注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
オオムギ (大麦)、バクガ (麦芽) [英]Barley (麦芽は Malt) [学名]Hordeum vulgare L. (六条種) 、Hordeum distichum L. (二条種)
概要
大麦は、西〜西南アジア原産のイネ科の一年生または越年生の植物。高さ1 m程度に生長する。 穂の形により、二条大麦と六条大麦に大別される。二条大麦は発芽させた麦芽がビール醸造の原料として利用されることからビール麦と呼ばれているもので、明治時代にビール用として導入された。六条大麦は朝鮮を経て2〜3世紀頃渡来したといわれ、搗精・加工して食用とされるほか、味噌・醤油などの調味料の原料となっている。大麦には多糖体の一つで水溶性食物繊維のβ-グルカンが多く含まれており、その食物繊維としての作用が注目されている。若葉が、いわゆる「青汁」の原料として用いられる。 ●有効性俗に、「腸の状態を改善する」などと言われているが、高コレステロール血症におそらく有効であり、胃がんに対して有効性が示唆されているものの、その他の有効性は信頼できる十分な情報が見当たらない。 ●安全性通常の食品として摂取する場合、おそらく安全であるが、妊娠中の芽の大量摂取は危険性が示唆されている。 ▼他の素材はこちら
法規・制度
■食薬区分 ・オオムギ (バクガ/Hordeum vulgare) 茎、葉、発芽種子:「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」に該当する。 ■日本薬局方 ・バクガが収載されている。
成分の特性・品質
主な成分・性質
・種子は水溶性食物繊維 (β-グルカンなど) が豊富である (76) 。β-グルカンはブドウ糖がβ結合(β-1,3結合とβ-1,4結合)で数百から数千連なった多糖体である。大麦中のβ-グルカンの含有量は概ね3〜6%の範囲とされている (101) 。 ・オオムギの主タンパク質はホルデインとグルテリンで、炭水化物はほとんどがデンプン (102) 。 ・若い種子にはアルカロイド類 (ホルデニン、グラミン) を含む (33) 。 ・麦芽の毛根には毒素の一種カンジシンが含まれる (92) 。
分析法
・若葉のグリコシルフラボノイドを核磁気共鳴 (NMR) と質量分析装置 (MS) によって分析した報告がある (PMID:10820082) (PMID:12537462) 。 ・大麦・ビールのプロアントシアニジン類、カテキン類をHPLCによって分析した報告がある (PMID:8067536) 。 ・フェノール酸をHPLCによって分析した報告がある(PMID:11559137) 。
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
一般情報 ・高コレステロール血症に対しておそらく有効である (94) 。 ・米国FDAが、大麦由来の水溶性食物繊維を1食あたり0.75 g含有する食品に対して、飽和脂肪酸およびコレステロール含量の少ない食事との併用で心疾患発症リスクを低減するというヘルスクレーム (健康強調表示) を認可している (94) 。 メタ分析 ・2015年4月までを対象に4つのデータベースで検索できた無作為化比較試験14報 (検索条件:期間≧3週) について検討したメタ分析において、オオムギ由来β-グルカンの摂取は、血中LDL-C、non-HDL-C (13報) の低下と関連が認められたが、non-HDL-Cついては試験によるばらつきが大きかった。一方、ApoB (3報) との関連は認められなかった (PMID:27273067) 。 ・2008年1月までを対象に6つのデータベースで検索できた無作為化比較試験8報について検討したメタ分析において、大麦の摂取は、血中TC (8報) 、LDL-C (7報) 、TG (6報) の低下と関連が認められたが、HDL-C (6報) との関連は認められなかった (PMID:19273871) 。 ・2008年7月までを対象に9つのデータベースで検索できた無作為化比較試験11報 (検索条件:期間≧3週) について検討したメタ分析において、健康な人による大麦または大麦由来β-グルカンの摂取は、血中脂質 (TC (11報) 、LDL-C (11報)) の低下と関連が認められた。一方、血中脂質 (HDL-C (11報) 、TG (11報)) との関連は認められなかった (PMID:20924392) 。 ・2014年4月までを対象に3つのデータベースで検索できた無作為化比較試験5報について検討したメタ分析において、高コレステロール血症患者による大麦由来β-グルカンの摂取は、血中脂質 (TC (5報) 、LDL-C (5報)) の低下と関連が認められた。一方、血中脂質 (HDL-C (4報) 、TG (3報)) との関連は認められなかった (PMID:26026211) 。 RCT ・軽度高コレステロール血症の男性39名 (試験群19名、平均42.1±9.2歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、精白大麦5割:白米5割の混合食 (β-グルカン7.0 g/日含有) を12週間摂取させたところ、血中脂質 (LDL-C、TC) の減少が認められたが、血中脂質 (HDL-C、TG) 、 BMI、ウエスト径、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積に影響は認められなかった (PMID:18074229) 。 ・軽度高コレステロール血症の男性21名 (平均44.2±7.6歳、オーストラリア) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、小麦食品を大麦食品に代替した食事 (大麦由来食物繊維 約25.3 g/日) を4週間摂取させたところ、血中脂質 (TC、LDL-C) の上昇抑制が認められたが、血中脂質 (HDL-C、TG) 、血糖値、体重に影響は認められなかった (PMID:1850576) 。 ・高コレステロール血症患者23名 (平均57±2歳、カナダ) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、食事指導とともに大麦たんぱく質30 g/月を含むパンを1ヶ月間摂取させたところ、同量のカゼインを含むパンと比較し体重、血中脂質 (TC、LDL-C、HDL-C、TG) 、血清CRP、収縮期および拡張期血圧に影響は認められなかった (PMID:20668250) 。 その他 ・脂質異常症の男性患者40名 (血漿TG>200 mg/dL、TC>200 mg/dL、40〜70歳) に大麦若葉抽出物15 g/日を4週間摂取させたところ、摂取前と比較して血漿TCおよびLDL-Cが減少し、LDL酸化抵抗性が上昇した(PMID:15187421) 。
消化系・肝臓
RCT ・消化管ポリープ切除術を受けた男女20名 (平均51〜68歳、試験群11名、ギリシャ) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、大麦由来β-グルカン3 g/日含有パンを3ヶ月間摂取させたところ、糞便中の腸内細菌叢、揮発性脂肪酸含量、酵素活性、pH、水分含量および消化管の自覚症状に影響は認められなかった (PMID:21515398) 。 【特定保健用食品】便秘傾向の成人45名 (平均38.5±10.5歳、日本) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、大麦若葉粉末6 g/日を2週間摂取させたところ、排便日数の増加が認められた。一方、排便回数、排便量、便性状、残便感に影響は認められなかった (2011214664) 。
糖尿病・内分泌
