シネフリンについて (Ver.081027)

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最近、「シトラスアウランチウム (ダイダイまたはビターオレンジ) 」や「シネフリン」を含むいわゆる健康食品が多く流通しています。これらの商品は「エフェドラフリー」、「安全なエフェドラ代替品」等の宣伝とともに、「痩身」「ダイエット」の効果が期待できることを謳っています。しかし、最近、その安全性や有効性には疑問がもたれています。そこで、現時点で収集できたシネフリンに関する情報をまとめてみました。
[文中の () つき番号は、文末の参考文献一覧に該当します。]
エフェドラとはエフェドリン (医薬品成分) を含むハーブ (マオウ:麻黄) です。日本では従来から医薬品であり、食品として使用することは出来ません。販売が可能であった米国ではエフェドラ含有サプリメントによる重大な健康被害が相次ぎ、2004年FDAが販売禁止規則を施行した経緯があります。 (http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/jirei/ephedra.html)

1. シネフリン (Synephrine) とは
2. シネフリンの安全性
3. シネフリンの有効性

1. シネフリン (Synephrine) とは
 シネフリンは陳皮 (チンピ) 、枳実 (キジツ) 、呉茱萸 (ゴシュユ) など、ミカン科植物を基原とする生薬に含まれるアルカロイドです。もともと薬として開発されましたが、後に天然に存在することが明らかになりました。なお、アルカロイドとは植物中の有機化合物のうち、窒素を含み塩基性を示す物質の総称で、多くは強い生物活性を持っています。シネフリンは、上記の生薬の有効成分のひとつと考えられ、血管収縮作用、血圧上昇作用、気管支筋弛緩作用が認められています (1) 。

2. シネフリンの安全性
 シネフリンはエフェドリンと化学構造が類似しているため (下図参照) 、エフェドリンと同様に、カフェインならびにその他の興奮剤と同時に摂取すると、めまい、ふるえ、頭痛、不整脈、心臓発作、精神病、脳卒中など、有害事象が誘発される可能性があり危険です (1) 。日常的に飲用しているコーヒーや紅茶などの嗜好飲料にもカフェインが含まれていますので、これらと併用して健康被害が生じる可能性もあります。特に、心臓病や糖尿病、甲状腺疾患、中枢神経系疾患、緑内障、褐色細胞腫、高血圧、心血管疾患リスク因子または前立腺肥大のある人、甲状腺ホルモンやモノアミンオキシダーゼ阻害剤などを服用している人は有害事象のリスクが高い可能性があります (2) 。

<図 シネフリンとエフェドリンの構造式>

シネフリン

エフェドリン



以下にシネフリンによる有害事象と毒性試験についてまとめました。

<ヒトにおける事例>
・52歳の女性が、ビターオレンジ含有のダイエット用サプリメント製品(1カプセル中にビターオレンジ334 mg、ガルシニア・カンボジア300 mg、L-カルニチン250 mg、キトサン250 mg、クロムアルギネート200μgを含有、1日3カプセル摂取を推奨)を1週間摂取したところ、虚血性大腸炎を発症して入院し、摂取中止後に症状は急速に回復した (PMID:17165643)
・36歳パナマ人女性が、シネフリンとカフェインを含む、エフェドラフリーのダイエット用サプリメント製品を数ヶ月摂取したところ、左中大脳動脈の血管萎縮と脳卒中を起こした (PMID:18700609)
・38歳の男性が、エフェドラフリーのダイエット用サプリメント製品 (1カプセル中にシネフリン6 mg、カフェインアルカロイド200 mgを含有、1日3カプセル摂取を推奨) を1〜2カプセル/日、1週間摂取し、虚血性脳卒中を発症した (PMID:15819293)
・22歳の健常男性が、シネフリン含有製品を摂取し、横紋筋融解症を発症して長期入院した (PMID:17615852)
・55歳女性がダイダイ300 mgのほかに多種類の成分を含むダイエット用サプリメント製品を1年間摂取したところ、肩の鈍痛と胸痛を起こし、急性側壁心筋梗塞と診断された (PMID:15026566)
・36歳男性が高濃度のエフェドリンとカフェインを含む製品とシネフリンとカフェインを含む製品を摂取したところ、心臓に血栓が生じて死亡した (3) 。
・エフェドリンとコレウス・フォルスコリ、シネフリンを含む製品を3錠服用した女性が呼吸停止になった (3) 。
・アレルギー性喘息の既往歴があり、5年前からロイコトリエン受容体拮抗薬 (モンテルカスト) を服用していた45歳肥満女性 (BMI=32) が、ダイダイ、ガルシニア・カンボジア等を含む市販のサプリメント2種を7日間摂取したところ、重度の肝障害を起こし死亡した (PMID:17157086)
・摂食障害の16歳の女性が、ダイダイ325 mg、ガラナ種子抽出物800 mgを含むダイエット用サプリメントを数ヶ月摂取したことにより、除脈や低血圧が発見されにくくなり、診療の妨げになった (PMID:16227131)
・20〜31歳の健康な男女10名を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ比較試験において、シネフリン21 mgとカフェイン304 mg含有製品を摂取した1時間後に適度な運動 (30分間自転車エルゴメーター) を行うと、運動後の拡張期血圧の上昇と食後血糖値の上昇がみられた (PMID:18341680)
・22〜29歳の健康な男女13名を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化比較試験において、ダイダイ製品900 mg (シネフリン6%含有) を摂取した5時間後まで、拡張期と収縮期の血圧上昇、心拍の増加がみられた (PMID:16317106)
・18〜49歳の健康な男女10名を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化比較試験において、ダイダイ製品 (シネフリン46.9 mg含有) もしくは多成分の製品 (シネフリン5.5 mg含有) を摂取したとき、多成分の製品摂取では、拡張期と収縮期の血圧上昇、心拍の増加がみられた (PMID:16164886)
・甲状腺機能低下症で約10年間チロキシン50μg/日を服用している52歳女性が、減量の目的で未熟ダイダイ抽出物500 mg (シネフリンとして30 mg) /日を含むダイエット用サプリメントを摂取し、頻脈を起こした (PMID:15830849)

