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ブラックコホシュ

カテゴリー:素材
更新日:2020/06/01

もくじ

(リーフレット版はこちら)

  1. はじめに
  2. ブラックコホシュってきくの?
  3. ブラックコホシュは安全なの?
  4. からだの悩みがあるときは
  5. まとめ

 

もっと詳しく知りたい方はこちら

  1. ブラックコホシュとはどんなもの?
  2. アルカロイドとは?
  3. 指定成分等って?
  4. アドバイザリースタッフとは?

 

はじめに

 「ブラックコホシュ」という名前の植物が、月経前症候群 (PMS) をやわらげる、更年期障害に効くなどと聞いたことはありますか?健康食品として、さまざまな効果を宣伝して販売されているので、インターネットやドラッグストアで見かけたことがあるかもしれません。また、バストアップなど女性ホルモン様作用を期待した製品に含まれていることも多いようです。
 これらの商品にブラックコホシュを入れることで、女性ホルモンに似た働きが期待されているようです。しかし、ブラックコホシュには同時に肝臓の障害をおこすとされる成分が入っているため、厚生労働省は注意を呼びかけています。
 そこで、ブラックコホシュの効果や安全性について、今わかっていることをお伝えします。

 

ブラックコホシュってきくの?

 ブラックコホシュは、体内で女性ホルモンに似た働きをすることが報告されています。そのため、私たちがブラックコホシュを摂ったときに望ましい効果があるのかどうか、研究を調べたところ、更年期障害の症状 (ホットフラッシュなど) を改善したとする報告が2報見つかりましたが、反対に効果がなかったとする報告も6報あり、はっきりとした効果は認められていません (1-8) 。また、月経前症候群に対する効果を証明した研究は一つも見当たりませんでした。

 

ブラックコホシュは安全なの?

 海外では、ブラックコホシュの入った商品をつかった人が肝機能障害を起こしたという事例がたくさん報告されています。そのほかにも、軽い症状として胃の不調や頭痛、じんましんなどの健康被害の報告があります。これは、ブラックコホシュに含まれるアルカロイドという成分が原因であると考えられています。そのため、一部の地域、国では、ブラックコホシュを食品(健康食品など)につかうことを規制するなどの対応をしています。
 因果関係は明らかではありませんが、国内でもブラックコホシュを含む商品をつかった人が健康被害をうけた報告があります。
 そのため、厚生労働省はブラックコホシュを「指定成分等」に指定し、健康被害を防ぐために注意を呼びかけています (9) 。

 

からだの悩みがあるときは

 体内ではエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンバランスによって性周期がつくられていますので、ブラックコホシュを摂るだけで理想的なホルモンバランスが保てることはありません。
● 更年期障害や月経に関する悩みがある場合
 ブラックコホシュの商品を試してみる前に、お近くの婦人科または産婦人科を受診されることをおすすめします。

● どうしてもブラックコホシュの商品を利用したい場合
 手軽に理想的なホルモンバランスが保てるなどとうたった商品には、魅力を感じると思いますが、簡単に効果がみられることはありません。むしろ、悪い影響を起こす可能性があります。医師、薬剤師、管理栄養士や、健康食品・サプリメントのアドバイザリースタッフ など専門的な知識を持った方に、ご相談ください。

● ブラックコホシュの商品を利用していて体調の変化を感じた場合
 すぐに利用をやめて、症状に適した診療科を受診してください。その際には、必ず、ブラックコホシュの商品を利用していたことをお伝えください。病院へ行くほどの健康被害ではない場合でも、お近くの保健所へ相談してください。いずれの場合においても、必ずパッケージに書いてある連絡先か購入したお店にも連絡してください。これはブラックコホシュが「指定成分等」に指定されているため、販売元やお店はすべての健康被害を保健所などに届け出る義務があるためです。健康被害を感じた時の対応方法については、こちらのページもご覧ください。

 

まとめ

 ブラックコホシュを含む商品が、女性特有の病気に悩む人が喜ぶような宣伝をして販売されています。しかし、それらの効果ははっきりしていないばかりか、摂取して体調不良を感じたり、肝臓の障害を受けた人も多いため、「指定成分等」に指定されています。薬剤師や管理栄養士、アドバイザリースタッフに相談した上で本当に必要かどうかを冷静に判断しましょう。

 

▼もっと詳しく知りたい方はこちら

ブラックコホシュとはどんなもの

 ブラックコホシュ (学名Cimicifuga racemosa (L.) Nutt.Actaea racemosa L.) は、北米に分布するキンポウゲ科の多年草植物です。
国内外での食経験はみられない植物ですが、薬草として鎮痛剤や強壮薬に使用していた地域もあるようです。しかし肝毒性を示すアルカロイドを含むため、摂取により肝機能障害を起こす可能性があるため、ヨーロッパ医薬品局のハーブ医薬品に関する委員会、イギリス、フランス、フィンランドでは、製品への警告表示の追加など、健康被害防止に対する注意喚起を行っています。
 日本では、食品衛生法において「指定成分等」に指定されています。

 

アルカロイドとは?