メタ分析 ・2014年7月までを対象に3つのデータベースで検索できた無作為化比較試験12報 (検索条件:4週間以上) について検討したメタ分析において、高コレステロール血症患者による大麦またはオートムギ由来β-グルカンの摂取は、空腹時血糖値 (12報) 、インスリン濃度 (6報) との関連は認められなかった (PMID:26001090) 。 RCT ・健康な成人12名 (平均26.1±2歳、カナダ) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化比較試験において、オート麦由来または大麦由来のβ-グルカンを0、1.5、3、6 g含有するスナックバーを摂取させたところ、2時間後までの血糖値に影響は認められなかった (PMID:25127170) 。 ・健康な成人20名 (平均64.1±5.9歳、スウェーデン) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、大麦穀粒含有パン338.2 g/日を3日間摂取させたところ、スターチ利用効率で調整した精白小麦パン (233.8 g/日) 摂取時と比較して、空腹時の血漿GLP-1濃度上昇、インスリン感受性指標亢進、食後の血漿GLP-2濃度、ペプチドYY濃度の上昇、血糖値上昇抑制が認められたが、血漿グレリン、オキシントモジュリン、空腹時血糖値およびインスリン濃度、HOMA-IR、食欲、血清アディポネクチン、IL-6、IL-18濃度に影響は認められなかった (PMID:26259632) 。 ・健康な男女14名 (平均23.9±3歳、イタリア) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、大麦由来β-グルカン3 g含有パンを朝食として摂取させたところ、食後3時間の食欲の変化 (空腹感の抑制、満腹感、満足感の上昇) 、食後血糖値の上昇抑制、血漿グレリン低下からの上昇抑制、血漿ペプチドYYの上昇が認められたが、食後インスリン濃度に影響は認められなかった (PMID:19631705) 。 ・健康な成人25名 (平均31.6±7.2歳、日本) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、大麦由来β-グルカン2.7 g/日含有ホットケーキを朝食として摂取させたところ、小麦粉ホットケーキ摂取と比較して、空腹感 (摂取150分〜270分後および270分までのAUC) 、予想食事量 (摂取150分、240分、270分後) の抑制、満腹感 (摂取120分、210〜270分後および270分までのAUC) 、満足感 (摂取30分、90分、180分、210分後および270分までのAUC) の上昇、昼食時のエネルギー摂取量、昼食後30分の空腹感、予想食事量の抑制が認められた (2021133939) 。 その他 ・2型糖尿病患者で行った臨床試験において、大麦若葉を単独、あるいはビタミンC、Eと併用で摂取させた結果、血中の活性酸素の除去およびLDLの酸化阻害がみられたことから、大麦若葉は抗酸化ビタミンと併用することで、2型糖尿病患者の血管疾患の予防に役立つ可能性がある (65) 。 ・健康な男女14名 (20歳代、男性8名、女性6名、日本) を対象に、副食とともに大麦5割・白米5割の混合食を朝食として単回摂取させたところ、食後血糖値の上昇抑制が認められたが、インスリン、グルカゴン値に影響は認められなかった。また、女性を対象に同様の朝食を6日間摂取させたところ、食後血糖値の上昇抑制が認められたが、インスリン、グルカゴン値に影響は認められなかった (1997002790) 。 ・正常血糖または糖尿病境界域の成人25名 (平均48.6±2.0歳、日本) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ対照試験において、米飯304.7 gとともに大麦若葉1.5 g含有飲料を摂取させたところ、糖代謝マーカー (摂取後60分、90分の血糖、血糖AUC) 上昇の抑制が認められた。一方、摂取後のインスリンに影響は認められなかった (2014145732) 。 ・正常血糖者18名 (平均38.3±1.7歳、日本) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、高β-グルカン大麦5割・白米5割の混合食を単回摂取させたところ、白飯の摂取と比較して、食後血糖値およびインスリン濃度の上昇が抑制されたが、血清遊離脂肪酸濃度に影響は認められなかった (2014096130) 。 ・高血糖患者10名 (平均60±3歳、日本) を対象としたオープンラベルクロスオーバー無作為化比較試験において、大麦粉25%配合うどんを100 g単回摂取させたところ、小麦粉うどんの摂取と比較して、食後血糖値の30分値のみ上昇抑制が認められたが、その他の測定時点およびAUC、食後インスリン濃度に影響は認められなかった (2014157410) 。