<実験動物での事例>
・ラットにダイダイまたはシネフリンを単独で静脈注射したところ、用量依存的に平均動脈圧が上昇した (PMID:7475952)
・ラットにダイダイ抽出物 (シネフリン4%、6%含有) を2.5〜20 mg/kg、繰り返し摂取させたところ、食欲不振、体重増加抑制、心室不整脈がみられ、致死率が投与量に依存して増加した (4) 。

<シネフリンの毒性試験>
・ダイダイから抽出した6%シネフリンをヒトに経口投与したときのTDLo (最小中毒量) は10〜12.86 mg/kgである (6) 。
・ダイダイから抽出した4%シネフリンをラットに断続的に7〜15日間経口投与したときのTDLo (最小中毒量) は、17.5〜200 mg/kgである (6) 。
・ダイダイ抽出物 (p-シネフリン2.5%含有) をラットに300〜5,000 mg/kg経口投与すると自発運動が減少し、p-シネフリンを150〜2,000 mg/kg投与すると立毛や息切れ、流涎、眼球突出、自発運動の減少が認められた。これらは可逆的だが、3〜4時間持続した (PMID:18571300)

 以上のような報告から、カナダ保健省は、シネフリンを含む特定の製品を使用しないように注意喚起し、輸入を禁止しています。 (詳細はこちらのサイト (英語) をご参照ください。)

3. シネフリンの有効性
 理論的には、シネフリンはβ3アドレナリン受容体を刺激し、活性化させるといわれていることから、体脂肪減少効果が期待されています (1) 。しかし、ヒトを対象とした試験では、効果が認められたという報告は1件だけです。逆に効果がなかったという報告もあります。このような状況から、シネフリンのヒトにおける体脂肪減少効果は、現時点では科学的根拠が不十分といえます。以下はその情報です。

<効果が認められたという報告>
・BMI>25の成人20名(試験群9名)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、食事制限 (1,800Kcal/日) と週3回の運動とともに、ダイダイ抽出物 (975 mg/日) 、カフェイン (528 mg/日) 、セイヨウオトギリソウ (900 mg/日) を6週間摂取させたところ、体脂肪の減少と基礎代謝率の増加が認められた (5) 。

<効果が認められなかったという報告>
・身体を動かすことの少ない体脂肪率20%以上の男性10名を対象とした二重盲検並行試験において、ビターオレンジ、緑茶、ガラナの抽出物を含む製品 500 mg (シネフリン6 mg、カフェイン150 mg、カテキン150 mgを含む) の単回摂取は、安静時および運動時のいずれにおいてもATP利用能に影響しなかった (PMID:16418760)
・エフェドラ代用品としてのシトラスアウランチウムの安全性と有効性について、2004年までに4つのデータベースで検索できた無作為化プラセボ比較試験1報では、20名を対象とした6週間のシトラスアウランチウム摂取は体重減少効果が認められず、安全性に疑問が残った (PMID:15541270)

 ダイダイは日本ではなじみの深い植物で、通常の食品に含まれる量を摂取する場合は安全と思われます。しかし、精製・濃縮した形での利用や、小児などの利用、カフェインなど刺激物との併用などは、過剰摂取の可能性や、重大な健康被害を受ける可能性があります。
 実際、「ダイエット目的」や「筋肉増強」などを標ぼうした製品、「エフェドラ代替品」と謳っている製品では各国で被害事例が報告され、中には死亡事例もあります。それらの製品を安易に使用しないことが大切です。

 シネフリンに関する情報は当サイトにも掲載していますので、あわせてご参照ください。

シネフリンまたはエフェドラ関連情報→こちら
ダイダイの素材情報→こちら
「シトラスアウランチウムについて」→こちら



参考文献

(1) 「シトラスアウランチウムについて」
(2) 食品安全情報No.8/2007(2007.04.11)
(3) 食品安全情報No.5/2008(2008.2.27)
(4) Fitoterapia 1999 70(6) 586-592
(5) Current Therapeutic Research. 1999 60(3) 145-153
(6) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS)
(PMID:17165643) Mayo Clin Proc. 2006 Dec;81(12):1630-1
(PMID:18700609) Mil Med. 2008 Jul;173(7):708-10
(PMID:15819293) Mayo Clin Proc. 2005 Apr;80(4):541-5
(PMID:17615852) Mil Med. 2007 Jun;172(6):656-8
(PMID:18341680) Br J Clin Pharmacol. 2008 Jun;65(6):833-40. Epub 2008 Mar 13
(PMID:16317106) Ann Pharmacother. 2006 Jan;40(1):53-7. Epub 2005 Nov 29
(PMID:16164886) Am J Med. 2005 Sep;118(9):998-1003
(PMID:7475952) Life Sci. 1995;57(22):2011-20
(PMID:16418760) Int J Obes (Lond). 2006 May;30(5):764-73
(PMID:15541270) Am J Cardiol. 2004 Nov 15;94(10):1359-61
(PMID:18571300) Food Chem Toxicol. 2008 Aug;46(8):2770-5
(PMID:15026566) Ann Pharmacother. 2004 May;38(5):812-6
(PMID:17157086) Dig Liver Dis. 2007 Oct;39(10):953-5
(PMID:15830849) Phytomedicine. 2005 Mar;12(3):247-8.
(PMID:16227131) J Adolesc Health. 2005 Nov;37(5):414-5.

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