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エナジードリンク

カテゴリー:その他
更新日:2019/04/02

はじめに

 エナジードリンクとよばれる飲料に人気が集まっていますが、その一方で、エナジードリンクの多量摂取によりさまざまな健康被害が生じています。中には死に至った事例も見受けられます。そこで、これまでに報告されているエナジードリンクの摂取との関連が疑われる健康被害の症例とともに、利用する際に注意すべきポイントを紹介します。

 

エナジードリンクってなに?

 エナジードリンクとは、主にカフェイン、タウリン、グルクロノラクトン、ガラナ、ビタミンなどを添加した飲料を指します (1) 。単に嗜好飲料としてだけでなく、活力増強や眠気覚ましなど、さまざまな目的で利用されているようですが (2) 、エナジードリンクは食品ですので、医薬品のような効果を期待することはできません。この点が、ビタミン等を添加し、滋養強壮、肉体疲労などに対する効能を謳った栄養ドリンクとよばれる医薬品または医薬部外品と大きく異なります。
 市場にはエナジードリンクとよばれる製品が数多く出回っており、含まれている成分の内容や量は多種多様です。なかには、カフェインなど短時間のうちに多量に摂取すると体調に悪影響を及ぼす成分が高濃度で含まれているものもあります。また、エナジードリンクには砂糖などの糖類も多く添加されている場合があるため、摂取量には注意が必要です。

 

どんな健康被害が起きているの?

 前の項で述べたように、エナジードリンクを多量に摂取すると、主な含有成分であるカフェインによって健康を害することがあります。カフェインを過剰摂取した場合の症状としては、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、血圧上昇、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等があげられます (3) 。エナジードリンクが関連する国内外の症例46件について、特徴をまとめました (個々の症例の詳細はこちら) 。
性・年代別症例数の図 46件中35名が男性で、年代は10代から40代の若年層から働き盛りの世代が多く、特に20代男性の症例が多く報告されています (図) 。国別ではアメリカが14件と最も多く、イタリア (6件) 、トルコ (4件) の順で続き、日本での症例は1件でした。多くの症例では、エナジードリンク中のカフェインの過剰摂取が原因と考えられており、カフェインの有害事象として知られている心臓障害 (洞性頻脈、心筋梗塞など) 、消化器障害 (嘔吐など) 、代謝障害 (低カリウム血症など) が症状の多くを占めていました。また、死亡例が4件あり、死亡した患者はいずれも20代で、カフェインの過剰摂取によるものでした。このうち1件は2016年に報告された日本の男性の症例で、眠気覚ましを目的とした日常的なエナジードリンクの摂取に加え、エナジードリンクとカフェイン錠剤を併用したことによるカフェイン中毒を生じた事例でした。このように、エナジードリンクと医薬品を併用した事例は10件、アルコールを同時に摂取した症例は4件報告されていました。カフェインの許容量は個人差が非常に大きいため、どれくらいが過剰か?は、ご自身の体調の変化を見て管理する必要があります。

 

エナジードリンクを利用するときの注意点は?

 厚生労働省のウェブサイトでは、カフェインについてのQ&A (3) がまとめられており、そのなかでエナジードリンクを飲む際の注意点が記載されています。

  • 製品の表記をよく読むこと
  • 小児・妊婦・授乳婦・カフェインに敏感な人は摂取を控えること
  • 他のカフェイン含有製品と併用しないこと
  • 1日に何本も飲まないこと
  • カフェインとの併用を避ける必要がある医薬品があるため、服用中の場合は注意すること

 

 また、米国疾病予防管理センター (CDC) は、アルコールとカフェインを同時摂取すると、カフェインがアルコールによる鎮静効果を抑制してしまい、結果的にアルコールの過剰摂取につながるおそれがあると指摘しています (4) 。また、62報の研究についてレビューした報告によると、エナジードリンクとアルコールの併用は、アルコールによる興奮や覚醒状態、倦怠感抑制作用を上昇させ、更なる飲酒の欲求を強くすることが示されています (5) 。米国では、2011年に救急外来に訪れたエナジードリンク関連の症例の42%が、エナジードリンクと、アルコールまたは薬物の併用によるものだったと報告しています (6) 。エナジードリンクとアルコールを混ぜて飲む、体調のすぐれないときにお薬と併用するなど、健康被害につながる可能性を高くするような飲み方は絶対に避けましょう。

 

おわりに

 若い世代を中心に人気があるエナジードリンクは、含有成分の過剰摂取が原因と思われる健康被害が多数、報告されています。短時間での多量摂取や、医薬品やアルコールなどとの併用は、特に健康被害が生じやすくなるため、摂取量・摂取方法に十分注意し、体調に異変を感じたら医療機関を受診しましょう。

 

参考文献

1. (PMID:21037046) Mayo Clin Proc. 2010 Nov;85(11):1033-41.
2. EFSA Supporting Publications. 2013 Mar; 10(3): 394E.
3. 厚生労働省ウェブページ「カフェインについてのQ&A」
4. 米国疾病予防管理センターウェブページ「Fact Sheets – Alcohol and Caffeine」
5. (PMID:25861944) Drug Alcohol Depend. 2015 Jun 1;151:15-30.
6. 米国国立補完統合衛生センターウェブページ「Energy Drinks」

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