生殖・泌尿器
RCT ・軽度高尿酸血症の男女104名 (試験群54名、平均43.3±11.3歳、日本) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、発酵大麦エキス2 g/日含有飲料を12週間摂取させたところ、血清尿酸値の低下が認められたが、尿中尿酸値、尿量、尿pH、尿酸クリアランスに影響は認められなかった (PMID:20378966) 。
脳・神経・感覚器
RCT:海外 ・健康な成人21名 (平均52.8歳、オランダ) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化比較試験において、大麦8.0 g/本、フラクトオリゴ糖8.0 g/本、または大麦8.0 g+フラクトオリゴ糖8.0 g/本を含むスナックバーを2日間で3本 (1日目の朝食、間食、2日目の朝食) 食事の代わりに摂取させたところ、オーツ麦6.8 g/本と比較して、いずれの群も自己評価による食欲、自由摂取の昼食の摂取エネルギー量に影響は認められなかった (PMID:19056555) 。
免疫・がん・炎症
一般情報 ・胃がんに対して有効性が示唆されている (94) 。 ・大腸がんに対して効果がないことが示唆されている (94) 。 RCT ・軽症〜中等度の活動性潰瘍性大腸炎18名 (試験群11名、平均34.7±14.3歳、日本) を対象としたオープンラベル試験において、基本的な抗炎症治療とともに、発芽大麦20〜30 gを4週間摂取させたところ、潰瘍性大腸炎の臨床的指標の改善が認められたが、血清CRPに影響は認められなかった (PMID:12572869) 。
骨・筋肉
調べた文献の中に見当たらない。
発育・成長
肥満
メタ分析 ・2013年9月までを対象に8つのデータベースで検索できた無作為化比較試験26報について検討したメタ分析において、プレバイオティクス (フラクトオリゴ糖、イヌリン、ヤーコン、キシロオリゴ糖、大麦、ガラクトオリゴ糖など) の摂取は、満腹感 (3報) の上昇、糖代謝マーカー (食後血糖 (4報) 、インスリン (3報)) 上昇の抑制と関連が認められた。一方、総エネルギー摂取量 (5報) 、ペプチドYY (3報) 、GLP-1 (4報) 、体重 (5報) 、TG (11報) 、CRP (4報) との関連は認められなかった (PMID:24230488) 。 RCT ・過体重または肥満の女性46名 (平均61.6±0.8歳、スウェーデン) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、大麦と豆類 (大麦パン216 g+全粒大麦58 g+インゲンマメ86 g+ヒヨコマメ82 g/日) を含む食事を4週間摂取させたところ、血漿TC、LDL-C、γ-GT、拡張期血圧、フラミンガムリスクスコアの低下が認められたが、体重、BMI、ウエスト径、血中脂質 (HDL-C、TG、LDL-C/HDL-C比) 、糖代謝指標 (空腹時血糖値、インスリン濃度、HOMA-IR、HbA1c) 、CRP値、収縮期血圧に影響は認められなかった (PMID:24063257) 。
その他