 アルカロイドとは、窒素原子を含む植物の2次代謝化合物の一群で、多くが植物が他の生物からの攻撃から身を守るために有毒性であるといわれています (10) 。ブラックコホシュには、人の体に強い影響を与えると考えられているマグノフロリン、レチクリン、ノルコクラウリンなどのアルカロイドが含まれています (11) 。これらのアルカロイドは、肝機能障害を起こすことが動物の実験でわかっており (12) 、摂取により肝機能障害となった例がいくつも報告されています (13-26) 。

 

指定成分等って?

 プエラリア・ミリフィカを含む健康食品を利用した事により健康被害が多発したことをきっかけに、2020年6月に改正食品衛生法が施行され、健康食品の素材の中でも、作用が強く健康被害が生じやすいものを「指定成分等」として管理することになりました。
 日本国内においてはブラックコホシュが原因として考えられる健康被害が報告されており、海外では、ブラックコホシュの利用により、重篤な肝機能障害を起こしたという報告が多いことから、このブラックコホシュも指定成分等の一つとして管理されています。そのため、ブラックコホシュの商品を利用する方は自身の体調変化には十分気を付けて、体調不良を感じた場合には、すぐに保健所に連絡し、必ず販売元(表示責任者)にも連絡してください。販売元(表示責任者)がわからない場合は、購入した店舗に連絡するようにしてください。詳しくは、こちらのページをご覧ください。

 

アドバイザリースタッフとは?

 アドバイザリースタッフとは、健康食品やサプリメントについての正しい知識を持ち、身近で気軽に相談を受けてくれる、民間の資格をもった言わば健康食品の専門家です。主な資格として、NR・サプリメントアドバイザー(一般社団法人日本臨床栄養協会)、食品保健指導士(公益財団法人日本健康・栄養食品協会)、健康食品管理士(一般社団法人日本食品安全協会)などがあります。アドバイザリースタッフの中には、講演会などを通じて、健康食品の適切な利用や、利用による健康被害の防止のための活動をしている方もいます。
 身近なところでは、薬局や薬店、病院などで活躍している人も多いので、ブラックコホシュにかぎらず、健康食品を購入・利用する際には、是非、アドバイザリースタッフに相談しましょう。

 

参考文献

1. (PMID:24499633) Chin Med. 2013; 8(1):20.
2.(PMID:25276716) J Caring Sci. 2013; 2(2):105-13.
3.(PMID:17179056) Ann Intern Med. 2006; 145(12):869-79.
4.(PMID:18257142) Menopause. 2008; 15(1):51-8.
5.(PMID:19590458) Menopause. 2009; 16(6):1167-77.
6.(PMID:16039414) Maturitas. 2005; 51(4):397-404.
7.(PMID:19609225) Menopause. 2009; 16(6):1156-66.
8.(PMID:24941138) Climacteric. 2015; 18(1):79-85.
9. ブラックコホシュの利用に関する注意喚起について:厚生労働省
10. Materials Today Chemistry. 2018;9:56-72.
11. 健康・機能性食品の基原植物事典 中央法規
12. (PMID:17928951) Cell Mol Life Sci. 2007 Nov;64(21):2848-57.
13. (PMID:12381254) Med J Aust. 2002; 177(8):440-3.
14. (PMID:18202968) Climacteric. 2008; 11(1):84-8.
15. (PMID:19472866) Altern Ther Health Med. 2009; 15(3):62-3.
16. (PMID:14503910) Med J Aust. 2003; 179(7):390-1.
17. (PMID:19404202) Eur J Gastroenterol Hepatol. 2009; 21(8):941-5.
18. (PMID:16721764) Liver Transpl. 2006; 12(6):989-92.
19. (PMID:20130783) Case Report Med. 2009; 2009:918156.
20. (PMID:18203607) Del Med J. 2007; 79(11):441-4.
21. (PMID:19657787) Climacteric. 2010; 13(2):187-91.
22. (PMID:21222373) Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2010; 14(10):865-70.
23. (PMID:18393750) Med J Aust. 2008; 188(7):420-2.
24. (PMID:23833086) BMJ Case Rep. 2013; 2013. pii: bcr2013009325.
25. (PMID:25093128) Case Rep Gastrointest Med. 2014; 2014:860614.
26. (PMID:28203134) Case Rep Gastroenterol. 2017 Jan 27;11(1):23-28.

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