 nm) 付HPLCにより分析した報告がある (PMID:12450549) (PMID:12059141) 。 ・アキウコン色素はC18カートリッジにより精製が可能であるとの報告がある (2001129242) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中に見当たらない。
消化系・肝臓
一般情報 ・ドイツのコミッションE (薬用植物評価委員会) では、消化不良への有効性が承認されている (58) 。 RCT:国内 ・健康な成人58名 (試験群28名、平均44.2±7.9歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン熱水抽出物 (ビサクロン400μg含有) +クルクミン30 mg含有飲料100 mL/日を12週間摂取させたところ、肝機能マーカー (AST、ALT、γ-GTP) に影響は認められなかった (2017000432) 。 ・健康な成人69名 (試験群33名、平均51.8±9.8歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン熱水抽出物 (ビサクロン400μg含有) +クルクミン30 mg含有タブレット/日を12週間摂取させたところ、肝機能マーカー (AST、ALT、γ-GTP) 、炎症マーカー (CRP、SAA、IL-6、TNF-α、プロスタグランジンE2) に影響は認められなかった (2017326978) 。 RCT:海外 ・消化不良の患者116名 (タイ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン (38名、平均42歳) 500 mg×4回/日または混合ハーブ薬 (30名、平均48歳) を7日間摂取させたところ、アキウコン群において消化不良症状の改善が認められた (PMID:2699615) 。 ・血清ALT値が高めの成人60名 (試験群30名、平均39.0±8.5歳、韓国) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、発酵ウコン粉末3 g/日を12週間摂取させたところ、肝機能マーカー (ALT、AST) の低下が認められた。一方、肝機能マーカー (ALP、γ-GTP、総ビリルビン) 、血中脂質に影響は認められなかった (PMID:23497020) 。
糖尿病・内分泌
メタ分析 ・2017年7月までを対象に4つのデータベースで検索できた無作為化プラセボ対照試験2報 (検索条件:期間≧4週、年齢>18歳) について検討したメタ分析において、ウコンの摂取は、糖代謝マーカー (空腹時血糖) との関連は認められなかった (PMID:28928074) 。
生殖・泌尿器
調べた文献の中に見当らない。
脳・神経・感覚器
RCT:国内 ・健康な成人48名 (日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン水抽出物150 mg (ビサクロン0.4 mg/日含有、低量群:16名、平均45.0±13.2歳) または、900 mg (ビサクロン2.4 mg/日含有、高量群:16名、平均44.8±9.4歳) を8週間摂取させたところ、低量群でのみPOMSの下位6項目中1項目 (疲労) で改善が認められた。一方、高量群に影響は認められなかった (PMID:29662734) 。
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
メタ分析 ・2016年4月までを対象に9つのデータベースで検索できた無作為化比較試験8報について検討したメタ分析において、関節炎患者によるアキウコン抽出物またはクルクミンの摂取は、痛みの自覚、痛みの自覚と評価スコアの減少と関連が認められ、鎮痛剤と差は認められなかったが、試験によるばらつきが大きかった (PMID:27533649) 。
発育・成長
肥満
RCT:海外 ・血清CRPが高値を示す過体重または肥満の女性30名 (平均55.7±1.4歳、アメリカ) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン2.8 g/日を4週間摂取させたところ、体重、体脂肪、血圧、心拍、血糖値、炎症マーカー (CRP、IL-6、IL-8、IL-10、TNF-α) 、酸化関連マーカー (F2-イソプロスタン、酸化LDL) に影響は認められなかった (PMID:23150126) 。
その他