RCT ・健康な女性42名 (平均25.5±4.7歳、アメリカ) を対象とした二重盲検クロスオーバー無作為化比較試験において、大麦またはオートムギふすま由来食物繊維を10 g含むスナックバーを夕食および朝食として摂取させたところ、低食物繊維スナックバー摂取と比較して、昼食摂取量、24時間摂取エネルギー量、空腹感、満足感、満腹感、予想食事量の自己評価に影響は認められなかった (PMID:24874565) 。 ・健康な女性21名 (平均71.9±4.6歳、日本) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、大麦飯150 g (β-グルカン2.9 g含有) をオムレツとともに朝食として摂取させたところ、米飯摂取時と比較して、自己評価による昼食前の空腹感、予想食事量の抑制および満腹感の向上、朝食摂取後および夕食摂取前の満足感の向上、自由摂取の昼食摂取量の減少が認められたが、夕食摂取量に影響は認められなかった (PMID:25139426) 。 ・健康な男女19名 (平均24.2±1.9歳、スウェーデン) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、全粒大麦96.8 gまたはスターチ利用効率で調整した精白小麦パン119.7 gを夕食として摂取、翌日の朝食と昼食を自由摂取させ、昼食2時間後までの食欲、糖代謝、ホルモン濃度の変化を検討したところ、大麦の摂取により空腹感の減少、血糖値の上昇抑制、血漿GLP-1濃度の上昇、血漿アディポネクチン値の低下抑制、昼食のエネルギー摂取量が減少したが、朝食と昼食の総エネルギー摂取量、満足感、食事欲求、インスリン濃度、血漿GIP値、血漿グレリン値、血清IL-6に影響は認められなかった (PMID:23577719) 。 ・健康な男女21名 (平均52.8歳、オランダ) を対象としたクロスオーバー無作為化比較試験において、大麦8.0 g/本、フラクトオリゴ糖8.0 g/本または大麦+フラクトオリゴ糖を含むスナックバーを2日間で3本 (1日目の朝食、間食、2日目の朝食) 摂取させたところ、いずれも自己評価による食欲、自由摂取の昼食の摂取エネルギー量に影響は認められなかった (PMID:19056555) 。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
安全性
危険情報
<一般> ・通常の食事に含まれる量を摂取する場合はおそらく安全である (94) 。 <妊婦・授乳婦> ・通常の食事に含まれる量を摂取する場合はおそらく安全である (94) 。 ・妊娠中の芽の大量摂取は危険性が示唆されている (94) 。 ・授乳中の摂取の安全性については十分な情報がないため、摂取を避ける (94) 。 <小児> ・小児アレルギー性疾患264例について、アレルゲン特異的IgE抗体の測定を行ったところ、大麦に対して22%が陽性を示した (1992103802) 。 <その他> ・ライ麦、小麦、オート麦、トウモロコシ、米にアレルギーがある人は、大麦に対してアレルギーを起こす可能性がある (94) 。 ・大麦の粉塵に曝露されると、皮膚発疹が生じることがある (94) 。 <被害事例> 【青汁が関連した被害事例】 ・2型糖尿病の68歳女性 (日本) が、大麦若葉を原料とする青汁を約2ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、肝機能障害を生じ、摂取中止と加療により改善した。DLSTにおいて当該製品で陽性を示し、青汁による肉芽腫性肝炎と診断された (PMID:14572599) 。 ・54歳女性 (日本) が、植物発酵エキスを2年間、大麦若葉青汁を6ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、急性肝炎を生じ加療により改善した。DLSTにおいて摂取していた健康食品2種ともに陽性を示し、これらの摂取による薬物アレルギー性肝機能障害と診断された (2018032319) 。 ・54歳女性(日本)が健康増進のために大麦若葉青汁サプリメントを3ヶ月間摂取したところ(摂取量不明)、健康診断で肝機能異常(AST、ALT、ALP、γ-GTPの上昇)を指摘された。その後、手首の発赤、腫脹、熱感のため受診したところ、肝機能の悪化が認められ入院し、当該製品の摂取中止後も咳嗽、倦怠感の持続、肝機能障害、好酸球増多の悪化がみられ肝炎と診断されたが、加療により改善した。DLSTにて当該製品が陽性であったため、当該製品摂取による薬剤性肝障害と考えられた (2020276903) 。 ・ALT欠損の67歳女性 (日本) が、大麦若葉青汁を3ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、全身倦怠感、黄疸を生じ、肝機能マーカー (AST、ALP、γ-GTP、総ビリルビン) の上昇が認められたが、摂取中止により回復した。DLSTにおいて青汁が陽性を示し、青汁による薬剤性肝機能障害と診断され、摂取中止により改善した (2018076526) 。 【ビールが関連した被害事例】 ・アトピー性皮膚炎の既往歴がある30歳女性 (オランダ) が、ビールを一口飲んだ後にショック症状を起こしたため、ビールの摂取を控えていたが、バーなどのアルコール飲料がある環境で顔の紅潮、腫れ、かゆみを生じる経験を繰り返し、ビールを飲んだ夫とキスをした数分後に唇とその周辺の発赤、かゆみを生じた。スクラッチテストの結果、ビールに陽性を示した (PMID:7398296) 。 ・45歳女性 (オランダ) が、ビールを飲んだ後に慢性蕁麻疹の症状を強く生じ、スクラッチテストの結果、ビール、麦芽、麦汁とトウモロコシとホップの混合煮沸液に陽性を示した (PMID:7398296) 。 ・ビールによる蕁麻疹を経験した患者3名 (イタリア) を対象にアレルギー検査を行ったところ、プリックテストでビール、大麦、麦芽に、IgE抗体テストで大麦に陽性を示した (PMID:10202351) 。個々の症例は以下の通り。 1) 季節性鼻結膜炎の既往歴がある28歳男性がビールを飲んだ後全身性蕁麻疹、喉頭浮腫、呼吸困難を生じることを2度経験した。 2) 季節性鼻結膜炎の既往歴がある17歳男性がビールを飲んだ直後に口腔粘膜浮腫、掻痒を伴う全身性蕁麻疹を生じることを繰り返した後、喉頭浮腫、呼吸困難を伴う全身性蕁麻疹を生じてステロイド薬による緊急処置を受けた。 3) ビールを飲んだ後に顔面の血管性浮腫、口のかゆみを生じたことがある32歳男性が、別の機会にビールを飲んだ直後に全身性蕁麻疹、顔面浮腫、不快感を生じてステロイド薬と抗ヒスタミン薬による緊急処置を受けた。 ・ビールによるアナフィラキシーを経験した患者3名 (スペイン) を対象にIgE抗体テストを実施したところ、全員が大麦に陽性を示し、凍結乾燥ビールを用いた二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施したところ、2名が全身性蕁麻疹、まぶたの血管性浮腫、背中の掻痒を伴うみみず腫れなどの陽性反応を生じ、1名は緊急処置を要する重篤な症状を呈したため試験続行を中止した。個々の症例は以下の通り (PMID:10329839) 。 1) ダニ、花粉による喘息の既往歴がある34歳女性がビールを飲んだ後に顔のひりひりとした痛み、唇の血管性浮腫、胸部絞扼感、呼吸困難、鼻結膜炎を生じることを3回経験した。 2) 鼻炎、喘息およびオリーブ、花粉、猫の毛に対する過敏症がある20歳男性がビールを飲んだ30分後に胸のつかえ、舌の血管性浮腫、咳、喘鳴、全身性蕁麻疹を生じて失神し、緊急外来にて処置を受けた。 3) アレルギー性鼻炎、喘息の既往、花粉、ダニ、猫に対する過敏症がありモモを食べて口腔アレルギー症候群を発症したことのある22歳女性が、ビールを飲んだ直後に全身性蕁麻疹を生じた。 ・ビールを摂取してアナフィラキシー症状を発症した2名の患者 (イタリア) に対してプリックプリックテスト、特異型IgE検査を実施したところ、大麦に対して陽性を示した。個々の症例は以下の通り (PMID:10513355) 。 1) イラクサによる鼻炎の既往がある24歳女性が、ビールを摂取後 (摂取量不明) 、喉頭水腫、呼吸困難を呈する経験を3度生じ、その都度救急外来を受診し加療によって回復した。 2) 花粉症の既往がある25歳男性が、ビールを摂取後 (摂取量不明) 、全身性蕁麻疹、顔面の血管性浮腫、軽度呼吸困難を呈する経験を2度生じ、その都度加療によって回復した。 ・アトピー性皮膚炎、季節性鼻炎の既往歴がある26歳女性 (日本) が、4〜5年前からビールを摂取した20〜30分後に目のかゆみとまぶたの血管浮腫を何度も経験したことから検査したところ、特異的IgE抗体が麦芽、大麦にわずかに陽性、プリックテストにてビール、大麦、麦芽に陽性を示したことから、ビールによる即時型過敏症と診断された (PMID:26661797) 。 ・21歳男性 (イスラエル) が、グラス1杯のビールを摂取した数分後に蕁麻疹、呼吸困難、顔面の血管性浮腫、嘔吐を生じて緊急搬送された。加療後のプリックテストでビール、大麦、オートムギ、アーモンド、洋ナシに陽性を示したことから、ビールによるアナフィラキシーと診断された (PMID:19697593) 。 ・季節性鼻結膜炎、マスタードアレルギー、バラ科の果物に対する口腔アレルギー症候群、メタミゾールによるアナフィラキシーの既往がある21歳女性 (スペイン) が、ビールを摂取して45分以内に全身の痒み、蕁麻疹、口唇および顔面の血管性浮腫、喘鳴を伴う呼吸困難を生じ、緊急外来を受診し加療を受けた。その数ヶ月後、トウモロコシスナックを摂取して同様の症状を発症。プリックテスト、特異的IgE検査で大麦、麦芽、トウモロコシ、小麦、ライ麦、米、オート麦に陽性を示したことから、摂取したビールおよびトウモロコシを原因とするアナフィラキシーと診断された (PMID:10435480) 。 ・食物倉庫で働き、2年の間に息切れを繰り返し、穀物入りの袋や穀物粉に接触した後に胸部絞扼感、喘鳴、目と鼻の痛みを伴う咳、くしゃみ、鼻漏、息切れを生じていたためステロイド薬による治療を行っていた52歳男性 (スペイン) が、5回 (うち2回はビール飲酒後) の緊急搬送を要する呼吸困難を伴う喘息発作を経験した。プリックテスト、IgE抗体テストの結果、ダニ、トウモロコシ粉、大麦粉に陽性を示し、気管支誘発テストにおいて大麦粉に対して反応を示した (PMID:7648375) 。 【その他の被害事例】 ・セリアック病の男女10名 (イングランド) を対象に大麦を120 g/日、3〜28日間摂取させたところ、6名が消化器症状 (腹痛、下痢、鼓脹) を生じた (PMID:959100) 。
禁忌対象者
・セリアック病 (グルテンに対する自己免疫疾患) 患者は大麦に含まれるグルテンによって病状が悪化する可能性があるので、使用は避ける (94) 。
医薬品等との 相互作用
<ヒト症例> ・心房細動の既往歴があり、ジゴキシン (強心薬:P糖タンパク質基質) 0.25 mg/日、ブロマゼパム (抗不安薬) 5 mg×3回/日、トフィソパム (自律神経系作用薬) 50 mg×3回/日とともにワルファリンカリウム (抗凝固薬:CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4基質) 2.5 mg/日を服用し、13年間コントロール良好の状態を維持していた61歳男性 (日本) が、ビタミン補給のために大麦若葉サプリメントを約1ヶ月間摂取したところ (摂取量不明) 、定期検査においてトロンボテスト値の著明な上昇が認められたが、大麦若葉サプリメントの摂取中止1週間後に回復した (102) 。 <動物・試験管内> ・in vitro試験 (ヒト胎児腎細胞) において、オオムギの抽出物はOATP2B1活性に影響をおよぼさなかった (PMID:16415120) 。 <理論的に考えられる相互作用> ・大麦の摂取は血糖値に影響を及ぼす可能性があるため、血糖低下薬や血糖を低下させるハーブ、サプリメントとの併用により作用が増強される可能性がある (94) 。 ・食物繊維が消化管通過時間に影響し、経口薬の吸収を阻害する可能性がある (94) 。
動物他での 毒性試験
1.LD (致死量) ・抽出物を投与:マウス腹腔内>1 g/kg (91) 。
AHPAクラス分類 及び勧告
・Hordeum vulgare L. 発芽種子はクラス1 (適切に使用する限り安全に摂取することができるハーブ) (22) 。
総合評価
・妊娠中の芽の大量摂取は危険性が示唆されている。 ・セリアック病患者は摂取を避ける。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・高コレステロール血症に対しておそらく有効である。 ・胃がんに対して有効性が示唆されている。
参考文献
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