RCT:国内 【機能性表示食品】 健康な成人45名 (日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン熱水抽出物 (ビサクロン400 μg含有) /日 (14名、平均41.6±7.4歳) 、またはアキウコン熱水抽出物 (ビサクロン400 μg含有) +クルクミン30 mg/日 (16名、平均40.8±8.3 歳) を8週間摂取させたところ、いずれの群も頬の角層水分量、経表皮水分蒸散量に影響は認められなかった (PMID:30809971) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
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安全性
危険情報
<一般> ・健康な成人11人 (平均27±6歳、アメリカ) を対象としたクロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、ウコン2.8 g/日 (シュウ酸塩55 mg含有) を4週間、サプリメントとして摂取させたところ、シュウ酸塩負荷試験 (シュウ酸塩63 mg含有ターメリック3.2 g摂取) において尿中シュウ酸塩排泄量の増加が認められた (PMID:18469248) 。 <小児> ・サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関して信頼できる十分な情報は見当たらない。 <病者> ・C型慢性肝炎者は鉄過剰を起こしやすいが、アキウコンの製品には鉄を多量に含有するものがあるため、注意が必要である (PMID:17048058) 。 <被害事例:国内> 【肝機能障害に関する被害】 ・プレドニゾロンでコントロール良好な自己免疫性肝炎の68歳女性 (日本) がウコン製品を約10 g/日、約4ヶ月摂取したところ、自己免疫性肝炎が増悪し、ウコン摂取を中止したところ、肝機能マーカー (AST、ALT、γ-GTP) が正常値に近づいた (2002028078) 。 ・32歳女性 (日本) がウコンの錠剤を10錠/日、約2ヶ月服用したところ、著明な脂質異常症と肝機能障害をきたした (2006127731) 。 ・糖尿病と脂肪肝を有する30代男性 (日本) が、飲酒時にウコンを酒に混ぜて1ヶ月程度摂取したところ、肝機能が低下した (2006127897) 。 ・軽度肥満でよく飲酒をする30代男性 (日本) がウコンを大量に摂取していたところ、肝機能が低下して入院し、その後死亡した (2006127897) 。 ・2型糖尿病、脂質異常症の既往歴のある61歳男性 (日本) が、ノニジュースを450 mL (常用量の約15倍、摂取期間不明) 、ウコン含有飲料を100 mL (1本のみ) 摂取したところ、数日以内に吐き気、褐色尿、肝胆道系酵素の上昇が認められた。DLSTによりウコンが陽性、およびDDW-J2004薬物性肝機能障害ワークショップのスコアリングにより、ウコンあるいはノニを原因とする薬剤性肝機能障害と診断された (2011013615) 。 ・肝機能異常のある74歳女性 (日本) が、ウコンを1年間程度摂取したところ (摂取量等の詳細不明) 、全身倦怠感、黄疸が出現。AST、ALTの著明な上昇と、ALP、γ-GTP、総・直接ビリルビンの上昇が認められたため、ウコン摂取を契機とした胆管障害を伴う自己免疫性肝炎と診断された (2004041382) 。 ・10年間多量に飲酒をしていた38歳男性 (日本) が、飲酒による肝機能低下を予防する目的で、ウコンおよびシジミエキスを含む健康食品を毎日、2ヶ月程度摂取したところ (摂取量不明) 、心窩部痛、背部痛が生じて医療機関を受診、肝酵素の上昇が認められた。DLSTにおいて、ウコンを含む健康食品が陽性であったため、慢性アルコール性肝機能障害をベースとしたウコンによる急性薬剤性劇症肝炎と診断された (2009118130) 。 ・18歳女性 (日本) が、アキウコン1日通常量 (詳細不明) を約4ヶ月、通常量の3倍を約3ヶ月摂取したところ、眼球黄染が出現。その後も約1ヶ月継続摂取したところ、全身倦怠感、微熱が生じて医療機関を受診。肝生検などから、本患者は自己免疫性肝炎から肝硬変に進展しており、そこにウコンが原因と思われる急性肝機能障害が加わったと診断。なお、ウコン摂取期間中に不正出血のため2種類のホルモン剤を併用したが、DLSTによりウコンのみが「可能性が高い」であった (2006204917) 。 ・C型慢性肝炎 (subtype 2a) と2型糖尿病により経過観察中の40歳男性 (日本) が、3〜5合の飲酒後肝機能障害が悪化し入院。後の問診で約14ヶ月間ウコンを摂取していたことが判明し、DLSTにてウコンが陽性を示した。摂取中止と加療により回復した (2005050921) 。 ・痛風の既往歴のある56歳男性 (日本) がウコンを含む健康食品を約1ヶ月間摂取したところ (摂取量不明)、褐色尿、肝機能障害を生じ、DLSTにてウコンが陽性を示した。摂取中止と加療により回復した (2004263248) 。 【皮膚疾患に関する被害】 ・子宮筋腫による子宮全摘術、卵巣嚢腫による卵巣摘出術の既往歴があり、アルコール性肝機能障害の診断を受けた50歳女性 (日本) が、原種ウコン茶を摂取 (摂取量不明) したところ、摂取後12日で皮膚掻痒・嘔気が生じ、摂取後18日で眼球黄染を発症した (2005140108) 。 ・58歳男性 (日本) が繰り返す顔面、頸部、左手に灼熱感を伴う色素斑を主訴とし、貼布試験においてウコンが皮疹部で陽性を示したため、ウコン摂取による薬疹と診断された (2004276909) 。 ・66歳の男性 (日本) が自家栽培のウコン茶を毎日1年間摂取したところ (摂取量不明) 、全身に痒みを伴う皮疹が出現した。パッチテストおよび内服テストの結果により、ウコン茶による紅皮症と診断された (2004276908) 。 ・57歳男性 (日本) が発酵ウコン製品を2年間摂取したところ (摂取量不明) 、全身に痒みを伴う紅斑を認め、パッチテストでウコンに陽性を示したため、ウコンによる薬疹と診断された (2007023541) 。 ・55歳男性 (日本) が、4年前からウコン粉末を含む製品を毎日摂取 (摂取量等の詳細不明) していたところ、全身に掻痒を伴う紅斑、水疱、びらんが生じた。ウコン関連製品 (カレーを含め) の摂取中止により1週間で症状はほぼ改善したが、自己判断によりウコン製品を再摂取して症状が再発したため、ウコンによる多発性固定薬疹と診断された (2006061261) 。 ・一過性脳虚血、左頸動脈狭窄の既往歴がありバイアスピリンを服用中の62歳男性 (日本) が、10年前から自家栽培のウコンスライスを、2年前からウコン粉末を摂取していたところ (摂取量不明) 、体幹と四肢に強い掻痒を伴う紅斑と丘疹が出現して医療機関を受診。バイアスピリン、ウコン粉末によるDLSTは共に陰性 (ウコンスライスでは未実施) 、ウコンスライスとウコン粉末の中止および薬物投与により症状は改善したが、薬物投与の中止により、以後数回にわたって症状が再燃した。その後の調査により、数ヶ月前からショウガを毎日摂取していたことが判明、ウコンおよびショウガ摂取を中止したところ、1ヶ月後には紅色丘疹は軽快したため、ウコン摂取が誘因と考えられる慢性痒疹と診断された (2012088867) 。 【その他の事例】 ・逆流性食道炎、アルコール性肝障害の既往歴がありラベプラゾール (消化性潰瘍治療薬) を服用中の59歳男性 (日本) がウコンサプリメントを約2週間摂取したところ (摂取量不明) 、労作時呼吸困難を生じて受診。発熱、低酸素血症、両肺にすりガラス陰影が認められ入院。その後もウコンを約1週間継続摂取したところ、KL-6、SP-A、SP-D上昇を認め、間質性肺炎が疑われたが、ウコンの摂取中止と加療により改善した。DLSTによりウコンが陽性であったため、ウコンによる薬剤性肺障害と診断された (2020327748) 。 <被害事例:海外> 【肝機能障害に関する被害】 ・ベニコウジ摂取によるALT軽度上昇の経験があり、甲状腺機能低下症、レイノー症候群、変形性関節症、高血圧、脂質異常症、過敏性腸症候群、憩室炎のため20種の医薬品とサプリメント (アムロジピン、メトプロロール、ベナゼプリル、レボチロキシン、メロキシカム、エストラジオール、ロラタジン、ジフェンヒドラミン、アスピリン、カルシウム、ビタミンD、マルチビタミン、魚油、α-ガラクトシダーゼ、インベルターゼ、リシン、アルファルファ粉末、グルコサミン、コンドロイチン、食物繊維、ブドウ種子抽出物) を摂取していた71歳女性 (アメリカ) が、循環器の健康維持のためウコン含有サプリメントを摂取したところ、摂取開始33週目からAST、ALT、自己抗体 (P-ANCA、抗平滑筋抗体) の上昇、肝細胞の炎症と線維化を生じた。ウコンサプリメントの中止により改善し、因果関係評価 (RUCAM) がスコア7 (probable) であったことから、ウコンサプリメントが原因の薬物起因性自己免疫性肝炎と診断された (PMID:30206065) 。 【皮膚疾患に関する被害】 ・乳がん、甲状腺がんの既往歴があり、エキセメスタン、レボチロキシンを服用中の68歳女性 (イスラエル) が、複数のビタミン、ミネラル、植物サプリメントとともにクルクミン、アキウコン根抽出物含有製品500 mg/日を4ヶ月間摂取したところ、足の黄変を生じ、摂取中止により改善した (PMID:27747716) 。 【その他の事例】 ・消化管潰瘍、子宮内膜症、骨関節炎、胃食道逆流症、抑うつ、軽度の喘息の既往歴のある43歳女性 (アメリカ) が、抗炎症目的でアキウコン450 mg/日の摂取を開始したところ、直後から胸焼け、上腹部不快感を4〜5回/週生じた。オメプラゾール (消化性潰瘍治療薬) またはパントプラゾール (消化性潰瘍治療薬) の服用により症状の軽減は見られたものの、アキウコンを摂取していた約1年半の間、症状はおさまらず、摂取中止により改善した (PMID:26192422) 。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
<ヒト症例> ・フルインジオン (抗凝固薬) を服用中でINR 2〜3に安定していた56歳女性 (フランス) が、ウコン茶 (約2.5 gを浸出したもの/日) を5日間摂取したところ、INRが6.5まで急上昇し、アキウコンの摂取中止15日後に回復した (PMID:25230280) 。 ・同所性肝移植を受け移植片拒絶を発症した経験のある56歳男性 (アメリカ) が、C型肝炎を発症して入院治療を受けた後、タクロリムス (免疫抑制剤:CYP3A4基質) 0.5 mg×2回/日の服用とともに、多量のウコン (スプーン15杯以上/日) を含む食事を約10日間摂取したところ、下肢、腹部、陰嚢の浮腫が悪化し、血中クレアチニン、カリウム値上昇が認められた。ウコンによるタクロリムスの代謝阻害による薬剤性腎機能障害と診断され、ウコンの摂取中止により改善した (PMID:28104136) 。 ・高血圧のためリシノプリル (ACE阻害薬) 、メトプロロール (β遮断薬:CYP2D6基質) 、心房細動のためジゴキシン (強心薬:P糖タンパク質基質) 、リバーロキサバン (抗凝固薬:CYP3A4、CYP2J2、P糖タンパク質、BCRP/ABCG2基質) 、うつ病のためフルオキセチン (CYP2C9、CYP2D6基質) 、ヘルペス感染症のためアシクロビル (抗ウイルス薬) を服用中の72歳男性 (アメリカ) が、ウコン400 mg/日を日常的に摂取し (摂取期間不明) 、骨髄生検のためフェンタニル (麻薬性鎮痛薬:CYP3A4基質) を注射したところ、全身性発作を生じ、フルオキセチン、アシクロビル、フェンタニルとウコンとの併用によるセロトニン症候群と診断されたが、加療により改善した (PMID:28667541) 。 ・67歳男性 (ポルトガル) が、肺がんのためパクリタキセル (抗がん剤:CYP2C8、CYP3A4基質) 165 mg/m2、カルボプラチン (抗がん剤) 275 mg/m2×2回/月による化学療法1コース開始4日後よりウコン15 g/日、複数のビタミン・ミネラル、オオアザミ300 mg×3回/日、その2日後よりクロレラ520 mg/日を14日間、初乳サプリメント650 mg/日を1週間摂取し、化学療法2コース開始前日にクロレラの摂取を中止したところ、10日後に黄疸尿を生じた。その後、クロレラを再摂取した翌日にパクリタキセルの副作用による掻痒症と紅斑を生じた。化学療法3コース開始前日にクロレラの摂取を中止したが、肝機能マーカー高値を認め、すべてのサプリメント摂取中止と加療により改善した。パクリタキセルとオオアザミ、ウコンの同時摂取およびクロレラサプリメントと肝毒性の因果関係評価 (RUCAM) は、それぞれスコア9 (highly probable)、スコア8 (probable)であり、オオアザミとウコンによるパクリタキセルとの相互作用およびクロレラサプリメントに混入していたミクロシスチン-LRによる急性毒性の肝炎が疑われた (PMID:29857089) 。 <ヒト試験> ・健康な成人男性6名 (18〜35歳、サウジアラビア) を対象とした試験において、アキウコンのエタノール抽出物の摂取はCYP2D6活性を阻害した (PMID:24510399) 。 ・健康な成人23名 (21〜66歳、シンガポール) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、アキウコン抽出物500 mg/日とアスピリン (抗血小板薬) 100 mg/日を3週間併用させたところ、アスピリンの血小板凝集、トロンビン生成作用に影響を及ぼさなかった (PMID: 28732813) 。 <動物・試験管内> ・動物実験 (ラット) において、アキウコンジュースの摂取はタクロリムス (免疫抑制剤:CYP3A4基質) の血中濃度 (AUC) を増加させた (PMID:22123127) 。 ・ex vivo試験 (ラット肝ミクロソーム) において、アキウコンの摂取は、シスプラチン (抗がん剤) およびパクリタキセル (抗がん剤:CYP2C8、CYP3A4基質) によるCYP2E1活性阻害作用の減弱、CYP3A1/2活性阻害作用の増強が認められた (PMID:24882083) 。 ・in vitro 試験 (ヒト肝ミクロソーム) において、ウコンのアルコール抽出物はCYP2C9活性を阻害した (PMID:23964176) 。 ・in vitro試験 (ヒト肝がん細胞) において、ウコン含有製品4品中1品で濃度依存的なCYP1A1、CYP1A2遺伝子発現の促進が認められた (2017018921) 。 ・in vitro試験 (ヒト肝ミクロソーム) において、アキウコンのエタノール抽出物はCYP2D6活性を阻害した (PMID:24510399) 。 ・in vitro試験 (ヒト血液) において、アキウコン水抽出物に血栓溶解作用が認められた (PMID:24826011) 。 ・in vitro試験 (Caco-2細胞) において、ウコン抽出物は、P糖タンパク質活性を阻害した (PMID:19879740) 。 ・in vitro試験 (ヒト肝ミクロソーム) において、クルクミンはモルヒネ (麻薬性鎮痛薬:UGT2B7基質) のグルクロン酸抱合を阻害した (PMID:29241692) 。
動物他での 毒性試験
1.LD50 (半数致死量) ・アキウコン根茎抽出物を投与:ラット経口 12.2 g/kg、2.5 g/kg (91) 。 ・ウコン油を投与:ラット経口 >5 g/kg (91) 。 2.TDLo (最小中毒量) ・アキウコン80 %エタノール抽出物を投与:ラット経口 20 mg/kg、マウス経口 (間欠的) 1.6 g/kg/16日 (91) 。 ・アキウコン根茎粉末を投与:ラット経口 (連続的) 56 g/kg/16週、22.05 g/kg/3週、ハムスター経口 (間欠的) 50.4 g/kg/6週 (91) 。 ・アキウコン根茎抽出物を投与:ラット経口 12.2 g/kg、7.5 g/kg/30日、 (間欠的) 1.715 g/kg/7週、マウス経口 (間欠的) 1.96 g/kg/14日、525 mg/kg/21日、33.6 g/kg/56日、 (連続的) 7.28 g/kg/4週 (91) 。 ・アキウコン根茎抽出物を投与:雄性マウス経口 (交配前84日) 50.4 g/kg、雌性ラット (受胎後1〜7日) 700 mg/kg (生殖毒性) (91) 。 ・ウコン油を投与:ラット経口 (連続的) 27.3 g/kg/13週、72.8 g/kg/2年、64.89 g/kg/103週、マウス経口 (連続的) 13.65 g/kg/13週、437 g/kg/2年、374.92 g/kg/103週、1168.02 g/kg/103週 (91) 。 3. MTD (最大耐量) ・アキウコン根茎多糖類抽出物を投与:ラット経口 ≧5 g/kg体重 (PMID:24455673) 。 4.その他 ・動物実験 (マウス) において、アキウコン (0.2%もしくは1%) を含む飼料を14日間摂取させたところ、肝毒性が確認された (PMID:9704820) 。 ・動物実験 (マウス) において、アキウコン (0.2、1、5%) またはエタノール抽出物 (0.05、0.25%) を含む飼料を14日間摂取させたところ、肝毒性 (再生肝実質細胞の凝固性壊死) が確認された (PMID:9782784) 。 ・動物実験 (ラット) において、アキウコン精油を摂取させたところ、肝毒性と腎毒性 (0.5 g/kg、13週間) 、遺伝毒性 (1 g/kg、14日間) のいずれも認められなかった (PMID:23201370) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・根茎:クラス1 (22) 。
総合評価
・短期間、適切に摂取する場合、おそらく安全である。 ・妊娠中の摂取は、通常の食事に含まれる量はおそらく安全であるが、多量摂取は子宮を刺激し月経を促進する可能性があるためおそらく危険である。 ・授乳中の摂取は、通常の食事に含まれる量はおそらく安全であるが、多量摂取に関する信頼できる十分な情報は見当たらない。 ・胆管障害または胆石患者、出血性疾患者、懐妊希望夫婦、鉄欠乏患者の摂取は注意が必要であるため、自己判断でのサプリメントの摂取を控えること。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・ドイツのコミッションE (薬用植物評価委員会) では、消化不良への有効性が承認されているが、その他、人での有効性については信頼できる十分な情報が見当たらない。
参考文献
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